金 融 論
金融論2022年テキスト 説明ノート
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2023年7月1日 『金融論2022年』テキストの改訂が終わりました。22kinyurontext.pdf へのリンク
第1回目 2022年9月12日
はじめに
本教室の目的は、『金融論2022年テキスト』の補足説明です。2022年度前半の資産形成論教室において、「今週のイベントと市場への影響度」を予想するとき、経済学の知識がある方が、イベントの方向性を間違えにくい。特に、開放マクロ経済モデルの短期・中期変動経路は、理論的推論ができる方が、大筋を読み間違えなくてよい。
2019年から、開放マクロ経済モデルの短期・中期モデルは、マンデル=フレミング・EX線形システムを基礎に置いています。長期モデルは、M=F・EX対数連続システムを提案しています。前者は、通常の計量経済学の手法で、四半期・3年予想を目指しています。後者は、連続システムの推計であり、研究中です。
『金融論』の目次の内、2.家計の金融行動、7.金融市場と利子率決定、8.金融派生商品市場は、『資産形成論』の内容とダブっています。
私の理論的立場は、追手門学院大学在職中から、スタッフで同じ立場を共有しにくいので、海外の論者の研究を勉強しつつ、自問自答し、『金融論』を毎年、研究した結果を反映し、改訂してきました。研究所を開設しても、その研究仕法は変わりありません。すなわち、モデルを論証するか、数理的なモデルを仮定し、数学的方法で均衡値を求めるか、経路を決定するか、それらのモデルを時系列データで、統計学的、計量経済学的方法で、推定するかです。
私の学生・院生時代は世界イデオロギー戦争の最中でした。神戸大学経済学部を選んだのは、マルクス経済学が主流でない大学だと立命館大学の学生たちが言っていたからです。入学し、大学紛争時代に入りました。大学の教学は一時、機能停止になり、自学自習が2年、続きました。紛争学生による大学封鎖が解除され、教学が開始されましたが、どこの大学でも教官、教員と学生の意識の断絶は大きなものがありました。自学自習の時代、マルクス、エンゲルス、ゲバラ選集、マルクス経済学を読みましたが、紛争学生ほど、共感、感化される思想ではなかった。当時、マルクス主義は、社会科学、人文科学および自然科学を統一的に把握できる科学であると、日本では、理解されていたようです。社会科学では、政治・経済・軍事が共産党独裁で統治機構が存在すれば、その国にとって最善の機構である。人文科学では、唯物史観で、人類の発展段階が決定されている歴史経路が説明できることになっている。自然科学では、宇宙法則にしたがい、ビッグバン以降の膨張的宇宙が存在する。地球で存在する生命は、宇宙法則の中で、物的合成結合した水泡にすぎない。ということで、自然科学系の学生も、共産主義運動にしたがい、手っ取り早く、日本を革命によって、終息点である理想共産社会軌道に乗せなければならないという新左翼運動がありました。
私は、高校時代、明治・大正・昭和文学全集を読み、古典文学を読み、特に、世界史を熱心に、教科書以外の通史を図書館で借り出して、東洋と西洋で発展を分けて、勉強していました。入試に必要とされる以上の知識を貯め込み、諸文明の発生から変遷・年表を記憶しました。
日本の私小説は、体験文学です。特に、昭和時代は、敗戦までの、共産主義・社会主義の信奉者の私小説をかいていました。倉橋由美子の『スミヤキストQの冒険』1969年辺りで、日本文学は、私小説から離脱し出したので、面白くなく、卒業しました。
紛争時代は、大学は封鎖中で、世界文学、世界思想の本を丹念に読んでいきました。紛争時代、大学が、ほぼ、1年間、休校状態で、アルバイトは、いろいろな職種で、職場体験しました。最後に、賄いつき、料理旅館で、アルバイトをしていました。年配の板長さんが、京都の紛争学生と機動隊、セクト同士が、ヘルメット、角材でデモ、衝突をして、市民生活に影響を与えていたのをみて、「学生君、あの運動をしない方がいい。」と言いました。5月1日のメーデーが京都市内で、盛大に、労働組合が旗をもって、市内を行進していた時代です。労働者、既成革新政党は、新左翼の学生運動を醒めた目でみていました。
学生時代、日本では、社会・人文・自然科学の分野で、社会主義・マルクス主義を指導原理とする学会が主流でした。イデオロギーや政治は、マルクス経済学で取り扱う政治経済学であり、経済学が、1900年から、推進して来た研究仕法では、取り扱うことはできないと考えていました。また、シベリア鉄道、ヨーロッパ鉄道で、ナホトカからベネチアまで、ユーラシア大陸を往復し、東西の各国民の実情を見聞して、イデオロギー戦争の負荷は、東側の方が大きく、消費財の慢性的な不足があると思いました。私は、東側と同じ、食うや食わずで、暮らしていたので、東側と生活的な違和感は全くありませんでした。シベリア鉄道の食事も、立命館大学や同志社大学の学食のようなもので、京都市内で、質素、倹約学生生活に慣れていました。資本主義経済下の日本で、私の贅沢は、本ばっかり、毎月、あれこれ、古本屋、定期購入の近所の書店、ときに、新刊洋書を丸善で買って読んでいました。
大学院に入り、林治一教授のゼミで、Arrow・Hahnを研究する先輩がいて、Debreuの“Theory of Value”を図書館で見つけ、だれかの書き込みがあるので(斎藤光雄教授にその書評があるので、斎藤先生かなと思いましたが)、コピーして、読みました。また、丸谷助教授の講義で、Arrow“Social Choice and Individual Values”を知り、購入、読みました。
当時、政治学を数理的に取り扱う立場があり、もともと、資本主義経済には、民主主義の決定方式の一つである、満場一致原則があります。1985年、政治的決定に際して、この満場一致原則を取れば、租税を負担しつつ、相手のことを思いやる主観的集団効用を最大化して、公共サービスを決定できるという理論を考えました。経済は、個人的価値観で、財サービスの最大効用が得られ、政治は、集団的価値観で、公共サービスの最大効用が得られるということです。これは、1981年から、私が東西問題で行動を開始した、キリスト教の個人的愛と普遍的愛の関係が大きく影響していると思います。ともに、愛は同じ源泉です。学生時代のキルケゴール、オルテガが影響しているかもしれません。EUが誕生してからは、政治的決定は、スイスの直接民主主義を想定すると、満場一致で、一意的にできると考えて、1995年以来、公共サービス決定、経済統合の論文を書いてきました。
経済学の立場は、大学・大学院時代で、数学、確率論、確率微分方程式、常微分方程式、数理統計学、計量経済学、数理経済学、数理計画法を学び、最適投資決定、分布ラグモデルの推定量の論文を書き、神戸大学の計算センターで日本の投資関数の推定を開始、1980年1月、2変数von Neumann-Morgenstern の英文論文を六甲台論集に載せ、それを多変数化した論文をJETに投稿、1980年12月査読後、採用されました。
1981年4月就職後は、異時間一時的一般均衡論を確率微分方程式で、確率動学化するつもりでした。要するに、Hicks, Value and Capital, p126, ‛an Economics of Risk on beyond the Dynamic Economics’を具体化することをめざしてきたわけです。1986年、西ドイツ、ビーレフェルト大学数理経済学研究所で、研究する機会を与えられ、ヨーロッパの数理経済学の文献を調べ、多期間一時的一般均衡論に、確率分布の価格予想を導入し、市場均衡の存在を示すところまで、モデルを表現することができました。同研究所のRosenmueller教授の移転可能効用から、貨幣を資産でとらえれば、貨幣を移転可能効用で評価、和に分離できることを知りました。2018年3月、Hicksの目標にたどり着いた著書を発行し、同時に、公私混合経済の一般均衡理論を論文に書いて、追手門学院大学経済学部を退職しました。
以上、まとめると、宇空和研究所の理論・実証研究目的は、次の通りです。
資本主義経済には、民主主義の決定方式の一つである、満場一致原則があります。1985年、政治的決定に際して、この満場一致原則を取れば、租税を負担しつつ、相手のことを思いやる主観的集団効用を最大化して、公共サービスを決定できるという理論を考えます。経済は、個人的価値観で、財サービスの最大効用が得られ、政治は、予算・租税過程を経て、集団的価値観のもとで、公共サービスの最大効用を得るように決定します。
公私混合経済において、家計、企業、中央銀行、政府の経済主体によって構成される、異時間一時的一般均衡の存在を示し、長期的には、終局的定常均衡が存在する場合、予想価格確率過程を仮定し、確率微分方程式で、確率動学化します。要するに、Hicks, Value and Capital, p126, ‛an Economics of Risk on beyond the Dynamic Economics’を具体化することをめざしています。
貨幣経済のもとで、不確実性がある場合、各経済主体の予想形成を仮定し、予算制約式の下で最適決定を説明するのが、2章から6章まで、金融市場均衡が7章および8章です。9章および10章は、マクロ貨幣経済モデルです。
開放マクロ経済モデルの短期・中期モデルは、マンデル=フレミング・EX線形システムを基礎に置いています。長期モデルは、M=F・EX対数連続システムを提案しています。前者は、通常の計量経済学の手法で、四半期・3年予想を目指しています。後者は、連続システムの推計であり、研究中です。
次の各章を15回で補足説明をし、2022年度前半に引き続き、「今週のイベントと市場への影響度」を短期四半期予想したいと考えています。
『金融論2022年テキスト』宇空和研究所2022年10月以降発行。
目次
3.企業の金融行動
4.金融機関の行動
5.日本銀行と金融政策
6.政府の活動と財政政策
9.マクロ貨幣経済モデルと経済政策
10.開放マクロ経済モデルと経済政策
『金融論2022年テキスト』は、特に、2章について、2022年度『資産形成論』説明ノート、10章について、2021年金融論説明ノートの結果を反映しています。
今週(2022年9月12日~9月16日)のイベントと市場への影響度
今週は、13日国連総会が開幕します。14日G7貿易相会合が15日まであります。15日上海協力機構首脳会議がウズベキスタンで16日まであります。
経済統計は、次の発表があります。
予想値
12日 日工作機械受注額
13日 米8月消費者物価指数(前年比) 6.1%
日7~9月期法人企業景気予測
14日 日7月の機械受注統計(内閣府) 6.6%
15日 日8月貿易収支 -23,820億円
米8月小売売上高(前月比) 0.1%
米鉱工業生産指数(前期比) 0.3%
16日 中8月社会消費商品小売総額(前年比) 3.3%
鉱工業生産(前年比) 3.9%
日本 8月 9月
GDP(前期比)
消費コンビニ売上高
スーパー売上高
百貨店売上高
投資
輸出
輸入
物価指数
利子率
株価
(第2金曜日の前営業日)
為替レート(中心)
原油価格
ドバイ、現物1バレル、ドル、11月渡し 12月渡
(第2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率
景気動向先行指数
一致指数
第2回目 2022年9月19日
第3章 企業の金融行動
ポイント
・企業の短期資金需要は、取引需要で決まる。
・長期資金需要は投資需要によって、決まる。
・2つの投資決定論を理解する。
企業の生産活動を、図式化すると表3.
1になる。企業の生産活動は、生産要素(労働)を購入し、生産物を生産し、販売する。左下の流れは、企業の労働需要量を決める。右下は、企業経営者の立場から、貨幣で評価した利潤=収益-費用を最適化して、供給量を決める。結果は同じであるが、後者は、損益分岐点と休業するかどうかの操業停止点を決めることができる。
3.2 短期の生産活動と資金需要
短期は四半期の3ヵ月以内が実務的な期間である。会計学、金融論では、1年未満である。短期を3カ月以内とすると、企業が生産活動をすれば、労働者への賃金、調達した原材料の費用、光熱費、水道、ガソリン等の経費費用を1カ月以内で支払う。企業は取引銀行と当座預金契約を交わしているので、当座預金口座を通じて、当事者間で決められた日に、決済される。銀行は当座残高が不足する場合に備えて、当座貸越を企業と契約している。
企業間信用の買掛金、売掛金は、現金で回収する場合もあるが、当座預金によって決済する。2000年までの金融危機で、以降、日本では、約束手形は、企業間で振り出す場合が少なくなった。コマーシャルペイパーCPは、大企業で主に発行される約束手形である。中小企業では、銀行の貸付が手形貸付で短期間融資される。
このように、企業の生産活動では、間接金融の銀行を通じて、費用の支払いと売上の受取りを、当座預金から、主に、行っている。短期の借入は、手形貸付により、元金と利息を分割して、毎月元金と利息を返済する。たとえば、10月末満期、11月末満期、12月末満期の銀行宛支払手形で返済する。期間が長いほど、利息が増える仕組みである。
一方、設備投資の借入金は、元金と利息を分割して返済する場合と、利息を定期的に支払い、満期に元金を一括して支払う場合がある。後者は、事業債の償還方法と同じである。投資期間が1年以上ある場合は、操業して収益で返済するのが遅れるので、銀行側も返済可能か審査して、融資する。大企業であれば、1年以上の資金調達方法は、銀行の借入金以外、事業債の発行、増資による調達方法の選択肢が増える。
銀行に短期融資を申し込む場合、書類審査がある。企業は、1ヵ月の原価計算によって、材料費、労務費、経費の出金の実績と借入期間の予定表、収益の実績と借入期間の収益予定表で、日々の資金繰り表を計算する。資金不足は、特定の期日に、発生する。予定外の資金不足は、当座貸越で対応できる。銀行は当座貸越に担保を取っているから、当座預金不足は、担保価値額の換金可能値が限界である。追加の担保を必要としなければ、書類審査で融資が承認される。
コロナ不況では、特に、飲食店や芸能等サービス業は、休業状態に追い込まれている。コロナ以前、有名な芸能関係企業では、興行収入が消失している。芸能プロダクションに所属する演者は、長引く緊急事態宣言で、収入がなくなり、生活が困窮している。零細企業では、休業は、公共料金の基本料金、銀行の借入金返済、担保の家賃等の固定費が、資金不足になる。政府金融機関、自治体では、緊急事態宣言下、営業時間の短縮を要請した場合、固定費を補てんしてくれる。銀行は、貸付金の利息を政府から補てん、貸付金返済猶予によって、休業期間中、固定費を補てんしてくれる仕組みをとっている。
行政命令が解除された場合、営業に入るので、材料費、労務費、経費、販売費等の可変費が営業再開に必要になる。ただし、人出は以前ほど回復していないし、売上、半減以下の中、コロナ対応改装、マスク、消毒液等の衛生経費がかかるので、銀行に融資を申し込んでいるだろう。
このように、短期では、企業は、支払いと受け取りの差額を現金か当座預金で準備しなければならない。短期資金管理は、資金繰りと呼ばれ、当座預金に、いくら準備すれば、費用を最小に出来るかという、現金残高モデルがある。テキストに、その公式を導いている。問題3.2から、企業の短期資金需要関数は、C=√2bT /iである。
3.3 投資の決定
生産物市場で、生産物価格が上昇すれば、企業は、設備稼働に余力をもっているから、製品在庫を増加させて対応する。これを在庫投資という。消費税が上がるとき、消費者が買いだめするのに対応する場合が在庫投資である。
この最適在庫投資理論は、3.2節の公式C=√2bT /iを使う。見積在庫量T、倉庫・管理費用b、経過利子iとする。
生産物価格が継続して上昇する見込みがあれば、企業は固定設備を増強するために、投資をする。固定設備は耐用年数が来ると、陳腐化するが、減価償却費を積立てているから、その資金で固定設備を買い替えることができる。これを置換投資という。総投資は、純投資+置換投資からなる。ただし、企業規模が小さいほど、固定設備の減価償却期間は税法上、機械的に決まっているが、実際は、使用頻度が少なければ、期間を延長して使用している。しかし、延長した場合、商品の販売から、その設備の減価償却費は回収できないし、税法上償却が完了しているため、税法上の費用控除はなく、残存価値が未処分の状態になっている。
新設備にすると、技術進歩が導入されていることが多いから、旧設備よりは、生産高は上がり、労務費、動力費等経費は減少する。つまり、図3. 4のように、生産関数の形状が変わり、生産曲線が上にシフトする。
経済学で投資決定を考えるとき、投資は純投資をいう。投資決定論は、企業価値を最大にする設備量(台数)または稼働時間を求める。問題3. 3(テキスト40ページ)がその例である。生産関数は、機械設備に、材料(㎏、kl)、労働(労働時間)、動力(kw)を投入すると、製品がその工場で最も効率よく生産される量を対応させた物量的関係式である。次期の製品価格が上昇し、賃金率、レンタル率をそのままにして(所与)、次期の利潤を計算し、市場利子率で割り引いて、企業総価値を定義する。耐用年数までで、計算できるし、賃金率、レンタル率も変えることができる。
問題3. 3を解くと、最適資本量K1*が求められ、現在の固定資本量K0と差K1*-K0が正であれば、投資I=K1*-K0をする。例題3. 2において、生産関数をコブ・ダグラスにすると、K1*=αp1Y1/r1 となる。投資関数Iは、I=K1*-K0=(αp1Y1/r1)-K0となる。
企業は、この投資を投資財産業に発注する。その代金は、今期支払われる。その資金を、株式の増資または自己資金で資金調達する場合と、銀行からの借り入れや債券発行では、前者は返済しなくてよいが、後者は返済しなければならないが、投資前の企業総価値V0と投資後の企業総価値V1がV1-uI>V0の関係にあれば、投資額は返済できると債権者から判断される。
企業の自己資本と他人資本の構成は、企業設立からのいきさつの歴史を表している。それは、表3. 2 企業の継続性と資金の源泉にある。
企業は、大企業ほど、償却に5~10年かかる設備投資をする際、資金調達方法が多様化でき、資本コストが低下する。資本構成は、資金調達するとき、資本コストが最小となる最適構成があるとする理論と、資本構成と資本コストは無関係であるとする理論がある。表3. 2から,一般的に、企業は、資金調達の履歴から、資本構成が決まっており、資本コストが大きい銀行融資に依存し、大企業になるにつれて、債券、増資の選択ができる王になるので、資本コストは低下する。大企業は、株主に、配当するが、株主が要求する配当と留保を決める配当政策を実施する。日本では、2000年以降、大銀行の再編、中小零細銀行の再編があり、つまり、提携・吸収・合併があって、より規模が大きくなり、銀行との顧客関係が、過去の履歴と関係なく、温情融資がなくなって、ドライに返済を迫られることを経験した。再編銀行は、もとの銀行と融資企業の債務履歴の経緯を知らないから、新基準にもとづき、貸し渋り、貸しはがしを迫るので、怖いと認識したようだ。中小企業は、データで表面化しているように、自己資本比率を上昇させ、間接金融に頼らず、その高資本コストを低下させる傾向が進展している。
利害関係者から見ると、株主、投資家、銀行は、企業が開示する投資計画を精査して、実現可能であれば、投資、融資を実行する。通常、企業が開示する投資計画を精査する能力は、企業の利害関係者間で差がある。
不確実性下の投資決定は、問題3. 3の所与の価格p1、r1、利子率iが確率変数である。この問題は、新古典派のアプローチで定式化できる。さらに、企業総価値Vは、離散期間で定義すると、V=V0+V1/iであるが、連続モデルではV=V0+∫V1-itdψ(p1,r1)dtとなる。今年度は、2章に、貨幣経済一時的一般均衡論によって、3資産の現物・先物市場均衡問題を取り上げている。企業も現物・先物市場均衡を求めることができる。合理的期待仮説では、期待形成は、市場で決定されるから、先物契約市場は、先物価格が市場で決定される予想価格になる。先物市場理論は、不確実性下の経済を想定しているから、企業の投資決定も、先物価格が企業総価値を決定することになる。
テキストでは、3期間モデルで、企業投資を決定する。投資資金の資金調達は、銀行にその最適計算の情報を提示し、銀行側が審査し、2期間満期の借用証書によって、貸借関係を決定する。このようにして、間接金融の借用証書は、準証券発行とみなされる。住宅ローンの借用証書も、金融機関同士で、準証券と認定されるならば、市場流動化できる。
企業のフロー・ストック最適化の枠組みは、
現行生産活動の最適化と先物契約の締結
予想価格で評価した企業総価値を最大化した投資決定
短期現金残高最適化、最適投資の資金調達、負債・資本の最適構成
となる。
今週(2022年9月19日~9月23日)のイベントと市場への影響度
先週は、13日国連総会が開幕しました。14日G7貿易相会合が15日までありました。15日上海協力機構首脳会議がウズベキスタンで16日までありました。ロシア連邦および中央アジア諸国、中国およびインドが主体の機構です。プーチンは、ウクライナ戦争の支持と軍事協力を願望していますが、加盟国から支持は得られず、戦争遂行のための軍事協力は得られませんでした。イランの加盟手続きが決まりました。
今週は、19日エリザベス女王の国葬があります。20日、国連総会の一般討論演説が始まります。20日、米連邦公開市場委員会FOMCが21日まで開かれます。FOMCは、インフレ鎮静化を第1金融政策目標に取りましたから、もう一段の利上げをします。21日日銀政策委・臨時金融政策決定会合が22日まで開かれます。
日銀の政策委員会は、円安が140円台に入り、日本のインフレーションも毎月2%上昇を続け、10月から、日本経済の大企業本位の固定価格設定が維持できず、大企業製品も、一斉に価格を上げます。日銀も世界の中央銀行に倣って、長期金利を固定化し、短期金利をマイナスにして、金融市場の金利機能を働かせない財政ファイナンスおよび金融市場管理政策から、インフレ鎮静化のために、量的緩和を停止し、利子率を引き締めに転換することが期待されています。
円安は、国際通貨価値の減価であり、国内インフレは、通貨価値の減価です。ダブルで、通貨価値が下落している状況は、まず、日銀は、安くなった通貨を量的に散布することをやめ、利上げして、減価した日銀券を日銀に回収する政策が、円安・インフレに緊急に対する金融政策運営の常識です。
岸田政権は、支持率が40%を切り、通貨価値のダブル下落不景気がささやかれ、5万円給付を予備費から出すインフレ対応では、岸田氏の新資本主義に対応する政策が見えず、日本株式の成長性が期待できないため、外国資本の流入がなく、観光客も来ず、衆議院解散になりそうな暗雲がただよってきました。
経済統計は、次の発表がありました。
予想値 実現値
12日 日8月工作機械受注額 1,393.9億円(前月比97.9%)
13日 米8月消費者物価指数(前年比) 8.1% 8.9%
日7~9月期法人企業景気予測
14日 日7月の機械受注統計(内閣府) (前年比) 6.7% 12.8%
15日 日8月貿易収支 -23,820億円 -28,173億円
米8月小売売上高(前月比) -0.1% 0.3%
米鉱工業生産指数(前期比) 0.3% -0.2%
16日 中8月社会消費商品小売総額(前年比) 3.3% 5.4%
鉱工業生産(前年比) 3.9% 4.2%
経済統計は、次の発表があります。
予想値 実現値
20 日日8月の全国消費者物価指数 2.8%
日8月全国スーパー売上高 ―
日8月の全国コンビニエンスストア売上高 ―
21日 アジア開発銀行ADBアジア経済見通し改訂
G20貿易相会合23日まで
22 日日日銀政策金利 -0.1%
日8月の全国百貨店売上高 ―
米FRB政策金利上限 3.25%
下限 3.00%
米経常収支 -2,575億USD
日本 8月 9月
GDP(前期比)
消費コンビニ売上高
スーパー売上高
百貨店売上高
投資 1,393.9億円
貿易収支 -28,173億円
輸出
輸入
物価指数
利子率 -0.1%
株価 27,819.33円(8/10) 28,065.28円(9/8)
(第2金曜日の前営業日)
為替レート(中心) 135.2円 144.4円
原油価格 96ドル 89ドル
ドバイ、現物1バレル、ドル、10月渡し 11月渡
(第2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率
景気動向先行指数
一致指数
第3回目 2022年9月26日
3.4 モジリアーニ=ミラー理論
3.4.1 伝統的財務理論とM=M理論
3.4.2 金融市場におけるM=M理論
3.4.3 中小企業金融
3.4 モジリアーニ=ミラー理論
3.4.1 伝統的財務理論とM=M理論
貸借対照表勘定で、右側(貸方)の負債(他人資本)および純資産(自己資本)を企業総価値といい、他人資本比率または自己資本比率を資本構成という。伝統的財務理論とは、企業には、固有の資本構成があることを主張する。企業は、資本構成にしたがい、他人資本の債権者と自己資本の所有者である株主に対して、資本コストである利息と配当をそれぞれ毎期支払う。支払利息は確定しているが、配当は、当期の利潤から支払われるから、不確実であり確率変数である。
企業には、資本コストを最小にする資本構成があると主張するのが、伝統的財務理論である。同じリスク・クラスに属する企業では、期待収益は同じであるから、金融市場が効率的であれば、資本構成は、企業価値に影響をされないとするのが、モジリアーニ=ミラー理論(M=M理論)である。
伝統理論を紹介する。
企業総価値Vは負債Dおよび株式価値Sからなる。負債コストrは負債比率D/Vの増加関数r(D/V)である。自己資本コストρは負債比率D/Vの増加関数ρ(D/V)である。平均資本コストreは、両者の加重平均re=D r(D/V)+(1-D r(D/V))である。
V V
図3.5のように、負債比率が増加すると、平均資本コストreは、低下し、やがて、上昇するので、その底が、最適資本構成である。
モジリアーニ=ミラーは「負債コストの利子率は貸付資金市場および債券市場で決まり、負債比率に依存しない。自己資本コストの株式収益率は、株式市場で決まる。平均資本コストは、re=D r+(1-D )ρとなる。」と主張する。re V=rD+ρS 。
V
V
同じリスク・クラスに属する企業では、期待収益Xは同じであるから、X=rD+ρS 。ゆえに、re V=Xとなり、平均資本コストは、資本構成に依存しない。
3.4.2 金融市場におけるM=M理論
モジリアーニ=ミラーは、企業総価値は金融市場によって評価されるとして、企業が同じリスク・クラスにあり、期待収益が同じであれば、企業総価値は、資本構成に依存しない(命題Ⅰ)ことを理論的に証明した。企業が投資して、資金調達方法を、自己資金、借入金、社債および増資の形をとっても、同じ期待収益をあげるので、資本構成の変化に依存しない(命題Ⅲ)。
経営者の行動、投資家の行動を仮定し、金融市場、とくに、貸付資金市場、債券市場および株式市場は、完全競争を仮定している。テキストでは、命題I、命題Ⅱおよび命題Ⅲを取り上げている。証明は、命題I、命題Ⅱをのせている。論法は、
「2企業が同じリスク・クラスにあり、資産構成が異なるとする。期待収益が同じであれば、投資家の投資収益は同じである。資本構成の違いで、企業総価値の違いを仮定する。企業総価値の低い企業に、ポートフォリオ(混合投資)を組んで、株式市場おいて、高い企業総価値の企業の株式を売却し、低い企業の株式を購入する。裁定取引の結果は、企業総価値は同じになる。」
投資家が、価格形成の関与ができる株式市場を、同じリスク・クラスにたいして、裁定取引に使用している。この論法は、ブラック・ショールズのオプション理論(1973)においても、金融市場に同様な仮定と、2市場の資産のポートフォリを作成し、裁定取引の市場メカニズムをオプション価格形成に取り入れている。金融市場の価格形成は、所与としている。
株式市場価格理論の未発達について
金融市場の価格、債券価格、株式価格、それらの先物価格は、当時の経済学では、金融市場均衡の存在は証明できなかったためでもあるし、期待形成をもつ投資家が、株式市場において、株式を交換する理論はなかった。ただし、資産市場のマクロ一般均衡論は、トービンTobin(1969)に枠組みがある。
ヒックスHicks(1939)の著作に、『価値と資本』があるが、ミクロ一時一般均衡論であり、動学と資本蓄積は、課題となっている。ヒックスは、『景気循環論』(1950)、『資本と成長』(1965)、『資本と時間』によって、動学と資本蓄積の課題に答えている。フランスの一般均衡の存在を証明したドブリューDebreu(1954)は、資産市場の一般均衡には、立ち入らなかった。『価値の理論』は確立したが、「資本の理論」は、ふれなかった。フランスでは、マルクスの『資本論』やヒルファーディングの『金融資本論』の影響のせいで、株式市場の経済学的効能や意義は、社会主義政治勢力に支持されない。反面、株価の変動がBrown運動すると唱えたのは、フランス人バシャリエBachelier(1900)である。当時、Brown運動を理論的に定式化することが物理学上最先端の課題であった。
さて、私は、冷戦時代、オーストリア、西ドイツ、スペイン、イギリスには、長期間、滞在したが、パリに数日滞在しただけで、通過した。当時、フランスの政治は、社会主義者主導で、公務員がはばを利かし、金融界は国有銀行システムがあり、実業界は規模が小さい、米国や日本のように、株式会社が発展していない。『資本論』および『金融資本論』の影響で、ヨーロッパの経済学者にとって、ブルジョアジー階級の株式交換市場である資産市場の均衡論を研究する理論的重要性が低かったのだろう。政治が社会主義優位である場合、ブルジョアジー階級への課税強化、所得再分配、最低所得保障、年金制度、医療、教育負担軽減が政策優位となり、経済成長、産業の競争力を強化する政策は二の次になる傾向がある。中小企業や個人業に対して、行政としては、税制面で緩くはできるが、その産業の競争力を強化するための税金投入は、公平性の観点からできない。かくして、国や地方自治体で、政治が社会主義政党優位である場合、南イタリア、ギリシャ、フランス南欧のように、経済活動は旧態依然で、発展することはなく、国税を頼ることになる。日本でも、いわゆる旧革新自治体は、そういう傾向があった。その結果、社会主義政治の怖いところは、企業の本社流出、海外流出、それが経済地盤の劣化を招き、地方交付金に依存する赤字財政が慢性化し、地域格差を招き、若年人口流出がおきてしまうのである。
一方、大衆株主のいるアメリカは、株式交換市場は発展したが、経済学における「株式市場価格の理論」はないまま、株式市場価格を所与とした、デリバティブ商品開発が盛んになった。理論的に価格形成がよくわからない現在株式価格を所与として、投資信託やオプションの商品が生成されると、それらの商品も理論的に説明できないはずである。
リーマン・ショックのサブ・プライムの信用しかない住宅購入者に、証券を合成して,銀行信用で、発行したために、FRBが金利を戻したら、証券バブルははじけてしまった。日本のメガバンクで、この証券に手をだし、損失を出したのは1行だけだったと記憶する。
習氏が、香港資本の不動産会社に、つぶす気なのか、中国不動産業界を根治するすきになったのかは、不明であるが、国民を借金づけにして、強制貯蓄を吸い上げ、中国経済成長を続けるのは、人口減少の症状が出てきて、マルチ商法のようなことは、だれが考えても無理がある。
東京に本社が集中し、関西の企業すら、東京本社をもつようになり、大阪経済に地盤低下の末、歴史ある大阪証券取引所は、日本証券取引所に統合された。株式市場の経済学的効能や意義は、企業価値を公正価値にし、上場企業の財務諸表は公認会計士により、監査されているが、世界経済のグローバル化に伴い、各国別会計基準から、国際会計基準への収れんに向かい、各国別企業価値は国際公正価値に収れんすることになっている。
一般の日本人は、株式市場はリスクが大きく、すなわち、株価変動が大きいため、株式を買うより、資産の半分以上は、預金、保険で保有している。金やダイヤモンドの取引は、経済学的に需要と供給で価格が決まると理解できるが、「任天堂の株価がなぜ、(2019年10月4万円台、2020年9月5万円台)なのか、わけがわからん」と思う。人気投票のように、思っている人も多い。
本講8章8. 6先物価格の決定理論のように、将来予想を仮定する市場の現物・先物価格を同時決定する一般均衡理論では、株式の現物・先物均衡価格を決定できることは、わかっている。
現実問題として、株式市場だけでなく、債券市場を加えた、資産市場に拡大すると、現預金の管理をする日本銀行は、株式市場に介入する安倍ノミックス時代になり、債券、株式の買い手に回り、債券価格、株式価格形成をゆがめる事態を招いていた。日銀黒田総裁は、2022年4月に退任し、中央銀行が間接金融を越えて、直接金融の市場における有力な買い手になることは、漸次、終了するだろう。
日本銀行のマイナス金利政策により、日本国債は流動性を失い、日本の国債発行は、ゼロ近傍発行となり、強制的に、日本銀行が投資家から徴税するようになってきた。つまり預金と同じである。配当のある株式は、1~2年で限れば、国債より利回りがよい。米国をはじめヨーロッパ、アジア諸国では、マイナス金利政策はとらないから、日本の投資家は、国際分散投資をしている。企業も、手持ち資金は潤沢なので、間接金融から資金調達しなくなっている。
今年になって、岸田政権になり、日本銀行の金融政策は変更なかった。株式相場は、米国の株式市場に連動して、米国が利上げに踏み切り、金融緩和から引き締めに入ったことを反映して、日本株価もその分、下落した。バイデン政権になってから、米国のインフレーションが顕著になっていたが、ウクライナ戦争を契機に、世界インフレーションがひどくなった。世界の中央銀行は、国内インフレを抑制するため、金利を上げている。日本だけ、コロナ禍からの経済・社会活動の回復を優先し、金融緩和を続け、世界金利の上昇で、金利差が開き、2022年1月4日115.42円/ドルが、9月22日142.4円/ドルで、23%の減価の円安となった。
財務省の市場介入も効果はない。円高介入では、円買いの日本円は無制限に円玉があるが、円安介入では、日本の外貨準備高のドル玉が上限である。財務省の介入は効果がないどころか、輸入価格に外国インフレーションがかぶさっているので、ドル玉を放出していると、貿易収支の赤字のため外貨準備は、減少するから、介入は早晩できなくなる。米国が金利を上げた分の減価率が自動的に外国為替市場で上乗せされて、為替レートが決定される、明白な金利相場が続くだろう。
3.4.3 中小企業金融
日本では、金融市場は、銀行システムをもちいた間接金融が主流であったから、メインバンク制に象徴されるように、銀行が企業財務を支配した。また、日銀の低金利政策がつづくので、社債発行や増資による資金調達よりは、銀行融資の方が、資本コストが低かった。負債比率は50以上であった。しかし、大企業では、高度成長後、オイルショック後、米国との自動車・半導体摩擦で、円高もあり、海外進出せざるを得ず、資金調達を海外の金融市場で調達するようになった。その結果、大企業では、国内での資金調達は減少し、間接金融が縮小する。そして、貸付先を失い、40歳台団塊世代の住宅取得時代に入り、不動産バブルが発生し、過剰融資の末、バブルは破裂した。
その不良債権処理が1995年から、信用組合の取り付けに始まり、大手銀行の不良債権処理が終わるのは、2003年である。中小企業の不良債権処理が残され、中小企業の淘汰が始まる。リーマン・ショック後、民主党政権下、金融庁の政策で、一時、中小企業の不良債権処理が中断された。安倍政権となり、日銀が超金融緩和政策を取るので、倒産件数は減少し、中小企業の不良債権処理はうやむやになっている。中小企業にとっては、資金調達の方法は、間接金融に依存せざるをえない。その間、東北震災等、自然災害による中小企業の損失もあり、中小企業は、大企業と同じく、負債比率を50%以下に減少させてきている。中小企業がやむを得ず、手持ち資金を増やしているのは、災害倒産リスクのためであると言われてきた。
しかし、資金調達の方法も、多様化されてきている。その間、中小企業金融をテーマに、演習で学生を指導してきたが、クラウド・ファンディグなど、銀行を通さず、直接融資相手をインターネットで公募するIT金融が流行ってきたことにも注目するようになった。コロナ禍で、対面営業・会議から、画面に切り替わり、商談の決定・決済は、デジタルに認証に移行しつつある。この方向性は進化して行くだろう。通貨はデジタル通貨になる。
日銀が超金融緩和政策を取っても、政策効果が発揮できないのは、日本の伝統的銀行システムが、資金供給の役目をはたさなくなりつつあるからだろう。銀行が過剰準備金を日銀に残さないように、マイナス金利の発行税を徴収しても、実物経済にはさっぱり効果がない。大企業が設備投資しなければ、中小企業はなおさらしないから、資金調達の必要がない。銀行が借り手を探してもいないのであるから、銀行の採算が悪化するばかりである。政府が、消費税対策と称して、キャッシュ・レスを推奨しているが、キャッシュ・レス時代がくれば、現金の象徴たる日本銀行券は現金決済に必要がない。人々が銀行に預金をしなくなれば、銀行業は廃業である。
今週(2022年9月26日~9月30日)のイベントと市場への影響度
先週のイベントは、19日エリザベス女王の国葬がありました。20日、国連総会の一般討論演説が始まりました。国交省の2022年基準地価が公表されました。20日米連邦公開市場委員会が21日まで開かれ、0.75%利子率を上げました。21日日銀政策委・臨時金融政策決定会合が22日まで開かれました。金融緩和政策に変更はありません。財務省が、22日、日本単独で、為替市場介入をし、一時的に、145円から、140円に円高になり、23日ニューヨークで143円に戻しました。
今週のイベントは、27日安倍元首相の国葬があります。30日プーチン大統領の上下院議員向けの演説があり、27日までの東部・南部の住民投票結果から、併合を宣言する予定です。特別軍事作戦の司令官を次々に解任し、来年、プーチン氏だけが残り、作戦の成否最終責任を一人でとることになる。 責任の取り方としては、部下を道連れにせず、負ければ切腹で、部下に及ばず、侍のような、男らしい取り方になる。本人は分かっているのか定かではない。この作戦終了後、この御仁のせいで、ウクライナ国民だけでなく、半年で、全世界の人民に多大な損害を与えた額は、100兆ドル(1,400兆円)は超えるだろう。非同盟諸国も、中立的立場を取っているが、各国国民生活に損害は悲惨なものだ。それだけ迷惑を生活で負担して、彼が終了後、腹を切れば、新ロシア政府が返済してくれるわけがない。プーチンが想定した1週間で作戦終了なら、損害はなかったが、戦争にしてしまったので、非同盟諸国も、損害が発生している。国連加盟国の大半が、プーチン作戦の終結を決議して実行させるべき時が来ている。
経済統計は、次の発表がありました。
予想値 実現値
20 日日8月の全国消費者物価指数 2.8% 3.0%
日8月全国スーパー売上高前月比 ― 110,562,504万円(99.2%)
日8月の全国コンビニエンスストア売上高前年比 ― 982,042百万円(5.1%)
21日 アジア開発銀行ADBアジア経済見通し改訂
G20貿易相会合23日まで
22 日日日銀政策金利 -0.1% -0.1%
日8月の全国百貨店売上高前年比 ― 349,481,514千円(26.1%)
米FRB政策金利上限 3.25% 3.25%
下限 3.00% 3.00%
米経常収支 -2,575億USD -2,511億USD
経済統計は、次の発表がありました。
予想値 実現値
20 日日8月の全国消費者物価指数 2.8% 3.0%
日8月全国スーパー売上高 ―
日8月の全国コンビニエンスストア売上高 ―
21日 アジア開発銀行ADBアジア経済見通し改訂
G20貿易相会合23日まで
22 日日日銀政策金利 -0.1%
日8月の全国百貨店売上高 ―
米FRB政策金利上限 3.25%
下限 3.00%
米経常収支 -2,575億USD
経済統計は、次の発表があります。
27日
日本 8月 9月
GDP(前期比)
消費コンビニ売上高 982,042百万円
スーパー売上高 110,562,504万円
百貨店売上高 349,481,514千円
投資 1,393.9億円
貿易収支 -28,173億円
輸出
輸入
物価指数
利子率 -0.1%
株価 27,819.33円(8/10) 28,065.28円(9/8)
(第2金曜日の前営業日)
為替レート(中心) 135.2円 144.4円
原油価格 96ドル 89ドル
ドバイ、現物1バレル、ドル、10月渡し 11月渡
(第2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率
景気動向先行指数
一致指数
第4回目 2022年10月3日
要点 3.5 貨幣経済一般均衡論を適用した企業行動
4.金融機関の行動
4.1 わが国の金融機構と業務
4.2
金融機関への諸規制
3.5 貨幣経済一般均衡論を適用した企業行動
第2章に、貨幣経済一時的一般均衡論によって、3資産の現物・先物市場均衡問題を取り上げている。貨幣経済一時的一般均衡論によって、企業も現物・先物市場均衡を求めることができる。先物契約市場において、先物価格が市場で決定され、それが市場均衡した予想価格になる。先物市場理論は、不確実性下の経済を想定しているから、企業の投資決定も、先物価格が企業総価値を決定することになる。
企業のフロー・ストック最適化の枠組みは、
貨幣がある現行生産活動の最適化と先物契約の市場締結
先物市場価格で評価した企業総価値を最大化した投資決定
短期現金残高最適化、最適投資の資金調達、負債・資本の最適構成
となる。今回のノートでは、貨幣がある現行生産活動の最適化と先物契約の最適決定までを、例示した。
生産者の生産の決定を2期間モデルで考える.生産者は,第1期に貨幣で支払い準備できるが,第2期に,現金残高を,残さない.各期間の1消費財があり,x1,x2が生産量,労働量をl1,l2,資本量をk1,k2とする.生産者は投資しないから,k2 =k1とする.期間1の消費財価格をp1,期間2の生産者の主観的予想価格をp2とする.
生産者は、利潤π1=p1 x1+m0-(w1 l1+r1 k1)-m1,π2=p2 x2+m1-(w2 l2+r2 k1),2期間の効用関数をu =π1π2とする.初期貨幣残高をm0とする.期間2の貨幣残高をm 1とする(円表示である).第1期の生産制約式は,コブ・ダグラス型生産関数 x1=l1αk11-α ,第2期の生産制約式は、生産関数x2=l2αk11-αである.2期間の利潤最大化問題は次のようになる.
問題1 期間1の消費財価格p1,賃金率w1およびレンタル率r1,期間2の主観的予想価格p2,賃金率w2,レンタル率r2,期間1の貨幣残高m0を所与とし,2期間の生産関数x1=l1αk11-α ,x2=l2αk11-αのもとで,効用関数をu =π1π2を最大にする各期間の生産量x1,x2および貨幣残高m1を求めよ.
解 異時間効用関数u =π1 π2に生産関数を代入する.
u =π1π2={p1 x1+m0-(w1 l1+r1 k1)-m1}{p2 x2+m1-(w2 l2+r2 k1)}
={p1 l1αk11-α+m0-(w1 l1+r1 k1)-m1}{p2 l2αk11-α+m1-(w2 l2+r2 k1)}
変数l1,l2,m1について偏微分して,0とおく.
∂u=p1αl1α-1k11-α-w1=0,∂u=p2αl2α-1k11-α-w2=0,
∂l1 ∂l2
∂u=-2 m1-{p1 l1αk11-α+m0-(w1 l1+r1 k1)}{p2 l2αk11-α-(w2 l2+r2 k1)}=0
∂m1
l1*={w1/p1αk11-α}1-α,l2*={w2/p2αk11-α}1-α
m1*=(1/2){p1 l1*αk11-α+m0-(w1 l1*+r1 k1)}{p2 l2*αk11-α-(w2 l2*+r2 k1)}
x1*=l1*αk11-α ,x2=l2*αk11-α □
生産者が投資する場合,第1期の生産制約式は,生産関数 x1=l1αk11-α ,第2期の生産制約式は,生産関数x2=l2αk21-αである.2期間の利潤最大化問題は次のようになる.
問題2 期間1の消費財価格p1,賃金率w1およびレンタル率r1,期間2の主観的予想価格p2,賃金率w2,レンタル率r2,期間1の貨幣残高m0を所与とし,2期間の生産関数x1=l1αk11-α ,x2=l2αk21-αのもとで,効用関数をu =π1π2を最大にする各期間の生産量x1,x2,資本量k2および貨幣残高m1を求めよ.投資量IをI=k2*-k1と表す.
解 異時間効用関数u =π1 π2に生産関数を代入する.
u =π1π2={p1 x1+m1-(w1 l1+r1 k1)-m1}{p2 x2+m1-(w2 l2+r2 k2)}
={p1 l1αk11-α+m0-(w1 l1+r1 k1)-m1}{p2 l2αk21-α+m1-(w2 l2+r2 k2)}
変数l1,l2,k2,m1について偏微分して,0とおく.
∂u=p1αl1α-1k11-α-w1=0,∂u=p2αl2α-1k2α-1-w2=0,
∂l1 ∂l2
∂u=p2l2α(1-α) k2-α-r2=0,
∂k2
∂u=-2 m1-{p1 l1αk11-α+m0-(w1 l1+r1 k1)}{p2 l2αk21-α-(w2 l2+r2 k2)}=0.
∂m1
l1*={w1/p1αk11-α}1-α,l2*={w2/p2αk11-α}1-α,k2*={r2/p2l2α(1-α)} α,
m1*=(1/2){p1 l1*αk11-α+m0-(w1 l1*+r1 k1)}{p2 l2*αk2*1-α-(w2 l2*+r2 k2*)},
x1*=l1*αk11-α ,x2=l2*αk2*1-α.
ゆえに,投資量は
I=k2*-k1={r2/p2l2α(1-α)} α-k1. □
財・労働先物の最適化理論
現物市場における生産者の最適化
生産者の最適化問題は,次のように設定される.価格ベクトルp1と賦存量(m0,k0)を所与として,生産関数f1,f2のもとで,期待効用関数vを最大にする行動(x1*,l1*,m1*)および計画(x2*,l2*)を決定する.計画を効用関数u2に代入し,期待効用関数vを最大にする先物契約(cx2,cl2)を求める.ここでは,財の先物契約と労働の先物契約を決定する.投資はしないものとする.
第1段階の問題において,生産者は,利潤流列π1=p1 x1+m0-(w1 l1+r1 k1)-m1,π2=p2 (x2+cx2)+m1-{w2(l2+cl2)+r2 k1},2期間の効用関数をu =π1π2とする.初期貨幣残高をm0とする.期間2の貨幣残高をm 1とする.第1期の生産制約式は,生産関数 x1=l1αk11-α ,第2期の生産制約式は、生産関数x2=l2αk11-αである.
期間1の現物取引と期間2の先物契約(cx2,cl2)を仮定した場合の取引最適化をする.
問題3 期間1の消費財価格p1,賃金率w1およびレンタル率r1,期間2の主観的予想価格p2,賃金率w2,レンタル率r2,期間1の貨幣残高m0,先物契約(cx2,cl2)を所与とし,2期間の生産関数x1=l1αk11-α ,x2+cx2=(l2+cl2)αk11-αのもとで,効用関数をu =π1π2を最大にする各期間の生産量x1,x2,l1,l2および貨幣残高m1を求めよ.
解 異時間効用関数u =π1 π2に生産関数を代入する.
u =π1π2={p1 x1+m0-(w1 l1+r1 k1)-m1}{p2 (x2+cx2)+m1-{w2(l2+cl2)+r2 k1}}
={p1 l1αk11-α+m0-(w1 l1+r1 k1)-m1}[p2 (l2+cl2)αk11-α+m1-{w2(l2+cl2)+r2 k1}]
変数l1,l2,m1について偏微分して,0とおく.
∂u={p1αl1α-1k11-α-w1}{p2(l2+cl2)αk11-α+m1-{w2(l2+cl2)+r2 k1}}=0,
∂l1
∂u={p2α(l2+cl2)α-1k11-α-w2}{p1 x1+m0-(w1 l1+r1 k1)-m1}=0,
∂l2
∂u=-2 m1+{p1 l1αk11-α+m0-(w1 l1+r1 k1)}-[p2{(l2+cl2)αk11-α+cx2}
∂m1 -{w2(l2+cl2)+r2 k1}]=0
l1*={w1/p1αk11-α}1-α,l2*={w2/p2αk11-α}1-α-cl2
m1*=(1/2)[{p1 l1*αk11-α+m0-(w1 l1*+r1 k1)}-{p2{(l2*+cl2)αk11-α+cx2}-{w2(l2*+cl2)+r2 k1}].
x1*=l1*αk11-α ,x2*=(l2*+cl2)αk11-α-cx2 □
先物市場における生産者の最適化
先物市場では,自己清算取引戦略(qx2,q l2)・(cx2, cl2)=0が予算制約式となる.これにより,自己清算取引戦略であれば,いかなる契約価格q=(qx2,ql2)であっても,利潤π2=p2(x2+cx2)+m1*-{w2(l2+cl2)+r2 k1}はヘッジされる.
期待効用関数vに,x2*(p2 , cx2, cl2) ,l2*(p2 , cx2, cl2)を代入し,v=u1 (x1*,l1*) +∫π2*( x2* , l2*) dψ(q)をえる.π2*(x2*,l2*)=p2(x2*+cx2)+m1*-{w2(l2*+cl2)+r2 k1}=p2(l2*+cl2)αk11-α+m1*-{w2(l2*+cl2)+r2 k1}=p2{w2/p2αk11-α}αk11-α+m1*-{w2(w2/p2αk11-α)1-α+r2 k1}.
問題 4
q≫0のもとで
max ∫π2*(x2*,l2*) d ψ(q),subject to q・c=0.
{ cl2}
解 L=∫π2*( x2*,l2*) d ψ(q)-λq・cとおく.
∂∫π2*d ψ(q)=λqx2,∂∫π2*d ψ(q)=λql2,q・c=0.
∂cx2 ∂cl2
解をcb2*,ck2*,λ*とおく. □
4.金融機関の行動
4.1 わが国の金融機構と業務
わが国の金融機構と業務について、一覧表にしている。これは、預金取扱機関、すなわち、銀行を中心として、分類し、主な資金調達業務、資金運用業務および資金仲介業務を番号順に、取り上げている。表にある金融機構の形態は、(『<新版>わが国の金融制度』日本銀行金融研究所、1986年)にしたがったものである。1986年以来、金融制度史は変遷をし、バブル、金融再編があったことは、末尾の「日本金融制度史」第7期に記録している。明治以来、日本の金融制度が大きく変動する契機は、戦争が多い。西南戦争、日清戦争、日露戦争、第1次世界大戦、第2次世界大戦である。1986年まで、戦後の預金取扱機関中心の金融機構は、大蔵省、日本銀行も通貨の供給、金融の調節が円滑に機能していたと評価されている。
しかし、土地神話にもとづく、土地担保価値上昇率トレンドと都市土地価格の上昇率にかい離が生じ、バブルが発生、崩壊した。その結果、2003年まで、間接金融機構は、中小金融機関の統合が進み、大手都市銀行も3行に統合された。金融行政の流れでは、合併・吸収、資本金増強、大口規制など、これまでの日本金融史上激変期にとられた手法である。
その間、1997年日本銀行法が改正された。1882年日本銀行条例、1942年日本銀行法公布、1949年日本銀行法一部改正(政策委員会設置)に次ぐ大改正であり、人生50年ではないが、金融行政においても、日本銀行という金融根幹制度も50年周期で、制度改正する必要があると、どこかに記述してあったと思う。金融制度は、与信期間が10年単位であり、制度の見直しは、10年周期で実情に合わせる必要がある。国の行政制度も同様の省庁再編50年、省庁管轄の諸制度は10年以上経過すると提供する行政サービスが実情に合わなくなって、予算不足、予算の余剰がはなはだしくなっているはずである。金融行政では、通貨の供給、金融の調整が制度由来の目詰まりになると、信用崩壊になるので、定期的に、見直ししている。
従来、日本銀行役員会が、企業で言う取締役会に相当し、GHQにより設置された政策委員会は、金融政策を発案、実施できるのであるが、実質、大蔵省で金融政策を主導され、役員会で実行案になおし、実施されていて、政策委員会は、有名無実であったといわれている。政策委員会制度の取扱いは、小中学校のホームルームみたいなアメリカお仕着せ学級自治であったと、学生には、話していたが。日本銀行に議事録は存在するのか、さだかではない。1997年以前は、金融政策の実施について、立案の経過が公表されないので、外部の専門家は、事後的な推測しかできない。日本金融学会では、金融政策の決定過程が公表されないとこぼすコメントもあった。また、外部の専門家の指摘は、反映されることはない。たとえば、バブル前後の金融政策は、大蔵省、日本銀行に、バブルの認知が遅く、銀行の不動産担保貸し出しに異常事態が見られたはずだし、最悪な事態では、地上げ屋が、住民をド―ベルマンで、追い払うテレビレポートもあった。山口県に住んでいた私の父が珍しく、「地上げに、暴力団が活動している。」と私に注意した。私は、普段は、経済活動には、注意を払うのが仕事であるが、新婚で、住宅は購入する気がなかったので、関心が薄れていた。東京の地価は、土地ころがしで、2年間で2倍以上になった。
大蔵省は地価税を課税し、日本銀行は、金融引き締めで、公定歩合の2倍以上引き上げした。これでは、すぐさま銀行の貸し出し余力は失われて、「夢の住宅街」「夢のリゾート」実家近くの「ゴルフ場建設計画」は中断される。当時、私は、親類の兄に勧められ、ゴルフを練習しようかと思っていた。実際、1988年のゼミ旅行は白浜で、ゴルフ部の学生とテニスとミニチュア・ゴルフをした。夜は、学生を連れて、ヌードスタジオにホテルのバスでいったら、踊り子にこすりつけられるし、相当、快楽に流されていた時代だった。当方も、バブッて、いたかもしれない。
現行の日本銀行法は、政策委員会が、政府から独立して金融政策を立案、実施し、国会、金融業界、国民に対して、金融政策の実施説明責任を果たしているし、議事録の公表もある。
4.2 金融機関への諸規制
金融機関は、株式会社、信用金庫、相互会社、信用組合等の組織形態と目的、業務、監督官庁との係わりを個別に定めている。例えば、銀行は株式会社であるから、会社法にしたがうが、銀行法にしたがう。証券会社は株式会社であるが、金融商品取引法にしたがう。株式会社は、会社法により、その目的を定款で定められるが、株式会社である銀行は、銀行法によって目的が定められている。
金融機関は、各業法によって、縦割りの組織が、監督機関である金融庁に、ぶら下がっている。ただし、日本銀行は、財務省に監督されている。
戦後、GHQは軍を廃止、財閥に戦争責任を取らせる形で、財閥解体をした。しかし、金融業界の財閥解体はしなかった。旧日本銀行法もナチスのライヒスバンクが法源なのだが、現代文調の政策委員会を追加するだけで、漢文調カタカナ混じりの法律だった。金融は米国でもユダヤ人が強いし、ライヒスバンクをまねていることは、米国の専門家は認識していただろう。GHQは、法文としては問題ないとしたのか、それが、1997年改正まで続いた。
法規制では、金融業界は、縦割りであるが、金融業界も財閥系、新興企業系および銀行系に分かれ、金融業界は系列企業をしたがえていて、系列融資が行われていた。地方金融機関は、戦間期の銀行合同で、1件1行主義により、軍から強制合併させられた。県外に、支店はなかなか認可がおりないので、県内の企業は各府県の地方銀行1行と取引するしかない。
バブル後の金融再編は、信用組合、信用金庫の破たんが始まり、1997年山一證券の自主廃業、1998年北海道拓殖銀行破たんに連鎖し、終わると、都市銀行は13行から、3行に、中小金融機関の456信用金庫、448信用組合が現在、それぞれ、257金庫、146組合に合併・吸収されている。
3メガバンクに、今も系列融資は存在するのか、メインバンク制自体も風化しているので、系列企業は、間接金融より、直接金融、海外資金調達の選択肢中から、資本コストの低い方を選択していると思われる。
保険会社および証券会社も財閥系を主要な取引相手とする場合がある。その商品開発も運用も、取引相手の企業を組み入れる場合がある。外国の証券会社は、そのような考慮はないから、たとえば、投資信託であれば、自由に選択しているので、運用成績がよい。
金融行政は、大蔵省銀行局から金融庁になって、銀行の業務のユニバーサル化がみられ、金融持ち株会社も認められる。ユニバーサル銀行経営が、うまくいっているのか、疑問だが。ユニバーサル銀行は、多角化しても、それに伴う商品開発ができる人材はいないし、専業の保険会社および証券会社から、商品を仕入れて、小売りしているだけであろう。日本銀行の超金融緩和は、現在も続いているが、ゼロ金利政策のため、預金取扱金融機関は、貸し出しが減少し、地方金融機関から、じわじわと経営が圧迫されてきている。その分、信用収縮し、地方経済も収縮している。ゼロ金利政策を撤廃する時期が遅ければ、支店の廃止が進み、ネット・バンキングに、顧客は頼らざるを得なくなる。
今週(2022年10月3日~10月7日)のイベントと市場への影響度
先週のイベントは、27日安倍元首相の国葬がありました。30日プーチン大統領はモスクワで演説をし、東部・南部4州の住民投票結果から、併合を宣言しました。毎回演説後、敗退し、今回は、10月1日発表、ルガンスク州リマンロシア軍撤退で、ロシア軍の残した車両に、犬が「縄張りマーキング」をする写真がありました。次の11月7日革命記念日まで、30万人の兵力と軍装備補充が間に合わず、ルガンスク州が奪還される結果になりそうです。ますます、プーチンは追い込まれる。
他方、韓国の武器30億ドル分を米国が買い上げ、チェコ経由で、ウクライナに支援する計画が進んでいるそうです。韓国の戦車、戦闘機のポーランド輸出につづき、韓国の防衛産業がウクライナ戦争で存在感を増しています。
日本は、台湾危機対応で、米国次第で台中戦争に巻き込まれます。米国の予想では、中国軍の奇襲攻撃はなく、空母3隻体制が整う2025年が危ない。米国大統領はそのとき、バイデン大統領と交代しているでしょうが、次期大統領次第で、リスクは増幅します。日本は、2025年台中戦争勃発で、否応なく、巻き込まれます。台中戦時下、台湾と中国に対する日本経済社会・国民生活の対応を、来年から、議論を深める必要があります。政府・地方自治体・経済社会団体は、中国軍の攻撃による国内避難対策、中国進出各関係機関の避難計画、台湾住民の避難計画を共有することになるでしょう。事態発生後、ウクライナ戦争の国内住民対応、海外避難住民対応、今回、部分的動員令によるロシア避難民対応が大いに参考になる。東京では、すでに、官民で、核シェルターを建設しようという話があります。なかなか、御時勢に敏感な御仁も、東京にはおられます。小学生の頃、戦時中の防空壕を下関、福岡市で探検したことがありますが、崩落するので危ないと、しかられた。
日本の防衛産業が、一部、政府直轄事業とし、来年度から、ドローン、ミサイル、弾薬、輸送車両・船舶等軍装備の備蓄をする計画だということです。台湾に供給することも、これまで、朝鮮戦争、ベトナム戦争で、米軍発注の軍装備を買い上げられましたが、台湾への供給も視野にあるようです。
3日臨時国会が召集され、岸田首相が所信表明演説をします。5日OPECプラスの閣僚会議があり、世界経済の後退で、ガス以外は減産が議論されそうです。ノルドストリームのガス管が攻撃され、ガス管からガスが漏れています。漏れるガスは、ロシアガスプロムの損失だが、元栓は止めない。EUは12月まで、ロシア産ガス供給停止でも、冬季は乗り切れる手当てを計画通り進捗していると思う。プーチンが演説ごとに、敗戦が顕著になり、やけくそで、ガスを止めてくる前触れのような気がする。ナポレオン・ナチスは、ウクライナ地域の冬に敗退したことを言う人がいる。ウクライナ限定の戦いであり、冬と土地の特性をしらないロシア軍と地元とでは、地元に住み、道路を作ったウクライナ人の方が圧倒的に有利だから、動員兵で来るなら、冬季戦も勝利するのは当然である。
今週のイベントは、3日から、ノーベル生理学・医学賞、物理学賞、化学賞、文学賞、平和賞、経済学賞の発表が、10日まで、順に発表があります。
経済統計は、次の発表がありました。
予想値 実現値
28 日日9月の月例経済報告
景気先行指数 ― 98.9
景気一致指数 ― 100.1
29 日米4~7月期GDP確定値 -0.6% -0.6%
30 日日8月の有効求人倍率 1.30倍 1.32倍
完全失業率 2.5% 2.5%
米8月の個人所得前月比 0.4% 0.3%
個人消費支出前月比 0.2% 0.4%
経済統計は、次の発表があります。
予想値 実現値
3 日 日9月短観 大企業設備投資 18.8%
製造業先行き 11
業況判断 11
非製造業先行き 14
業況判断 13
日本 8月 9月
GDP(前期比)
消費コンビニ売上高 982,042百万円
スーパー売上高 110,562,504万円
百貨店売上高 349,481,514千円
投資
輸出
輸入
物価指数
利子率 ―0.1%
株価
(第2金曜日の前営業日)
為替レート(中心)
原油価格
ドバイ、現物1バレル、ドル、11月渡し 12月渡
(第2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率 2.5%
景気動向先行指数 98.9
一致指数 100.1
第5回目 2022年10月10日
要点 コラム 金融史
4.5 市場のルールに基づく市場均衡
4.5.1
完全競争市場のルール
4.5.2
完全競争市場条件の変更
4.6 金融取引における情報
4.7 貨幣経済一般均衡論を適用した銀行行動
コラム 日本金融史
明治維新以前は、日本の金融機関は、関東と関西で金本位制と銀本位制を取っていたため、両地域で両替商が存在し、庶民金融の頼母子講(無尽)、町内のいわゆる10日で1割の高利貸しがあり、各藩内では藩札が流通していた。頼母子講は、中国・韓国でもある。横浜の南京街商店主間でもある。あの忠臣蔵で有名な浅野家の断絶では、藩の財務担当重役は、塩の専売を藩の財政にしていて、藩札・信用が藩外に流通していたため、藩の債権債務処理に、苦労したようだ。敵討ちも、大石ら藩士に清算した軍資金があればこそ、本懐を果たせたのである。塩製造販売事業で、もうけているのに、吉良に、その塩田技術を教えないから、いやがらせを受けたのである。浅野藩を意図的につぶされ、藩士を路頭に迷わされて、藩が攻撃されたと同じことだ。大石でなくとも、浅野藩の組織力では、完全に吉良はとれる相手だった。ここは、幕藩体制を揺るがす大問題にして、いつでもとれる爺さんを泳がしていたのである。浅野家取り潰しの裁断はゆるがず、吉良をとった。
浅野家の経営していた塩田技法は、取り潰し以後、各藩で塩田適地では、広がった。笹野家の周辺各藩との取引は、塩と引き換えに、塩を煮詰める芝・松薪を帰り舟で運び、差額を貸し借りしていた。江戸時代に、藩間経済循環が形成されたことを金融史的に考察する論文はある。藩札は藩内で流通するが、赤穂藩は、当時の保存添加物である塩は、塩蔵食品、牛馬の飼料添加物であるから、比較的大量生産できた赤穂の塩は、各藩で需要が高かった。藩間の物々交換の例は少なく、米が決済商品であり、大阪の蔵屋敷に、余剰の米・藩特産品を送り、商人を仲介者として、海路・陸路で、交換品を持ち帰っていた。塩は砂糖と同様に、くさらず、長期保存ができる商品であり、価値が安定していた。赤穂の塩田は、瀬戸内海の花崗岩を産出する地域の砂は、石英質であり、温暖かつ日照時間がながいため、その技法は各藩に伝播した。私は、防府市の塩田が実際に稼働しているとき、塩田に入ったことがある。生産現場で働いている労働者を見るのが、好きになったのはそのせいかもしれない。
大阪の北摂地域の明治以来の金融史を教えたことがある。最初は、神戸灘の銀行が、酒米である山田錦を買い付け代金と次年度の栽培貸付を農地担保でしたのがはじまりで、茨木市の安威郵便局が、唯一の庶民貯蓄銀行であった。1890年から、金融恐慌があり、銀行が破たんする。後は、欧米と同じように、大戦後、軍需が落ち、企業が倒産、貸付金が焦げ付けるで、銀行破たんが起きた。その屑債権を買って、その銀行の本店・支店を吸収するから、支店網は充実していった。政府は、太平洋戦争後に生じるであろう、反動恐慌を怖れたのか、戦間期に、銀行合同政策を取る。
敗戦後、台湾銀行、朝鮮銀行、満州中央銀行の行員を、長期信用銀行に吸収し、中小企業対策の信用金庫、信用組合を設立させた。戦後の金融システムの系譜は、戦中間に基盤が形成され、支店銀行業(Branch Banking)であり、米国のように、1本店銀行業(Unit Bankinng)ではない。米国では、戦後の対外戦争が終結すると、銀行不況が発生、そのたびに、1本店銀行業の破たんが多かった。たとえば、第1次湾岸戦争後、イラク戦争後のリーマン・ショックがその例である。
戦後、各業界で系統銀行が形成されたのも、特色の一つである。たとえば、農林水産業において、農林中央金庫を各協同組合の中央銀行として、系統内外の預金・融資、政府の補助金、政府の農産物の価格調整金等の取扱いをしていて、協同組合の本支所が内外業務を担当している。
4.5 市場のルールに基づく市場均衡
4.5.1 完全競争市場のルール
完全競争市場下における銀行行動は、4.5.1において、銀行の利潤最大化で求めている。銀行にとって、利潤は、収益マイナス費用である。フローである収益は、手形割引料、取引手数料および保有する債権からの収益からなる。費用は、経費、労務費および債務である預金利息からなる。
バランス・シート制約式は、準備預金制度から強制される。貸付債権のリスク管理は、貸倒引当金であり、5段階に分類される。貸付債権は、正常、利息延滞、元金返済延滞、破産懸念、破産であり、3%、20%、50%、80%、100%を引き当てると仮定する。
融資後の債務履行はコベナンツ条件といわれ、既存貸付債権の契約に適用され、銀行にはモニタリングコスト(監視費用)が掛かる。時間通じて、リスク管理により、5段階のランクが変わるので、引当金も変化する。
銀行の投資は、新規貸付債権と新規国債購入である。前者は、審査により、リスク管理で評価される。貸付先の情報提供により、①期間返済可能、②貸付利子率と債券利回り(リスク・アプローチ)、③余力=預金+返済金+償還金(バランス・シート制約式)から、融資実行可能か判定する。
銀行は、市場、自己制約条件を与件とし、収益の割引将来価値を最大化する投資を決定する。
以上を定式化すると、次のようになる。
完全競争下の銀行モデルで、企業の貸付資金需要と銀行の貸付資金供給の均衡で、貸付利子率が決定されることを示す。
銀行のバランス・シートの制約式
R+L+B=D+εL+E 4.12
債券投資:B,還流率:ε、派生預金:εL
法定準備預金の条件式
R=α(D+εL) 4.13
法定準備率:α
貸付量Lの収益P (L)は手数料および利息収入である。債券投資B0はB0=(1-α)D+(ε-αε-1)L+E、債券利子率rbとする。投資Lの増大とともに貸倒引当金が増大するから、P (L)は、貸付量の増大に逓減する。経常費用Cは預金利息と固定費用である。
C=rd(D+εL)+C0,預金利子率:rd,固定費用:C0。
利潤は、収益から経常費用を差し引いたものである。
利潤関数 π =P(L)+rbB0-C
=P(L)+rb{(1-α)D+(ε-αε-1)L+E}-{rd(D+εL)+C0 }
銀行の利潤最大化
銀行の利潤最大化は、π=P(L) +rbB0-CをL,Dで偏微分し、0とおく。
∂π =PL+rb(ε-αε-1)- rd ε=0、
∂L
すなわち、 PL = rb(αε-ε+1)+rd ε 4.14
∂π =(1- α) rb-rd=0、すなわち、(1- α) rb=rd 4.15
∂D
PL =rb(αε-ε+1)+ε(1- α) rb=rb
限界収益=限界費用 となる。
2) 独占的競争下における差別金利の決定
財の独占企業の理論を、完全競争下の銀行行動に適用する。独占競争下にある銀行は、大企業の優遇貸付利子率(プライム・レート)rBと中小企業の貸付利子率rM(サブ・プライム・レート)の差別利子率をつける。
大企業の資金需要をDBで表し、中小企業の資金需要をDMで表す。簡単化のため、それぞれの需要曲線は直線で、r=aBDB+bB、r=aMDM+bMとする。大企業の需要の利子率弾力性はεB、中小企業需要の利子率弾力性はεMとする。εB>εMである。銀行の総費用Cは、
C=rdD+C0、預金利子率:rd、固定費用:C0と表す。
銀行の収益Rは、R=rLB+rLM+F0、大企業向け貸出利子率:rB,中小企業向け貸出利子率:rMで表す。
銀行の利潤はπ=R-C=rLB+rLM+F0-Cである。限界費用は,両市場共通で一定であるとする。
独占理論から、利潤関数を貸出量で偏微分すると,
∂π=r(1- 1 )-MC=0、∂π=r(1- 1 )-MC=0 。
∂LB εB ∂LM εM
それぞれの限界収益が限界費用に等しい貸出量において、需要曲線上の プライム・レートrB*=rd/(1- 1/εB )とサブ・プライム・レートrM*=rd/(1- 1/εM )が2つの市場で決まる。εB>εMと仮定しているから、rM*>rB*である。
4.6 金融取引における情報
日本の間接金融市場のように、借り手が弱く、貸し手の要求する情報提供をする貸付資金市場は、米国のそれではない。米国の中小企業の起業率は、日本より高く、逆に、倒産率も高い。米国銀行にとって、貸し倒れリスクが高い。その原因は、企業側の情報提供が銀行を説得するほどでもないためであろう。銀行の規模も小さく支店網はない。
銀行行動の理論は、従来、ヨーロッパ留学だった流れが、戦勝国米国に変更された。金融論は、エール大学に留学した学生が、ト―ビンの理論を日本の現実に適用したのが、教科書で取り上げられていた。それが、都市銀行と地方銀行のコール市場で、それぞれの利潤最大となる最適貸出が決まるという理論で、本論に紹介している。日本では、金利水準は、大蔵省が決定しているのであって、日本銀行の政策委員会は決定を承認しているにすぎなかった。したがって、自由金利市場は、インターバンク市場しかなかった。
現在では、企業が投資する場合、借入金は2期間以上で返済する。銀行は返済可能性を審査して、条件をみたせば、貸出すが、利息と元金は2期以上で回収される。企業の債権は、債券と性質がよく似ている。そうすると銀行は、過去の債権の元利金と1期間の割引料、手数料で通常の利益を上げていることになる。この債権を貸付資金市場において、標準化すると、2期間以上の貸付利子率が決まる。
当然、2期以降の不確実性は、両者にあるので、不確実性下の期待利潤最大化になる。しかし、金融論の貸付資金市場は、資金需要者は、確実性下のもとで、現在、必要な財・サービスに支出をするために、資金を借りる。銀行側から見れば、資金需要曲線は、確実性下にあるとみる。合理的期待論のMuthも、企業の需要曲線は確実性下にある。財の供給は第2期の予想価格に依存するので、不確実性下である。不確実性下、米国発祥のミクロ市場理論は、この設定で、学会にコンセンサスあるようだ。
資金供給者は、担保をとり、その企業の貸出極度額を決め、不確実性下の2期以降の借り手の返済能力を精査して、期待利潤を最大化する設定が多い。すなわち、資金需要者は、右下がりの直線を仮定するのは、独占競争理論も逆選択理論も同じである。テキスト図4.7のように,銀行の供給曲線が、高金利になると供給量が減少する、つの字型になる。つまり、高金利で借りる需要者の返済リスクに対する貸倒引当金が増加するので、銀行の貸出余力が減少する。また、高金利では、リスクの高いプロジェクトをもつ企業ばかりになるので、逆選択が発生する。
情報の経済学で取り上げられる事象は、非常にリスクのある借り手を問題にしているので、日本の銀行優位の貸付市場では、相手にされないだろう。消費者金融市場や、スコアリングの統計手法を使った、顧客情報の評点化によって、貸出するネットローンでは、そのような顧客もいるであろう。実際、日本の消費者金融業者が、スコアリングの統計手法を実務で利用している事例はないだろう。
本論で、金融理論における情報の取扱いをまとめた。ITを使った金融手法は、仮想空間で決済口座が当座預金口座にあたり、電子商取引が発生すると、その口座を通じて決済する。人的な記帳の流れが全くない。記帳は、個人のスマホ口座と銀行にある双方の口座になる。融資の審査も、IT化されると、銀行に店舗は必要なくなる。金融機関にとって、情報管理と情報加工技術が、営業になるような時代になりつつある。
4.7 貨幣経済一般均衡論を適用した銀行行動
第2章に、貨幣経済一時的一般均衡論によって、3資産の現物・先物市場均衡問題を取り上げている。貨幣経済一時的一般均衡論によって、銀行行動を最適化し、現物・先物市場均衡を求めることができる。金融先物契約市場において、先物利子率が市場で決定され、それが市場均衡した予想利子率になる。先物市場理論は、不確実性下の経済を想定しているから、銀行の営業資金の金融投資決定も、先物利子率が企業総価値を決定することになる。
銀行のフロー・ストック最適化の枠組みは、
貨幣がある預託与信活動の最適化と先物契約の市場締結
先物市場利子率で評価した総価値を最大化した金融投資決定
短期預託与信最適化
金融投資の間接・直接証券の最適配分となる。
ノートでは、貨幣がある預託与信活動の最適化と先物契約の最適決定までを、例示する。
銀行の経常業務と金融投資業務の決定を2期間モデルで考える.銀行は,預金D1を引き受け,中央銀行に準備率αかけたαD1を無利息で準備預金する.短期与信で,持ち込まれた残存期間1ヵ月の企業手形btを割引率rcで割り引く.割引料はΣt=112btr30/365とする.前期の貸付金L-1から,貸付利息および元本(1-rl-1)L-1,国債の利息rbB-1を受け取る.前期預金に対して,預金利子率rdで、利息を支払う.今期の預金D1は,預金利息を払った預金の引き出しと新規の預金を合わせたものである.労働量をl1,資本量をk1とする.以上を,年間の経常業務とする.
預金の残り(1-α)D1と返済金L-1を投資資金余力とし,次期の金融投資を1年満期貸付金L1を生成し、余力の残りを国債ΔB1購入する.これを投資金融業務ということにする.
銀行の利潤π1は,π1=rl-1L-1+rbB-1+Σt=112btrc30/365-(w1 l1+r1 k1)-rdD-1と表す.
期間1の効用関数をu =π1とする.第1期の生産制約式は,産出を企業流動債務b1=Σt=112btr30/365とおく.コブ・ダグラス型生産関数b1=l1αk1βD11-α-βを仮定する.
期間1の利潤最大化問題は次のようになる.
問題4.1 期間1の割引率rc,預金利子率rd,賃金率w1およびレンタル率r1を所与とし,生産関数b1=l1αk1βD11-α-βのもとで,効用関数をu =π1を最大にする割引量b1,労働量l1を求めよ.
解 異時間効用関数u =π1に生産関数を代入する.
u =π1=rl-1L-1+rbB-1+rc b1-(w1 l1+r1 k1)-rdD-1
=rl-1L-1+rbB-1+rc l1αk1βD11-α-β-(w1 l1+r1 k1)-rdD-1
変数l1について偏微分して,0とおく.
∂u=αrc l1α-1k1βD11-α-β-w1=0,
∂l1
l1*={w1/αrc k1βD11-α-β}1-α,
b1*=l1*αk1βD11-α-β . □
企業行動と同様に、銀行の経常業務において、問題4.
1の設定から、次に、企業債務・労働先物を最適化することができる。さらに、投資金融業務における貸付債権の生成と残りの余力を債券投資する、バランス・シート制約下で、次期以降の純資産(Net Worth)を最大化する銀行行動は、次回考察する。
今週(2022年10月10日~10月15日)のイベントと市場への影響度
先週のイベントは、3日臨時国会が召集され、岸田首相が所信表明演説をしました。5日OPECプラスの閣僚会議があり、世界経済の後退で、原油は200万バレル減産が決まりました。欧米はこの決定に失望している。バイデン大統領は、秋から、中間選挙対策で、国際面で目立たなくなった。バイデン大統領は高齢で、トランプ氏とともに、コロナ感染している。コロナウイルスは新型で、対内に入ると血流に乗って、繁殖しやすいところは、どこでも、動き、インフルエンザのように、ワクチンで繁殖部位が制御されていないから、高齢者の静態的部位にとりつき、増殖するようだ。トランプ氏、バイデン氏、そして、岸田氏は感染したが、覇気を失った。支持率が下がっている。政治は国民の理性(ふところ)と感情、直情(生活実感)に、主張を訴えるものだ。安倍国葬を決定した岸田氏だが、コロナに覇気を盗られたようで、おとなしくなった。EUも各国政治が動いて、対ウクライナ戦争より、国内政策を重視する傾向がある。イタリアは、女性首相だが、プーチンタイプではなく、工作はなかった。英国は、新首相の減税は、失政だと言われている。インフレ下で、経済が復旧しないようだ。3日から、ノーベル生理学・医学賞、物理学賞、化学賞、文学賞、平和賞が、順に発表されました。
今週のイベントは、9日中国共産党中央委員会第7回全体会議が開かれます。11日IMF世界経済見通しが発表されます。
経済統計は、次の発表がありました。
予想値 実現値
3 日 日9月短観 大企業設備投資 18.8% 21.5%
製造業先行き 11 9
業況判断 11 8
非製造業先行き 14 11
業況判断 13 14
5日 米8月貿易収支 -679億ドル -674億ドル
7日 日全世帯家計調査 7.2% 5.1%
景気一致指数 101.7
景気先行指数 100.9
勤労統計調査月間現金給与額(前年比) 279,388円(1.7%)
実労働時間数(前年比) 132.5時間(2.2%)
米失業率 3.7% 3.5%
経済統計は、次の発表があります。
予想値
11日 日8月国際収支 -23,905億円
9月景気ウオチャー調査 ―
12日 日8月機械受注統計 12.4%
9月工作機械受注額
13日 米9月消費者物価指数 8.1%
14日 中9月貿易統計 ―
消費者物価指数 2.8%
米9月小売上高(前月比) 0.2%
日本 8月 9月
GDP(前期比)
消費コンビニ売上高 982,042百万円
スーパー売上高 110,562,504万円
百貨店売上高 349,481,514千円
投資
輸出
輸入
物価指数
利子率 ―0.1%
株価
(第2金曜日の前営業日)
為替レート(中心)
原油価格
ドバイ、現物1バレル、ドル、11月渡し 12月渡
(第2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率 2.5%
景気動向先行指数 98.9 101.7
一致指数 100.1 100.9
第6回目 2022年10月17日
要点
債権・労働先物の最適化理論
5章 日本銀行と金融政策
5.3 金融政策の枠組み
5.4 金融政策の運営
債権・労働先物の最適化理論
現物市場における銀行の最適化
銀行の最適化問題は,次のように設定される.価格ベクトル(rb,rc,w1,r1)と賦存量(k1,D1)を所与として,生産関数f1,f2のもとで,期待効用関数vを最大にする行動(b1*,l1*)および計画(b2*,l2*)を決定する.計画を効用関数u2に代入し,期待効用関数vを最大にする先物契約(cb2,cl2)を求める.ここでは,財の先物契約と労働の先物契約を決定する.投資はしないものとする.
期間1において,銀行の利潤π1は,π1=rl-1L-1+rbB-1+Σt=112btrc30/365-(w1 l1+r1 k1)-rdD1と表す.コブ・ダグラス型生産関数b1=l1αk1βD11-α-βを仮定する.期間2において,銀行の利潤π2は,π2=rlL1+rbB1+rc (b2+cb2)-{w2 (l2+cl2)+r2 k1}-rdD1と表す.コブ・ダグラス型生産関数b2=l2αk1βD11-α-βを仮定する.
期間1の効用関数をu =π1とする.第1期の生産制約式は,産出を企業流動債務b1=Σt=112btr30/365とおく.コブ・ダグラス型生産関数b1=l1αk1βD11-α-βを仮定する.期間1の利潤最大化問題は次のようになる.
問題4.1 期間1の割引率rc,預金利子率rd,賃金率w1およびレンタル率r1を所与とし,生産関数b1=l1αk1βD11-α-βのもとで,効用関数をu =π1を最大にする割引量b1,労働量l1を求めよ.
解 異時間効用関数u =π1に生産関数を代入する.
u =π1=rl-1L-1+rbB-1+rc b1-(w1 l1+r1 k1)-rdD1
=rl-1L-1+rbB-1+rc l1αk1βD11-α-β-(w1 l1+r1 k1)-rdD1
変数l1について偏微分して,0とおく.
∂u=αrc l1α-1k1βD11-α-β-w1=0,
∂l1
l1*={w1/αrc k1βD11-α-β}1-α,
b1*=l1*αk1βD11-α-β . □
先物市場における銀行の最適化
期間2の効用関数から第2期の最適消費量を決定し,それを第2期の効用関数に代入し,予想価格の分布で期待効用を取り,期待効用を最大にする先物契約量cを求める.
問題 4.2 期間2の割引率r2c,預金利子率rd,賃金率w21およびレンタル率r1を所与とし,生産関数b2=l2αk1βD11-α-βのもとで,効用関数をu2 =π2を最大にする割引量b2,労働量l2を求めよ.
解 異時間効用関数u2 =π2に生産関数を代入する.
u2 =π2=rlL1+rbB1+rc (b2+cb2)-{w2 (l2+cl2)+r2 k1}-rdD1
=rlL1+rbB1+r2c l2αk1βD11-α-β-{w2 (l2+cl2)+r2 k1}-rdD1
変数l2について偏微分して,0とおく.
∂u=αr2c (l2+c2l)α-1k1βD11-α-β-w1=0,
∂l2
l2*={w1/αrc k1βD11-α-β}1-α-c2l,
b2*=l1*αk1βD11-α-β-c2b . □
期待効用関数vに,b2*,l2*を代入し,v=u1 +∫u2*(b2*,l2*)
dψ(q)をえる.
問題 4.3 q≫0のもとで
max ∫u2*(b2*,l2*)
d ψ(q),subject
to q・c=0.
{ cb2,cl2}
解 L=∫u2*( b2*,l2*)
d ψ(q)-λq・cとおく.
∂∫u2*d ψ(q) =λqb2,∂∫u2*d ψ(q)=λql2,q・c=0.
∂cb2 ∂cl2
u2は凹関数であるから,これらの条件は,解の必要十分条件となる.解をcb2*,cl2*,λ*とおく. □
預金の残り(1-α)D1と返済金L-1を投資資金余力とし,次期の金融投資を1年満期貸付金L1を生成し、余力の残りを国債ΔB1購入する.これを投資金融業務ということにする.
資産市場において,銀行は、間接金融市場の貸付資金証券L1および国債を資産制約式のもとで,資産の期待効用を最大化する.資産選択的な行動をする銀行は,ポートフリオの収益率の期待効用関数を有効フロンティアの制約条件の下で、最大化する設定となる.さらに,上述の問題4.1から、問題4.3のように,現先市場での取引を決定できる.
銀行の間接・直接混合投資行動は,以上2つの期待効用最大化の方法で,計算している.間に合えば,『金融論2022』で発表する.
5.3 金融政策の枠組み
金融政策の波及過程を図式化すると、次のようになる。
表5.2 金融政策の波及過程の図式
政策手段 手段の数値
中間目標 最終目標(目標数値)
貸出政策 ハイパワード・マネー マネーサプライ ①物価水準の安定(消費者物価指数)
H M2+CD
公定歩合操作 公定歩合 ②経済成長の持続(GDP成長率)
準備率操作 準備率 ③雇用の維持(完全失業率)
債券・手形 債券利回り
売買操作 債券売買量
為替市場 外為資金特別会計 純輸出 資金流出入 ④為替市場の安定(為替レート)
介入操作
この表では、金融政策手段は、日本銀行の重視する政策手段の順に、最終目標は同様に、①から、④まで重視する目標の順に、掲げている。それぞれ数値で公表することができる。
2022年10月16日現在では、日本銀行は、最終目標を①物価水準の2%を目標にしている。これは、従来の物価水準の安定という目標ではない。物価水準の安定でいえば、安倍政権になってから、2015年4月消費税率3%の引き上げ、2019年10月2%引き上げた。このとき、物価水準は、上昇した。それ以外は、2%を超えるときはなく、1%以下で納まっている。日本銀行が消費者物価指数を政策目標にしているのか、企業側の生産者物価指数、輸入物価指数を目標にしているのか、はっきりしない。2022年の4月から、消費者物価が明らかに2%を越える状態となり、目標に到達して、毎月、継続して、2%以上を記録している。半年たつが、依然、何もしない。苦し紛れに、賃金率の上昇が2%に達していないと言い出した。その間、世界の全ての中央銀行は、インフレ抑制に、金利を上げている。インフレになっているのに,その程度のインフレは,想定内であるらしい。しかし、10月の消費者物価指数は、明白に、3%を越え、4%台になるだろう。
金融論テキストでは、消費者物価指数である。雇用状態、失業率ないし賃金率を金融の政策目標に考慮する国は、米国FRBだけである。雇用状態、失業率ないし賃金率、いわゆる、経済成長の好循環なる文言は、日本銀行法の目的の第1条および第2条に明記されていないのは言うまでもない。
コロナ禍2020年では、基準改定が行われ、2020基準年平均0.0%、2021年5月-0.8、6月-0.5、7月-0.3、8月-0.4(前年同月比)(総務省統計局HP)であるから,デフレ傾向が続いている。米国のFRBは、政策目標はコア消費者物価指数であり、2021年5月3.8、6月4.5、7月4.3、8月5.3(前年同月比)で、夏から、ガソリン価格が上昇しているためである。日本より深刻なコロナ禍にある米国で、継続した物価上昇が続いているのは、継続した物価下落が続く日本と対照的である。
日本の物価は、生産者側の寡占価格支配力が需要者側より強い傾向があり、中小零細業者の生産物・サービスは、競争的市場価格形成がある。総合スーパー・コンビニエンスストア、宅配HPストアに、コロナ禍で消費者が集まっていると、寡占価格が効き、企業者物価指数と輸入物価指数が、消費者物価指数を左右しやすくなる。日本経済では、生産者物価指数は、円高もあり、消費者物価指数とは逆に、低下傾向がある。日本は、北海道から鹿児島まで、1500km以上、高速道路が整備されているから、運輸コストは、米国ほど高くない。今年になって、デフレ傾向が続くのは、日本の経済構造からすれば、当然の結果である。
このような日本経済構造で、一般物価水準が決定される。その下で、ゼロ金利政策と金融市場の独占的買い手となっても、2%を超えるインフレは不可能であることを示している。白川総裁の時代のデフレ脱却で、黒田総裁が0%目標より高い1%目標を取ったとすれば、確かに、8年間、1%水準をコントロールの目標としてその上下0.5%の幅では、完全に日銀コントロールに入っていて、成功したと評価されただろう。ちなみに、2015年基準で,2015年0.0、-0.1、0.4、1.3、1.8、2020年1.8である。
従来のIS=LM、AD=ASモデルで、目標のGDPを計算するモデルにおいて、目標のα%の物価水準を決定する貨幣供給量と利子率を求めることは、教科書では示されていない。理論の想定外のことを、『異次元緩和』で日本銀行がやろうとしたが、2%目標は未達であった。しかし、コロナ期に入る前まで、デフレは脱却したといえる。
物価水準は、日本経済構造のもとで、国内内外生産物・金融市場において決定されている。金融政策によって、貨幣供給量と利子率をコントロール変数として、物価水準を決定できるのだろうか。マンデル・フレミング・為替・線形モデルで、パラメターを推計し、金融政策で、制御可能なのか、研究する。
5.4 金融政策の運営
日本銀行が政策目標をデフレ脱却として、期間連続して、2%の物価上昇率を目標とすれば、公定歩合を限りなく0%とし、銀行の日銀当座預金に、マイナス利子率をつけ、国債を市場から規則的に買い取り、ETF投資信託を毎年一定額購入してきた。公定歩合操作、貸出政策、債券・(ETF投資信託)売買操作を総動員して、最終目標を達成しようとしたが、不可能だった。このように、金融政策が有効でない経済状態もある。
それでは、経済成長の持続に最終目標をとり、GDP成長率2%を数値目標にしたらどうだろうか。これは、官民挙げて、国家プロジェクトを立ち上げ、日本経済の世界先進性を促進するプロジェクトに政策融資、投資するようにしたら、GDP成長率2%は、持続的に可能であろう。アベノミクスはそれをめざしたのであるが、根本が戦前の国家社会主義を岸元総理から受け継いでおり、資本主義的成長より、資本主義経済の稼ぎを社会主義的政策である社会保障、育児・教育無償化、働き方改革等に回すから、成長するわけがない。米国流覇権資本主義、つまり、米国は過去がないから未来を実現することで軍事・経済をリードする成長を目指しているタイプと、中国、ロシアのような国家資本主義(主要な国有企業が支援するプロジェクトで、世界覇権をねらう)と比較すると、爺むさく、番茶でお茶を濁すようなものであり、成果はでてこない。結局、日本銀行が、銀行、企業を激励しても、爺むさいプロジェクトが莫大な利益を生むわけもないから、バブルらない。
黒田総裁は、バブル時代の経験を持っているので、バブルんじゃないかと期待して、超緩和したのだろうが、現在の銀行システムは、2003年までドジな銀行がすべて淘汰され、競争相手が減少し、規模の収益で、そこそこ、生きられるのである。それが証拠に、リーマン・ショックが銀行システムに与えた効果はない。
貸金業法で、所得制限が規定され、零細貸金業は淘汰された。消費者ローンで稼いでいた米系金融業(シティコープ等外銀、証券、保険)は、本国に帰還し、競争相手がいなくなった。米国もそうだが、韓国も、庶民では、小口借金漬けになっている。日本の大手貸金業者が韓国に進出して行った。日本では、名目所得が右肩上がりで、ベースアップが2%あった時代は、年収300万円の所得層は20年で、300万円×1.0220=445.7万円となる。ゼロが20年続くと、年収300万円の所得階層は、そのままである。ここに、日本の労働者の生活困窮化の原因がある。階層シフトが生じず、300万円以下の低所得者は、所得制限で、出世借りができなくなった。日本から、消費者行動から、前食い需要が消滅する歴史的な転換が起きたのである。日本の消費需要は、所得の範囲内、堅実型消費になったのである。これでは、日本経済は成長するわけがない。
300万階層は、製造業、第3次産業に多いが、製造業が中国・アセアンに流出した。現在、非製造業が主流の日本経済では、非製造業における生産効率性で評価されることはなく、人間関係・上下関係によって給料が出ているので、その関係間に、モノ、カネが介在しないから、インフレにならない。たとえば、美容院のカリスマ職人は、1顧客当り、1時間で、100万円稼ぐことはできない。銀座のクラブでは、トップクラスのホステスを指名すると、そのような事例はある。コロナ禍で、浮き草家業の著名人の講演会がなくなり、講演料は数百万円だった。また、稼ぎ頭の40歳台~50歳台が、金融再編で、貸しはがし、貸し渋りで、中小企業を淘汰され、製造業の中国流出に、転職を余儀なくされ、「高卒ですか、前社の経歴は0査定で、17万でお願いします。」と言われた人が多い。人間関係でフラット化しているから、給与は上がらず、みんな余力のカネはない。結局、モノのインフレは生じなかった。最悪なことに、サービスの時給が上がるわけがなく、サービス・インフレもなかった。2回の消費税値上げで、賃金が、10%上昇しなかった。消費税5%上げるなら、強制賃上げ5%させるよう、最低賃金を同時に上げるべきであった。企業は財サービスに転嫁はさけ、労働者の「安倍さん・山口さん、非製造業のサービス残業常態化を何とかしてくれ」との声は届かなかった。
黒田総裁が想定する、1989年のバブルと違って、金融市場と不動産市場の2倍資産リバブルは、生じなかった。しかし、株価は、リーマン・ショック以前を回復した。ゼロ金利政策で、債券価格は、高騰(利回りのゼロ化)したが、日本銀行が国債の発行高の半分買い上げているから、玉がない。株式市場で、投機を仕掛けようにも、業務用の当座預金に、マイナス金利をつけるから、投機マネーの一時預かりができない。東京株式市場は、米国と違って、投機的な変動が少なかったのは、代替安全資産がなかったからである。
不動産は、東京オリンピック会場のように、もとの競技場の地上げでしかない。東京都全域は、不動産の地上げは出来なくなっているほど、立て込めている。当然、土地売買の事例が少ないから、地価は2倍にはならない。
結局、物価のインフレーションは、賃上げ不足、寡占支配価格の横行で、歯止めがかかり、資産のインフレーションも同じ状況であった。超緩和では、日本経済の構造に金融ショックを当てられないということである。
2021年12月から、世界情勢が、ウクライナ戦争勃発に動き、2022年2月24日までに、エネルギー価格が上昇した。戦争開始後、ロシア・ウクライナが小麦・食用油・カリウム肥料の輸出国だったため、食料品価格が世界的に上昇した。世界同時インフレーションの始まりである。日本も例外でなく、4月消費者物価指数は2%を越え、8月まで2%以上を持続的に、上昇している。世界の中央銀行は、中央銀行の目的である物価安定のため、景気回復より、インフレ抑制に最終目標を切り替え、金利を上げてきている。この目的に違反しているのが、日本銀行である。世界で、日本に協調して円安を是正する中央銀行は、皆無である。むしろ、貿易利益をあげるから、世界インフレ抑制のため、協調利上げをしたらどうかと言われるだろう。
今週(2022年10月17日~10月21日)のイベントと市場への影響度
先週のイベントは、9日中国共産党中央委員会第7回全体会議が開かれました。11日IMF世界経済見通しが発表されました。世界のインフレ率は、2021年4.7%から、2022年8.8%に達する見込みであり、2023年は6.5%、2024年4.5%に減速すると予想している。世界経済の成長率は、2021年6.0%、2022年3.2%、2023年2.7%に鈍化する見込みである。
今週のイベントは、16日第20回中国共産党第回が開幕します。20日にEU首脳会議が開かれます。
経済統計は、次の発表がありました。
予想値 実現値
11日 日8月国際収支 -23,905億円 -24,906億円
9月景気ウオチャー調査現状判断DI ― 48.4ポイント
先行き判断DI 49.2ポイント
12日 日8月機械受注統計 12.4% 9.7%
9月工作機械受注額 150,820百万円104.2(前年同月比)
13日 米9月消費者物価指数 8.1% 8.2%
14日 中9月貿易統計 ―
消費者物価指数 2.8% 2.8%
米9月小売上高(前月比) 0.2% 0.0%
経済統計は、次の発表があります。
予想値
18日 中7~9月期実質GDP 3.5%
小売売上高
3.1%
20日 日9月貿易統計 -21,500億円
9月全国コンビニエンスストア売上高 ―
21日 日9月消費者物価指数 2.9%
日本 8月 9月
GDP(前期比)
消費コンビニ売上高 982,042百万円
スーパー売上高 110,562,504万円
百貨店売上高 349,481,514千円
投資 1393億円 150,820百万円
輸出
輸入
物価指数 3.0%
利子率 ―0.1%
株価
(第2金曜日の前営業日)
為替レート(中心)
原油価格
ドバイ、現物1バレル、ドル、11月渡し 12月渡
(第2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率 2.5%
景気動向先行指数 98.9 101.7
一致指数 100.1 100.9
第7回目 2022年10月24日
要点 5章 日本銀行と金融政策
5.5 金融政策の理論
5.5 金融政策の理論
前回は、日本銀行の金融政策の運営を、現在、執られている最終目標物価上昇率2%、それに誘導できる政策手段を講じ、半分も達成できないことを述べた。
今回は、金融政策の理論を述べる。大きく、2種類の両極端の認識がある。一つは、ケインジアンであり、もう一つは、マネタリストである。マクロ・モデルをもっているのは、前者であり、後者は、貨幣需要関数が中心であり、マクロ・モデルは提案されていない。マネタリストは、ミクロ一般均衡理論を想定しているのかもしれないが、断定はできない。
私の立場である新古典派理論では、経済主体が合理的な最適化をするという立場から、最適化の集計によって、各市場が形成され、均衡価格が決まり、最適成長も、均衡価格が変動していくことを想定している。したがって、新古典派には、ケインズがいうようなマクロ変数が存在し、それらの関係式が成立して、マクロ・モデルを形成するという考えはない。
中央銀行の金融政策決定と政府から独立まで
日本の学界では、近代経済学とマルクス主義政治経済学が併存していたソ連崩壊まで、マルクス主義政治経済学の立場から、近代経済学批判を批判する立場で、大学で講義されていたはずである。要するに、世界恐慌や金融恐慌は資本主義経済の本質的な矛盾であり、それらが発生すると、大量の失業が発生し、疲弊する人民が革命を起こし、社会主義政府を樹立すると結論づける。したがって、自由資本主義政府が、資本主義経済体制を制御できることは、マルクス主義政治経済学が歴史的発展段階説を取っているため、歴史的必然である革命が発生しないことになり、発展段階に移行しないので困るわけである。
近代経済学では、市場の失敗や政府の失敗が資本主義経済には発生し、独占企業が超過利潤を稼いでいくから、公共財の供給を代替し、民主主義で政権交代をさせ、独占禁止法で競争を促進する、混合経済を主張するようになってきた。
高校の『政治経済』の国定教科書では、資本主義経済は混合経済を主張するケインズと、第1次世界大戦後、社会主義革命がロシアで発生し、敗戦国ドイツ、オーストリアは、オーストリア革命、ドイツ革命が起き、帝政が倒れ、社会民主党等が指導する共和国に移行している。『資本蓄積論』のユダヤ人ローザ・ルクセンブルクはドイツ革命当時、ドイツ共産党を創設し、1月蜂起後、逮捕虐殺されている。ドイツ社会民主党の理論指導者は、ウイーン大学医学部卒、『金融資本論』のユダヤ人ヒルファーディングであり、ナチスに追われ、やはり、フランスで拘束され死亡している。ともに、マルクス経済学者である。シュンペーターは、オーストリアが社会民主党政権になり、資本主義の本質の研究は、ヨーロッパでは不可能な時代になったし、1927年、ハーバード大学の客員教授で渡米し、1929年の米国発世界大恐慌を目のあたりにして、自説の研究のため、米国に残ったのかもしれない。今年(2020年)リマインダーを書いて、ウイーン大学のカール・メンガーをハーバード大学に呼び寄せたのは、シュンペーターだろうと思う。シュンペーター『資本主義、民主主義、社会主義』では、民主主義がファッシズムで全体主義を強制されたことに、民主主義に力の弱さを見たか、資本主義は、独占資本に牛耳られ、利潤率、自然利子率がゼロになり、官僚制がはびこって、社会主義に移行するという結論に至っている。
現在、世界で、中央銀行の強制的なゼロ金利時代があり、政府は社会主義的政策をとってきた。一体どこの誰が、ゼロ金利をしたのかと言うと、欧州中央銀行総裁であったイタリア人のドラギ氏である。その間、ゼロ金利で、国家経済は成長せず、資本主義経済が劣化し、米国・EUでは、極右ポピュリズム政治家の台頭を招いた。日本では、右派安倍政権の台頭である。
ウクライナ戦争で、化石燃料・食糧・肥料等で世界的な生活用品インフレーションが発生した。この際、資本主義経済では、政府が、化石燃料・食糧・肥料等の安定供給を確保し、その在庫が備蓄タンク・倉庫に半年以上あることを国民に見せれば、インフレーションの根本原因を政府が抑えたことになり、楽々、インフレーションを抑制することができる。しかし、各国政府は、緊急・一時的に、価格上昇補てんでインフレ対策をしている。これでは、インフレーションは収まらない。需要者は、インフレ価格で購入できるからである。
金融政策で、ゼロ金利政策をとるのは、政府が、資本主義経済を否定し、社会主義経済にすることを強制しているのではないか。日本経済が成長しているときに、経済成長率以下の低金利政策2%をとったが、銀行システムを否定する愚の骨頂はしなかった。過去の経験から、ケインズの言うように、銀行システム維持のための『流動性のワナ』1%は、維持すべきだった。これがあると、ハイパー・インフレーションに対するバックアップ金利になるし、金融政策もインフレーションの頭を抑えやすい。特に、中小零細企業の生活必需品・生鮮食料品のハイパー・インフレーションは、上昇を緩和できる。
1986年、西ドイツ、ビーレフェルト大学のR. Rosenmueller教授が、私が行く前に、ハーバード大学に出張中だった。ウイーン大学から、ビーレフェルト大学の理経済研究所にH. Dierker教授が来られたとき、当研究所研究会で会ったことも、妙な縁で、私の米国でJ.E.Tで採用された論文がつながっていたのかもしれない。私的な因縁でいえば、オーストリアの家族と関係して、オーストリア学派の数理経済学に係わることはどうかなぁ、研究方向をそこまで合わせることはない、と思ったことは、当時、何度か思ったことはある。しかし、ユダヤ人von Neumannは、量子力学、コンピューター製作、ゲーム理論、一般均衡理論、ターンパイク経路の均衡成長論等に係わっているため、避けては通れなかった。
社会主義の台頭と修正資本主義
第2次大戦後、ヨーロッパ諸国において、社会主義政党が支持された。特に、社会民主党が躍進した。中国は1949年、社会主義国として、建国した。しかし、共産党の計画経済はうまくいかず、1978年、経済開放に踏み切った。中国は天安門事件後、1993年、社会主義市場経済へ移行、ソ連の崩壊で社会主義体制の記述は終わっている。日本経済は、大企業の不祥事で経済倫理が欠如する経営者が頭を下げている写真がのせてあり、公共財の供給を重視する公共経済の記述が多い。資本主義の特徴である市場経済の需要曲線と供給曲線が交差したところで均衡価格が決まることは、コラムで載せてあるだけだ。半官半民の日本銀行の機能と金融政策の実施については、金融論の教科書どおりである。高校教科書著者の認識では、日本銀行は政府の歳出と歳入、短期融資、国債発行の実務、外国為替の実務を担当しているから、準政府機関なのだろう。
毎年、新入生に、経済学を教えるのに、高校政治経済の教科書を取り寄せ、以上の記述を、大学の経済学と連携するように、資料配布とパワーポイントで、1時間教えた。毎年、調べると、新入生が『政治経済』を履修したのは3分の1以下であった。実業界の取締役が「学生時代はマルクス経済学を勉強したが、就職後は自由資本主義経済だ。特に、労働組合はマルクス主義だ。」と話すのはよく聞いた。戦前の社会主義者の勉強会の話がある小説では、「マルクスの資本論は、理解しがたい。」とある。私は、『資本論』がユダヤ人特有の歴史叙述があるのと、ドイツ哲学を組み込んで、古典派経済学を批判しているので、よほどのヨーロッパの学問の素養がないと、戦前の労働者には、理解できないのは当然だ。しかも、19世紀以来、キリスト教批判が出て、無神論者、唯物論者が社会運動に加わってくるからややこしい。金融論で言えば、私の大学院時代に流行った、ユダヤ人D.Patinkinの『貨幣・利子および価格』は、ミクロ理論が期待効用を使って独特であるのと貨幣の学史が独特であるが、ミクロ・マクロの整合性がついていないので、難しい。
戦後世界の政治の世界では、労働者階級の立場から、資本家を擁護する自由主義政党を攻撃する社会主義政党が勢いを得た。
追手門学院大学では、経済原論を担当するようになって、全く触れないわけではないが、ソ連崩壊後、1994年、日本社会党が自民党と連立すると、社会党の公務員政治勢力が、共産党対策の受け皿だったようで、日本共産党が政権を取る可能性はなくなったと考える国民が多くなったのか、1996年日本社会党は分解した。経済学会でも、1990年代は、社会主義的な資本主義経済批判の報告は少なくなっていった。私が1980年代、ヨーロッパの東西冷戦問題で特に、東側のバルト3国以外の各国を研究視察している間、ゴルバチョフ書記長時代によって、最後はブッシュ米大統領と核軍縮をし、冷戦は終結した。東欧革命はソ連の内部問題であり、米国は東欧革命には関与していない。ソ連と米国の核軍縮によって、ヨーロッパから、東西向けの核ミサイルが撤去され、ソ連の西側都市へのミサイル照準がはずされた。プーチン大統領は、ウクライナ問題のとき、また、照準を付けようかと言ったぐらいだから、現在も外されているのだろう。
日本は、日米同盟により、米国の傘に入っているため、現在も、ロシア連邦の地下サイロには、日本向けの核ミサイルは存在する。ソ連解体よって、日本外交上のポジションは、影響なく、平和条約は締結されない。ロシア連邦になって、4島返還しないのは、中国が尖閣諸島をしつこくねらっているのと同じ理由で、ロシア海軍の艦船の出口を確保、米国艦船の侵入を阻止するためである。
日本では、ソ連崩壊後、ケインズが生き残こり、大学では、ケインズマクロ経済学が主流となった。アメリカでは、ケインズの主張は、公共財の供給を景気対策に使い、失業を解消するととらえているが、できるだけ、公共財は最適供給にし、民営化を主張する市場主義者の主張が通る。新古典派経済学の流れも、ウイーン大学から、アメリカに亡命、あるいは移民した学者を中心に活躍したので、ケインズ経済学がアメリカ経済学の典型的な経済学ではなくなっている。イギリスは、サッチャー時代から、公共企業が非効率性で慢性赤字化するので、民活を主張するようになった。民間でできることは民営化することで、公共経済の肥大化を適正化する政策である。日本も国鉄民営化、電電公社民営化、郵政民営化、国立法人化で、準企業、教育・医療機関を国営から切り離してきているのが同様な流れである。
したがって、政府は、市場が成立する条件を整理し、市場の失敗が生じないように、法規制、行政指導することが任務となっている。市場機能が発揮できる財・サービスは、民間に権限を委譲し、市場が競争機能を発揮できるように促すことである。
日本銀行法の1997年改正 政府から独立して金融政策を実施できる
日本銀行は、1997年以前では、政策委員会に、金融政策を市場関係者、国会において、説明する義務はないから、政策の変更は、新聞に発表する程度でしかなかったろう。政策金利は、大蔵省の審議会で決定されるのであるから、日銀の役員会が、実務を粛々とつかさどっていたのであり、メディア、学会や業界で、米連邦準備制度理事会のような説明を期待しても、無理であった。したがって、大蔵省が3権限(予算、租税、金融・国際金融)を掌握して、公共経済を運営している間は、官界はケインズであったから、大蔵省は、ケインジアンだったのであろう。1997年日本銀行法改正以降、検査情報の漏えい等で、大蔵省は金融行政をはずされ、金融庁に移管され、省庁改革により、財務省と改称、権限として予算、租税(国際金融)が残された。ただし、日本銀行の監督権限は、財務省に残されている。
私が、日本金融学会に入会したのは、阪神大震災以降、1995年頃だった。実は、1982年頃、上智大学で開催されたころ、見学に行ったのだ。上智大学の構内に、大坂偕行社附属小学校の小学校創設者大坂鎮台司令官高島鞆之助氏の邸宅があったと聞いていた。神父館当たりだったと記憶する。当時、歴史学派のセッションでは、特別な言い回しの報告があり、近代経済学とマルクス主義政治経済学が併存できた「いい時代」であった。その頃から1989年まで、社会主義諸国を回る研究旅行を、ソ連、東欧、ユーゴスラビアの各国のご好意で、ビザを出してもらい、全旅程の手配を希望通りしてもらい、航空券・列車乗車券・宿泊バウチャーで、不都合もなく、社会主義経済を研究視察することができた。その反対側、とことん列車で周回した西ヨーロッパも見聞することができた。また、中国、インド、東南アジア諸国も同様である。
しかし、パキスタンは1985年、ホテルに警護が付くし、インドでパキスタンに敵対的な雰囲気を感じ、ニューデリーからカラチヘは行かなかった。イラクは第1次湾岸戦争後、アーメダバードから観測するだけで、インダス川を越えて行くどころではなくなった。2022年パキスタンで、大洪水が発生したが、インダス川から、インド側砂漠地帯を流れるインディラ・ガンディ運河は、緑地の帯が写っていた。日本のODAの効果は歴然だった。イランは、1988年夏、バルト3国にインツーリストで旅程の手配を取ってり、トルコ・イスタンブールから、気になるイランを訪問しようと、テヘランに予約を取っていたが、当時、航空会社で断られた。イラン・イラク戦争が1988年8月20日国連決議を受けて停戦したときだった。現在、イランに行くと、米国に入国できないそうで、退職前、ペルシャじゅうたんを研究室に敷こうと思い、ドバイ経由で旅行手配を頼み、行けるようにしたが、米国とイランが緊迫して、中断した。
米国の入国制限は、中東でもあった。私が、イスラエルにビザなしで、1986年夏、西ドイツから行ったとき、イスラエルの入国スタンプがあると、アラブ諸国には入国できないと、旅行書にたったので、スタンプなしの申請をしたのと同じである。その足で、ジブラルタル海峡とカサブランカを視察しに、モロッコに行ったら、welcomeだった。
イスラム乾燥ベルトは、砂漠と禿山しかないのに、自由に通行できないイスラム統治の伝統がある。これが、スペイン・ポルトガルが大航海時代を開いた原因でもある。日本の藩政時代、関所があり、一般人は通行不可能だったが、それに似たイスラム封建統治が今も各国政府に残っている。南北問題が、共産主義と自由民主主義の西洋発生統治理念対立という、フランス革命を発端とする、キリスト教圏で発生した暴力革命を内包する統治理念対立より、とてつもなく、解消が困難な歴史的な統治理念対立問題でもある。東西冷戦問題の解決は、私の予想通り、1982年夏、ソ連研究旅行を開始して、1989年秋、平和裏に、終結した。ソ連では、ルーブル圏で、社会主義金融だったが、今回のウクライナ戦争で、ロシア連邦の金融制度は、IMF加盟で、資本主義金融に転換しているのが確認できた。中国金融は、日本の政府管理型金融制度であり、為替制度は、通貨バスケット制で、管理為替制度である。イスラム金制度は、イスラム教で利子が0である。ドラギECB総裁が、南欧の国債暴落に業を煮やし、マイナス金利を10年近く続けたが、イスラム教より、ひどい金融市場を機能させない社会主義金融だった。EUでは、そういう議論は、ECB内でなかったのか不思議に思う。EU内の南北問題は、歴史的に根深く残っていることが顕在化した。EUは統一通貨で、為替変動がなくなったが、各国の金融制度は、そのままで、金融制度改革されなかった。
日本銀行の金融政策の基本は、バックが大蔵省の財政政策の立場がケインジアンであることを踏まえ、公共経済による景気対策が継続してあること、対米貿易黒字による為替レート増価対応、大蔵省の決めた金利のもとで、貸付、国債発行をすることになる。したがって、日本銀行は、行き過ぎた円高にならない日米の金利差を維持、景気対策のための低金利、大手銀行に対する貸付、国債発行利回りを低く設定により、大蔵省のケインジアン財政金融政策を中央銀行として実行していたのであろう。公共経済による景気対策が補正予算のように継続すると、いわゆる、インフラ投資であるから、それが税収増となって、国債を償還できるわけではない。国債発行残高1000兆円となっている。
1997年改正法から、日本銀行は、政策委員会による金融政策決定会合の決定事項は、説明するようになり、財務省の財政政策を考慮に入れつつ、2%のインフレ・ターゲットを最終目標にして、超金融緩和を継続している。『金融論2021年』では、テーラー・ルールを紹介しているが、すでに、実施している国々とは、理論的なルールが公表されているわけではない。
日本銀行の金融政策とマクロ開放貨幣経済モデル
従来のIS=LM、AD=ASモデルで、目標のGDPを計算するモデルにおいて、目標の100ε%の物価水準を決定する貨幣供給量と利子率を求めることは、教科書では示されていない。比較静学モデルであるから、中央銀行が金融政策で、貨幣供給量をΔM増加させ、1回で、目標物価水準ΔP/P=εとなるΔMを求める。テキスト第10章から、為替市場の均衡を所与とする。
IS曲線は、財市場の均衡式から導く。
Y=C0+c(Y-T0)+I0-i +G0+mwYw-e Pw(mY) /P 10.
1
LM曲線は、貨幣市場の均衡式から導く。
M/P=kY-i
10.
2
投資関数と流動性選好関数を線形化した10.1式と10. 2式から、iを消去すると、Y、Pの関数が得られる。
Y=C0+c(Y-T0) +I0+M/P-kY+G0+mwYw-e Pw(mY) /P (1)
これは,AD曲線である。
不完全雇用の場合をCase Iとすると、労働市場の均衡式は、第9章の結果から、w0=PFNである。AS曲線は、線形化すると、P=αYとすることができる。新古典派の完全雇用の状態をCaseⅡとすると、AS曲線は、PY=Aと表すことができる。したがって、CaseIとCaseⅡとを一致させると、不完全雇用が長期的に解消する物価水準と完全雇用国民所得が決まる。すなわち、Y=√A/α。
このマクロ貨幣経済モデルにおいて、中央銀行が金融政策で、貨幣供給量をΔM増加させ、目標物価水準ΔP/Pを仮定し、逆算できる。
まず、現行均衡価格と均衡国民所得を求める。(1)式に、P=αYを代入し、整理する。
α(1-c+k) Y2-(αU-e Pwm)Y-M=0
これは、異なる正負2根をもつ。正根を均衡国民所得Y*とする。均衡価格はP*=αY*である。目標物価水準ΔP/P*=εであるから、ΔP=P-P*=εP*。すなわち、P=(1+ε)P*となればよい。AS曲線に代入すると、P=αYより、Y1=(1+ε)P*/α。
貨幣供給量をΔM増加させる。α(1-c+k) Y2-(αU-e Pwm)Y-(M+ΔM)=0を上と同様にして、解く。正根を均衡国民所得Y**とする。均衡価格はP**=αY**である。この均衡価格と目標物価水準P=(1+ε)P*と一致させるP**=(1+ε)P*から、ΔMを求める。為替市場は所与としているから、解はある。日銀の目標は、理論的には、比較静学ではなく、比較動学で、継続して、物価が上昇し、2%上昇になると想定している動学的目標になるである。
物価水準は、日本経済構造のもとで、国内内外生産物・金融市場において決定されている。日本銀行は、為替市場は変動相場で決まるとし、為替介入は出来ない。マイナス金利のもとで、貨幣供給量をコントロール変数として、継続して、物価が上昇し、2%上昇にすることは、2021年10月現在、日銀はできないでいる。2022年2月24日ウクライナ戦争が勃発し、両国の輸出品が途絶える懸念で、国際商品市場が高騰した。ロシアは、戦局が敗退するにつれて、西側経済金融制裁に対抗し、ロシア産輸出品を絞って来たため、特に、燃料に依存度が高いEUは、ロシア以外から調達するので、国際化石燃料市場は高止まりしている。日本も、化石燃料にEU同様海外依存度が高く、貿易収支が赤字が続き、FRBの利上げに日米金利差が拡大、毎月、円安が続いている。政府の燃料対策が注視であり、日銀も4月から毎月2%越えしているにもかかわらず、様子を中止しているだけで、マイナス金利下、超金融緩和を続行している。世界の中央銀行は、ウクライナ戦争後の世界インフレに、阻止に、公定歩合を上げている。黒田総裁は、インフレに怖気づいて、躊躇なく果敢にインフレ抑制手段を取らず、収まるのを注視している。2期任期を任された安倍氏は暗殺され、政界の後ろ盾はない。
今週(2022年10月24日~10月28日)の影響度
先週のイベントは、16日第20回中国共産党大会が開幕しました。21日にEU首脳会議が開かれ、中国からの資源依存を脱却が議論されました。23日、習主席が続投、新指導部が選出されました。
今週のイベントは、大阪万博、国際会議が26日まで開かれます。27日に日銀政策委員会金融政策決定会合が28日まであります。27日に、欧州中央銀行理事会が開かれます。
経済統計は、次の発表がありました。
予測値 実現値
18日 中7~9月期実質GDP 3.5% 発表延期
小売売上高 3.1%
20日 日9月貿易統計 -21,500億円 -20,940億円
9月全国コンビニエンスストア売上高 ― 8,983億円(1.5%)
21日 日9月総合物価指数(生鮮食品を除く) 3.0%
経済統計は、次の発表があります。
予想値
24日 日10月の月例経済報告 ―
9月全国百貨店売上高 ―
27日 日日銀政策金利 -0.1%
米7~9月期GDP速報値 2.3%
28日 日10月東京都区部CPI 3.2%
9月完全失業率 2.5%
9月有効求人倍率 1.33%
米9月個人所得 0.3%
9月個人支出 0.4%
日本 8月 9月
GDP(前期比)
消費コンビニ売上高 982,042百万円
スーパー売上高 110,562,504万円
百貨店売上高 349,481,514千円
投資 1393億円 150,820百万円
輸出 5兆1710億円5600万円 8兆8187億円
輸入 6兆9075億円3500万円 10兆9126億円
物価指数 3.0% 3.0%
利子率 -0.1% -0.1%
株価 27819.33(8/10) 28065.28(9/8)
(第2金曜日の前営業日)
為替レート(中心) 135.2(8/10) 144.4(9/8)
原油価格 96(8/10) 89(9/8)
ドバイ、現物1バレル、ドル、11月渡し 12月渡し
(第2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率 2.5%
景気動向先行指数 98.9 101.7
一致指数 100.1 100.9
第8回目 2022年10月31日
要点 6章 政府の活動と財政政策
この章は、財政学のテキストに沿った構成になっている。すなわち、
・政府の活動は、日本国憲法にもとづいて行われる。政府の活動の3つの機能と予算過程・租税過程・決算の経過を説明する。
・マクロ経済3部門モデル財・サービス市場において、均衡国民所得を求める。
・政府は、財・サービス市場において、政府支出と租税を政策手段に用いて、最終目標を定め、財政政策を行うことができる。
6.1 政府の活動
貝塚啓明・館 龍一郎の『財政』岩波書店、1973年を読んで、流れを考えたが、日本政府の最終目標は経済成長であり、短期的には、マクロ経済3部門モデルで均衡所得を求める。長期的には、新古典派成長論が根底にあった。しかし、バブル以降、公共投資が削減され、全国的に、建設業の600万人産業は、半減して行き、小泉内閣から、地方への公共投資を中心としたいわゆる景気対策は減少し、都市開発に重点投資されるようになった。公共投資による景気対策を主張する政治家は力を失った。その結果、国債の発行残高が積み上がったまま、国債管理はどうするのかという議論は、貝塚啓明『財政学』第3版2003年ではない。
この問題に答えるために、長期的モデルである新古典派成長論から発展させるにも、新古典派経済は実質変数で解を求めるから、ストックである国債資産残高は、導入できない。したがって、国債残高による財政圧迫と経済成長の目標を達成する財政政策は、日本経済の試算可能な長期モデルから公共サービスの供給量を決定することが望まれる。ここで、公共サービスの供給は、議会制度で選出された内閣が原則的に政府支出を算出、国会で審議され、修正された予算案が承認されれば、毎年、実施される。その際、日本国憲法において、財源は、租税法の改正案が国会で決議される。米国憲法では、予算も租税も法律であり、決議が必要である。
新古典派では、基本は市場原則で、私的財の取引が決まる。以上の財政学では、政府がどのような政治過程から選ばれたかは、問題にされない。財政学は、選出された政府から議論が始まり、定められた租税法にしたがい強制的に徴税し、公共サービスの供給は、政府が独占的に決めるとしている。議会制度に基づいて、4年間という中期に国民が選出し、負託した政府が、国民の公共サービスの満足度を満たすように、公共サービスを供給するという最適政府理論はある。J.
Tinbergen et al “Optimal Social Welfare
and Productivity,” 1972にある、自由・資本主義体制と共産主義政治経済体制を比較し、冷戦下、両体制の今後を論じたものである。
東西冷戦が1989年終結し、ソ連・ユーゴスラビア連邦は、1993年、解体し、共産主義政治経済体制は終わった。EU、ロシア連邦、旧ソ連加盟国、旧ユーゴスラビア連邦加盟国では、それぞれの議会制民主主義制下で、共産党、社会主義政党は支持を残している。経済・社会活動の仕組みは、資本主義体制に移行し、冷戦体制時代よりは、東西相互間の民間取引は、はるかに、取引量が増加している。
6.2 最適財政理論
新古典派にある最適政府論は、最適租税論のもとに、国民の社会的厚生を最大にする最適公共サービス供給論にまとめられるかもしれない。社会的厚生関数の存在をうさん臭く思う経済学者は、多く存在する。1年間、経済・社会活動の成果は、階級に従って分配されると考える社会主義者は、公共サービス供給も、階級的分配になる。しかし、最適租税論では、公共サービスの財源は、最下層の階級は、サービスの恩恵は受けるが、課税されることはない。また、最上層の階級は、サービスの提供をは受けないことで、満足している。
最適財政理論において、公共サービスの財源負担は、資産で所得を稼ぐ資産家および働く労働者が累進的に負担し、各人が公共サービスに対して主観的社会効用関数をもち、税負担を所与に、自分の消費する公共サービス量を計算する。公共サービスを累進的負担金で、公共サービスを公平に享受する仕組みを運営する主体が、議会制民主主義で選出された政党・政府である。政府がその申告を精査、公平な社会厚生関数を計算し、当該年度の予算案を作成する。サービスの新規・改正・廃止は、そのときの政党の政策による。民主主義議会で、政府案は修正、国会承認を経て、予算案は執行される。それに伴う税制改正により、当該年度、徴収される。国民は公平に、公共サービスの提供を受ける。
この理論を、東西冷戦終結後、書いたのだが、いまだに、日の目を見ることはない。現在、政府部門の経済・社会活動規模が、大きくなりすぎている。マクロ経済モデルの最適化理論を研究している中で、長期モデルでは、政府部門の経済・社会活動の最適決定過程を導入する必要がある。例えば、地球温暖化対策で、各国政府が実質ゼロを30年間で達成するという経済・社会活動は、機械的な計画では、達成できない。温暖化ガスの排出を実際に削減する主体別に、現在、確立している技術で、排出をゼロにする目標期間まで、その技術代替費用を、現有設備で発生するガス削減量の評価価値で賄えるならば、その主体は、計画を実行する。
日本の人口構造の長寿化で、社会保障費の増大に、消費税を充てる議論が進み、10%になった。新古典派成長論は、人口構造を仮定し、長期的には、経済成長の内容に、新製品、新産業など需要の創造を伴う技術革新があれば、経済平衡点に、早く収束することを主張している。最適な、「小さな政府」で、社会保障サービスの需要者に最適なサービスを提供し、市場経済に新製品、それらを供給する新産業など需要の創造を伴う技術革新を支援する制度、投融資をするのが、その理論に沿った財政になり、国債残高は減少する最適経路が存在するということを示すのが、『財政学』の役割である。
6.3 マクロ経済3部門モデルにおける政府部門
マクロ経済モデルでは、国民、政府および中央銀行の3部門で、財サービス市場と貨幣市場の均衡を求める。線形モデルが、経済学のテキストでは一般的である。第9章で、そのモデルを説明している。マクロモデルでは、政府支出Gの個別予算がどのように決められたか、その予算の財源・税収は、どのように、経済主体から徴収され、その予算を賄うのかは、決められない。それに答えるには、6.2節のミクロ財政理論が必要である。公共サービスの提供を政府独占企業体で行うか、民間発注で市場機構を使うかは、そのときの政府・政党で決められる。経済学的には、公共サービス市場から、調達するほうが、資源節約的、遅滞なく需要者に提供できる、執行機関の腐敗を防止できることから、効率的である。
6.4 財政政策の有効性
前回、日本銀行の金融政策は、改正法まで、役員会の金融政策の運営責任を自覚して、政策目標を決定し、政策手段を実施していたようには思えないとのべた。近年の日本銀行の失敗は、バブルを放置したことであるが、バブル後、学界では、マネタリストの発言が大きくなり、急激に利子率を上昇させ、銀行を貸付金の回収に追い込むべきではなく、ソフトランディングさせるべきだと、1929年以降の米連邦準備制度理事会の政策と重ね合わせた議論が多かった。これは、リーマン・ショックの際、米連邦準備制度理事会は、日本の経験を参考にしたようだ。世界の金融界は、米金融機関のサブ・プライム・ローンの証券化で大迷惑したわけだが、中国、ロシアも、新興国も景気後退に対して、財政政策がとれる国は、内需を支え、中国は南欧の国債暴落を買い支えた。日本は、財政政策で内需を支え、米国のサブ・プライム証券を買った銀行は少なく、金融システムにダメージがなかったことは幸いだった。米銀行、米証券、米保険は日本から撤退していった。
今考えると、中国が南欧の国債暴落を買い支えたことは、当時、問題視されなかったが、ギリシャや南欧などを債務漬けにし、それを、てこに「一帯一路」の戦略構想を実現する布石だったようだ。その証拠に、ギリシャは、すでに、中国に港湾を与えている。ロシアにキプロスを与えてトルコに対抗しているギリシャは、すでに海運資本が資本逃避しているから、主要産業は観光と農林漁業で、公的企業と公務員が巾を利かす社会主義国家であり、中国には、ギリシャ政府の窓口で話しやすいのだろう。
2010年以降、中国経済が膨張し、EUへの終点地港湾と契約し、「一帯」の拠点攻略に入っていたわけで、日米豪は対抗上、従来の軍事、経済関係を維持するように要請する展開になっている。そこに、トランプ大統領が登場し、中国経済が膨張に、米国が利用されることに反対し、米中貿易戦争の最中である。中国が債権国を盾に、使用権を確保し「一帯」の拠点攻略することは、中国の自己中的な戦略であり、従来の関係が築かれている国々から批判が高まっている。
従来の関係が築かれているアジアとヨーロッパと間の自由経済回廊と、中国の主張する「一帯」は、中国の製造業の製品を輸出することが目的ではなかろうか。それらの国々に中国製品を供給していくのである。日本はそこまで厚かましく売り込んではいかないが。米国も悩むが、日本も、技術ただ取り、知的財産権を無視して、偽ブランドを新興国に売り込まれると困る。2019年は、以上で終わっている。
2020年に入って、2月から、中国武漢発の新型コロナウイルスの流行が始まり、緊急事態宣言下、経済・社会活動は、部分的に停止し、財政の緊急支援が必要になった。日本銀行も、企業、個人業に資金繰りを支援することになった。緊急事態宣言が開城されると、その反動で、第2波が発生し、小康状態になると、冬季に入り、再び、流行都道府県で感染者の増加がみられた。その後、第4波と第5波が流行し、2021年、11月では、第5波は小康状態になった。以上のような、緊急事態に対する財政・金融政策が実施中であり、政府・日銀は、経済・社会活動が2019年の活動水準に復旧するまで、国民を支えるしかない。
財政政策の有効性については、経済理論では、財政支出の経済的効果は、即時的効果があっても、経済全体に波及する効果は弱いという見解が多数です。特に、国際貿易に依存度が高い開放経済国では、財政政策は、経済成長や、雇用には、効果はありません。日本では、自公政府が、景気対策と称して、補正予算を組むということを毎年、実施していますが、日本経済を押し上げる効果はありません。かつて、全国土木事業がある時代のイメージを政治家がもっていて、補正の知恵を絞りだそうとするのですが、地方人口減少で、土木事業の対象がないのです。反対に、人口が集中する都市は、土地が密集建物で埋め尽くされ、やはり、公共用地がなくなり、無料の最深度地下30メートルを利用するか、サービス業しかありませんから、ここには、バラ撒けないのです。メインテナンスの時代になっているかもしれません。たとえば、決壊した千曲川の河川敷を利用したりんご畑を、掘りあげて、千曲川の流量を底上げする、ダムの蓄積した土を排出する、それは、建材に利用して、利益を上げる。かつて、京都左京区上高野にもどったとき、鴨川に三条まで中州ができて、見苦しかったが、国土交通省が、中州にダンプを入れて、撤去した。当時の民主党代議士への忖度かと思った。全国的に、河川敷利用を禁止するほうが、100年に一度の洪水災害に対する防災効果が上がる。首都圏で言えば、相模川、多摩川の河川敷利用は禁止するということである。地震、津波等の大規模災害には、その河川敷を利用するに決まっている。
デジタル政府機構を、中央・地方政府をつないで、中期的に、構築するデジタル庁が開設された。公共サービスの提供と徴税システムが、中長期的に、稼働し、進捗状況も、リアルタイムで、政府中央コントロール室で「見える化」されるだろう。サービスの需給バランスは、リアルタイムで把握でき、弾力的に、供給できるようになる。コロナ禍で例を取れば、感染者の発生から2週間の観察期間中、サービスの供給は、命にかかわる問題であるから、最優先で、サービスが余剰な地域から、その感染者に、観察期間中に、症状の段階が上がれば、医療サービスを提供できる。
今週(2022年10月31日~11月4日)の影響度
先週のイベントは、大阪万博、国際会議が26日まで開かれました。27日に日銀政策委員会金融政策決定会合が28日までありました。インフレーションに、円安の輸入インフレが上乗せされてきたことは認識しましたが、貨幣賃金率の上昇を伴っていないので、日銀が想定するインフレーション状態とは認識しない。引き続き、物価動向を注視する。金融緩和は維持し、政策金利は-0.1%とする。消費者物価は、今年度の国内物価見通しを2.9%とし、2023年で1%台に低下する。27日に、欧州中央銀行理事会が開かれ、政策金利を0.75%上げ、2%としました。
今週のイベントは、11月1日、米連邦公開市場委員会(FOMC)を2日まで、開かれます。FRBの政策金利は、0.75%上げ、4%を予想しています。為替市場では、150円台になるでしょう。ここまで、日米の政策金利差が開くと、円安は、来年の4月まで、続きます。ロシアが、エネルギー禁輸対策をとり、EUが代替輸入、原発稼働で対抗し、ウクライナ穀物の海上輸送の取り決めを中断すると言っていますから、海外のインフレーションの利上げ抑制効果は、緩やかにしか、効かない。日本は、貿易赤字が持続して、エネルギー・食糧価格が、円安で増幅され、企業も、値上げせざるを得ず、貨幣賃金率は、来年の春闘まで、上がりません。12月13~14日のFOMCで、4.5%以上に決定すれば、160円台に突入し、日本は、景気後退に転じ、インフレーション下の景気後退という、悪循環に入る確率が高い。
金利差要因は、米金利高で、ドル買い、円売りは、市場では、自動的に、適正水準まで、円安になることは、国際金融理論でも示されていますし、実務でも、経験済みです。しかし、今年の円安の原因は、戦争の安全保障リスクに対して、円は売り通貨であり、ドルは買い通貨、食糧・化石燃料の90%以上の輸入体質をつかれると、円は売りで、ドルは買いです。為替レートは、資本収支だけでなく、貿易収支も決定要因です。現在の円安水準は、貿易赤字が持続していることが、継続的に減価する要因になりました。
今回の世界インフレーションの原因が、軍事リスク、経済・生存基本財の依存度リスクが重なっています。これまで、国内経済基盤では、安定していたので、円高でした。これらのリスクが平時に戻らなければ、日米間の金利差だけでは、円安は説明、出来なくなりました。米国は、160円台で、インフレーションが抑制され、インフレ目標値に下がれば、FRBは、景気回復へ舵を切り、ドル高は重荷になり、金利を下げ、米国が輸入を増加させれば、円安は円高へ戻る可能性はあります。このシナリオは、来年後半になるでしょう。ウクライナ戦争が、終結すれば、軍事リスクはゼロになり、ドル高はさらに是正されます。
経済統計は、次の発表がありました。
予想値 実現値
24日 日10月の月例経済報告 ― 「穏やかに持ち直している」
9月全国百貨店売上高 ― 3813億円(前年比20.2%)
中実質GDP 3.3% 3.9%
9月小売売上高 3.0% 2.5%
9月貿易収支 5,643億元 5,736億元
27日 日日銀政策 金利 -0.1% -0.1%
米7~9月期GDP速報値 2.5% 2.6%
28日 日10月東京都区部CPI 3.2% 3.4%
9月完全失業率 2.5% 2.6%
9月有効求人倍率 1.33倍 1.34倍
経済統計は、次の発表があります。
31日 日9月鉱工業生産指数 10.4%
3日 米政策金利(上限金利) 4.0%
(下限金利) 3.75%
9月貿易収支 -702億USD
4日 米9月失業率 1.7%
日本 8月 9月
GDP(前期比)
消費コンビニ売上高 982,042百万円 8,983億円
スーパー売上高 110,562,504万円 1兆427億円
百貨店売上高 349,481,514千円 3813億円
投資 1393億円 150,820百万円
輸出 5兆1710億円5600万円 8兆8187億円
輸入 6兆9075億円3500万円 10兆9126億円
物価指数 3.0% 3.0%
利子率 -0.1% -0.1%
株価 27819.33(8/10) 28065.28(9/8)
(第2金曜日の前営業日)
為替レート(中心) 135.2(8/10) 144.4(9/8)
原油価格 96(8/10) 89(9/8)
ドバイ、現物1バレル、ドル、11月渡し 12月渡し
(第2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率 2.5% 2.6%
景気動向先行指数 98.9 101.7
一致指数 100.1 100.9
第9回目 2022年11月7日
要点 9章 マクロ貨幣経済モデルと経済政策
ポイント
・古典派マクロ経済モデルの均衡を理解する.
・金融政策の効果を調べる.貨幣数量説と貨幣の中立性が成立することを理解する.
・ケインズ・マクロ経済モデルの均衡を理解する.
・財政政策と金融政策の効果を調べる.
・物価水準の決定を示し,財政政策と金融政策の効果と合わせる.貨幣数量説と貨幣の中立性は成立しないことを理解する.
9.1 古典派マクロ経済モデルの市場均衡および金融政策
古典派マクロ経済モデルの枠組み
完全雇用モデルに対応して, CASE Ⅱにしたがうことにする.
政府部門がない場合,古典派マクロ経済モデルの各市場均衡式は次のように表せる.
古典派モデルの各市場均衡式
財市場 Y = C(w/P) + I(i)
フロー 労働市場 NS(w/P) = ND(w/P)
債券市場 S(i,Y) = I(i)
ストック 貨幣市場 M =kPY
未知数:実質賃金率w/P,実質利子率 i,物価水準 P
各関数の定義
実質生産関数 Y = F(K0,N)
実質消費関数 C = C(w/P)
実質投資関数 I = I(i)
実質貯蓄関数 S = S(i,Y)
実質労働供給関数 NS = NS(w/P)
実質労働需要関数 ND = ND(w/P)
名目貨幣供給関数 MS = M
名目貨幣需要関数 MD = kPY*
図をもちいて, 古典派マクロ経済モデルの3つの変数w/P,i,物価水準Pがどのように決まるかを説明する.
古典派では,家計の主体的均衡から,家計の消費需要関数,労働供給関数、貯蓄関数が導かれる.古典派では,政府は均衡財政を取る.すなわち,政府支出G0,租税T0 とすると,均衡財政はG0=T0である.
消費財と余暇時間の選好
家計の消費需要関数,労働供給関数および貨幣需要関数を同時に求める.期間は2期間とする.第1期に貯蓄できるが,第2期では,遺産を残さない.消費者は,消費財を束として,余暇時間との間の選好関係を考える.家計の効用関数をu = c1 c2 l1 l2とする.家計は,労働することによって,所得を得るが,来期のために、貨幣で貯蓄する.それを消費財の束(c1,c2)にすべて支出する.消費財の束の価格は,(p1,p2)とする.一方,市場が開かれている短期において,各期間の総時間を同じTとし,家計が,労働に費やす時間はT-l1,余暇時間(l1,l2)とする.労働は,時間によって測られるとする.家計の初期貨幣保有高は,m0,期間1の貨幣保有高m1をとする.これが貯蓄である.
古典派モデルは、元来、財・債券市場と貨幣市場が,分離され,貨幣市場では物価が決定されることを示している.経済主体の予想形成を入れるため,2期間貨幣モデルに変更する.古典派の消費者の価格予想が可能な、2期間貨幣モデルを、以下の問題Iで解きました。期間1の価格は,市場価格p1を所与としている.期間2の価格p2は,主観的予想価格である.期待形成は,①静態的予想,②適合的予想,③合理的予想,④期間1において決まる,先物市場価格を客観的予想として,もちいる場合を想定する.
家計は,消費財の量(c1,c2)と余暇時間(l1,l2)に対して,序数的効用を持つとする.効用関数であらわせば,u=u(c1,c2,l1,l2) である.さらに、コブ・ダグラス型の効用関数u=c1 l1+c2l2を仮定する.予算制約式は,p1c1+m1=w1(T-l1)+m0,p2c2=w2(T-l2)+(1+i)m1,ただし,0 ≦l1≦
T,0 ≦l2≦
Tである.予算制約式の右辺の各w1, w2は,名目賃金率である.金融市場において,貨幣m1は利子率iで資産運用できるとする.
家計は,予算制約式のもとで,効用関数を最大にするよう,消費量と余暇時間の組み合わせを選好する.
問題I 消費量(c1,c2),余暇時間(l1,l2),総時間(T1,T2),消費財価格p1,p2,時間給w1, w2,貨幣保有高m0,m1,労働量N1=T-l1,N2=T-l2とする.p1c1+m1=w1(T-l1)+m0,p2c2=w2(T-l2)+(1+i)m1
max u=c1 l1+c2l2 subject to p1c1+m1=w1(T-l1)+m0,
{ c1,c2,l1,l2 } p2c2=w2(T-l2)+(1+i)m1.
解 2期間の予算制約式は, (1+i)p1c1+p2c2=(1+i){w1(T-l1)+m0}+w2(T-l2)である.ラグランジュの未定乗数法によって,最適解を求める.
L=c1 l1+c2l2-λ[(1+i)p1c1+p2c2-(1+i){w1(T-l1)+m0}-w2(T-l2)]とおく.
∂L =l1-λ1p1=0,∂L =c1-λ1w1=0,
∂c1
∂l1
∂L =l2-λ2p2=0,∂L =c2-λ2w2=0,
∂c2
∂l2
∂L =(1+i)p1c1+p2c2-(1+i){w1(T-l1)+m0}-w2(T-l2)=0.
∂λ
ゆえに,
c1=λw1,c2=λw2,l1=λp1,l2=λp2.c1=(w1/p1) l1
.c2=(w2/p2) l2 .
c2=(w2/w1)c1
l1=(p1/w1)c1
l2=(p2/w2)c1
(1+i)p1c1+p2c2-(1+i){w1(T-l1)+m0}-w2(T-l2)=0.
(1+i)p1c1+p2(w2/w1)c1-(1+i){w1(T-(p1/w1)c1)+m0}-w2(T-(p2/w2)c1)=0.
{(1+i)p1+p2(w2/w1)+(1+i) p1+p2}c1=(1+i)(w1T+m0)+w2T
{(1+i)p1+p2(w2/w1)+(1+i) p1+p2)}c1={(1+i)w1+w2}T+(1+i)m0
c1*=[{(1+i)w1+w2}T+(1+i)m0]/{2 (1+i)p1+p2+p2(w2/w1)}
l1*=(p1/w1)c1*.
最適貨幣保有高m1*は,次のようになり,これが最適貯蓄である.
p1c1*+m1*=w1(T-l1*)+m0 ,
m1*=w1(T-l1*)+m0-p1c1*=w1(T-(p1/w1)c1*)+m0-p1c1*
=w1T+m0-2p1c1*=w1T+m0-2p1[{(1+i)w1+w2}T+(1+i)m0]/{2 (1+i)p1+p2+p2(w2/w1)}
最適余暇時間l1*から,労働供給量N1*が決まる.
N1*=T-l1*=T-(p1/w1)c1*=T-(p1/w1)[{(1+i)w1+w2}T+(1+i)m0]/{2 (1+i)p1+p2+p2(w2/w1) □
以上の結果から,古典派の消費関数c1*は,実質賃金率w1/p1,2期間の所得(1+i)w1+w2}T,貨幣保有高m0,利子率iに依存する.貨幣需要関数m1*および労働供給関数N1*は,消費関数と同様である.
債券市場では,企業の投資関数が,p. 47-48のように,I=(αp1/i1)Y1-K0で決まる.
効用関数,生産関数にコブ・ダグラス型を仮定すれば,計算式の表示は,複雑になるが,財市場,労働市場,債券市場,貨幣市場で,3つの変数w/P,i,物価水準Pの均衡値が求められる.10.1.1項に,コブ・ダグラス型生産関数を仮定して,労働需要関数を導き,古典派の労働市場均衡式を求めている.
古典派の財政政策は,均衡財政が原則であるから,政府支出の増加は,増税で賄う.増税の分だけ,民間の貯蓄は減るから,民間の投資は減り,利子率が上昇する効果が出る.古典派の金融政策は,貨幣市場の均衡式M=kPYから,貨幣数量説「貨幣供給量Mを増加させれば,物価Pがその分上昇する」が成立するので,通貨の価値が下落する.貨幣の価格は,均衡式を変形し(1/P)M=kYから,1/Pで計る.Pが上昇するならば,逆数は下落する.貨幣の中立性は,「実質所得Y1が,実質賃金率w/Pで決まるので,貨幣の増加に影響されない.」ことをいう.
貨幣を導入した問題Iによって,家計の3市場の需要関数,供給関数を求める場合,貨幣数量説および貨幣の中立性は,計算中である.
古典派モデルでは,財政政策は,利子率を上昇させ,民間投資を減少させる.金融政策は,物価を上昇させる.実質所得は変化しない.労働市場は,常に,完全雇用である.
今週(2022年11月7日~11月11日)の影響度
昨年の金融論ノートでは、
2021年「11月2日岸田首相が衆議院選挙後、記者会見をし、成長・分配のために、数十兆円を投入し、賃上げをする企業に給付金、非正規労働者等、低所得者に給付金、今冬のコロナ対策を表明しました。2日米連邦公開市場委員会が3日まで開かれました。FRBは、11月から量的緩和の縮小に踏み切りました。22年6月まで、月1200億ドルの債券購入を月150億ドルずつ8回減らしていく計画です。4日にOPECプラスの閣僚協議がありました。原油追加増産は見送りました。」
岸田政権は、1年を経過しましたが、政府公約を成長・分配のため、所得補てんを数十兆円投入したはずですが、2022年2月24日ウクライナ戦争下、インフレーションが倍増し、FRBの利上げは、会合ごとに、0.75%上げてきました。岸田首相の「新しい資本主義」は、政府の成長プランはなく、コロナ対策で、強制的に経済社会活動が制限されたため、企業に休業給付金、非正規労働者等、低所得者に所得補てんするという、社会主義政党的な政策をとっています。しかし、移動制限解除後も、給付金、分配に給付金という政策に変化はありません。
海外資本は、資産市場から、引き揚げが目立つ1年でした。米国の機関投資家の岸田政権の「新しい資本主義」に対する評価は、企業の配当を減らし、従業員に分配を増やす、最低賃金を引き上げ、労働分配率を高めるというので、好配当は期待できないから、資産市場から撤退するということです。
黒田日銀総裁が、4月からの消費者物価指数が、2%を越え、半年、継続して、2%を越えても、金融緩和を持続しています。岸田政権の賃金率の2%以上は達成していないことが理由で、金融緩和を続行しています。岸田と黒田は、財政政策と金融政策の持ちつもたれつをして、政府は国の借金、国債で労働者に所得を補てんしているだけで、コロナ禍の行動制限を解除は遅れ、海外訪問者の入国制限は、まだ、完全に解除ではなく、経済成長の2%以上実現はしません。政府がコロナで経済社会活動を制約している間、新しいパイは大きくならず、パイの分け方を、労働者に大きくしようというのは、資本主義の運動法則から言って、不可能であった。
先週のイベントは、11月1日、米連邦公開市場委員会(FOMC)を2日まで、開かれ、FRBの政策金利は、0.75%上げ、4%としました。
今週のイベントは、6日から、第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議COP27が18日まで、エジプト・シャルムエルシェイクで開かれます。8日に、米中間選挙があります。11日、中国ネット通販セール「独身の日」があります。ASEAN関連首脳会議がプノンペンで13日まで開かれます。
経済統計は、次の発表がありました。
予想値 実現値
2日 米FOMC 4% 4%
4日 米10月雇用統計 3.6% 3.7%
経済統計は、次の発表があります。
予想値
7日 中10月中国貿易統計 7,035億元
8日 日9月家計調査(総務省) 2.7%
9月景気動向指数一致 101.2
先行 97.8
9月毎月勤労統計
9日 日9月国際収支経常収支 2,076億円
貿易収支 -16,731億円
10月景気ウオチャー調査
中9月消費者物価指数 2.4%
10日 米10月消費者物価指数 8.0%
日本 8月 9月
GDP(前期比)
消費コンビニ売上高 982,042百万円 8,983億円
スーパー売上高 110,562,504万円 1兆427億円
百貨店売上高 349,481,514千円 3813億円
投資 1393億円 150,820百万円
輸出 5兆1710億円5600万円 8兆8187億円
輸入 6兆9075億円3500万円 10兆9126億円
物価指数 3.0% 3.0%
利子率 -0.1% -0.1%
株価 27819.33(8/10) 28065.28(9/8)
(第2金曜日の前営業日)
為替レート(中心) 135.2(8/10) 144.4(9/8)
原油価格 96(8/10) 89(9/8)
ドバイ、現物1バレル、ドル、11月渡し 12月渡し
(第2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率 2.5% 2.6%
景気動向先行指数 98.9 101.7
一致指数 100.1 100.9
第10回目 2022年11月14日
要点 9. 2 ケインズ・マクロ経済モデル市場均衡および金融政策
ポイント 線形化したモデルで、均衡を求める
・各関数の定義
・市場均衡式
・均衡解を求める
・財政・金融政策の比較静学効果を求める
ケインズ・マクロ経済モデルは、財・サービス市場、労働市場の2つのフロー市場とストック市場である貨幣市場、合わせて3つの市場で構成される。政府部門が導入される。輸出・輸入は省く。不完全雇用モデルに対応して、CASE Ⅰにしたがう。
ケインズ・閉じたマクロ経済モデルの各市場均衡式
財市場 Y =C(Y-T0)+I(i)+G0 (45度線による均衡図示) 9.1
フロー または S(Y-T0)+T0= I(i)+G0 (貯蓄・投資の均等図示) 9.2
9.2式の導き方
貯蓄の定義S≡Y-T0-CからY≡C+S+T0を財市場の9.1式左辺に代入し,
C+S+T0=C+I+G0よりS+T0=I+G0 .
労働市場 NS(w0)=ND(w0/P)
ストック 貨幣市場 M/P =kY+L2 (i)
未知数:Y,i,P 政府支出Gおよび租税Tは外生変数である.
各関数の定義 線形化の定義
生産関数 Y = K0αNⅠ-α
消費関数 C = C(Y-T0) C=C0 +c(Y-T0)
投資関数 I = I(i) I=I0-bi
労働供給関数 NS
= NS(w0) NS=w0
労働需要関数 ND = ND(w0/P) ND=P(1-α)Y/N
実質貨幣供給関数 MS = M/P
実質投機的貨幣需要関数 L2 = L2 (i) L2=-hi
実質貨幣需要関数 LD = kY+L2 (i) LD=kY-hi
ここで,w0は協定貨幣賃金率,Pは物価水準である.
古典派とケインズモデルとの違い
・消費関数が、実質可処分所得に依存する。
・労働供給関数が、使用者側との協定賃金率w0に依存する。組合に所属しない労働者は、考慮されない。
・貨幣需要関数について、新古典派のマーシャルは、マーシャルkの分ほど、名目所得PYを、次期の取引のために保蔵するとして、貨幣市場均衡式をM=k
P Yとした。ケインズは、貨幣保有の動機として、取引動機、予想される支出、たとえば、冠婚葬祭、旅行、耐久消費財の購入などのための予備的動機および資産の一種としてゼロ収益率貨幣を投機的動機に挙げた。取引動機および予備的動機は、マーシャルの設定と同じ、実質需要kYで表され、実質投機的需要は、債券利回りiに依存し、L2 (i)であらわす。これらの貨幣需要を加えた貨幣の実質需要関数LD =kY+L2 (i)を流動性選好関数という。貯蓄Sのうち、取引需要および予備的需要は、kYで決まり、残りは、蓄積された貸借対照表勘定にある貨幣残高に追加され、他の資産と何らかの基準で資産選択される。ケインズの貨幣市場は、取引需要は利子率に反応しないが、投機的需要は利子率に反応するので、縦軸を利子率にとり、横軸を貨幣量にとる図で、貨幣市場の均衡が成立する。債券利回りiは、物価上昇率pの影響を除去した実質利子率riを表す。フィッシャーの関係式を用いると、実質利子率はri= i-pである。
失業状態から完全雇用への移行過程
テキストp.143において、失業状態から完全雇用への移行を、非正規労働者の雇用を含めていない過程を描いている。含める場合は、雇用量は、正規労働者と非正規労働者を加える。ともに労働時間で計る。企業の労働需要関数はそのままで、正規労働者N1および非正規労働者N1nは、前者は協定賃金w1、後者は実質賃金w1/P1で雇用される。P1>1とすると、実質賃金は協定賃金より低い。経済政策か、自然ないし自律回復によって、物価水準がP1からP2 ( P1 <P2 ) に上昇するならば,正規労働者と非正規労働者は増加し、非正規労働者の貨幣賃金は上昇し、協定賃金に近づく。
テキストでは、9.3節において、図をもちいて、ケインズ・マクロ経済モデルの3つの変数Y、i、Pがどのように決まるかを説明している。IS曲線とLM曲線を導いて、実質所得と利子率を決定することを示す。AD曲線とAS曲線を導いて、物価水準を決定することを示す。
線形モデルでない場合は、図で示すしか、方法はない。線形化した場合、以下のように、解が求められる。さらに、政策変更による効果も計算できる。
IS曲線は、財市場の均衡式Y=C(Y-T0)+I(i)+G0に、線形化した関数を代入する。
Y=C0 +c(Y-T0) +I0-bi+G0
bi=-(1-c)Y+C0+I0+G0-cT0 は、IS曲線である。
LM曲線は、貨幣市場均衡式M/P =kY+L2 (i)に、線形化した流動性選好関数を代入
M/P =kY-hiは、
hi =kY -M/P はLM曲線である。
AD曲線は、IS曲線に、i =(1/h)(kY -M/P)を代入する。
(b/h)(kY -M/P)=-(1-c)Y+C0+I0+G0-cT0
{(b/h)(k+(1-c)) Y-(C0+I0+G0-cT0)}P=MはAD曲線である。
AS曲線は、労働市場均衡式w0=P(1-α)Y/Nから、N=P(1-α)Y/w0を生産関数に代入する。Y=K0α{N1-α}=K0α{ P(1-α)Y/w0}Ⅰ-α
P={w0/(1-α)} K0-α/(1-α) Yα/(1-α) はAS曲線である。α=1/2のとき、
P=2w0 K0-1Yとなる。簡単化のため、これをAS曲線とする。総需要=総供給で、
{(b/h)(k+(1-c)) Y-(C0+I0+G0-cT0))}2w0 K0-1Y =M (1)
(b/h)(k+(1-c)) 2w0 K0-1 Y2 -(C0+I0+G0-cT0)2w0
K0-1Y-M =0 (2)
これは、二次関数で、正負2正根がある。正根Y*をAS関数に代入すると、均衡物価水準P*が求められ、LM関数に、これらを代入すると、均衡利子率i*が得られる。
財政政策は、均衡式(2)において外生変数G0、T0、Mを内生変数とみて、全微分する。
(b/h)(k+(1-c)) 4w0 K0-1YdY-(C0+I0+G0-cT0)2w0
K0-1dY-2w0 K0-1Yd G0
+c2w0
K0-1YdT0-dM=0
dG0 (b/h)(k+(1-c)) 4w0 K0-1Y-(C0+I0+G0-cT0)2w0
K0-1
dY = -2 c w0 K0-1Y
dY = 1
dM (b/h)(k+(1-c)) 4w0 K0-1Y-(C0+I0+G0-cT0)2w0
K0-1
金融政策は、均衡式(2)にAS曲線Y=P/2w0 K0-1を代入、PとMについて全微分する。
{(b/h)(k+(1-c))2P dP/w0 K0-1 -(C0+I0+G0-cT0) dP-dM =0
dM (b/h)(k+(1-c)) 2P-(C0+I0+G0-cT0) w0 K0-1
これらの乗数は、GDP:Yと物価水準Pが入って、定数ではなく、変動乗数である。金融政策は、乗数の分子は定数なので、財政政策と違って、分母のGDP:Yと物価水準Pが増加すれば、乗数が減少する。
今週(2022年11月14日~11月18日)の影響度
先週のイベントは、6日から、第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議COP27が18日まで、エジプト・シャルムエルシェイクで開かれます。8日に、米中間選挙がありました。上院はまだ確定しませんが、拮抗、下院は、共和党優勢の予想が、民主党が肉薄の善戦をしました。11日、中国ネット通販セール「独身の日」がありました。ゼロコロナ政策が影響し、商品の売れ行きに変化がありました。中国は、独身状態の男性が増え、出生率の低下が生じています。中国の「西部大開発」の地方格差是正から、「共同富裕」へ、経済成長より分配に重心をおき、中国全土において、所得格差の是正を図る分配政策をします。中国は、男女共稼ぎが原則ですが、中国成長鈍化で、将来所得が減少、マンション価格は、下落しています。不動産業界では、マンション販売がうまくいかず、経営が悪化、不動産開発業者に貸付、住宅購入者の住宅ローンで、収益を上げていた銀行業は、業者の貸付が焦げ付き、新規ローン契約者はいなくなり、債務超過に陥ります。銀行の債務超過を聞きつければ、預金引出しに預金者が押し寄せます。中国の民間銀行に預金保険制度と限度額の払い戻しのペイオフ制度は未整備でしょう。
日本の失われた20年は、右上がりの経済成長と所得上昇、不動産価格の上昇が崩壊し、逆回転した経済成長率および賃金上昇率がゼロ以下、不動産価格の下落率がマイナスになり、3者の関係に平衡状態になる期間が10年以上かかったということです。中国は、経済成長率が毎年1%以上低下、賃金上昇率低下、住宅価格の下落が、実際に生じています。中国人新婚夫婦が将来所得とそれで買える住宅価格とが平衡状態になるまで10年以上かかる。中国経済発展モデルは、日本をベースにしているといわれますが、崩壊するのも同じ崩壊過程をたどる。
ASEAN関連首脳会議がプノンペンで13日まで開かれました。
今週のイベントは、15日20カ国・地域(G20)首脳会議がバリ島で16日まで開かれます。18日APAC首脳会議がバンコクで、19日まで開かれます。
経済統計は、次の発表がありました。
予想値 実現値
7日 中10月中国貿易統計 7,035億元
8日 日9月家計調査(総務省) 2.7% 280,999円(実質2.3%増加)
9月景気動向指数一致 101.2 101.1
先行 97.8 97.4
9月毎月勤労統計(現金給与総額) 275,787円(2.17%増、前年同月比)
9日 日9月国際収支経常収支 2,076億円 9093億円
貿易収支 -16,731億円 -1兆7597億円
10月景気ウオチャー調査 現状 49.9
先行 46.4
中9月消費者物価指数 2.4% 2.1%
10 日米10月消費者物価指数 7.9% 7.7%
経済統計は、次の発表があります。
予想値
15日 日7~9月期国内総生産速報値 0.4%
中10月小売売上高 0.8%
工業生産 4.2%
16日 米10月小売売上高 1.0%
鉱工業生産 0.2%
17日 日10月貿易統計 -16,900億円
18日 日10月消費者物価指数 3.8%
日本 8月 9月
GDP(前期比)
消費コンビニ売上高 982,042百万円 8,983億円
スーパー売上高 110,562,504万円 1兆427億円
百貨店売上高 349,481,514千円 3813億円
投資 1393億円 150,820百万円
輸出 5兆1710億円5600万円 8兆8187億円
輸入 6兆9075億円3500万円 10兆9126億円
物価指数 3.0% 3.0%
利子率 -0.1% -0.1%
株価 27819.33(8/10)
28065.28(9/8)
(第2金曜日の前営業日)
為替レート(中心) 135.2(8/10) 144.4(9/8)
原油価格 96(8/10) 89(9/8)
ドバイ、現物1バレル、ドル、11月渡し 12月渡し
(第2金曜日の前営業日)
個人所得(月間現金給与額)279,346円 275,787円
完全失業率 2.5% 2.6%
景気動向先行指数 98.9 101.7
一致指数 100.1 100.9
第11回目 2022年11月21日
要点 10章 開放マクロ経済モデルと経済政策
10.1 開放マクロ経済モデルにおける労働市場と為替市場
1 労働市場の均衡
2 為替理論と為替市場
10.1 開放マクロ経済モデルにおける労働市場と為替市場
従来のマンデル・フレミング・開放マクロ経済モデルでは、総供給線と総需要線で一般物価水準が決まることは、書かれていなかった。総供給線は労働市場の均衡式である。資本の移動は自由であるが、労働移動の自由はない。労働市場は、国内市場で閉じている。もう一つ、為替市場で購買力平価説か金利平価説かは、書かれていなかった。2021年テキストでは、労働市場と為替市場を陽表的に導入した。
10.1.1 労働市場の均衡
労働市場の均衡から、総供給曲線を導く。労働市場は、ケインズの協定賃金の場合と新古典派の完全雇用の場合と2つある。前者をCASE I、後者をCASE Ⅱとする。労働の需要関数はともに同じだが、労働供給関数の理論が異なる。
CASE I
ケインズの労働市場では、協定賃金で働ける労働者が雇用される。いわゆる、非正規労働者は、時間給で働く。完全雇用は、労働力人口で計り、労働組合員であるとする。日本の労使協議の慣行では、春の労使協議で、協定賃金のベースアップ率およびボーナスの月数を決定する。非正規労働者は、最低賃金が政府の審議会で決定され、各都道府県でその額の格差はある。非正規労働市場は、完全競争市場メカニズムが働いているが、ケインズモデルでは、協定賃金で働く労働者と最低賃金以上の働く非正規労働者を合わせて、2つの労働市場を総労働市場とすべきであるが、教科書では、前者だけを取り扱う。労働者が求職活動中である場合を摩擦的失業という。その国に発生した経済ショックで、構造的に失業が発生した場合、労働力人口を「働く意思のある労働者がすべて雇用される労働者人口」と定義すると、完全失業者は、構造的失業者をいう。協定賃金下、完全競争賃金を決定する労働市場均衡を図示できる(西村和志『金融論』晃洋書房、2005年、pp.254-257)、ここでは、協定賃金下の労働市場を考える。
摩擦的失業以外の協定賃金w1で働く意思のある労働者数Nとする。労働者の労働供給関数は、w=w1である。企業の労働需要は、利潤最大化で決まる。労働需要関数は、利潤最大化の必要条件から、w=PFNである。労働市場の均衡式はw 1=PFNとなる。
生産関数に、コブ・ダグラス生産関数Y=K0 αN 1-αを仮定し、労働市場の均衡式から、一次関数の総供給線ASを求める。
FN=(1-α)
K0 αN -αを労働市場の均衡式w 1=PFNの右辺に代入し、
w 1=PFN=P (1-α)
K0 αN -α=P (1-α) K0 αN 1-α/N=P (1-α)Y/N 。
N=P (1-α)Y/w 1を生産関数Y=K0 αN 1-αに代入し、総供給関数ASは
P={w 1/ (1-α)K0}Yとなる。物価水準Pは、国民所得Yに正比例する。
CASE Ⅱ
新古典派の労働市場では、労働者は時間給で働く。働きたい労働者はすべて雇用される状態を完全雇用と定義する。ケインズの協定賃金と時間給の労働者の二分はない。労働の需要関数は、ケインズと同じである。
第9回目の問題Iでは、2期間、貨幣を資産市場で運用した。ここでは、1期間で、貨幣を保有するだけで、資産市場で運用しない。貨幣保有量は、最適問題の前に、保有量mが決められている。労働の供給関数は、消費者の消費財と余暇時間の効用関数を予算制約式のもとで、最大化し、最適消費量と余暇時間を求め、総労働時間から最適余暇時間を差し引き、最適労働量を求める。消費者は次の問題を解く。
問題Ⅱ 消費量c、余暇時間l、総時間T、時間給w、貨幣保有高m、労働量N=T-lとする。
max u(c,
l ) subject to pc = w (T-l )+m
{c, l }
解 ∂u =λp 、∂u =λw より、-dc =w およびpc = w (T-l)+mで求める。
∂c ∂l dl p □
効用関数u(c, l)が特定化されれば、次のように、最適余暇時間が求められ、最適消費量、最適労働供給量が決まる。
例題 u(c, l)=cl とする。l=λp、c=λwだから、c=λw=(w/p)l。これを
予算制約式pc = w (T-l ) +mに代入して、p(w/p)l= w (T-l ) +m。
l*=(1/2)(T+m/w)が最適余暇時間である。最適労働供給量はN*=T-l*=T-(1/2)(T+m/w)=(1/2)( T+m/w)である。最適消費量はc*=(w/p)l*=(w/2p)(T+m/w)である。 □
労働の需要関数w=P (1-α)Y/Nから、N=P (1-α)Y/wである。新古典派労働市場の均衡は、(1/2)( T+m/w)=P (1-α)Y/wとなる。したがって、総供給関数は、P Y=(1/2)( T+m/w) w/(1-α)と表せ、双曲線である。
CASE IおよびCASE Ⅱは、前者の総供給曲線は原点を通る直線であり、後者は原点に対して凸の直角双曲線であるから、交点が一意に決まる。すなわち、P={w / (1-α)K0}YをP=AYとおき、P Y=(1/2)( T+m/w) w/(1-α)をP Y=Bとおくと、P 2=A B。P =√A B。
10.1. 2 為替レートの決定理論と為替市場
1) 購買力平価説
国際取引される財で、物価指数を作ると日本の物価指数をP、世界の物価指数をPwとし、名目為替レートをeとすれば、P=ePw 表せる。これを購買力平価という。購買力平価説は長期的に成立するといわれる。
P=ePw の両辺に対数をとると
log P = log e + log Pw
p=log P 、pw=log Pw 、s = log eと表して、p=pw+sとも表される。
2)金利平価説
円金利i、ドル金利iw、直物為替レート(円/ドル)es、先物為替レートefとする。
現在の円 円資金市場 将来の円
1円 → (1+iJ)円 =(1+iA)ef / es
直物為替市場es (円/ドル) ↓ ↑ 先物為替市場ef (円/ドル)
1/ esドル (1+iA)/ esドル
1ドル → (1+iA)ドル
現在のドル ドル資金市場 将来のドル
現在の1円は、円市場で運用すると将来では(1+iJ)円となる。取引コストがないとすれば、現在の1円でドルを直物為替市場で買うと、1/ esドルとなり、ドル資金市場で運用すれば、将来では(1+iA)/ es ドルとなる。先物市場でこのドルで円を買えば、将来では(1+iA)ef / es円となる。どちらの市場も、円価値は、同じであるから、裁定取引が働き、
(1+iJ)=(1+iA)ef / es 。
したがって、先物カバー付き金利裁定条件は、ef/es=(1+iJ)/(1+iA)である。
両辺から1を引くと
(ef-es)/es =(iJ- iA)/(1+iA)。
近似的には、
(ef-es)/es ≒ iJ- iA 。
先物カバーがない場合は、(ef-es)/esを為替レートの変化率e^=(e’-es)/esに置き換える。すなわち、
e^= iJ- iA 。
3)合理的期待仮説
合理的期待仮説では、為替レートの変化率の主観的期待値E[e^]が、モデル内で決定される為替レートの変化率の客観的期待値E[s˙]に一致する。すなわち、
E[e^]=E[s˙]。
合理的期待仮説を先物為替市場に適用すると、市場参加者の主観的先物為替レートが、市場で決定される為替レートに等しくなる。したがって、先物為替市場がある場合は、先物為替レートefを、金利平価説に代入すれば、直物為替レートが決まる。
近似的には、金利平価説は(ef-es)/es ≒ iJ- iAであるから、直物為替レートesは
es = ef 。
1+iJ- iA
先物為替市場の均衡理論があれば、先物為替レートefは、均衡先物為替レートになる。以下の理論は、直物為替市場の均衡式から、均衡直物為替レートを求める。貿易収支と資本収支の需給を同時に取り扱うから、購買力平価説に、先物カバーなしの金利裁定条件式を考慮している。ドーンブッシュ理論に、適合的予想を機械的に入れるよりは、先物為替レートを入れる方が、実践的である。さらに、先物為替市場理論を用いる方が、より経済理論的整合性が高まるので、現在、研究中である。
変動相場制下の為替市場
実質貿易収支NXをNX=Ex-Im=mwYw-e Pw(mY ) /P、資本収支CFをCF=ΔB/i-e ΔBw/iwとおく。m、mwは、限界輸入性向とし、国際収支BPはBP=NX+CF/Pとする。世界通貨W 1単位当たりの円表示¥の為替レート(¥/W)を自国通貨建という。世界通貨がドルの場合、自国通貨建為替レートは円/ドルで計る。日本債券Bは円表示、世界債券Bwは世界通貨表示とする。期間内の債券量をΔB、ΔBwとする。それぞれの債券価格は、永久債価格の公式PB=1/i、PBw=1/iwで表す。自国通貨建為替市場は円需要をD¥ で表し、円供給をS¥で表す。
円供給は、日本の貿易財を輸入する海外輸入業者がその輸入代金P (mwYw)を、ドルを売って円で支払う。国内証券会社が国内債の注文ΔB/iを海外証券会社から受け、ドルを売って円で支払う。為替市場の円供給は、S¥ =P(mwYw)+ΔB/iである。
円需要は、海外の貿易財を輸入する国内輸入業者がその代金e Pw(mY )を、円でドルを買って支払う。国内証券会社が外債の注文e ΔBw/iwを海外証券会社に発注し、円でドルを買って支払う。為替市場の円需要はD¥ =e Pw(mY )+e ΔBw/iwである。したがって、自国通貨建為替市場の均衡は、S¥=D¥、すなわち、
P(mwYw)+ΔB/i=e Pw(mY ) /P +e ΔBw/iw
によって、均衡為替レートが決まる。
2020年の金融論ノートでは、2021年の10.1図と違って、教科書的部分市場均衡図のように、外国為替需要曲線は、右下がり、外国為替供給曲線は右上がりに描いていた。縦軸は為替レートであり、為替レートは、相対価格表示であり、自国建て為替レートの場合、¥/$である。このレートが上昇すると、1ドル買いの円貨は増加する。横軸は、1ドルの外国為替を買うための円貨を表している。為替レートの市場均衡図を表す際、縦軸の通過相対交換比率と横軸の為替手形という証券を買う円貨を表していることに留意しなければならない。筆者は、教科書にない図を描いている。つまり、自国通貨建ての為替レートを縦軸に、為替手形の円貨高を横軸に取って、ドル為替需要を外国為替需要関数とし、円為替供給を外国為替供給関数とした。
自国通貨建為替市場の均衡は、S¥=D¥、すなわち、
P(mwYw)+ΔB/i=e Pw(mY ) /P +e ΔBw/iw
によって、均衡為替レートが決まる。この均衡式をそのまま図示すると、D¥=e {Pw(mY ) /P +ΔBw/iw}は、図10.1において、原点を通る直線になり、傾きのPw(mY ) /P +ΔBw/iwが、世界債券購入量ΔBwの増加で右に回転する。外国為替供給関数は、S¥=P(mwYw)+ΔB/iであり、為替レートには反応しない。海外投資家が円債券ΔBを購入すれば、右へシフトする。
資本移動は、(1) i <iwの場合、日本人が世界債券を購入するため、資本流出e ΔBw/iwが生じる。資本流入ΔB/iは0である。(2) i >iwの場合、資本流出は0であり、資本流入ΔB/iが生じる。
(1) i <iwの場合、D¥1→D¥2、本文154ページ、図10.1、均衡点Aにおいて、世界利子率が国内利子率より高いとする。資本移動が自由であるから、資本流出e ΔBw/iwが生じる。図10.1において、ドル買いの円需要はD¥2 =e Pw(mY )+e ΔBw/iwで、右上に回転する。ドル売りの円供給はS¥1=P(mwYw)である。国内利子率iが世界利子率iwに等しくなるまで、資本流出する。均衡はB点である。
(2) i >iwの場合、S¥1→S¥2、図10.11、均衡点Bにおいて、世界利子率iwが国内利子率iより低いとする。資本移動が自由であるから、資本流入 ΔB/iが生じる。図10.1において、ドル売りの円供給はS¥2 =P(mwYw)+ΔB/iで、右にシフトする。円供給はS¥1=P(mwYw) +ΔB/iである。国内利子率iが世界利子率iwに等しくなるまで、資本流入する。均衡はC点である。
ウクライナ戦争によるエネルギー・食糧世界インフレーションと為替レート
以上の直物為替市場のマクロ理論で、2022年に入って、FRBは、会合ごとに、0.75上昇させてきたことと日本銀行の対応を考察することができる。日本は、実践的に、日米間の金利差が開くと、資本流出が生じ、さらに、投機的になる。FRBは、国内インフレが国内経済に危険な水準になったので、ドル高が進み、景気減速を犠牲にしても、金利を上げて来た。日本銀行は、金利差の投機が、円安を加速することには無頓着であった。150円近くに円安になると、財務省が為替介入をした。2022年11月では、金利差要因よりは、冬季のエネルギー供給に火力に、震災後変化なく、依存しているため、円安で輸入額が膨張し、貿易赤字差で、円安が続いているのである。2023年3月まで、貿易赤字は持続するから、円安は持続する。
円安で輸出は増加しているが、日本の石炭・原油・LNGは、東北震災後、原発が止まり、火力に電源が依存していることを放置しているため、ウクライナ戦争で、化石燃料の高騰と円安で、輸入額が膨張してしまうのである。すなわち、ドル買いの円需要はe Pw(mY )であるから、2022年1月5日為替レート116.2円/ドル、1バレル=78.3ドルであった。世界物価指数Pw1、mY=1(バレル)とする。1バレルを輸入するための円需要はe Pw178.3×1=116.2Pw1×78.3×1=9098.46Pw1。2022年11月11日為替レート142.45円/ドル、1バレル=90.7ドルであった。世界物価指数は、その間、10%上昇したとする、Pw2=Pw1×1.1。同様に計算すると、142.45×1.1Pw1×90.7×1=14212.2365Pw1円。日本政府および日本銀行が、世界インフレーション高波をもろにかぶって、1バレルは1.56倍で輸入しているのであった。経済専門家および野党は、国民生活に多大な困窮をあじあわせ、両者は、相変わらず無策で恥ずかしくないのかと思っている。
地球温暖化対策として、化石燃料を廃止して、計画的に、国の責任で、代替エネルギー転換を促進することになっている。2015年のパリ協定から、2020年から2030年まで、計画を実施し、その間、東北震災の緊急事態の電力供給から脱却、パリ協定に沿った正常化に入ったわけではない。
政府が毎年、全経済主体に対して、脱化石燃料を計画的に実施してきたならば、突発的なウクライナ戦争をきっかけとする化石燃料の高騰ではあるが、その輸入額が年々、減少していく。
為替市場の動向で、資本流出は金利差で、始動するが、中央銀行が、注視して、金利差を放置すると、世界金利水準が上昇すれば、その国の為替レートは減価することは、理論的に、実践的に、事実である。そのまま放置すると、減価率が拡大し、その国の貿易構造で、世界インフレの原因である原材料を輸入する量が多ければ多いほど、輸入額が減価率ほど膨張する。輸入額ほど、ドルを買い、円を売るから、為替レートは減価圧力を受ける。これも、事実である。世界インフレが収まらず、世界金利水準が高止まりする限り、日本の円安は持続する。輸入物価の高騰が原因の国内インフレは、収まらない。
今週(2022年11月21日~11月25日)の影響度
先週のイベントは、15日20カ国・地域(G20)首脳会議がバリ島で16日まで開かれました。18日APAC首脳会議がバンコクで、19日まで開かれました。6日から、第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議COP27が18日まで、エジプト・シャルムエルシェイクで開かれ、20日まで、延長され、途上国支援の「損失と被害」の基金が創設されました。
今週のイベントは、20日サッカーのワールドカップカタール大会が開かれます。
経済統計は、次の発表がありました。
予想値 実現値
15日 日7~9月期国内総生産速報値 0.4% -0.3%
中10月小売売上高 0.8% -0.5%
鉱工業生産 4.1% 4.0%
日10月鉱工業生産 -9.8% 9.6%
16日 米10月小売売上高 1.0% 1.3%
鉱工業生産 0.2% -0.1%
17日 日10月貿易統計貿易収支 -16,900億円 -21,623億円
輸入 11兆1638億円
輸出 9兆15億円
18日 日10月消費者物価指数 3.7% 3.7%
経済統計は、次の発表があります。
予想値
21日 日全国コンビニエンスストア売上高 ―
24日 日11月月例経済報告 景気先行指数
景気一致指数
10月工作機械受注額
10月全国スーパー売上高
10月先刻百貨店売上高
25日 日11月東京都区部の消費者物価指数 3.5%
日本 8月 9月 10月
GDP(前期比)
消費コンビニ売上高 982,042百万円 8,983億円
スーパー売上高 110,562,504万円 1兆427億円
百貨店売上高 349,481,514千円 3813億円
投資 1393億円 150,820百万円
輸出 5兆1710億円5600万円 8兆8187億円 9兆15億円
輸入 6兆9075億円3500万円 10兆9126億円 11兆1638億円
物価指数 3.0% 3.0% 3.7%
利子率 -0.1% -0.1% -0.1%
株価 27819.33(8/10)
28065.28(9/8) 26237.42(10/13)
(第2金曜日の前営業日)
為替レート(中心) 135.2(8/10) 144.4(9/8) 146.85(10/13)
原油価格 96(8/10)
89(9/8) 91.5(10/13)
ドバイ、現物1バレル、ドル、11月渡し 12月渡し
(第2金曜日の前営業日)
個人所得(月間現金給与額)279,346円 275,787円
完全失業率 2.5% 2.6%
景気動向先行指数 98.9 101.7
一致指数 100.1 100.9
第12回目 2022年11月28日
要点
10.2 マンデル・フレミング開放マクロ経済モデルの枠組み(線形モデル)
現行均衡点から長期均衡点への移行
10.2.1 マンデル・フレミング・モデルCASE I
10.2.2 固定為替相場制下、財政政策の有効性・金融政策の無効性
10.2.3 変動為替相場制下、財政政策の無効性・金融政策の有効性
10.2 マンデル・フレミング開放マクロ経済モデルの枠組み(線形モデル)
第9章における不完全雇用モデルに対応して、マンデル・フレミング・モデルの不完全雇用CASE Iにしたがうことにする。ドーンブッシュ・フィッシャー『マクロ経済学上・下改訂第4版日本版』1989にしたがった線形化をしている。投資関数、流動性選好関数は、債券価格表示の方法もあるが、一次関数で線形化している。
10.2.1 マンデル・フレミング・モデルCASE I
不完全雇用モデルに対応して、CASE Ⅰにしたがう。
各関数の定義 線形化の定義
生産関数 Y = K0αNⅠ-α
消費関数 C =C0 +c(Y-T0)
投資関数 I =I0-bi
労働供給関数 NS =w0 (CASE
Iケインズの場合)
労働需要関数 ND = P (1-α)Y/N
実質貨幣供給関数 MS = M/P
実質投機的貨幣需要関数 L2 = -hi
実質貨幣需要関数 LD = kY-hi
貿易・サービス収支関数
NX = mwYw-e Pw(mY ) /P
自国通貨建為替供給関数 S¥ = P(mwYw)+ΔB/i
自国通貨建為替需要関数 D¥ = e Pw(mY )+e ΔBw/iw
w0:協定貨幣賃金率 P:物価水準、i:国内利子率、iw:世界利子率、e:為替レート、
Y:国民所得、Yw:世界国民所得
マンデル・フレミング・モデルCASE Iの各市場均衡式
財市場 Y=C0 +c(Y-T0) +I0-bi +G0+mwYw-ePw(mY ) /P
労働市場 w0=P (1-α)Y/N
貨幣市場 M/P=kY-hi
自国通貨建為替市場 P (mwYw)+ΔB/i=ePw(mY ) +eΔBw/iw
(1)i <iwの場合,資本流入ΔB/i=0,(2) i >iwの場合,資本流出eΔBw/iw=0とする.
未知数:Y,i,P ,e 政府支出G0および租税T0は外生変数である.
貿易収支NXをNX =Ex-Im=mwYw-ePw(mY ) /P,資本収支CFをCF =ΔB/i-eΔBw/iwとおく.
国際収支BPはBP=NX+CF/Pとする.
(1)i <iwの場合,資本流入ΔB/i=0,(2) i >iwの場合,資本流出eΔBw/iw=0とする.
均衡の決定
財市場均衡式はY=C0 +c(Y-T0) +I0-bi +G0+mwYw-e Pw(mY ) /Pであり、IS曲線という。
貨幣市場均衡式はM/P=kY-hi であり、LM曲線という。
IS曲線に、LM曲線の利子率i=(1/h)(-M/P+kY )を代入すると、次の総需要曲線ADが求められる。
(1-c+e Pwm/P)Y= C0 -cT0+I0+G0+mwYw-(b/h)(-M/P+kY )
労働市場均衡式からP={w 0/ (1-α)K0}Yとなる。総供給曲線ASという。
ASから、Y =A P
、A=(1-α)K0/w 0 をADに代入すると3市場が均衡する価格と為替レートの組み合わせであるQQ線が導かれる。
(1-c+e Pwm/P) A P
= C0 -cT0+I0+G0+mwYw-(b/h)
(-M/P+k A P )
(1-c) A P+e PwmA=U-(b/h)
(-M/P+k A P )、ここで、U=C0 -cT0+I0+G0+mwYwとする。
e PwmA=U -(1-c+kb/h) A P+(b/h)M/P。これをQQ線という。 (1)
最後に、為替市場からi <iwの場合、P(mwYw)=ePw(mY )+eΔBw/iw
Y =A Pを代入すると、P(mwYw)=ePw(m A P)+eΔBw/iw
e=P(mwYw)/{ Pwm A P+ΔBw/iw }。これをEE線という。 (2)
現在均衡点の求め方
方程式は次の4本で,未知数は,Y,P,i,eであるから,この線形モデルでは,Pの2次方程式となり,正負の実根がある.
i <iwの場合,
e PwmA=U -(1-c+kb/h) A P+(b/h)M/P (1)
M/P=kY-hi
Y =A P
P(mwYw)=ePwm A P +eΔBw/iw (2)
ここでは,(1),(2)の式から,解(P1 *,e1 *)がえられ,図10.1に図示する.
QQ線とEE1線との交点は、図10. 1において、Pの2負根と1正根で、3交点がある。QQ線とEE1線との交点Aが均衡点(P1
*,e1 *)である.
長期均衡点への移行
図10.
1において、資本流出eΔBw/iw>0が生じ、資本移動の完全性によって、i =iwとなるまで続く。
ΔBw/iwは0になり、利子率の長期均衡はi =iwである。EE1線の縦軸は、e軸方向に移動し、EE2線になる。
資本流出が止ったときの均衡為替レートは、ΔBw/iw =0となり、
e=P
** (mwYw)/Pw(m A P** ) =mwYw/Pwm A
である。これは、購買力平価説の表現になる。
資本流出が止ったとき, CASE Iでは、不完全雇用を仮定しているから、労働市場では、不完全雇用の状態にあるかもしれない。Y
**=A P
**である。
労働市場の長期均衡は、完全雇用国民所得Y f、完全雇用価格P f が長期均衡値である。
P ={w 0/ (1-α)K0}Y、P Y=(1/2)( T+m/w0) w0/(1-α)から、
完全雇用均衡為替レートは、資本流出が止っているから、ΔBw/iw =0となり、
e=P f (mwYw)/Pw(m A P f ) =P f (mwYw)/Pw(m Y f )である。
これは、購買力平価説の表現になる。
貿易収支はNX=mwYw-e Pw(mY ) /P=mwYw-{P f (mwYw)/Pw(mY f )}Pw(mY )/P f =mwYw-mwYw=0であるから、
このとき、NX=0となり、資本収支CF/Pも0であるから、国際収支は0となり国際均衡する。
EE線は、EE1からEE2に移行する。現在均衡点Aは均衡点Bに移行する。資本流出で、完全雇用均衡点Cに移行することはできない。
その結果、1)国民所得は減少する。
2)利子率は世界利子率になる。
3)物価は下落する。
4)為替レートは減価する。ただし、この線形モデルでは、オーバーシュートは比較静学なので発生しない。
今週(2022年11月28日~12月2日)の影響度
先週のイベントは、20日サッカーのワールドカップカタール大会が開かれました。23日日本は初戦、ドイツに勝ちました。12月19日が決勝です。
今週のイベントは、27日サッカー日本対コスタリカ戦で、0-1で負けました。30日FRBパウエル議長の講演があります。
経済統計は、次の発表がありました。
予想値 実現値
21日 日全国コンビニエンスストア売上高 ― 9307億円
24日 日11月月例経済報告 景気先行指数 97.5
景気一致指数 101.4
10月工作機械受注額 141,114百万円
10月全国スーパー売上高 1兆1025億円(1.6%増)
10月全国百貨店売上高 4281億円(11.4%増)
25日 日11月東京都区部の消費者物価指数 3.5% 3.6%
経済統計は、次の発表があります。
予想値 実現値
29日 日10月の有効求人倍率 1.35倍
10月の完全失業率 2.5%
30日 日10月の鉱工業生産指数 5.3%
中11月PMI 48.8
米実質GDP前期比年率 2.6%
1日 米個人所得 0.4%
PCEデフレータ前年比 6.0%
米11月雇用統計 3.7%
日本 8月 9月 10月
GDP(前期比)
消費コンビニ売上高 982,042百万円 8,983億円 9307億円
スーパー売上高 110,562,504万円 1兆427億円 1兆1025億円
百貨店売上高 349,481,514千円 3813億円 4281億円
投資 1,393.9億円 150,848百万円 141,114百万円
輸出 5兆1710億円5600万円 8兆8187億円 9兆15億円
輸入 6兆9075億円3500万円 10兆9126億円 11兆1638億円
物価指数(総合) 3.0% 3.0% 3.7%
利子率 -0.1% -0.1% -0.1%
株価 27819.33(8/10) 28065.28(9/8) 26237.42(10/13)
(第2金曜日の前営業日
)為替レート(中心) 135.2(8/10) 144.4(9/8) 146.85(10/13)
原油価格 96(8/10) 89(9/8) 91.5(10/13)
ドバイ、現物1バレル、ドル、10月渡し 11月渡し 12月渡し
(第2金曜日の前営業日)
個人所得(月間現金給与額)279,346円 275,787円
完全失業率 2.5%
景気動向先行指数 98.9 100.9
一致指数 100.1 101.7
第13回目 2022年12月5日
要点
10.2.3 変動為替相場制下、財政政策の無効性・金融政策の有効性
10.3 マンデル・フレミング・モデルCASE Ⅱ
10.3.1 CASE Ⅱ現行均衡点から長期均衡点への移行
10.3.2 CASE Ⅱ・金融政策の有効性
10.2.3 変動為替相場制下、財政政策の無効性・金融政策の有効性
2)金融政策は有効である
図10.14の現在均衡点Aにおいて、世界利子率iwと国内利子率iは一致しているとする。金融当局は、金融政策によって、ΔM増加させる。QQ線は、QQ1からQQ2に移行する。EE1線は、当局の為替介入政策がないから、そのままである。国内利子率iは、金融緩和によって、低下するから、i<iwとなる。資本流出が始まるから、EE線は、EE1から点線EE2に移行し、均衡点は、QQ2線との交点Bとなる。i=iwとなれば、資本流出が止まり、水平線EE3線とQQ2線との交点Cとなる。点Cは、完全雇用水準とは限らない。金融政策の最終目標が、完全雇用であれば、当局は、政策手段を取って、完全雇用均衡価格水準P fになるまで、さらに、貨幣供給量を増加させる。QQ線が、EE3線と完全雇用均衡価格水準P fで交わる交点Dまで、貨幣供給量を増加させる。QQ線が、右へシフトし、国内利子率は、再び、世界利子率より下がり、為替レートは増価する。資本流出が始まり、為替レートはオーバーシュートして、e3にもどる。
その結果、1)国民所得は増加する。
2)利子率は世界利子率になる。
3)物価は上昇する。
4)為替レートは現在均衡点Aから点Bに移り、均衡点Cに移行するとき、減価する。均衡点Cから完全雇用均衡点Dに移行するとき、為替レートはオーバーシュートして、もどる。
10.3 マンデル・フレミング・モデルCASE
Ⅱ
10.3.1 CASE Ⅱ現行均衡点から長期均衡点への移行
テキスト第9章において、次の古典派モデルを図解した。
財市場 Y = C(w/P) + I(i)
フロー 労働市場 NS(w/P) = ND(w/P)
債券市場 S(i,Y) = I(i)
ストック 貨幣市場 M =kPY
未知数:実質賃金率w/P,実質利子率 i,物価水準 P
第9回において、2期間モデルで、家計部門における、消費、労働、貨幣の最適化を求めている。貨幣は利子率iで運用される。第10回は、貨幣は持ち越されない、老人世帯の最適化をしている。
2期間モデルが新古典派の場合になる。財市場の国民総生産Yは、生産関数に労働需要量を代入すると決まる。消費支出Cは、実質賃金率w/P、貯蓄残高、利子率、租税の関数になる。投資関数は新古典派に変える。政府支出は、外生変数である。輸出・輸入は、ケインズをそのまま使う。労働市場において、企業の労働需要はケインズと同じく、新古典派の利潤最大化で求められる。新古典派の労働供給は、2期間モデルから求められる。CASEⅡの場合、労働市場は、完全雇用となる。労働の需要関数w=P (1-α)Y/Nから、N=P (1-α)Y/wである。新古典派労働市場の均衡は、(1/2)( T+m/w)=P (1-α)Y/wとなる。したがって、総供給関数ASは、P Y=(1/2)( T+m/w) w/(1-α)と表せ、双曲線である。
債券市場は、家計は、国内債券と外国債券を需要する。家計は、Tobinが示したように、国内債券と外国債券に、収益率0の貨幣を加えた資産選好をする。流動選好関数は、一部は貨幣で保有され、家計の取引需要および予備的需要に、資産としての貨幣需要を加えたkPY-Phiになる。新古典派マクロ・モデルは、一般均衡理論のように、需要関数、供給関数が、価格と利子率の関数となる。
CASE Ⅱの各市場均衡式
財市場 Y=C0 +c(Y-T0) +I0-bi +G0+mwYw-ePw(mY ) /P
労働市場 (1/2)( T+m/w)=P (1-α)Y/w
貨幣市場 M/P=kY-hi
自国通貨建為替市場 P (mwYw)+ΔB/i=ePw(mY ) +eΔBw/iw
(1)i <iwの場合、資本流入ΔB/i=0、(2) i >iwの場合、資本流出ΔBw/iw=0とする。
総需要曲線ADは、
(1-c+e Pwm/P)Y= C0 -cT0+I0+G0+mwYw-(b/h)(-M/P+kY )
総供給曲線ASは、労働市場均衡式から(1/2)( T+m/w)=P (1-α)Y/wとなる。
ASから、Y =B/P
、B=(1/2)( wT+m) / (1-α)を、ADに代入すると3市場が均衡する価格と為替レートの組み合わせであるQQ線が導かれる。
e={ U P+(b/h)(M-kB)-(1-c) B }/Pwm P =U/Pwm+{(b/h)M-〔(b/h)k+1-c〕B
}/Pwm P 。 (5)
EE線は、為替市場からi <iwの場合、P(mwYw)=ePw(mY )+eΔBw/iw
Y =B/Pを代入すると、P(mwYw)=ePw(m B/P)+eΔBw/iw
e=P(mwYw)/{ Pw(m B/P )+ΔBw/iw }=P 2 (mwYw)/{Pwm B+(ΔBw/iw) P }。(6)
現行均衡点の求め方
方程式は、次の4本で、未知数は、Y、P、i、eである。
Y=C0 +c(Y-T0) +I0-bi +G0+mwYw-ePw(mY ) /P
(1/2)(
T+m0/w)=P (1-α)Y/w
M/P=kY-hi
P (mwYw)=ePw(mY ) +eΔBw/iw
(5)式と(6)式から、eを消去すると、Pの3次方程式になる。
P
3 (mwYw) Pwm-(ΔBw/iw) U P 2-[Pwm B U-(ΔBw/iw) {(b/h)(M-kB)-(1-c) B
}]P-Pwm B {(b/h)(M-kB)-(1-c) B
}=0
この方程式には、1正根と2負根がある、この1正根をP
*とする。
現行均衡点は、Y *=B/P
*、i*=(kY
*-M/P *)/h、e*= P
* (mwYw)/{ Pw(m B/P
*)+ΔBw/iw }。
長期均衡への調整方法
国内利子率が、世界利子率と乖離していると、資本移動の完全性によって、資本移動が生じ、国内利子率が、世界利子率に近づく。図10.13において、軸P=-(Pwm B)/(ΔBw/iw)が、資本流出ΔBw/iwが止まるまで、右に移動する。極限では,縦軸P=0になり、(6)式はe=P 2 (mwYw)/Pwm Bとなり、原点を通る2次曲線になる、これをE3E3とする。長期的には、交点B(P **,mwYw/PwmA)に収束する。
P **は、3次方程式
P 3 (mwYw) Pwm-Pwm B UP-Pwm B {(b/h)(M-kB)-(1-c) B
}=0
の正根である。
長期均衡点
利子率の長期均衡はi =iwである。資本流出が始まると、縦軸の境界線が右に移動し、軸P=0になる。均衡点は、点Aより、為替レートは減価し、価格は下落する。最終的に、EE線は、E1E1から原点を通る二次曲線E3E3に移行する。現在均衡点Aは長期均衡点Bに移行する。
労働市場の長期均衡は、完全雇用国民所得Y f、完全雇用価格P
**が長期均衡値である。 P
** Y=(1/2)( T+m 0/w 0) w 0/(1-α)から、Y
f =(1/2)( T+m 0/w
0) w 0/(1-α)
P **。
長期均衡為替レートe**は、資本流出が止まるとき、ΔBw/iw =0となり、e=P ** 2 (mwYw)/Pwm Bである。
図解 10.
2節のQQ線およびEE線は、変更された。解の存在と金融政策の効果は、変更はないが、直感的な判断では、CASE
Iよりは、物価、為替レートに対する金融政策の効果は小さく見える。総供給曲線ASは、P Y=(1/2)( T+m0/w) w/(1-α)と表せ、双曲線であるから、物価と国民総生産はトレード・オフの関係がある。QQ線は、
e=U/Pwm+{(b/h)M-〔(b/h)k+1-c〕B
}/Pwm P。 (5)
図10. 15に示すように、縦軸がP=0、横軸がe=U/Pwmの双曲線である。
EE線は、
e=P 2 (mwYw)/{Pwm B+(ΔBw/iw) P }。 (6)
図10. 15において、縦軸P=-(Pwm B)/(ΔBw/iw)および横軸e=0の双曲線と直線e=(mwYw iw/ΔBw ) P-Pwm BmwYw(iw/ΔBw ) 2を合成した曲線になる。
図10. 15において、QQ線とE1E1線が、3つの交点で交わっている。第1象限の交点が現行解である。資本流出が0に向かうにつれて、縦軸P=-(Pwm B)/(ΔBw/iw)は右へ平行移動する。直線は傾きが大きくなる。
図10. 16において、資本流出が終わるとき、原点を通る2次曲線E2E2線とQQ線の交点Bで均衡し、点Aより、物価が下落、為替レートが減価する。
その結果、1)国民所得は減少する。
2)利子率は世界利子率になる。
3)物価は下落する。
4)為替レートは減価する。
CASE Iと違って、労働市場は、完全雇用が維持される。経済は、資本移動により、縮小した。
CASEⅡの金融政策
金融当局が金融政策を実施すると、貨幣供給がΔM増加する。(5)式は、
e=U/Pwm+{(b/h)(M+ΔM)-〔(b/h)k+1-c〕B
}/Pwm P. (5)′
となる。
i <iwの場合、次の為替市場均衡式は変化しない。
e=P(mwYw)/{ Pw(m B/P )+ΔBw/iw }。 (6)
(5)′および(6)から、eを消去すると次の3次方程式になる。
P
3 (mwYw) Pwm-(ΔBw/iw) U P 2-[Pwm B U-(ΔBw/iw) {(b/h)(M+ΔM-kB)-(1-c) B
}]P-Pwm B {(b/h)(M+ΔM-kB)-(1-c) B
}=0。
この方程式は、1正根と2負根がある。
現行均衡点
正根をP
*とする。他の現行均衡点は、Y
*=B/P
*、i*=(kY
*-(M+ΔM)/P *)/h,e*= P
* (mwYw)/{ Pw(m B/P
*)+ΔBw/iw }となる。
長期均衡点
利子率の長期均衡はi =iwである。金融政策を実施したので、資本流出が始まると、縦軸の境界線が右に移動し、二次曲線E3E3線となる。図10.16において、QQ線は、Q1Q1からQ2Q2にシフトする。現在均衡点Aは長期均衡点Bに移行する。
労働市場の長期均衡は、完全雇用国民所得Y f、完全雇用価格P
**が長期均衡値である。 P
** Y=(1/2)( T+m 0/w 0) w 0/(1-α)から、Y
f =(1/2)( T+m 0/w
0) w 0/(1-α)
P **。
長期均衡為替レートe **は、資本流出が止まるとき、ΔBw/iw =0となり、e **=P ** 2 (mwYw)/Pwm Bである。
図解 EE線QQ線によって均衡点(p,e)を示す図10. 17において、金融政策により、ΔM増加させるとする。QQ線は、Q1Q1からQ2Q2に移行する。現行均衡点Aは均衡点Cに移行、二次曲線との交点、長期均衡点Dに移行する。
その結果、1)国民所得は増加する。
2)利子率は世界利子率になる。
3)物価は上昇する。
4)為替レートは現在均衡点Aから均衡点Cに移行するとき、減価する。さらに、均衡点Cから長期均衡点Dに移行するとき、為替レートは減価する。
CASE Iと違って、労働市場は、完全雇用が維持される。経済は、金融政策により、物価のオーバーシュートを生じ、物価が現行点Aと比較すると長期均衡点Dでは、物価が上昇し、国民所得は拡張する。
今週(2022年12月5日~12月9日)の影響度
先週のイベントは、30日FRBパウエル議長の講演がありました。講演の内容は、黒田総裁の記者会見や国会答弁よりは、はるかに、米国経済の現状認識と次の四半期3カ月の見通しが、経済専門家にも説得的な内容でした。
FRBパウエル議長の講演は、黒田総裁が、異次元(財・金融多次元空間に時間軸を加える意味か)緩和とか、モーメンタム(運動量、勢い、相場の当日終値-n日前の終値)、ノルム(ベクトルの長さ、大きさ)とか、物理学の用語を使って、日銀の金融政策を、国民、国会議員、市場関係者、金融庁、財務省職員に説明したことと違いがあるなと思います。金融事象全般を物理学的に、特に、量子力学的に説明できるという経済・金融理論はまだ存在しません。経済学のアインシュタインは世界にいないのです。
アメリカは経済・軍事の国であり、経済専門家は日本の専門家の10倍以上いて、政府の政策立案・実施に携わってきた実績がありますが、日本は、専門家が政府部門に登用されるのは、安倍内閣の経済諮問委員会ぐらいで、アベノミクスを生成しました。従来、政府部門の自家養成専門職で、対応して来ました。日本銀行の政策委員会は、従来の日銀法と違って、日銀外部の経済専門家が委員会に入り、金融政策立案・実施に携わっている点で、政府部門とは運営方法が新しくなっている政策部門です。黒田総裁は、政府部門の自家養成専門職出身で、新日銀法を使いこなすには、古典力学程度の経済・金融認識で、運営して来たが、日本経済の軌道が10年間、想定する軌道に乗らなかった。物価は1%台になったが、今年、日銀が強調するように、賃金上昇を伴わない物価上昇は日銀の政策目標2%の定義ではないと言い出した。実質賃金率は、黒田総裁時代で、1%以下に低下している。その間、消費税、社会保障負担率を上げているから、消費を減らすことを政府がしてきて、企業も賃金を上げるいわれはなかった。むしろ、民主党時代の方が、実質賃金率が3%ある。結局、安倍時代の経済・金融政策は、物価・賃金は上昇せず、税負担が増えて、成長軌道は全く乗らなかったという結果に終わった。安倍氏は衆議院選挙を繰り返したが、腹で考える国民感情ではなかったため、政権交代にならなかった。腹を空かした40代のテロリストの凶弾に、安倍氏が倒されたのは象徴的であった。アベノミクスが正しい政策ではなかったということであり、残念ながら失敗した。
市場は、次回の12月13日~14日に開かれるFOMCでは、利上げ巾は、0.5%を予想しています。講演を反映して、円高に振れています。1日ワールドサッカー日本対ドイツ戦で、2-1で勝ちました。3日G7は、かねてから議論されて来た、ロシア産原油に上限価格60ドルを設定しました。
今週のイベントは、OPECプラス閣僚協議が4日から開かれます。5日G7がロシア産原油に価格上限を導入します。10日にインド太平洋経済枠組み(IPEF)高官会合が14日まで開かれます。
経済統計は、次の発表がありました。
予想値 実現値
29日 日10月の有効求人倍率 1.35倍 1.35倍
10月の完全失業率 2.5% 2.6%
30日 日10月の鉱工業生産指数 5.3% 3.7%
中11月PMI 49 48
米実質GDP前期比年率 2.6% 2.9%
1日 米個人所得 0.4% 0.7%
PCEデフレータ前年比 6.0% 6.0%
米11月雇用統計 3.7% 3.7%
経済統計は、次の発表があります。
予想値
6日 日全世帯家計調査 1.0%
米11月貿易収支 -770億円
7日 日11月景気動向一致指数 100.4
先行指数 98.2
中11月貿易収支 ―
8日 日GDP -1.0%
日11月経常収支 6,252億円
貿易収支 -1兆8200億円
9日 中11月CPI 1.5%
日本 8月 9月 10月
GDP(前期比)
消費コンビニ売上高 982,042百万円 8,983億円 9307億円
スーパー売上高 110,562,504万円 1兆427億円 1兆1025億円
百貨店売上高 349,481,514千円 3813億円 4281億円
投資 1,393.9億円 150,848百万円 141,114百万円
輸出 5兆1710億円5600万円 8兆8187億円 9兆15億円
輸入 6兆9075億円3500万円 10兆9126億円 11兆1638億円
物価指数(総合) 3.0% 3.0% 3.7%
利子率 -0.1% -0.1% -0.1%
株価 27819.33(8/10) 28065.28(9/8) 26237.42(10/13)
(第2金曜日の前営業日
)為替レート(中心) 135.2(8/10) 144.4(9/8) 146.85(10/13)
原油価格 96(8/10) 89(9/8) 91.5(10/13)
ドバイ、現物1バレル、ドル、10月渡し 11月渡し 12月渡し
(第2金曜日の前営業日)
個人所得(月間現金給与額)279,346円 275,787円
完全失業率 2.5%
景気動向先行指数 98.9 100.9
一致指数 100.1 101.7
第14回目 2022年12月12日
要点 10. 4 ドーンブッシュ・連続モデルと金融政策
10.4.1 ドーンブッシュ・連続モデルCASEⅡと金融政策
10.4.2 ドーンブッシュ・連続モデルCASEⅠと金融政策
10. 4 ドーンブッシュ・連続モデルと金融政策
マンデル・フレミング・モデルにおいては、為替レートの決定論は示されていない。本章のモデルは、為替市場において、為替レートに対応した、自国通貨建て外国為替取引量に対する需要と供給が一致するところで決まる。金利平価説と購買力平価説が短期では、同時化され、長期的には、購買力平価説となる。マンデル・フレミング・モデルにおいては、期待形成が静学的であり、現在の市場条件が将来も変化しないことを意味する。
マンデル・フレミング・モデルの対数線形化をしたDornbush[1976]論文の本文モデルにおいて、完全雇用のCASEⅡとGDPギャップがあるCASEⅠ[V.Shortun-Run Adjustment in Output,Appendix]とに分けて、動学調整モデルが示されている。天野「マクロ計量モデルにおける為替レートの決定:展望」『国民経済雑誌』147(4月)68-96ページ(1983)は新古典派の完全雇用CASEⅡの要約,植田『国際マクロ経済学と日本経済』東洋経済新報社(1983)および浜田『国際金融』岩波書店(1996)は不完全雇用のCASE Iの要約を紹介している。
Dornbush[1976]では、労働市場と為替市場の陽表化はない。また、貿易収支均衡していなければ、貿易赤字または貿易黒字が発生し、為替レート決定に作用するが、陽表化されていない。Dornbushのマネタリー・アプローチでは、貿易収支均衡を想定しているように見える。為替レート決定は、金利平価説にしたがい、為替レートの変動率の予想は、「合理的期待説が、短期、中期、長期で成立する」ことを仮定している。
10.4.1 ドーンブッシュ・連続モデルCASEⅡと金融政策
ドーンブッシュ・連続モデルCASEⅡの枠組み
ドーンブッシュの論文、“Expectations and Exchange Rate Dynamics, Journal of
Political Economy, 1976, vol. no.6, pp. 1161-1176)”の本文において、完全雇用を仮定した連続モデルCASEⅡを取り上げる。線形モデルと違って、変数は対数変換される。そのため、マンデル・フレミング・線形モデルにおける各需要および供給関数は、積で表される。以下に、ドーンブッシュ・連続モデルの枠組みを示す。ここでは、マンデル・フレミング・線形モデルと各変数の定義を対照的に表す。
各市場均衡式
ドーンブッシュ・連続モデル M=F線形モデル
貨幣市場の均衡式 M/P=Yφexp(-λr) M/P=kY-hi
両辺、対数を取る。 m-p=-λr+φy
貨幣供給量mは、期間中、一定である。したがって、現行価格水準はp=m+λr-φyと表せる。
ドーンブッシュは、為替レート決定論に金利平価説を取るから、現行利子率rは為替変動率xと世界利子率r *とで、r=r *+xという関係がある。また、為替変動率xは、合理的期待仮説にもとづきにx=θ(e⁻-e)によって予想される。e⁻は長期為替レートであり、与えられている。金利平価説と合理的期待仮説を合わせると
r=r *+x=r *+θ(e⁻-e)となる。
貨幣市場の均衡式に金利平価説と合理的期待仮説の関係式を代入すると
p=m+λr-φy=m+λr *+λθ(e⁻-e)
-φy (1)
長期でもm、r *、yは、所与であるから、現行為替レートeが長期為替レートe⁻に収束する。すなわち、e=e⁻ならば、長期均衡価格p⁻は
p⁻=m+λr *-φy
M=F線形モデル:財市場の均衡式
Y=C0 +c(Y-T0) +I0-bi +G0+mwYw-e Pw(mY ) /P
={C0-T0+I0-bi +G0}+mwYw-e Pw(mY ) /P+cY-bi
=U+mwYw-e Pw(mY ) /P+cY-bi
ドーンブッシュ・連続モデル:
総需要D=U (e Pw/P ) δYwmw Ym
YγUexp(-σr)
両辺、対数を取る。d=u+δ(e+pw-p)+mwyw -m y+γy-σr
ドーンブッシュ・モデルでは純輸出(e Pw/P ) δYwmw Y -mは、独立支出uに含められ、世界物価水準Pwと国内物価水準PはPw=1に基準化され、対数を取るとpw =0となる。したがって、総需要はd=u+δ(e-p)+γy-σrである。
総供給Yの対数をとると、対数表示の総供給はyである。
財市場の均衡式 y=d
財市場は完全雇用が仮定されるから、完全雇用国民所得は短期、中期、長期でyである。しかも、所与である。
ドーンブッシュの本文モデルでは、財市場は均衡しない。超過需要が発生し、ケインズ・モデルのように、財市場の超過需要d-yが調整係数πで調整されると仮定する。完全雇用国民所得yに収束する。
dp/ dt=π(d-y)。
以上をまとめると、ドーンブッシュ・連続モデルの枠組みは、
貨幣市場均衡式 m-p=-λr+φy
金利平価説 r=r *+x
合理的期待仮説により、xを次式で予測する。
de/ dt=x=θ(e⁻-e)
為替レート調整微分方程式 de/ dt=θ(e⁻-e)
財市場均衡式 y=u+δ(e-p)+γy-σr (2)
財市場価格調整微分方程式 dp/ dt=π(d-y)
現行均衡点
現行外生変数がm、y 、r *であり、長期均衡為替レート e⁻が所与である。現行内生変数はp、e、rである。
長期均衡価格p⁻はp⁻=m+λr *-φyと表されるから、
p=m+λr *+λθ(e⁻-e)
-φy=p⁻+λθ(e⁻-e) (1)
y=u+δ(e-p)+γy-σr (2
r=r *+θ(e⁻-e) (3)
市場均衡方程式は貨幣市場の均衡式(1)と財市場の均衡式(2)の2本であり、通常のIS=ML分析ではy、rが決定されるが、ドーンブッシュ・モデルでは、為替レートが市場ではなく、市場裁定式である金利平価式に合理的期待仮説を結合させた予測式(3)で決まる。為替レートの購買力平価説は考慮されない。未知数はp、e、rであり、方程式は3本であるから、複雑な式になるが、次のように、現行解が求められる。
(3)式を(2)式に代入、
y=u+δ(e-p)+γy-σ{ r *+θ(e⁻-e)}
(δ+σθ) e=(1-γ) y-u+δp+σ( r *+θe⁻)
e={1/(δ+σθ)}{
(1-γ) y-u+δp+σ( r *+θe⁻)
これを(1)式に代入、
p=p⁻+λθ[e⁻-{1/(δ+σθ)}{
(1-γ) y-u+δp+σ( r *+θe⁻)}]
{1+λθδ/(δ+σθ)}p=p⁻+λθ[e⁻-{1/(δ+σθ)}{
(1-γ) y-u+σ( r *+θe⁻)}]
p*=[1/{1+λθδ/(δ+σθ)}]×〔p⁻+λθ[e⁻-{1/(δ+σθ)}{
(1-γ) y-u+σ( r *+θe⁻)}]〕。
e*={1/(δ+σθ)}{
(1-γ) y-u+δp*+σ( r *+θe⁻)}
これらの解e、pを(3)式に代入するとrが求められる。
r*=r *+θ(e⁻-e*)。
それぞれの長期均衡点は、e⁻、p⁻=m+λr *-φy、r *である。
図解
図10.18に、ドーンブッシュ・モデルを表すと、貨幣市場均衡線(1)式は
p=p⁻+λθ(e⁻-e) (1)
e=e⁻-(1/λθ)( p-p⁻) (1)′
であり、右下がりのQQ線である。財市場価格調整微分方程式dp/ dt=0は、長期財市場均衡線である。dp/ dt=π(d-y)=0を図に描く。図中、45°線は、単位を適当に取ることによって、財価格と為替レートが、初期に等しいという仮定を示す。点Aはdp/ dt=0線と45°線との交点である。
下記の調整過程の計算から分かるように、
d-y=δ{(e-e⁻)-(p-p⁻)}-σ(1/λ)( p-p⁻) と表せるから、
δ{(e-e⁻)-(p-p⁻)}-σ(1/λ)( p-p⁻)=0。e=e⁻+{δ+σ(1/λ)}( p-p⁻)である。
δ+σ(1/λ)<1であるから、長期財市場均衡線は、点Aを通り、45°線より傾きが小さい。その線より、左上は、価格の方が為替レートより小であるから、d-y>0であり、超過需要状態にある。
現在均衡は、貨幣均衡線QQ上を動き、点Bが現行財・貨幣均衡点であれば、財市場は超過需要にあるから、一方的に価格上昇して、長期均衡点Aへ調整され、為替レートは一方的に増価で調整される。
ドーンブッシュ・連続モデルにおける調整過程
財市場価格調整微分方程式dp/ dt=π(d-y)は、財市場の超過需要d-yが、一定の係数πで調整される。この方程式は、dp/ dt=0となる均衡点に収束する。一般均衡理論の立場からみると、市場均衡価格と均衡量は、超過需要が正のときは価格が下がり、負のときは価格が上がるという市場ルールを現す模索過程の微分方程式と同じタイプである。
dp/ dt=0を、均衡点(e⁻,
p⁻)で表すと次式になる。
δ(e⁻-p⁻)+u+(γ-1)y-σr* =0。 (4)
また、ドーンブッシュの枠組みから、
p=p⁻+λθ(e⁻-e) (1)
y=u+δ(e-p)+γy-σr (2)
r=r *+θ(e⁻-e) (3)
超過需要d-yは、(3)式:r=r *+θ(e⁻-e)、(4)式:δ(e⁻-p⁻)=-{ u+(γ-1) y-σr * }および(1)式:θ(e⁻-e)=(1/λ)( p-p⁻)をもちいて、次式で表される。
d-y=δ(e-p)+u+(γ-1)y-σr
=δ(e-p )+u+(γ-1) y-σ{r *+θ(e⁻-e) } (3)式を代入
=δ(e-p )-δ(e⁻-p⁻)-σθ(e⁻-e) (4)式を代入
=δ{(e-e⁻)-(p-p⁻)}-σ(1/λ)( p-p⁻) (1)式を代入
=-{δ/(λθ)+δ+σ/λ} ( p-p⁻) =-{(δ+σλ)/ (λθ)+δ} ( p-p⁻)。
したがって、財市場価格調整微分方程式dp/ dt=π(d-y)は、次式になる。
dp/ dt=π(d-y)=-π{(δ+σλ)/ (λθ)+δ} ( p-p⁻) =-v
( p-p⁻)。
ここで、v≡π{(δ+σλ)/
(λθ)+δ}。
この微分方程式の解は
p(t)=p⁻+( p0-p⁻)exp(-vt)。 (5)
(1)式から、p-p⁻=-λθ(e-e⁻)、p0-p⁻=-λθ(e0-e⁻)を、(5)に代入すると、為替レート調整微分方程式de/ dt=-1/(λθ)(e-e⁻)の解は、
e(t)=e⁻+( e0-e⁻)exp(-vt)。 (6)
金融緩和の効果
金融緩和の調整過程を調べる。金融緩和政策は、Δm増加させる。(1)式p=m+λr *+λθ(e⁻-e)
-φy=p⁻+λθ(e⁻-e)はQQ線であり、QQからQ Q ′(1) ′式p=m+Δm+λr *+λθ(e′-e) -φyに移行する。図10.19において、均衡点Aは均衡点Cに移行する。ドーンブッシュは、ここで、点Bに瞬時に移行し、点Bから点Cへ移行する調整過程を想定する。点Aから、点Bへの移行は、資産市場では、資金移動が財の移動より迅速であるから、物価が変動する前に、為替レートだけが新均衡線Q Q ′に調整されて、減価する。その後、財は超過需要であるから、物価が上昇して点Cに到達する。
金融政策実施後、外生変数がm+Δm、y 、r *であり、長期均衡為替レート e ′が所与である。現行内生変数はp、e、rである。
長期均衡価格p′はp′=m+Δm+λr *-φyと表されるから、
p=m+Δm+λr *+λθ(e′-e) -φy=p′+λθ(e′-e)。 (1)′
新均衡点Cは、(p′,e′)である。財の均衡線dp/ dt=0は点Cを通る。
ドーンブッシュ・連続モデルCASE
Ⅱの問題点
第13回目のマンデル・フレミング・線形モデルは、3市場と為替市場を枠組みであるが、ドーンブッシュ・モデルは2市場と為替裁定・予想式の枠組みで、違いが明らかに分かる。金融市場では、裁定式は、市場均衡式より、有用性があるという伝統があるようだ。経済理論家にとって、金融市場では、連続的(瞬時)均衡するから、均衡式を想定する手間を省略しているのかとも思う。
①ドーンブッシュ・連続モデルCASE Ⅱにおいて、現行外生変数がm、y 、r *であり、長期均衡為替レート e⁻が所与である。長期均衡価格p⁻はp⁻=m+λr *-φyと表される。内生変数はp、e、rである。完全雇用国民所得yは、所与である。長期完全雇用国民所得はyのままである。したがって、長期完全雇用国民所得y、長期均衡為替レート e⁻および長期均衡価格p⁻は、モデル内では決定できない。現在市場においても、現行解が、それらに依存している。マンデル・フレミング・為替モデルでは、現行解が、長期値に依存しない。
②ドーンブッシュの論文では合理的期待仮説を適用していない。合理的期待仮説は、為替レートの変化率の主観的期待値E[e^]が、モデル内で決定される為替レートの変化率の客観的期待値E[s˙]に一致する。すなわち、
E[e^]=E[s˙]。
x=θ(e⁻-e)は、Muthが批判した回帰的予想モデルである。金利平価説の原点に戻り、先物為替レートを予想レートとし、調整方式は同じにするならば、
x=θ(E[s˙]-e)
となる。
他に、合理的期待仮説の為替直物・先物レートの決定に持ち込む方法は、河合正弘『国際金融と開放マクロ経済学』東洋経済新報社(1986)、第5章付論Ⅰがある。
結論:ドーンブッシュ・連続モデルは、再考を要するモデルである。
10.4.2 ドーンブッシュ・連続モデルCASEI
CASEⅡにおいて、完全雇用産出がyであったが、総需要とともに短期調整が可能な産出とし、財市場均衡式から、y=logD≡u+δ(e-p)+γy-σr (2)と定義する。ドーンブッシュ・連続モデルCASEⅠにおいて、財市場の調整は、dp/ dt=π(y-y⁻)であり、y⁻は完全雇用水準の産出である。これは、ドーンブッシュ論文の付論で展開されるが、ドーンブッシュは、金融緩和の効果の分析と結果はCASEⅡと変わりがないとのべている。植田『国際マクロ経済学と日本経済』東洋経済新報社(1983)および浜田『国際金融』岩波書店(1996)は、この付論の立場を分析している。
2019年テキストでは不完全雇用のCASEⅠを取り扱っているが、調整方程式はCASEⅡのドーンブッシュ論文のdp/ dt=π(d-y)で計算していた。
ドーンブッシュ・連続モデルCASEI
ドーンブッシュ論文のV節産出の短期調整および付論で取り上げてある、ケインズ的な不完全雇用がある場合、前回のドーンブッシュ・連続モデルCASEⅡと比較する。式の番号はドーンブッシュ論文の付論にしたがう。
貨幣均衡式 m-p=-λr+φy
金利平価説 r=r *+x
合理的期待仮説により、xを次式で予測する。
de/ dt=x=θ(e⁻-e)
為替レート調整微分方程式 de/ dt=θ(e⁻-e)
財市場均衡式 y=u+δ(e-p)+γy-σr
y=μ[u+δ(e-p)-σr] (A1)
財市場価格調整微分方程式 dp/ dt=π(y-y⁻) (A2)
この価格調整方程式は、現実の産出が完全雇用水準産出y⁻に調整されることを仮定する。貨幣市場と為替レート期待の特定化は変わらないとする。したがって、13回目のままである。貨幣市場均衡式m-p=-λr+φyから、r*-r=θ(e-e⁻)を使って、
p-m+φy=λr*+θλ(e⁻-e) (A3)
長期為替レートおよび長期価格水準をそれぞれ、e⁻ およびp⁻とする。(A1)式から、完全雇用水準産出y⁻は
y⁻=μ[u+δ(e⁻-p⁻)-σr*]、μ≡1/(1-γ) (A4)
をみたす。
現行均衡点
現行外生変数がm、y⁻ 、r *であり、長期均衡為替レート e⁻が所与である。現行内生変数はp、e、r、yである。
長期均衡価格p⁻はp⁻=m+λr *-φy⁻と表されるから、
p=m+λr *+λθ(e⁻-e)
-φy=p⁻+λθ(e⁻-e) (1)
y=u+δ(e-p)+γy-σr (2)
r=r *+θ(e⁻-e) (3)
CASEⅡでは、現行産出は、完全雇用産出に等しいから、y=y⁻であり、もう1本、方程式があった。現行産出が、ケインズ・モデルのように、有効需要原理で決められるようにすれば、現行均衡点が求められる。
調整過程
財市場均衡方程式(A1)から(A4)を引いて、現行産出から完全雇用水準産出の偏差で表す。
y-y⁻=μ(δ+σθ)(e-e⁻)+μδ(p⁻-p) (A5)
貨幣市場均衡方程式から、
φ(y-y⁻)+(p⁻-p)=λθ(e⁻-e) (A6)
(A5)と(A6)を偏差y-y⁻、e⁻-eで解いて、p-p⁻で表す。
y-y⁻=-w(p-p‐) (A7)
ここで、w≡[μ(δ+σθ)+μδλθ]/Δ; Δ≡φμ(δ+σθ)+θλとする。
e-e⁻=-[(1-φμδ)/Δ](p-p‐)。 (A8)
(A2)に(A7)を代入すると,価格水準の関数として、価格調整方程式が
dp/dt=-πw(p-p‐) (A9)
で表せる。
予想係数θは,為替レートが現実にπwを調整するレートに等しいこと
θ=πw (A10)
を要する。
すなわち、(A9)から、(A8)をもちいると、de/dt=-πw(p-p‐)であり、予測式de/dt=x=θ(e⁻-e)=-θ(e-e⁻)と一致する条件である。
為替レート変動と価格変動の調整係数は同じであると仮定することになる。
図解
図10.20において、(A8)式e-e⁻=-[(1-φμδ)/Δ](p-p‐)は、右下がりのQQ線である。(完全雇用の場合のQQ線は、e-e⁻=-(1/λθ)(p-p⁻)である。)
dp/dt=0線は、(A5)式から、 e-e⁻={δ/(δ+σθ)}(p-p⁻)であり、45°線より、傾きが低い、右上がりの直線である。(完全雇用の場合のdp/dt=0線は、e-e⁻= (1/δ)+ (σ/δλ)( p-p⁻) である。)
金融緩和
金融緩和政策は、Δm増加させる。(1)式p=m+λr *+λθ(e⁻-e) -φy=p⁻+λθ(e⁻-e)はQQ線であり、QQからQ Q ′(1) ′式p=m+Δm+λr *+λθ(e′-e) -φyに移行する。均衡点Aは均衡点Cに移行する。
貨幣均衡式m-p=-λr+φy に、(A1)式y=μ[u+δ(e-p)-σr]、r=r*-θ(e-e⁻)を代入し、
m-p=-λ{ r*-θ(e-e⁻)}+φμ[u+δ(e-p)-σ{ r*-θ(e-e⁻)}]。
-p+φμσp=-m+{λθ+φμ(δ+σθ) (e-e⁻)}-λr*-φμσ r*+φμu。
不完全雇用の場合のQQ線は、
p=[1/(1-φμσ)][-{λθ+φμ(δ+σθ)
(e-e⁻)}+m+(λ+φμσ)-φμu]
となる。金融緩和政策は、貨幣供給量の増加Δmのため、図10.21のように、QQからQ Q ′へ上にシフトする。
ドーンブッシュ・連続モデルCASE
Iの問題点
①ドーンブッシュ・連続モデルCASE Iにおいて、現行外生変数がm、y 、r *であり、長期均衡為替レート e⁻が所与である。
長期均衡価格p⁻はp⁻=m+λr *-φy⁻と表される。
内生変数はp、e、rである。完全雇用国民所得y⁻は、所与である。したがって、長期完全雇用国民所得y、長期均衡為替レート e⁻および長期均衡価格p⁻は、モデル内では決定できない。現在市場においても、現行産出yを外生変数と仮定しなければならない。
②ドーンブッシュの論文では合理的期待仮説を適用していない。
結論:ドーンブッシュ・連続モデルCASE Iは、CASEⅡより、y=y⁻の代わりになる方程式が足りない。
今週(2022年12月12日~12月16日)のイベントと市場への影響度
先週のイベントは、OPECプラス閣僚協議が4日から開かれました。現状の生産体制を維持することを決めました。次回は2023年6月4日に開かれます。5日G7がロシア産原油に価格上限を導入しました。10日にインド太平洋経済枠組み(IPEF)高官会合が14日まで開かれました。
今週のイベントは、14日、日本銀行から12月短観が発表されます。13日米連邦公開市場委員会が14日まで開かれます。15日欧州中央銀行理事会が開かれます。
経済統計は、次の発表がありました。
予想値 実現値
6日 日10月全世帯家計調査
1.0% 1.2%
米10月貿易収支 -770億ドル
-782億ドル
7日 日10月景気動向一致指数 100.4 99.9
先行指数 98.2 99.0
中11月貿易収支 ― 4943億元
8日 日GDP7~9月期 -1.0% -0.8%
日10月経常収支 6,252億円 -641億円
貿易収支 -1兆8200億円 -2兆2202億円
輸出 8兆8790億円
輸入 11兆9901億円
9日 中11月CPI 1.5% 1.6%
経済統計は、次の発表があります。
予想値
12日 日10~12月期法人企業景気予測調査
大企業現状
―(%ポイント)
1~3月期見通し ―(%ポイント)
11月工作機械受注額
13日 米CPI 7.3%
14日 日銀短観 大企業製造業先行き 7
業況判断 7
大企業非製造業先行き 16
業況判断 15
日鉱工業生産 前年比 3.7%
15日 日11月貿易統計 -1兆6803億円
中11月小売売上高 前年比 -4.0%
鉱工業生産高 3.7%
米FOMC政策金利上限 4.5%
米11月小売売上高 前月比 0.1%
鉱工業生産 前月比 0.2%
日本 8月 9月 10月
GDP(前期比) -0.8%(7~9月期)
消費コンビニ売上高 982,042百万円 8,983億円 9307億円
スーパー売上高 110,562,504万円 1兆427億円 1兆1025億円
百貨店売上高 349,481,514千円 3813億円 4281億円
投資 1,393.9億円 150,848百万円 141,114百万円
輸出 5兆1710億円5600万円 8兆8187億円 9兆15億円
輸入 6兆9075億円3500万円 10兆9126億円 11兆1638億円
物価指数(総合) 3.0% 3.0% 3.7%
利子率 -0.1% -0.1% -0.1%
株価 27819.33(8/10) 28065.28(9/8) 26237.42(10/13)
(第2金曜日の前営業日)
為替レート(中心) 135.2(8/10) 144.4(9/8) 146.85(10/13)
原油価格 96(8/10) 89(9/8)
91.5 (10/13)
ドバイ、現物1バレル、ドル、10月渡し 11月渡
12月渡
(第2金曜日の前営業日)
個人所得(月間現金給与額)279,346円 275,787円 275,888円
完全失業率 2.5% 2.5% 2.6%
景気動向先行指数 98.9 101.4 99.9
一致指数 100.1 97.5 90.0
第15回目 2022年12月19日
要点
10.5 M=F・EX連続モデルと金融政策
10.5.1 M=F・EX連続モデルCASE I(不完全雇用)の枠組み
現行均衡点から長期均衡点への収束
金融緩和政策
10.5.2 M=F・EX連続モデルCASE
Ⅱ(完全雇用)の枠組み
現行均衡点から長期均衡点への収束
金融緩和政策
10.5 M=F・EX連続モデルと金融政策
10.3節のM=F・EX線形モデルをドーンブッシュ連続モデルにならって、連続モデルにする。第14回目、ドーンブッシュ連続モデルCASEⅡ・CASE Iの問題点①一般均衡論に従い、「未知数は現在も将来も市場均衡式によって決定される。」は改善される。問題点②「為替レート予想形成は、本来の合理的期待仮説に、切り替える。」ことは、先物為替市場における先物為替レート決定論を用意する必要があるため、来年のテキストで準備する。
10.5.1 M=F・EX連続モデルCASE
I(不完全雇用)の枠組み
現行均衡点から長期均衡点への収束
M=F・EX連続モデルの枠組みは、10.2.1 M=F・EX・CASE I線形モデルと対照させると次のようになる。
M=F・EX連続モデルCASE
Iの枠組み M=F・EX線形モデルCASE Iの枠組み
貨幣市場の均衡 (対数モデル) (線形モデル)
M/P=Ykexp(-hi)
M/P=kY-hi
両辺、対数を取るm-p=-hi+ky
財市場の均衡 (線形モデル)
Y=C0 +c(Y-T0) +I0-bi +G0+mwYw-e Pw(mJY ) /P
={C0-T0+I0-bi +G0}+mwYw-e Pw(mJY ) /P+cY-bi
=U+mwYw-e Pw(mJY ) /P+cY-bi
(対数モデル)
Y=U (E Pw/P ) δYwmw Y-mJ Ycexp(-bi)
両辺、対数を取る。y=δ(e+pw-p)+mwyw -mJy+cy-bi+u
労働市場の均衡 (CASE
I不完全雇用の場合)
導出は、10.1.1参照。
(対数モデル) (線形モデル)
P={W 0/ 1/2K0}Y W0=P (1-α)Y/N
コブ・ダグラス生産関数で、α=1/2のとき、両辺、対数を取る。
p=a+y 、a=w 0-k0-log(1/2)。
自国通貨建為替市場の均衡
(1)i <iwの場合、資本流入は0、ΔB/i=0、
(線形モデル)
P (mwYw)=e Pw(mJY ) +e ΔBw/iw
(対数モデル)Pδ Ywmw=E δPwδYmJ E εexp(-iw)ΔBw
両辺、対数を取る。δp+mwyw=δ(e+pw ) +mJy+εe-iw+Δbw
M=F・EX・連続モデルCASE Iの枠組みは、以上、対数変換した式をまとめると次のようになる。
貨幣市場均衡式 m-p=-hi+ky
金利平価説 i=iw+x
適合的期待により、xを次式で予測する。
x=θ(e⁻-e)
財市場均衡式 y=δ(e+pw-p)+mwyw -mJ
y+cy-bi+u
労働市場均衡式CASE I p=a+y
(1)i <iwの場合
ドーンブッシュ・連続モデルCASE Iでは、世界利子率と現行利子率との場合分けは、明示していなかった。M=F・EX・連続モデルでは、次の為替市場均衡式が成立するので、場合分けが必要である。
為替市場均衡式
δp+mwyw=δ(e+pw ) +mJy+εe-iw+Δbw
財市場価格調整微分方程式dp/ dt=π(d-y)
=π{δ(e+pw-p ) +(c+mJ) y+mwyw-bi+u -y}
為替市場為替レート調整微分方程式de/ dt=-σ(d\-s\)
=-σ[{δ(e+pw )+mJy+εe-iw+Δbw}-(δp+mwyw)]
=-σ[{δ(e+pw-p )+mJy-mwyw}+(εe-iw+Δbw)]
現行均衡点
現行外生変数がm、yw、iwであり、長期均衡為替レート e⁻が所与である。現行内生変数はy、i、p、eである。
m-p=-hi+ky (6)
y=δ(e+pw-p)+mwyw-mJ
y+cy-bi+u (7)
p=a+y (8)
δp+mwyw=δ(e+pw )+mJy+εe-iw+Δbw (9)
i=iw+θ(e⁻-e) (10)
市場均衡方程式は貨幣市場均衡式、財市場均衡式、労働市場均衡式および為替市場均衡式の4本あり、未知数はy、i、p、eであり、方程式は4本であるから、現行解が求められる。(6)、(7)、(8)式から、QQ線を導き、(8)、(9)式から、EE線を導く。p、eの連立方定式を解く。
(8)式y=p-aを(6)式に代入する。
m-p=-hi+k(p-a)。変形して、i=(1/h){(1+k) p-m-ka}。
このiを(7)式に代入する。
δ(e+pw-p)
=mwyw -(1-c+mJ)( p-a )-(b /h){(1+k) p-m-ka}+u
δe={δ-(1-c+mJ)-(b /h)(1+k)} p-δpw+mwyw+(1-c+mJ)a+(b
/h)( m+ka)+u (11)
この結果、(11)式のQQ線は右下がりの直線である。
次に、(8)式y=p-aを(9)式に代入する。
δp+mwyw=δ(e+pw )+mJ(p-a)+εe-iw+Δbw
(δ+ε)e=(δ-mJ) p-δpw+mwyw+mJa+iw-Δbw
(12)
この結果、(12)式のEE線は右上がりの直線である。
(11)式と(12)式を解くと、解e、pが求められる。
(11)式において、A=δ-(1-c+mJ)-(b /h)(1+k)、B=-δpw+mwyw+(1-c+mJ)a+(b
/h)( m+ka)+uとおく。(11)式は、δe=Ap+Bと表される。(12)式において、C=δ-mJ、D=-δpw+mwyw+mJa+iw-Δbwとおく。(12)式は、
(δ+ε)e=Cp+Dと表される。解は、p*={δD-(δ+ε)B}/{(δ+ε)A-δC}、e*=(Ap*+B)/δである。p*およびe*は、正でなければならない。
解e*、p* を(6)式および(8)式に代入すると、i*およびy*が求められる。
長期均衡点
現行解が4市場の均衡式から求められたように、長期解も市場で決定される。未知数はy⁻、i⁻、p⁻、e⁻である。(6)式から、(10)式まで、長期値に替えて、長期解を求める。長期では、(10)式より、長期利子率はi⁻=iwとなる。p⁻は(6)式より、p⁻=m+hiw-ky⁻となる。y⁻は完全雇用産出量ではない。
長期値はy⁻=(m+hiw-a)/(1+k)、p⁻=(m+hiw+ak)/(1+k)を(9)式に代入して
e⁻={(δ-mJ) p⁻-δpw+mwyw+mJa+iw-Δbw}/(δ+ε)である。
労働市場は、不完全雇用状態にある。長期的に、完全雇用に近づくかは、モデルから言えない。もし、労働市場が完全雇用状態になれば、労働市場の均衡式は、p=a+yから完全雇用労働市場均衡式p+y=bに変わる。p=a+yをp+y=bに代入して、完全雇用産出量y⁻*は、y⁻*=(b-a)/2となる。p⁻=a+y⁻に代入すると、完全雇用均衡価格p⁻*は
p⁻*=a+y⁻*=a+(b-a)/2=(a+b)/2。完全雇用均衡為替レートe⁻*は、
e⁻*={(δ-mJ) (a+b)/2-δpw+mwyw+mJa+iw-Δbw}/(δ+ε)である。完全雇用均衡利子率i⁻*は、
i⁻*=(1/h){(1+k) (a+b)/2-m-ka}となる。この利子率i⁻*がi⁻*<iwとなるか、i⁻*>iwとなるかは、モデルから言えない。
CASE Iでは、4市場は、金利平価説の外的要因を資本移動で、長期不完全雇用状態y⁻に近づくことしか示せない。金融政策で、長期完全雇用状態y⁻*に近づかせることは可能である。
CASEI(不完全雇用)における調整過程
財市場価格調整微分方程式は、財市場のGDPギャップd-yが、一定の係数πで調整される。最終的には、dp/ dt=0となる均衡点に収束する。以下、長期値y⁻、i⁻、p⁻、e⁻は、完全雇用状態を表していない。
財市場価格調整微分方程式dp/ dt=π(d-y)は、次式になる。
dp/ dt=π(d-y)=-π[δ(1+k )/ hθ+δ+(1-c+mJ) +b(1+k) /h](p-p⁻)=-ν( p-p⁻)。
ここで、ν≡π[δ(1+k
)/ hθ+δ+(1-c+mJ) +b
(1+k) /h ]。
この微分方程式の解は
p(t)=p⁻+( p0-p⁻)exp(-νt)。
同様に、為替市場の長期均衡は、de/ dt=0となるから、長期均衡解は
δ(e⁻+pw-p⁻ ) +mJy⁻-mwyw+εe⁻-iw+Δbw=0を満たす。変形して
mwyw +iw-Δbw=δ(e⁻+pw-p⁻ ) +mJy⁻+εe⁻
(6)式に(10)式を代入し、p⁻=m+hiw-ky⁻をもちいて、
p=m+hi-ky=m+h{ iw+θ(e⁻-e)} -ky =p⁻-k(y-y⁻)
+hθ(e⁻-e)
p-p⁻=-{hθ/(1+k) } (e-e⁻)
となる。
これらの関係をもちいて、i <iwの場合、為替市場の超過需要d\-s\は、以下のように変形される。
d\-s\=δ(e+pw-p ) +mJy-mwyw+εe-iw+Δbw
=δ(e+pw-p ) +mJy+εe-{δ(e⁻+pw-p⁻ ) +mJy⁻+εe⁻}
=(δ+ε)(e-e⁻)-δ( p-p⁻)+mJ(y-y⁻)
(8)式y=p-aからy-y⁻=p-p⁻
=(δ+ε)(e-e⁻)
+{δhθ/(1+k)} (e-e⁻)-{mJ hθ/(1+k)} (e-e⁻)
=[(δ+ε) +(δ-mJ )hθ/(1+k)](e-e⁻)。
ここで、η≡(δ+ε) +(δ-mJ )hθ/(1+k)とする。
為替レート調整微分方程式de/ dt=-σ(d\-s\)=-ση(e-e⁻)の解は、
e(t)=e⁻+( e0-e⁻)exp(-σηt)。
図解
テキストでは、図解を、図10.22に示している。さらに、長期解Aの安定性を調べている。
金融緩和の効果
金融当局は、金融緩和政策の手段を用いて、通貨供給量をΔm増加させる。金融緩和の調整過程を分析するために、Q Q ′式、EE式、dp′/ dt=0およびde′/ dt=0、新長期均衡点の順で、再計算する。これらの結果を図10.23に示している。
以上で、CASEⅠ(不完全雇用)の場合、ドーンブッシュ連続モデルCASEⅠに対照させたM=F・EX・連続モデルCASEⅠの概要を説明した。労働市場と為替市場を陽表化した。労働市場は、不完全雇用である。外生変数の政策変数が動かなければ、完全雇用に近づけるのは難しい。
10.5.2 M=F・EX連続モデルCASEⅡ(完全雇用)と金融政策
10.3節のM=F・EX線形モデルをドーンブッシュ連続モデルCASE Ⅱにならって、連続モデルとし、完全雇用を仮定する。
M=F・EX連続モデルCASE Ⅱ(完全雇用)の枠組みは、線形モデルと対照させると次のようになる。
M=F・EX連続モデルCASEⅡ(完全雇用)の枠組み M=F・EX線形モデルCASEⅡの枠組み
貨幣市場の均衡 (線形モデル) M/P=kY-hi
(対数モデル) M/P=Ykexp(-hi)
両辺、対数を取るm-p=-hi+ky
財市場の均衡 (線形モデル) Y=C0 +c(Y-T0) +I0-bi +G0+mwYw-e Pw(mJY ) /P
={C0-T0+I0-bi +G0}+mwYw-e Pw(mJY ) /P+cY-bi
=U+mwYw-e Pw(mJY ) /P+cY-bi
(対数モデル) Y=U (E Pw/P ) δYwmw Y-mJ Ycexp(-bi)
両辺、対数を取るy=δ(e+pw-p)+mwyw -mJy+cy-bi+u
労働市場の均衡 (CASE
Ⅱ完全雇用の場合) (線形モデル) (1/2)( T+m/w)=P (1-α)Y/w
(対数モデル)両辺、対数を取るp+y=β 、
β=(1/2)( T+m/w) w/(1-α)とおく。
自国通貨建為替市場の均衡
(1)i <iwの場合、資本流入は0、ΔB/i=0、 (線形モデル)P (mwYw)=e Pw(mJY ) +e ΔBw/iw
(対数モデル)Pδ Ywmw=E δPwδYmJ E εexp(-iw)ΔBw
両辺、対数を取る。δp+mwyw=δ(e+pw ) +mJy+εe-iw+Δbw
M=F・EX・連続モデルCASE Ⅱ(完全雇用)の枠組みは、以上、対数変換した式をまとめると次のようになる。
貨幣市場均衡式 m-p=-hi+ky
金利平価説 i=iw+x
適合的期待により、xを次式で予測する。
x=θ(e⁻-e)
財市場均衡式 y=δ(e+pw-p)+mwyw -mJ
y+cy-bi+u
労働市場均衡式
p+y=β
(1)i <iwの場合
為替市場均衡式 δp+mwyw=δ(e+pw ) +mJy+εe-iw+Δbw
財市場価格調整微分方程式 dp/ dt=π(d-y)
=π{δ(e+pw-p ) -(1-c+mJ) y+mwyw-bi+u
}
為替市場為替レート調整微分方程式
de/ dt=-σ(d\-s\)
=-σ[{δ(e+pw )+mJy+εe-iw+Δbw}-(δp+mwyw)]
=-σ[{δ(e+pw-p )+mJy-mwyw}+(εe-iw+Δbw)]
現行均衡点
現行外生変数がm、yw、iwであり、長期均衡為替レート e⁻が所与である。現行内生変数はy、i、p、eである。
m-p=-hi+ky (6)
y=δ(e+pw-p)+mwyw-mJ
y+cy-bi+u (7)
p+y=β (8)′
δp+mwyw=δ(e+pw )+mJy+εe-iw+Δbw (9)
i=iw+θ(e⁻-e) (10)
市場均衡方程式は貨幣市場均衡式、財市場均衡式、労働市場均衡式および為替市場均衡式の4本であり、未知数はy、i、p、eである。方程式は4本であるから、現行解が求められる。(6)、(7)および(8) ′式から、QQ線を導き、(8) ′および(9)式から、EE線を導く。p、eの連立方程式を解く。
(8) ′式y=β-pを(6)式に代入する。m-p=-hi+k(β-p)。変形して、i=(1/h){(1-k) p-m+kβ}。このiを(7)式に代入する。
β-p=δ(e+pw-p)+mwyw+(-mJ+c) (β-p)-b(1/h){(1-k) p-m+kβ}+u
δe=β-p-δ(pw-p)-mwyw-(-mJ+c)(β-p)+ b(1/h){(1-k) p-m+kβ}-u
={δ-(1-c+mJ) + (b /h)
(1-k)} p+(1-c+mJ+b k/h)β-δpw-mwyw- (b /h)m -u
。 (18)
この結果、(15)式のQQ線はδ-(1-c+mJ) + (b /h)
(1-k)<0であれば、右下がりの直線である。
次に、(8)
′式y=β-pを(9)式に代入する。
δp+mwyw=δ(e+pw )+mJ(β-p)+εe-iw+Δbw
(δ+ε)e=(δ+mJ) p-δpw+mwyw-mJβ+iw-Δbw
(19)
この結果、(18)式のEE線は、δ+ε>0およびδ+mJ>0であるから、右上がりの直線である。
(18)式と(19)式を解くと、解e*、p*が求められる。次に、解e、p を(6)式および(8) ′式に代入すると、i*およびy*が求められる。解y*は完全雇用産出量である。
長期均衡点
現行解が4市場の均衡式から求められたように、長期解も市場で決定される。未知数はy⁻、i⁻、p⁻、e⁻である。長期では、(10)式より、長期利子率はi⁻=iwとなる。p⁻は(6)式より、p⁻=m+hiw-ky⁻となる。これを(8) ′式に代入する。y⁻=β-p⁻=β-(m+hiw-ky⁻)。ゆえに、
y⁻=(β-m-hiw)/(1-k)。
p⁻=β-y⁻=β-(β-m-hiw)/(1-k)=(m+hiw-k)/(1-k)。
(18)式より、
e⁻=[{δ-(1-c+mJ)+(b /h)(1-k)} (m+hiw-k)/(1-k) -δpw-mwyw+(1+mJ-c)β+ (b /h)(-m+kβ) -u]/δ。
(19)式より、
e⁻={(δ+mJ) (m+hiw-k)/(1-k) -δpw+mwyw-mJβ+iw-Δbw }/(δ+ε)。 両者は一致なければならないから、定数の関係式が生じる。
長期均衡点は、y⁻=(β-m-hiw)/(1-k)、i⁻=iw、p⁻=(m+hiw-k)/(1-k)、e⁻ である。
CASEⅡにおける調整過程
財市場価格調整微分方程式は、財市場の超過需要d-yが、一定の係数πで調整される。最終的には、dp/ dt=0となる均衡点に収束する。dp/ dt=0を偏差p-p⁻、y-y⁻、e-e⁻で表す。財市場価格調整微分方程式dp/ dt=π(d-y)は、次式になる。
dp/ dt=π(d-y)=-π[(δ+bθ )(k-1)/ (hθ)-{δ+(1-c+mJ) }]](p-p⁻)
=-ν’( p-p⁻)。ここで、ν’≡π[(δ+bθ
)(k-1)/ (hθ)-{δ+(1-c+mJ) }]とおく。
この微分方程式の解は
p(t)=p⁻+( p0-p⁻)exp(-ν’t)。
同様に、為替市場の長期均衡は、de/ dt=0となるから、長期均衡解は
δ(e⁻+pw-p⁻ ) +mJy⁻-mwyw+εe⁻-iw+Δbw=0を満たす。
i <iwの場合、為替市場の超過需要d\-s\は、以下のように変形される。
d\-s\=δ(e+pw-p ) +mJy-mwyw+εe-iw+Δbw
=δ(e+pw-p ) +mJy-mwyw+εe+{-δ(e⁻+pw-p⁻ ) -mJy⁻+mwyw-εe⁻}
=(δ+ε)(e-e⁻)-δ( p-p⁻)+mJ(y-y⁻)
=[(δ+ε) +(δ+mJ )hθ/(1+k)](e-e⁻)。
ここで、η’=(δ+ε) +(δ+mJ )hθ/(1+k)とする。
為替レート調整微分方程式de/ dt=-σ(d\-s\)=-ση’(e-e⁻)の解は、
e(t)=e⁻+( e0-e⁻)exp(-ση’t)。
図解
図10.
24において,QQ線とEE線の交点Bは,現行解(e,p)を表し,財市場が均衡している直線dp/ dt=0および為替市場が均衡している直線de/ dt=0の交点Aは,均衡解(e⁻,p⁻)を表す.図中の矢印は,財市場が超過需要および為替市場が超過需要にある点Bから,財市場の均衡線QQ上を,両市場の長期均衡点Aへ向かって,市場が調整されることを示している.
長期均衡点の安定性
長期均衡点Aのまわりで、安定であることを示した。
金融緩和の効果
金融当局は、金融緩和政策の手段を用いて、通貨供給量をΔm増加させる。金融緩和の調整過程を分析するために、Q Q ′式、EE式、dp′/ dt=0およびde′/ dt=0、新長期均衡点の順で、再計算する。これらの結果を図10.25に示す金融緩和の調整過程を調べた。
テキストでは、新現行解は、再計算で求められる。新長期均衡点は、求めている。図10. 25において、点Aから、EE線上を、Q Q ′線とEE線の交点Bに移行する。EE線の点Bから、Q Q ′線上をdp′/ dt=0およびde′/ dt=0の交点Cに収束する。点Cは、金融緩和後の新均衡点(e⁻′,p⁻′)である。価格は上昇し、為替レートは、点Bまで、減価オーバーシュートし、点Cに増価する。
以上で、ドーンブッシュ連続モデルに対照させたM=F・EX・連続モデルの概要の説明を終わる。
M=F・EX・連続モデルのまとめ
10.4節において、ドーンブッシュ連続モデルの問題点で指摘した通り、ドーンブッシュ連続モデルは方程式の本数が未知数より少ないので、現在均衡値が長期均衡値に依存してしまう欠点がある。M=F・EX・連続モデルは、その点が改善されている。
ドーンブッシュ連続モデルは、為替変動予測をモデルに入れている。金利平価説に先物市場の均衡値を代入すれば、予測式を仮定しなくてもよくなる。先物為替市場を設定し、先物為替レートを決定する理論を導入する必要がある。
M=F・EX・連続モデルは、M=F・EX・線形モデルより、線形なので、現行解および長期解が容易に求められる。M=F・EX・線形モデルより、取り扱いが容易である。
教室の最後に
線形モデルは、短期分析、連続モデルは中・長期モデルの実証分析に応用できる。M=F・EX・連続モデルは、開放モデルの中長期の推計にもちいれば、予測精度があがるだろう。連続モデルの実証は、統計学的にむつかしいが、短期モデルと合わせて、経験を積み重ねていきたい。
モデルでは、貨幣市場だけが、資産市場になっているが、貸付資金、債券、株式、外債のストック資産市場の均衡を定式化する研究をしている。2022年度は、市場調整型動学ではなく、制度部門別最適化モデルで、最適成長型動学に拡張する準備をしている。
以上の研究成果を反映した『金融論2022年』のテキストは、改訂が多いので、2023年9月開講まで、2021年テキストのままにする。
ドーンブッシュの1980年代と現在では、マクロ・モデルは、労働市場、為替市場を市場化する設定になっている。貨幣市場は、フロー市場の取引需要でとらえ、資産運用分すなわち流動性選好分は、3資産市場のストック資産市場での余力分とする。余力分をストック資産市場に流入させる方法はSNAベースモデルと矛盾しない。また、実証できる設定も、実践面で求められている。M=F・EX・線形モデルに、3資産市場を明示化する。
今年のエネルギー・食糧インフレーションにより、コロナからの経済社会平常化過程に、遅れが生じている。金融政策は、年初から、利上げを重ね、経済復帰より、インフレーションを抑制して来た。その過程で、日本銀行は、世界の中央銀行の中で、異端の金融緩和政策を取って来た。そのため、極端な円安と輸入インフレーションの加速化を招き、11月の消費者物価指数は3.9%になる予想である。日本では、賃金が上昇しないため、財・サービスの物価指数が上昇した結果を表している。
今年、注視する日銀は、賃金の上昇を伴わない物価上昇は、インフレーションではないといった。現在、実質賃金W/Pは下落し、所得は増えず、消費支出は、減少している。この現象が、失われた20年の慢性デフレーションだったようだ。それに輪をかけて、アベノミクス時代は、財政政策が社会保障負担を増額、3%、2%の2回の消費税増税をするから、個人消費がそのたびに、減少したので、景気対策と称して、補正予算を増額して来た。岸田首相が、GDP2%防衛予算のため、1兆円増税すると言い出した。十倉経団連会長は、法人税で半分負担するくらいなら、法人所得を株主と俸給・賃上げで、内部分配し、税負担を減らすという、取れる発言をした。赤字会社が増加するだろう。
M=F・EX・線形モデルおよびM=F・EX・連続モデルでは、ともに、物価と為替レートの2変数に帰着するモデルであるから、物価変動と為替変動を同時にとらえている。日銀の主張では、賃金上昇率が固定され、労働市場に制度的・寡占的力が強すぎて、不均衡がある日本経済と言うことである。したがって、M=F・EX・線形モデルおよびM=F・EX・連続モデルでは、CASE Iの不完全雇用モデルに相当する。長期デフレーション状態から、完全雇用に軌道を向かわせるには、財政・金融政策だけでなく、公正取引委員会および労働政策が必要なのである。
日本経済のバブル崩壊で、伝統的な間接金融システムが主流だったが、それも、1997年から崩壊し、再構築(Restructuring)に、2003年までかかった。その結果、非金融部門も、再構築し、経済が構造的に長期停滞に陥った。しかも、戦後、進めて来た日本国土の主要な交通網の総合計画もほぼ完成し、公共投資を要する事業が全国的に縮小する時期と重なってしまった。2000年から、全国建設業界に従事する労働者が減少に転じた。新卒の採用が半減し、新卒の「氷河期」となった。
そして、リーマン・ショックが2008年夏、世界経済を収縮させた。日本の製造業の中国工場移転が本格化し、製造業の空洞化が促進された。米国も、リーマン・ショック後、製造業が中国に移転し、米中の貿易赤字が解消できないので、トランプ大統領の関税戦争と安全保障関連産業の囲い込みが始まった。
このように、不動産バブル、不良債権処理をした金融システム再構築、リーマン・ショック、米中貿易戦争・関税強化によって、国内要因および国際要因で、10年ごとに、日本経済に負荷がかかりすぎる世界経済になっている。その間、構造的失業が長期間持続すると、M=F・EX モデルCASE Iの場合になるが、財政政策と金融政策を同時に使わなければ、国内の構造的失業は、解消しないことを示している。本テキストの理論的研究から、開放経済では、完全雇用のM=F・EX モデルCASE Ⅱより、経済政策の最終目標である完全雇用にするには、時間がかかる。
アジア市場も、中国の台頭、ASEAN経済共同体が対米シフトで、中国の米国輸出代替生産が期待されている。そのため、直接投資と資産投資がアジアで変化し、アジアの経済構造が変革期を迎えている。当研究所の課題として、ASEAN経済共同体を中核に、世界生産中国2位、日本3位、韓国、台湾、南アジアを組み込んだ、「東アジア経済共同体」を将来の東アジア共同体目標として、実現可能にすることを提案した。これは、経済で言う多国間経済の相互依存関係が中国経済規模の拡大とともに、著しく増大したことによる。
2021年バイデン政権が誕生し、トランプ氏と同様に、米中の相互依存関係の歯止めを望んでいるため、「東アジア経済共同体」内での、生産シフトが生じている。「東アジア経済共同体」外との関係で生産シフトが起きているのであり、依然、多国間経済の相互依存関係は、増大している。そのため、当研究所では、理論的に、M=F・EXモデルを実証可能な多国間市場一般均衡モデルに拡張したい。
今週(2022年12月19日~12月23日)のイベントと市場への影響度
先週のイベントは、14日、日本銀行から12月短観が発表されました。13日米連邦公開市場委員会が14日まで開かれ、消費者物価に頭打ちが見られ、0.5%の追加利上げで、上限4.5%の政策金利にしました。15日欧州中央銀行理事会が開かれました。0.5%追加利上げで、政策金利は2.5%としました。
金融論2021年ノート15回目2021年12月20日再掲「先週のイベントは、13日に日銀の短観の発表がありました。15日は、米連邦公開市場委員会が16日まで開かれました。15日FRBは、量的緩和縮小に着手しました。2022年3月で終わり、その後、年内に3回の利上げを見込んでいます。同様に、ECBは、2022年3月で資産購入を打ち切ることを決定しました。英イングランド銀行は利上げに踏み切りました。17日に日銀政策委員会、金融政策決定会合がありました。日銀は、欧米のインフレ抑制の態度はまだとっていません。円安プラス燃料・農産物に対して、輸入インフレが顕著になっています。そのため、日本の企業物価指数は欧米と同じくインフレ危険水準に入っていますが、日本企業は企業物価指数10%を越えると吸収できず、消費者物価は年末にかけて、転嫁効果が出る。
日銀は、次回1月の金融政策決定会合まで、量的緩和については、欧米に追随せず、現状維持としました。22日、政府が来年度の予算を決めるので、国債発行に、長期金利は影響する。企業物価指数が久しぶりに、上昇中で、量的緩和で、物的担保のある在庫増に金融リスクなしで、融資がつくので、欧米の量的緩和は、理論的にも整合性があり、インフレ抑制効果があります。黒田総裁の口癖である、「躊躇なく果敢に」、欧米に合わせて、市場に、量的緩和終了のシグナルは出しにくい事情があるようです。日銀の次回会合から、消費者物価指数次第で、日本銀行の量的緩和政策も転機を迎える。」
今週のイベントは18日ワールドサッカー決勝がありました。19日、日銀政策委員会・金融政策決定会合が20日まで、あります。2021年12月17日に金融政策決定会合が開かれて、以降1年間、日本経済は極度の円安、主に、エネルギー・食糧の輸入インフレーションをもろにかぶって、特に10月から3%台に入りました。来春まで、再度、広範囲の品目で値上げが予定されていますから、4%台、春闘で賃上げが5%台に上乗せされれば、欧米と同じハイパー・インフレーションに入り、景気は減少する見通しです。この1年間、「物価・賃金動向を注視する。」のが、日銀の仕事でした。金融政策の成果が測定できず、無策を露呈したと言わざるを得ない。岸田政権は、補正予算で、インフレ補てんをしている。その予算額は防衛予算1兆円どころではない。世界的に独歩円安は、金利を上げるしか止める方法はない。もっと賄い上手の政府・日銀政策担当者はいない。日銀政策委員会に、政策成果に応じた給与を支給するようになれば、命がけでがんばるかもしれない。世界の金融市場では、黒田総裁任期終了まで、何もしないと見ている。ただし、今回の持続的一般物価上昇は、自販飲料が150円から、190円なったとすれば、日本で、もう二度と150円に下がることはない、真正インフレーションである。1973年石油ショックで、10円素うどんが、30円になり、下がることはなかった。私は、仕送り2万円を3万円にあげてもらい、収入不足のため、アルバイト・家庭教師を増やした。
経済統計は、次の発表がありました。
予想値 実現値
12日 日10~12月期法人企業景気予測調査
大企業現状
―(%ポイント) 0.4
1~3月期見通し ―(%ポイント) 1.8
11月工作機械受注額 1341億2100万円
13日 米CPI 7.3% 7.1%
14日 日銀短観 大企業製造業先行き 7 6
業況判断 7 7
大企業非製造業先行き 16 11
業況判断 15 19
日鉱工業生産 前年比 3.7% 3.0%
15日 日11月貿易統計 -1兆6803億円 -2兆274億円
中11月小売売上高 前年比 -4.0% —5.9%
鉱工業生産高 3.7% 2.2%
米FOMC政策金利上限 4.5% 4.5%
米11月小売売上高 前月比 0.1% -0.2%
鉱工業生産 前月比 0.2% -0.2%
経済統計は、次の発表があります。
予想値
20日 日日銀政策金利 -0.1%
21日 日12月月例報告
米7~9月期経常収支 -2,220億ドル
22日 米7~9月期GDP確定値 2.9%
23日 日11月の消費者物価指数 3.9%
米11月個人消費支出 0.2%
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