大阪府茨木市の再生可能エネルギー推計
2008年度 調査報告書 第4集
追手門学院大学 経済学部 西村 和志
西村ゼミ 05生
目次
1.はじめに
2.「茨木市の再生可能エネルギー推計」 西村 和志
『特色ある教育 2007年度 大学報告書』追手門学院大学 2008年5月25日,p.1−6
3.メタンガス
3. 1 サッポロビールのバイオマス事業 岡 達也
3.2 サッポロビールCO2削減の取り組み 素野 祥太
4.小水力発電事業
4.1 寺内配水池小水力発電事業 市原 敦司
4. 2 水力エネルギーの利用と水力発電 清水 隆佑
4. 3 寺内配水池の小水力発電 西村 和志
4. 4
5.ペレット製造 山本 崇嗣
5.1 視察行程
5. 2 ペレットの製造工程・ペレットを利用した発電設備の見学
5. 3 ペレットボイラーの設置コスト及び性能
5. 4 二酸化炭素の削減効果
5. 5 茨木市に導入する為には
6. バイオエタノール 安藤 健一
6.1 廃材からのバイオエタノール工場の外観見学
6.2 E3社会実験について
7.木質ペレット工場見学
7.1 大阪府森林組合高槻支部見学 吉田 裕司
7. 2 装置の仕組み 横井 徳人
7. 3 茨木市への導入 真鍋 健太
8.バイオディーゼルの事例研究
8.1 装置の仕組み 山内 浩行 久保 逸人
8.2 バイオディーゼル燃料における運用の問題 京極 雅史
8.3 茨木市への導入 山本 剛至
9.風力発電の事例研究
9.1 体験訪問の報告 田中 恭智
9.2 装置の仕組み 田中 純
9.3 茨木市への導入 北浦 祐基
1.はじめに
本報告書の目的は、近畿圏を中心に、再生可能エネルギーを利用している自治体、企業、森林組合などの施設を見学し、沿革・取り組み・運営などを説明していただき、そのときの資料などをもとに、茨木市に導入可能かを検討することである。
本研究のために、追手門学院大学から、「2007年度特色ある教育プロジェクト」の助成金をいただき、西村ゼミ演習05回生が、次の実施計画に基づいて、調査した結果と研究レポートを作成した。
2007年度の実施計画
・ バイオマス・水力・風力のエネルギー推計のための実地調査と導入している自治体等を見学する。
・ 森林組合の活動と議定書に算入できる森林は、実際、どう手入れしなければならないか、見学する。
・ 再生可能エネルギー推計について研究報告書を作成する。
第2節は、『特色ある教育 2007年度 大学報告書』追手門学院大学に西村和志が報告した原稿に、05回生が参加した調査見学を取り出している。第3節から、第9節までは、各研究班が、見学した事例を報告し、茨木市への導入可能性、CO2削減量を検討している。
2.「
以下は、西村和志「茨木市の再生可能エネルギー推計」『特色ある教育 2007年度 大学報告書』追手門学院大学 2008年5月25日,p.1−6 に発表した原稿に、見学2件を追加した。
1) サッポロビール株式会社大阪工場 2007年6月19日(火)13時より14時30分
ゼミの時間を見学に当てた。午前中、授業がある学生が多いので、集まりを心配したが
時間どおり正門前に17名到着した。あいにくの小雨で、目的の施設は、工場の外側にあるので、担当の職員の方とともに、傘を差しつつ、処理工程を説明していただき、最後に、メタンガスのボイラーのある施設を見学した。2008年3月で工場は閉鎖されるそうで残念な気がした。そのあと、サッポロビールの製品紹介と環境対策について、パワーポイントで説明していただいた。大阪には、食品業界が多いが、廃棄物処理を工場内で、固形物、メタンガス、排水を一貫して行い、廃棄物処理費を、堆肥販売、メタンガス利用で軽減している事例は多く報告されていない。特に、中小企業では、下水道のない一般家庭ように、簡易浄化槽で1次処理をし、処理業者に処理費を支払っているのだろうか。サッポロビールでは、最終処理した排水は下水に流している。
学生の感想
今回バイオマス利用の施設を実際にみて、とてもよい経験になりましたし、社員さんが丁寧に説明してくださったのでとてもわかりやすかったです。食品の廃液から微生物を利用し、水素ガスやメタンガスを発生させて燃料電池及びボイラーの燃料として利用しているということで、すばらしい取り組みをされているなと思いました。
他にも地球温暖化防止に対するCO2排出量削減のために業界他社に先駆け(コージェネレエーション、高効率ボイラー、嫌気性廃水処理設備などを積極的に導入してこられたということで、サッポロビールさんの環境意識の高さがうかがえて、素晴しい企業だと思いました。他にも容器リサイクルの推進や自動車向けバイオエタノールの共同開発を行われるということで、ますますそれらの環境に対する取り組みを続けてほしいと思いました。
(山本 康隆)
2) 京都市京北町周山森林組合 2007年9月4日(火)10時より12時
9月4日9時京北森林組合を目指したが、事務で教えられた場所が間違っていて、10時森林組合に到着した。組合の方に会って、学生7名に1時間、林業の活動と現状・課題を話していただいた。京北町はかつて、椎茸栽培のほた木や薪炭の燃料を作っていたが、高度成長期、石油にエネルギー転換が生じ、植林に切り替えたそうだ。人は出て行き、零細林業家ではなかなか下草刈り、間伐も思うようにいかないらしい。京都議定書では手入れをしなければ、CO2削減に算入できない。京都市は京北町を平成の合併で市に編入したが、ねらいは、森林の算入にあるということだ。しかし、組合の方は「森林は手入れしないといけない」ということをしきりに強調されていた。隣の滋賀県の森林公社は1000億円以上の債務がある。切り出しから製材販売まで流通経路が伝統的であるし、状況は同じだろう。西日本の森林は、将来、温暖化で広葉樹化するし、杉、檜は全山植林してもうまく育たない。杉、檜の根が深く入って、山を早く破壊してしまう。むしろ、山稜から100bは広葉樹にした方が、腐葉の肥料効果が出て、木もよく育つし、手入れもしやすく出荷しやすい、田にも梅雨期の雨水に肥料効果が出るという話をしたら、組合の方も同様なことを考えておられるということだった。最後に、私は、ボランティア活動か中国・東南アジアの臨時林業労働者を村ごと提携し、定期的に手入れするのはどうかといった。その後、最近、森林研究の団体が間伐の効果比較林をつくったということで、車で現場に行き、実地に説明していただいた。午後、南丹市美山町のかやぶきの里に行くバスを待っていると、私と同じぐらいの人がセンターのそばの病院帰りで、なんとなく話していると、かつて森林の作業をしていて、森林のことは何でも分かるとのことだった。木の伐採・搬出はかなり経験がいるそうだ。この人も植林後、町へ出て退職後帰られたのだろうか。かやぶきの里の帰り、2時間以上バスの便がなかったので、別のバスがある国道まで歩いた。すると、途中の峠の休憩所前に、美山町の間伐展示林があった。夕暮れだったが、日が入り、地面はこけむして、すがすがしかった。次の日学生に美山町に行ってみたらと勧めた。
3) 豊中市水道局寺内配水池 2007年12月12日(水)13時30分より14時30分
地図で探しても、寺内配水池がどこにあるかわからなかったが、高台にあった。13時30分、学生が3名来ていて、また、水道局の2人の職員の方がちょうど来られて、配水池の戸を開けられるところだった。他の自治体からも導入可能か見学に来られるそうだ。配電盤に発電中の電力が表示されていた。貯水池の電力をまかない、残りの電気は、設備の償却に当てられるとのことであった。システムの管理は関西電力の子会社がしているそうである。ここの配水池の位置と水量が安定しているので、発電も効率的に安定発電できるそうだ。この電力は再生可能エネルギーに算入されるので、議定書の目標に対して関西電力にもメリットがある。そのあと、実際の配水管を利用した小水力発電の見学とそれに関する話をうかがった。学生も質問した。
4) 真庭市2007年12月19日(水)11時より14時30分
12月19日新大阪にて学生2名と合流、岡山・津山経由で中国勝山に10時57分についた。真庭観光協会のお世話で、「勝山木材ふれあい会館」にて、市役所職員から、バイオマスタウン構想の取り組みを1時間、説明を受けた。はじめは、過疎化していくので、伝統産業である、檜を中心とした林業の資源を利用して、エコ製品を作り出し、それで、過疎化を止め、観光にも力を入れ、地域を活性化しようと民間が立ち上がったそうだ。昼食後、町並み保存地域をとおって市役所に13時20分についた。そのあと、銘建工業(株)本社工場のペレット製造、ペレットボイラーと発電、温水プール「水夢」のペレットボイラー、ランデス(株)の木材チップスの建材利用、三井造船(株)「エタノール製造設備」の順で見学し、16時20分JR中国勝山駅についた。岡山県の電気事業の団体さんといっしょにまわった。この町を訪ねてくる人が多く、それぞれの会社が対応するのは大変なので、観光協会でツアーを用意したそうである。まず、銘建工業は職員の方がペレット製造、ペレットボイラーと発電を説明しつつ見せてくださった。ランニング・コストを上回り利益が出ているということである。スウェーデンやオーストリアの材木を合成材にするのが本業で、その際でる木くずを利用している。地元の間伐材などではないのが変なところである。市役所の方は未利用の間伐材資源を利用したいということだった。林業家の規模は大きくないといわれた。森林組合の方向性が一致して、計画集荷・製品化・木くず利用の経営計画が出来にくいのかもしれない
観光協会の人がランデス(株)の製品展示室と展示園を説明してくださった。これも間伐材をチップ化してコンクリートで固めブロックをつくるそうだ。ブロックで護岸ののり面にはり、動植物が生存できる環境を作るそうである。歩行者用道路のブロックもあった。最後に、三井造船(株)の実験設備のある工業団地にいった。職員は3ヶ月に一回来て、普段は締めてあるそうだ。主に2段階あり、木材チップを糖化するのが第1段階で、第2段階はそれを発酵させてエタノールを製造するそうだ。職員は3ヶ月に一回なのは、第1段階にかなり時間がかかっているのかと思った。第2段階は、たいした技術でもないだろう。昨年来、アメリカやブラジルでトウモロコシやサトウキビをエタノールにすぐ製造しているのは酒造メーカーならローテクなのだろう。大阪の廃木材をエタノールにする工場は見学できなかったので来たのであるが、その規模と企業秘密が何なのかも同行2人に研究させよう。この見学会でもう一つの団体は始終質問されていた。私もよくするが、それはふつうのことなのだと思った。私も、学生ももっと研究していかないといけない。
5) 高槻市森林資源加工センター 2008年1月22日(火)14時30分より15時30分
演習Uの学生3名と演習Tの学生3名が高槻市大字中畑の森林資源加工センターに14時10分に到着した。14時25分、職員の方に来意を告げると、そのあと、大阪府森林組合の沿革と植林、間伐材の利用の取り組みから、ペレット製造に至った経緯を説明してもらった。そのあとペレット製造工程を説明してもらった。最後に、我々の質問に答えてもらった。茨木市の森も管轄内であり、高槻市と違って植林をせず、昔のままであるということも教えていただいた。ボランティで下草刈りをする場合のやり方は教えていただけるそうであった。これを演習でやれるものか相談しなければならない。15時30分、視察は終った。
6)京都市廃食用油燃料化施設 2008年2月12日(火)14時より15時30分
14時、学生3名と施設内の3階において、職員の方に、まず、こちらの目的を説明した。その後、ビデオを見せていただき、1997年の京都議定書以前の京都市の環境対策と以後の取り組みからこの施設ができたことを知ることができた。その後、15時まで、職員の方が施設の概要とバイオ・ディーゼル油の精製工程について、技術的なことを含め説明していただいた。こちらも、疑問点を質問し、工程から出るグリセリンなども、ゴミ焼却施設で焼却処分されるそうだ。テレビでてんぷら油の自治会回収拠点が1000箇所を超え、回収量が増加しているそうだ。廃食用油を他の部門から回収するのは、他の回収業者と競合するそうである。バイオ・ディーゼル油は、市内を走るゴミ収集車と周辺を走る市バスに使用されている。あいとうエコプラザ菜の花館まで、走っている民間のバスより、乗り心地はよい。施設を通るゴミ収集車はてんぷら油のにおいがする。
15時から外に出て、30分間、ドラム缶にもちこまれたてんぷら油がバイオ・ディーゼル油に施設でどのように出来るか順に教えていただいた。精油装置は、コンパクトで、配管がかなり複雑であった。ランニング・コストは市職員の人件費が高いのと操業時間が市役所の勤務時間に設定されているので、民営化すれば下がるのは想像がつく。今回は、演習Tの学生だけだったが、この分野の取組みがよく理解できた。
3.メタンガス
3.1 サッポロビールのバイオマス事業
私はサッポロビールが行っているバイオマス事業について調べました。ビールを製造する際には、様々な副産物、廃棄物が発生します。サッポロビールではこれらを廃棄せず、リサイクルしているのです。そのなかでも私が注目したのが、バイオマス事業です。バイオマスとは動植物由来の再生可能な有機性資源のことを指し、副産物、廃棄物の約70%を占めるモルトフィードをバイオマスエネルギーとして有効利用する取り組みを進めているのです。
サッポロビールでは、全てのビール工場に嫌気性廃水処理設備を導入しています。この嫌気性廃水処理設備とはどのようなものなのかといいますと、酸素の無い条件で活動する微生物によってバイオマスを分解し、最終的にメタンと二酸化炭素を生成する設備のことです。サッポロビールではここで発生したメタンガスを回収し、ボイラー燃料などに有効利用することで、電力、化石エネルギーの消費抑制、また二酸化炭素の排出を削減しています。また上記以外にも、水素・メタン二段発酵技術、水熱処理技術というものにも取り組んでいます。水素・メタン二段発酵技術とは、まずビール製造工程から出る廃水を、水素発酵槽で微生物を使って水素発酵させ、水素ガスに変換し処理します。次にメタン発酵槽で有機酸を生成し、高速メタン発酵によってメタンガスに変換し再利用します。水熱処理技術とは、高温高圧の水を使用することで通常の水より有機質を溶かすことができるというものです。これを利用することで、そのままでは微生物が分解しにくい有機物を水に溶かし、メタン発酵などに使用しやすくできます。これを使いモルトフィードをいったん溶かしてからメタン発酵させることで、より効率よくエネルギーに変換できるのです。
これらを用いることで、廃棄物を有効活用でき、かつ環境にも良いと悪いところは何も無さそうですが、しかし問題もあります。それはコストの問題です。まず設備の設置費用に数億円、そして年間の設備維持費用に数千万円もかかってしまいます。今後はいかにコストを削減し、より効率よくバイオマスエネルギーを有効利用できるかだと考えられます。
(岡 達也)
参考文献 サッポロビール株式会社HP内サッポロビールの社会・環境活動
http://www.sapporobeer.jp/csr/society/kankyo/katuyou.html
3.2 サッポロビールCO2削減の取り組み
はじめに
ビールができるまでには、さまざまな副産物や廃棄物が生まれます。原料の麦粕も材料を包む梱包材も、サッポロビールでは廃棄されることなく100%リサイクルされています。
サッポロビールでは、全ビール工場に嫌気性廃水処理設備の導入し、積極的な設備投資とその運用で副産物・廃棄物の発生抑制と再資源化に努めている。嫌気性廃水処理では、処理に際し発生するメタンガスを回収し、ボイラー燃料などに有効利用することで、化石燃料に由来するCO2排出量も削減しているのである。
また、こうした取組みに加え、副産物・廃棄物の約70%を占めるモルトフィードをバイオマスエネルギーとして有効利用する取組みを進めているのである。
製造工程から排出される副産物・廃棄物の再生用途
副産物・廃棄物総量の約80 %は、モルトフィードとビール酵母が占めています。モルトフィードは家畜飼料や堆肥のほか、品質の安定した普通肥料としている。そして“モルトスター”(副産植物質肥料)という商品として1999年に静岡県で登録している。ビール酵母は調味料、健康食品および化粧品原料に再利用されているのである。
容器のリサイクルによるCO2削減
びんや樽はほぼ100%回収され、缶もリサイクル団体を通じて86%リサイクルされている。販売時に瓶・樽の料金を上乗せして販売し、瓶・樽を返却することで上乗せした料金を返却することでリサイクルの効率を上げている。
サッポログループは、以下の容器リサイクル推進団体を支援しているのである
1 アルミ缶リサイクル協会
2 スチール缶リサイクル協会
3 ガラスびんリサイクル促進協議会
4 ガラス再資源化協議会
5 PETボトルリサイクル推進協議会
6 段ボールリサイクル協議会
7 紙製容器包装リサイクル推進協議会
8 酒類紙製容器包装リサイクル連絡会
輸送によるCO2削減
ビール・発泡酒などは鮮度が命なので、スピーディーにお届けするトラック輸送が一般的になっているが、サッポロビールの物流部門は、長距離の工場間を輸送するときなどでは、環境への負荷が少ない鉄道や船舶を今でも利用している。(ビールの品質と環境をみながら) こうした鉄道利用の実績が評価され、ビール業界で初めて「エコレールマーク」認定を受けた。
※ エコレールマーク: 鉄道貨物輸送を活用し、地球環境問題に積極的に取り組んでいる商品や企業であることを表示するマークである。
その他でのCO2削減
@ 圧縮強度が高めたウェーブ段ボールより普通の段ボールよりも重量を17%、厚さを1mm、1枚の面積を2%少なくし、11か月間で2トン削減している。
A リサイクルし易い原料・資材や商品を出来るだけ購入することによりCO2の削減するようこころがけている。これを「グリーン調達基本方針」として制定している。
B 電気・ガス・ 水道使用量の低減、アイドリングストップ、コピー用紙使用量の削減、廃棄物の分別と発生量の抑制などを積極的に行いまた、
参考文献
http://www.sapporobeer.jp/csr/society/transport/yusou.html
4. 小水力発電事業
4.1 寺内配水池小水力発電事業
1. 事業名 寺内配水池小水力発電事業
2. 事業場所 寺内配水場内(豊中市東寺内町127)
3. 契約事業者 関電エネルギー開発株式会社(技術提案方式により決定)
4. 年間発生電力量 約107万キロワットアワー(平成19年度実績)
5. 運転開始年月 平成19年2月
6. 事業期間 運転開始から20年間
4. 2 水力エネルギーの利用と水力発電
水力エネルギーの最大の長所(魅力)は利用する際に二酸化炭素や有害な廃棄物を排出しないクリーンな自然エネルギーであることではないでしょうか。このため永久的に使うことができると考えられ、貴重なエネルギーとなっています。一方、短所は大規模な発電をする際に周辺の川や近隣の自然環境が壊されることが考えられますし、さらにダムを建設するとなると、ダムに沈むことになる村の立ち退き問題なども浮上してきます。また、発電コストが高い、発電に適した場所が限られているといったデメリットも あります。
水力発電の特徴
水の流れを利用して行なう水力発電は、エネルギー密度が高いため、小さな発電システムでも大きな出力を得られるのが特徴です。水力エネルギーは太陽光や風力エ ネルギーと比べても安定した運転をするので、24時間、1年中使えます。数メートル程度の落差の水流なら、1世帯分の電力を作ることができます。また、一 般の人でも日用大工が得意であれば、水力発電機を作ることも可能です。こう考えると水力エネルギーは結構、生活密着型のエネルギー源です。利用可能な状況 下にある場合は、水力エネルギーの利用が優先的に検討されると言われているように、積極的な取入れが大切です。
水力発電の仕組み
水力発電は、位置エネルギーと呼ばれる、高いところから低いところへ流れ落ちる水の力を使って発電機をつないである水車を回すことで、電気を起こします。日 本の渓谷にあるダムの多くは、私たちがよく知っている、洪水調節や水不足に備えて水を貯めているということ以外に、水をちょっとずつ流して水力発電に使う という役割も持っています。
水力の発電法
水力エネルギーには、4タイプの発電方法があります。
流れ込み式
川の流れを利用して、長い水路で大きな落差を得ることで水車を回します。ですから、発電量は川の流量次第になります。
調整池式
取水ダムや調整池を作って、需要に合わせて水量を調節します。この方式では、1日〜1週間の発電量をコントロールできるようにします。
貯水池式
貯水池は調整池よりも大きく、雪解け水や梅雨、台風時の出水を溜めておいて需要の大きいときに使います。
揚水式
発電所で一度使われて、下の貯水池に溜まった水を夜中に火力や原子力エネルギーの電力を利用して上の貯水池に戻して、また必要なときに使います。
4.3 寺内配水池の小水力発電
豊中市水道局寺内配水池は、大阪府営水道千里浄水池から、落差35m、水平の距離6.8kmまでの自然落差を利用して、発電しています。配水池に必要な電気をまかなった後、余剰電力は関西電力に送電されます。その電力料金が、ランニングコストに当てられるそうです。認可出力は129kWです。
発電装置
発電機 ポンプ逆転水車(右の円形部)
送水管(右の円形ボルト部)
装置自体は、写真でみるように、シンプルで、設置工事は、配水があるので、断水できないので、短時間で、終わったそうです。他の自治体からの見学があるそうですが、送水管の落差と距離が、寺内配水池はめぐまれているので、出力が大きいそうです。したがって、水道局にとって、予算は必要なく、民間会社から、電力は無料で供給してもらえるし、民間会社もちなので、設置管理は容易であるが、出力が、他の自治体での導入できるかの判断に影響するようです。
4. 4
豊中市で使われているのは流れ込み式です。豊中市では川の落差、広大な土地があるため成功しました。しかし茨木市ではその両方がありません。落差が全くないわけではありません。土地がないわけではありません。しかし水力発電は、設置費用、広大な土地、大きい配管や大きい設備が必要なため設置費用が絶大になる。自然と維持費も高くなってしまう。さらに土地開発、森林を切ってしまうので中途半端な設備であると、結局は採算がとれず環境破壊のまま終わってしまう。茨木市では川の落差があまりなく、土地開発もしなければいけないので、デメリットのほうが大きくなってしまうため、水力発電の設置は可能ではあるが設置しない方が良いのではないか。という結論に至りました。
5.ペレット製造
5.1 視察行程
今回、西村ゼミの研究の視察として、山本、安藤、西村教授の三名でバイオマス(廃材を利用して電力や燃料にする、リサイクル事業)の見学を行った。(当初の希望視察地域は、関西圏のバイオマス工場であったが、事業内容を一般公開できない理由ということで、視察場所は岡山県にある真庭市の真庭観光連盟が展開しているバイオマスツアーに参加することとなった。)
真庭市は、勝山町、落合町、湯原町、久世町、美甘村、川上村、八束村、中和村及び北房町の9町村が合併した新市であり、岡山県北部で中国山地のほぼ中央に位置し、北は鳥取県に接し、東西に約30km、南北に約50kmの広がりを見せている。
総面積は、約828kuで岡山県の約11.6%を占めることになり、県下で土地活用の可能性の最も大きな市であるとされている。よって、バイオマス事業に最適な土地柄であると評価を受けたのだろう。
バイオマスツアーの内容は、1.バイオマスタウンの概要説明、2.ペレット(廃材を燃料用に精製した固形燃料)の製造工程・ペレットを利用した発電設備の見学、3.ペレットのボイラー設備利用の見学、4.製材行程の木屑を混ぜたコンクリートの製品の展示・販売の見学、5.廃材からエタノールを精製している工場の外観見学であった。今回のバイオマスツアーで研究したことと共に茨木市でのバイオマス事業の展開できるかどうか考察してみたい。
5.2. ペレットの製造工程・ペレットを利用した発電設備の見学
銘建工業株式会社では、製材の業務をされている為、大量の木屑が発生する。これを燃料化できないかという事で、ペレットの製造機とペレットを燃料として動く発電機が整備されていた。導入費用は設備によって異なるが、数億円とコストは掛かるが、電力費用の削減、更に余った電力を販売するなどして数年で投資額が回収できる算段となっているようだ。
1) 木質ペレットの概要
木質ペレットは主に、木屑や製材廃材や廃棄物といった不要物を原料に圧縮されて作られる製品である。直径はおよそ6mmから12mm、長さは10mmから25mmといった小さな物が主流となっている。木質ペレットを生成する為のペレットボイラーの概要も下記にて説明していく。
2) ペレットボイラーの概要
@ペレットサイロ :燃料となるペレットを貯留する。
A燃焼 :燃料自動供給装置によりペレットがボイラー内部の燃焼室内
に運ばれ、燃焼する。
B熱交換 :熱交換を行い、給湯などの熱に利用。
Cばいじん除去 :排気する空気に含まれるばいじんを取り除く。
D排気 :煙突から排気する。
造 粒 工 程
@ 材料投入口
A 強制的に押し込む
B プレスロールとリングダイとの間に噛み込まれる
C リングダイに設けられた無数の穴から材料が押し出される
D カッターで一定サイズの大きさにカット
E 排出口
5 .3 ペレットボイラーの設置コスト及び性能
見学した公共温水プールでのボイラーでは、温水プールに利用されていた。ペレットボ
イラーの設置コスト(1万1000千円)は、従来の灯油ボイラー設置コスト(1000千円)に比べて約10倍多くかかるが、1MJの熱量を、ペレット(1.01円/MJ)は、灯油(2.32円/MJ)の半分の費用で得ることができている事から、初期費用さえ準備できれば環境面でも経済面にも良い。また、ペレットは木から作ったものなので、燃焼後に排出するCO2は0とカウントされる。
5. 4 二酸化炭素の削減効果
木質ボイラーを導入することによって得られるメリットとして、二酸化炭素の削減効果がある。この効果は化石燃料を木質バイオマス燃料で置き換えたときの削減量で評価することができる。 つまり、※カーボンニュートラルな燃料である木質バイオマスを化石燃料の代替燃料とすることによって、化石燃料を燃焼させたときに排出される二酸化炭素が削減されるという考えである。
※カーボンニュートラル:木質バイオマスにおいても燃焼によって化石燃料と同様に二酸化炭素を 発生するが、成長過程で光合成により吸収した二酸化炭素を発生しているものであり、ライフサイクルで見ると大気中の二酸化炭素を増加させることにはならないという考え方である。
算出方法
@チップ・ペレットとA重油の熱量比較
燃料種別 |
発熱量 |
熱効率 |
有効発熱量 |
チップ |
1,900kcal/kg |
80% |
1,520kcal/kg |
ペレット |
4,037kcal/kg |
80% |
3,230kcal/kg |
A重油 |
9,341kcal/g |
80% |
7,473kcal/g |
A二酸化炭素排出量
A重油1g当たりの二酸化炭素排出量 2.71kg
B木質チップを使用することによる二酸化炭素削減効果
2.71kg/g×(1,520/7,473)g≒0.55kg より チップ1kg当たり0.55kg削減
C木質ペレットを使用することによる二酸化炭素削減効果
2.71kg/g×(3,230/7,473)g≒1.17kg より ペレット1kg当たり1.17kg削減
おおよその推計を計算すると上記のような比較となる。
5. 5 茨木市に導入する為には
ペレット事業では、安定的な原材料の確保と広大な敷地面積が必要であるが上記の表から見てとれるが茨木市では二つの条件はクリアできている為に財政に余裕があれば導入を検討しても良いだろう。
森林資源面積 (単位・ha) |
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年 |
計 |
森 林 面 積 |
竹林・その他 |
|
人 工 林 |
天 然 林 |
|||
平成14 年 |
2,808 |
541 |
2,040 |
227 |
15 年 |
2,808 |
543 |
2,038 |
227 |
16 年 |
2,808 |
548 |
2,033 |
227 |
17 年 |
2,801 |
546 |
2,029 |
227 |
18 年 |
2,802 |
546 |
2,029 |
227 |
(茨木市ホームページより)
6. バイオエタノール
6.1 廃材からのバイオエタノール工場の外観見学
今回の視察では最も重要であり、尚且つ、今後の地球環境や我々の生活に大きく関わってくる「バイオエタノール」と呼ばれる新燃料である。このプラント内では、穀物原料の供給が難しい日本で、木質系原料によるバイオエタノール製造技術の実用化を目指し、研究している。当日は残念ながら、内部は見学できず工場の外観のみという形であった。したがって、現地から頂いた資料より原料からエタノールが製造される一連の流れを図示したい。
真庭バイオエタノール実証プラント
バイオマス処理量 日量最大2 t エタノール製造(予想量) 250kg/日
6.2 E3社会実験について
以上のような工程を経て製造されたエタノールを3 %ガソリンに混ぜて公用車の燃料として利用しようという計画がE3社会実験である。この試みが実用化に繋がることで得られるであろうCO2の削減効果について考察しよう。
◎ CO2の削減効果の推計
例えば、E3ガソリンの燃料100ℓ、燃費10km/ℓでの乗用車の走行距離は
(97ℓ×10km/ℓ)+(3ℓ×10km/ℓ×0.6)=988km
となる。
※ @E3ガソリンとは、97%のガソリンに3%のエタノールを混ぜたものである。
※ Aバイオエタノールの発熱量はガソリンの約60%である。
E3ガソリンとガソリンのCO2排出量を100q走行時で比較すると、
〔E3ガソリン〕
2,4kg-CO2/ℓ×97ℓ=232.8s-CO2
232.8s-CO2×100q÷988q≒23.56s-CO2(小数点以下第3位四捨五入)・・・@
※ Bバイオエタノールを燃やすとCO2は排出されるが、そのCO2は原料の植物が成長する時に大気中から吸収したCO2であるため京都議定書CO2カウント上ではゼロとみなされる。
〔ガソリン〕
2,4kg-CO2/ℓ×100ℓ=240s-CO2
240s-CO2×100q÷1000q=24s-CO22・・・A
A−@=0,44s-CO2
の削減が見込まれる。
統計によると全国の乗用車が一年間に走行する距離は4,450億kmにも達する(1台の乗用車が1年間に12,000km走行している)。100km走行あたり0.44sのCO2削減量が日本全国の4,450億kmでは、約196万トンという削減量になる。
調査後の感想
現在、高騰している原油価格に歯止めをかけられるバイオエタノールは世界で大きな注目を浴びている。ガソリンにバイオエタノールを混合させ、混合ガソリンに対応している車両であればガソリンの消費を大幅に抑えることができる画期的なシステムである。アメリカでは、国策で進められており、その原材料にはとうもろこしが多く使われている。だがこの背景には、日本向けのとうもろこしや、大豆の生産面積縮小による輸出の大幅な減少といった大きな弊害が出てきている。これは、コモデティファンドと呼ばれる投資家達が株のように穀物を売買する事で穀物の価格が異常な伸びを見せ、日本への輸出が滞るなどの事態になっており企業の多くは頭を悩ませている。アメリカでは約50%近くガソリンにバイオ燃料を混ぜる事が認められている事に対し、日本はたったの3%という現状である。これは、石油産業と自動車産業に配慮しての考えだが、近い将来には日本も混合率を上げざるをえない状況になっていくであろうという事を認識しておかなければならない。
7.木質ペレット工場見学
7.1 大阪府森林組合高槻支部見学
2008年1月22日、大阪府森林組合高槻支部の木質ペレット工場を見学してきました。木質ペレットとは、間伐材や製材の木くずなどを小円筒型に圧縮された均質の固形燃料のことで、1970年〜80年代の石油ショックで、石油に代わる燃料として注目されていましたが石油価格の安定とともに、利用する機会が減少しました。90年代になって、欧米で地球温暖化の防止や、エネルギー安全保障の視点から、ペレットが再び注目されています。
木質ペレット工場は、全国で4番目の工場として、2002年8月に完成しました。年間1500トンの製造能力があり、稼動後約1年間の実績は600トン程度だそうです。
木質ペレットの特徴として、輸送に便利で、温度調節ができる、加熱処理しているので長期間、貯蔵することもできる、木を圧縮しただけなので、触っても手が汚れない、などが挙げられます。地球温暖化を防ぐためといっても、化石燃料をやめて、薪や炭の生活に戻ることはできません。化石燃料からバイオマスに切り替えていくには、木材を石油のように使いやすくすることが必要です。そこで、考案されたのが、木質ペレットなのです。
また、木質ペレットは森林にも良い影響を与えています。森林の木々が生長して林内が過密になると、日光が林床まで届かなくなり、木々を健全な状態で保てなくなります。そこで、力を発揮するのが「間伐」です。林内の一部を抜き伐ることで、森林や木々がもつ力が引き出されます。抜き伐った木が木質ペレットとして利用されます。よって「間伐」は健全な森林づくりとともに、有効な森林資源としても役立っています。
スウェーデンなど北欧の国々では、一般家庭にペレットストーブが普及し、中・小規模のペレットボイラーで自家発電や公共施設の暖房が行われています。さらに、大規模なボイラーによる発電や地域熱供給などの地域エネルギーの供給を担っています。
大阪府森林組合でも、高槻森林観光センターの温泉にペレットボイラーを使い、木質ペレットのことを知ってもらえるよう努めています。
さらに、大阪府森林組合では、美しく健康な森林を守るために、「さとやまMORI MORI構想」を策定しました。「地域の活性化」、「森林資源の有効活用」、「森林と市民の交流」の3つの構想を考え、現代の社会と人々の暮らしに根づく、森林と地域と市民の新しい関係を築き、元気が循環する仕組みをつくれるよう目指しています。 (吉田 裕司)
7.2 装置の仕組み
木質ペレットとは、小円筒型に圧縮された均質の固形燃料です。加熱処理をしているので長期間、貯蔵することもできます。また、木を圧縮しただけなので、触っても手が汚れません。もちろん、燃えたときの排出ガスは化石燃料に比べてクリーンで、燃焼後の灰はペレット重量の約1%。しかも、この灰は農業用の土壌改良材などに有効活用することができます。
木質ペレット製造までの過程
1・搬入
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2・受け入れ
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3・一次破砕 大きすぎるチップは再び破砕
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4・選別1
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小さすぎるチップは堆肥へ
5・選別2
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6・二次破砕
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7・乾燥
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8・三次破砕
9・成形
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10・冷却
11・袋詰・出荷
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ストーブやボイラーの燃料へ
次に灯油、重油、木質ペレットの発熱量とCO2排出量を比べてみる。下の表を見てみると、発熱量はカロリー単位で見ると他の2つに比べ半分程度しかないが、ジュール単位で見ると約3倍にもなる。
特に注目すべき点はCO2排出量です。灯油、重油は同じくらいの排出があるが木質ペレットは0である。環境には非常にやさしいエネルギーといえる。
燃料の種類別単位発熱量及び排出係数
発熱量(ジュール単位)発熱量(カロリー単位) CO2 排出係数
灯油 36.7 MJ/L 8,767 kcal/L 2.49kg-CO2/L
重油 39.1 MJ/L 9,341 kcal/L 2.71kg-CO2/L
木質ペレット ※1 18.8MJ/kg 4,490kcal/ kg 0kg-CO2/L
出典)発熱量:「平成16 年度 総合エネルギー統計」(経済産業省・日本エネルギー経済研究所)
CO2 排出係数:地球温暖化対策の推進に関する法律施行令第三条
※1:「小規模分散型熱供給(ペレット・ボイラー)システム事業化FS 調査報告書」(平成15 年3 月、山口県)より
木質ペレットは目的にあわせて様々な使われ方をしています。熱出力百MW単位の大型ボイラーでは、ペレットの形状は輸送と貯蔵のためだけに用いられ、燃料は粉砕され浮遊燃焼されます。この種の大型ボイラーは発電や地域熱供給といった地域エネルギーの供給を担っています。
一方、中・小規模ボイラーは、工場の自家発電装置として使われたり、病院や学校の暖房用に使われています。また家庭で気軽に使えるものとしてペレットストーブもあります。こういった小規模ボイラーやペレットストーブは、企業や家庭がバイオマスエネルギーを導入したいと考えた際に、取り扱いの面からもコストの面からも大変使いやすいものといえます。特に家庭で利用しやすいペレットストーブは、エアコンなどに代わる暖房設備として非常に注目されています。
ペレットストーブは住宅密集地などでも設置場所を選びません。なぜかというと煙がほとんど発生しないのです。ですから近隣等の迷惑になることもありません。排煙筒は通常ですと1.5mほど立ち上げていただくのみです。そのため設置に大掛かりな工事は必要ありませんしメンテナンスも安全・間単にできます。またストーブ自体がなるべく熱くならないように設計されているので実際は炉台も壁への防火策(レンガ積等)も必要ありません。ファンヒーターと同じ感覚です。
ペレットストーブ導入はおよそ30万円前後でできます。また燃料となるペレットも1キロあたり40円前後です。また補助金が出たりする場合もあります。
ただ、ほぼ毎日ペレットを補給する必要があり、燃料を置いて置くための場所が必要である。その他の長所と短所をまとめてみました。
表.ペレット燃料の長所と短所 |
|
長所
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上質の燃料である(形状や含水率等の品質が安定している) |
乾燥しており貯蔵が容易である |
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環境基準に適合した燃焼が可能である |
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自動燃焼に適している |
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地域の再生可能な資源から造られる |
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チップよりもエネルギー密度が高いので、輸送や貯蔵に適している |
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エネルギー密度が高いので、エネルギー需要密度の高い地域まで運ぶことが可能 |
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閉鎖系の再生可能エネルギーシステムに理想的である |
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小規模から大規模なエネルギーシステムにおいて経済的な代替選択肢となりうる |
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雇用を生み出す |
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短所 |
家庭においてはガスや石油、電力による暖房よりも労働集約的である |
燃料供給や輸送、燃焼に関して、ガスや石油、電力よりも信頼性が劣る |
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貯蔵時に石油の3倍の容積が必要 |
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水気に弱い |
(横井 徳人)
参考文献 高槻森林組合の資料
7.3 茨木市への導入
茨木市にペレットボイラーを導入するにあたって、まず設置場所から考えてみます。
茨木市の森林面積は2,808ヘクタール、林野率は36.7パーセントであり、気候の影響によりほとんどが暖帯林に属していて、アカマツの天然林が多く、それに次いでクヌギやコナラ等の広葉樹林が見られ、暖帯林のシイやカシ林はわずかしか残っていない程度です。しかし、マツ林では松くい虫の被害が未だに存在し、未解決の問題として残っています。
人工林については現在548ヘクタール、人工林率は21.2パーセントとなっています。よって、木質ペレット製造施設を設置するとしたら山間部が適しているということが言えます。
しかし、ペレットボイラーを導入するにあたって、課題があります。まずペレットボイラーを日本の住宅様式に合わせる必要性があるということです。特に都市部の方では、まず設置スペースの確保出来るかという事や、土地有効利用といった観点からの検討が必要になってくるということです。
また、周辺環境との整合性の面で景観において違和感がないかという事や、燃料搬入の面では大型車両搬入の際やアクセスの交通環境に障害がないかということを検討しなければなりません。
他にペレットボイラー導入にあたっての留意事項もあります。まず一つはペレット製造工場でトラブルが発生し、その工場からの供給が困難になった場合などに他工場で生産しているペレットでも対応出来るようにするためにも、全種類のペレットに対応出来るボイラーを導入することが望ましいという事です。
もう一つに煙突の重要性が挙げられます。というのもチップボイラーでの事象で、設置当
初、含水率100パーセント以上の高含水率チップを使用すると、煙道内に結露水と不完全燃焼による煤が大量に発生し、煙道火災の危険性が出てきたという事例があります。
含水率が10パーセント程度と低く、燃焼の際に発生する水分の量が少ないペレットにおいては発生の可能性が少ないトラブルではありますが、留意しておかなければならない問題であるといえます。
次にペレットの特徴を考えてみます。ペレット燃料の特徴として、他のバイオマス燃料に比べて非常に扱いやすいという事がいえます。形状・含水率が一定であるため自動運転装置に適しているので、発電用ボイラーでも家庭用のストーブでも、格段に手間が省けます。輸送に関しては、エネルギー密度が高く一度に多くのエネルギー量を運べるため、長距離輸送が可能です。また加熱処理されているためにカビなどが生える心配が少なく、長期間の貯蔵も可能です。以下の表で示していることに加えて、他の燃料よりも二酸化炭素の削減効果が高いペレットは環境に優しい燃料だという事が分かります。
茨木市への導入を考えて、容易であると一概には言えませんが、一般家庭へのペレットボイラーを導入するために必要な事柄を文献、ヒアリング、モニター設置を通じてマニュアル化し、法規制、導入手順や前述の課題などが明らかになったことにより、導入は簡易化したと言えるでしょう。 (真鍋健太)
木質ペレット燃料の特性
発熱量(下限) |
4.7kWh/kg = 約4,000 kcal/kg |
灯油換算 |
ペレット:灯油=約4,000kcal/1m3 |
体積重量 |
650kg/m3 |
含水率 |
8〜13% |
灰分 |
心材:0.5%以下、樹皮:2.5%以上 |
8.バイオディーゼルの事例研究
8. 1 装置の仕組み
性能
京都市廃食油燃料化施設ではバイオディーゼル燃料化プラトンを設立し、バイオディーゼル燃料の精製に取り組まれています。精製のプロセスとしては、貯蔵された廃食油を過熱させ、水分を抜き、そこへメタノールと触媒を加えメチルエステルを生成させます。比重差によりメチルエステルとグリセリンを分離させ、メチルエステル中に残留するメタノールを回収後、水洗浄により不純物を除去し、更に精製したメチルエステル中の夾雑物をフィルターでろ過し、高度に不純物を取り除いて製品として完成します。この工程の中に3槽構造(反応槽が3つ)8行程の製造プロセスによる不純物を最大限除去できる高度な機能があるため高い品質を生み出すことができます。
CO2の削減効果
廃食油はバイオマス資源と呼ばれ、植物油や生ごみなどの再生可能な生物由来の有機性資源のことで、これらは地球に降り注ぐ太陽光を元に生物が合成した資源で、生命と太陽がある限り枯渇しない、化石燃料に代わる新たな資源として注目されています。
バイオマス資源は化石燃料と同様に、燃焼によってCO2を発生します。しかし、植物は成長過程に光合成によって二酸化炭素を吸収することから、理論上、二酸化炭素の増減に影響を与えない、CO2の循環サイクル(カ−ボンニュートラル)が実現します。
例えば、1日100ℓのバイオディーゼルを使用した場合のCO2の削減量は、軽油を使用した場合のCO2排出量1ℓ当たり2.64kg(軽油2.64 kg-CO2/ℓ)よりバイオディーゼル年間使用量:100ℓ×365日=36,500ℓ CO2削減量:2.64kg×36,500ℓ=96,360kg、つまり年間96tの削減になります。
京都市廃食油燃料化施設の生産規模は日本最大で、バイオディーゼル燃料が1日に5,000ℓ、軽油混合燃料(BDF:軽油=20:80)が1日に3,000ℓです。ここで生産されたバイオディーゼル燃料は京都市内全てのごみ収集車で使用され、軽油混合燃料は市バスの一部(95台)で使用されています。
このように収集車やバスにバイオディーゼルを使用できるのは、精製された燃料が高度な品質規格「京都スタンダード」を満たしているからです。
廃食用油燃料化装置概略図
(粗メチルエステル 次ページにつづく)
廃食用油燃料化装置概略図 (久保 逸人)
概要
施設建設費 1億9000万円
建設のきっかけは、平成9年12月開催の地球温暖化防止京都会議(COP3)の開催都市としてこの事業の普及・先導役をやりたいという思いや、また地域の方々の大きな協力もあり平成16年5月末に竣工されました。
ランニングコスト 1900万円
生産コストは施設の減価償却費を含め、1ℓ当たり100円(運営費のみでは80円)となっており、軽油購入価格とほぼ同等となっています。
H17年度BDF生産コストの内訳
(単位:円/ℓ)
費用 金額
廃食油購入費 29
メタノール・触媒購入費 10
水道代(電気は自家発) 2
品質チェック経費 8
品質改善研究費
8
その他ランニングコスト 23
施設減価償却費 20
合計
100
(山内 浩行)参考文献
池上 詢『改訂版バイオディーゼル・ハンドブック〜地球温暖化の防止と循環型社会の
形成に向けて〜』日報出版、2007年
新エネルギー利用交流セミナー資料
植田聖志「京都市廃食油燃料化施設見学記」ホームページ
廃食用油燃料化装置概略図
8.3 バイオディーゼル燃料における運用の問題
京都市南部にあるクリーンセンターでは、廃食油燃料化施設として、植物油や生ゴミなどの再生可能な生物由来の有機性資源バイオマス資源を作成している。
この施設で精製されているバイオディーゼル燃料は、京都市の一般家庭から出る廃食用油や、飲食店、ホテルなどから出されるものを原料としている。比率的には一般家庭が約10%を占めている。つまり、地域の方々のCO2への意識と協力が大きなものとなっている、必要となっていることを示していると考えられる。
だが、国内ではまだバイオディーゼル燃料の普及が進んでない。理由としては、下記のような課題が障害となっている。
・ 種類の違う、または劣化した廃食用油を原料としているため、製造される品質が不安定で、自動車燃料としての適合性の安定確保が懸念される。
・燃料製造過程で発生する、含油廃水やグリセリン廃液の適正処理・リサイクル等をどのように行うかという問題がある。
・ 燃料品質が自動車の燃料噴射系などの健全性に及ぼす影響や、排出ガスとの関係が十分明確になっていない。
・ 市民が行う廃食用油のしくみをどのようにシステム化するか、等。
@回収の問題
全国の家庭用廃食油回収を行っている地域の回収実績では、回収システムの成熟度が高めの場合、平均で、一世帯が一ヶ月に0.2〜0.3リットルを回収可能量として推定されている。茨木市の総世帯がおよそ11万世帯なので、もしもその全世帯から回収出来たら、毎月2万〜3万リットルは回収可能と言うことになる。廃食用油を焼却した場合、廃油1リットル当たり2,66kgの温室効果ガスが排出するので、家庭から回収出来れば月間53万トン、年間にすれば630万トン以上ものCO2を削減出来ることになる。
バイオディーゼル燃料を運用していくにおいて、廃食用油の回収システムを、地域に根ざした市民運動として構築することが望ましい。京都市では、家庭からの廃食用油の回収を平成9年8月よりモデル地域で開始。専用の回収容器の常設や、各種団体役員宅への回収用ポリタンクの配布などにより、現在のスタイルである住民主体のシステムが構築された。 そして、市民団体の役員宅前、章・中学校、商業施設などに設けた回収拠点にポリタンクを設置し、月1回の頻度で廃食用油を各家庭から排出し、市が委託した民間業者によって回収する(作業は2時間程度)という方法が取られている。こういったシステムの構築を市が率先していき、また公共施設やガソリンスタンド、食用油販売店などでの常時回収などに取り組んでいくことが求められる。
地域内で循環を完結させることによって市民が取り組みの効果を身近に実感出来る、廃食用油のリサイクル、それに伴うCO2削減効果、自動車排出ガスのクリーン化、河川の汚染防止、生きた環境教育などといった効果が期待出来る。
A品質管理の問題
バイオディーゼルは、原料の状態によって製品の状態も変化する為、様々な問題が生じる。特に、廃食用油を使用した場合、様々な油を混合して原料にするために製品にした際の品質管理が難しい。高濃度のバイオディーゼルを使用した場合、エンジンの燃料供給ホースがゴム製だと劣化の速度が速くなる為注意をしなければならない。
保存の場合も、軽油に比べると酸化される速度が速く、痛みやすいので、保存後6ヶ月以内に使用することが望ましいとされている。
Bコストの問題
原料となる油糧植物の多くは季節によって値段の変動があり、製造コストが原料価格に容易に反映されてしまうという要素を持つ。その上、ほとんどの地域では、製造コストを軽油と比較した場合、バイオディーゼルのほうが高くなっていて、現状で販売するに当たっては、税金免除や購買女性均等の施策支援が無ければ普及が難しい。
現段階では、京都市廃食用油燃料化施設ではプラント等にかかるイニシャルコストを除いて、1リットル当たり85円程度かかっているとのことであるが、効率化を積み上げることによって低減させる余地がある。 (京極 雅史)
参考文献
バイオディーゼル・ハンドブック〜地球温暖化の防止と循環型社会の形成に向けて〜
参考サイト
http://www.biomasss-hp.jp/precedent/focus/biodiesel_kyoto_03.html
http://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/page/0000001904.html
http://www.suncarefuels.com/aboutfuture.html
8.3 茨木市への導入
実際に、茨木市への導入を考える上で最も重要になる事は、廃食用油の回収についてです。現在京都市では、市内約1000拠点において年間約13万リットルを回収しています。この回収のためには、家庭から排出される廃食用油の回収は、地域に根ざした市民運動として、各地域単位で設立された市民、事業者、行政で構成される「地域ごみ減量推進会議」等が主体となって行っています。そのため、茨木市に導入をする場合、市民、行政、事業者への連携を強化して、より多くの回収拠点の設置が第一に考えられます。
・ 茨木市に導入した時の資源の推計量
日本の国内で一年間に発生する一人当たりの廃油発生量は約3,297〜4,290gです。このうち外食産業や食品工業からの廃食用油に関しては有効利用が進んでいるため、実質のバイオディーゼル燃料の原料としての利用可能量は、家庭から発生される950〜1,953gになります。それを、現在の茨木市の人口である271,352人に当てはめます。茨木市の人口すべての廃油を回収できたとしたら、1年間で
950〜1,943×271,352=257,784,400〜527,236,936gになります。この単位を直すと年間約258〜527tもの廃油が回収できることになります。
・ CO2削減効果
廃油から利用できるバイオディーゼル燃料への変換率をαとして、上記で計算した茨木市の1年間で回収できる廃油約258〜527tにかけたものが、そのままCO2削減効果として多くに有効に活用することができます。 (山本 剛至)
参考文献
京都市情報館 http://www.city.kyoto.lg.jp/
茨木市公式ウェブサイト http://www.city.ibaraki.osaka.jp/
9.風力発電の事例研究
9.1 体験訪問の報告
2008年12月、和歌山県有田郡広川町にある広川町風力発電所に見学に行ってきた。最初の予定では茨木カントリークラブの風車を見学することになっていたが「風車はありません。」と言われたので、広川町風力発電所に変更した。
車で大阪市内から出発し途中、広川町役場に立ち寄り資料をいただいて風力発電所へ向かった。2時間かかった。到着してまず風車のサイズに圧倒された。想像していたよりもはるかに大きく、プロペラの回転速度も速くてブンブンと唸っていた。発電とはこのようなことなのかと感心した。やはりこれからの時代、クリーンエネルギーが必要になってくるので風車がその役割を担ってくれるのではないかと思う。
(田中 恭智)
9.2 装置の仕組み
メーカー:GEウインドエナジー社
形式:プロペラ型・アップウインド
羽根が回りだす速度:3m/s
羽根が止まる風速:25m/s
定格風速:12m/s
定格出力:1500kw
定格電圧(周波数):575V(60Hz)
タワーの高さ:64.7m
ブレード(羽根):直径70.5m
【予想発電量=2,360,000kwh】
・CO2削減量は年間1,660Tonにもなる。
2,360,000kw×0.704kg/1kwh≒1,661Ton
・CO2削減量を杉の木(50年生)による吸収率に換算すると436,000本に相当する。
1,660,000kg÷3.8kg/年・本≒436,800本
・予想発電量を石油火力発電所に換算すると年間57kLの石油が削減できる。
2,360,000kwh×0.243L/kwh≒573kL
(ドラム缶2,860本分)
・年間557世帯の電気がまかなえる。
2,360,000kwh÷4,234kwh/年間≒557世帯
(田中 純)
9.3 茨木市への導入
日本は山が多い地形のために風が乱流することが多い。しかも台風が上陸することも頻繁にある。それだけ風車が被害を受ける要素があるのに、簡単に建設はできない。大型風車が進んでいる欧米諸国とは相当異なる環境におかれている。
やはり茨木市に大型風車を導入するのはとても困難なことである。今のところ残された道は「マイクロ風車」しかない。発電電力量は大型風車に比べるとはるかに小さいものであるが、最近は技術が発達してきたので少しの風で発電できるという優れた能力のマイクロ風車がでてきている。
近年、エネルギーをめぐる情勢は大きく変化してきており、特に地球温暖化問題への対応の観点からは、先進国に温室効果ガスの削減義務を課した京都議定書が発行された。これにより、新エネルギーの導入促進に向けた動きがいっそう加速化されるものと思われる。 (北浦 佑基)
参考文献
広川町風力発電所資料
牛山 泉『風力エネルギー読本』オーム社、平成17年
牛山 泉『風力エネルギーの基礎』オーム社、平成17年
調査を担当し、報告書を作成した西村ゼミ05回生
安藤 健一 市原 敦司 市村 知史 北浦 祐基 岡 達也 清水 隆佑
京極 雅史 久保 逸人 田中 純 田中 恭智 素野 祥太 真鍋 健太
山内 浩行 山本 崇嗣 山本 剛至 山本 康隆 横井 徳人 吉田 裕司
西村ゼミ05回生「追手門学院大学 2007年度特色ある教育プロジェクト
大阪府茨木市の再生可能エネルギーの推計
調査報告書 第4集」
2008年度『経済学生論集』 第36号 2009年3月発行 に掲載
編著者 西村 和志
発行日 2009年3月