教養ゼミ1 A(地域の環境とエネルギー)

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授業テーマ
地球温暖化対策として、日本は京都議定書を遵守する間、福島原子力発電所事故により、全国の原子力発電所が停止し、関西電力の原子力発電は、再稼動が困難な状況にある。国際会議では2020年まで20%削減、2050年まで80%削減の目標が設定されたが、関西では府県民がかなり努力しないと達成が困難である。本ゼミでは、国の政策目標と手段が定められる中で、大阪府下各自治体の目標と手段、各経済部門が実行可能な削減対策を調べ、2020年までに大阪府下で温暖化ガス20%削減できるのか、ゼミ生と推論する。 

キーワード
環境省 経済産業省 関西電力 大阪府 府下自治体 予測モデル 

授業の目的
大阪府と府下自治体の環境対策、各経済主体の地球温暖化対策をしらべ、関西電力の原発に依存しないエネルギー供給が可能なのか、その場合、CO2の削減は可能なのか、検証する。 

到達目標
地球温暖化の科学的根拠を理解した上で、大量排出国を地球温暖化に対する国際的取り組みに加わらせるにはどうしたらよいのか議論する。
環境省の温暖化ガス削減のための取り組みと経済産業省の中長期エネルギー計画の下に、大阪府と府下自治体の温暖化ガス削減対策と省エネ対策の取り組みを調べる。各経済部門の側から、実行可能な温暖化ガス削減対策と省エネ対策は何か考える。
最後に、各ゼミ生が2020年までに大阪府下で温暖化ガス20%削減できるのか、レポートを作成する。

授業概要
国際機関IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、地球温暖化が進行していることを評価報告書に公表している。日本は1997年の気候変動枠組条約締結国会議COP3において、2008年から2012年の5年間で、1990年比で6%温暖化ガスを削減することになっていた。しかし、日本の計画は、原子力発電に依存して、達成可能であったが、2011年3月11日の津波で、福島第1原子力発電所が被災し、その後の水素爆発により、すべての原子力発電所は停止した。その後、日本の原子力発電所の再稼動は進んでいない。関西電力は従来、50%原子力発電に依存しており、政府の2050年80%削減目標は、原子力発電で50%まかなうものであった。政府は、再生エネルギー全量買取制度により、原子力発電の比重を減らし、原子力発電と代替させる方針であった。それとともに、化石燃料の消費に対して、環境税を徴収し、その消費を減少させようとしている。福島原発事故以後、関西電力は、新たに生じた地球温暖化ガス削減政策に対応して、関西のエネルギー源の変更と温暖化ガスの排出増に直面している。
本ゼミでは、日本の環境・エネルギー政策の大きな転換を理解して、これまでの大阪府と各自治体の取り組みをゼミ生が担当して調べ、さらに、各経済部門の取り組みをゼミ生が担当して調べる。最後の2回で、各ゼミ生が調べたことをもとに、大阪府下で、2020年までに温暖化ガス20%削減できるか、各ゼミ生のレポートを肯定側と否定側で分けて、ディベートする。

授業計画
第1回:ガイダンス                                       4/10ガイダンス、第1次概要
第2回:温暖化の科学的根拠 IPCC第1次〜第4次評価報告書を講義する   4/17 4/24第2次概要
第3回:「京都議定書」1997年の概要と日本の取り組みについて講義する    4/24 5/1 IPCC第5次第1部会報告
第4回:「京都議定書」の削減方法を理解する                     5/8
第5回:2013年以降の新しい枠組みと日本の目標について理解する
第6回:福島第1原子力発電所事故を考える                      5/15 政府事故調報告書
第7回:関西電力の原子力発電所の将来と課題について考える          5/22 新規制基準と川内原発の再稼働
第8回:地球温暖化対策税と再生可能エネルギー法について説明する      6/5  太陽光発電の説明
第9回:環境税と全量買取制度の各部門への影響を経済学的に説明する   
第10回:大阪府および各自治体の温暖化ガス削減・省エネ対策を調べる    6/12 各市担当をグループに 太陽光発電の説明
第11回:各経済部門が実行している温暖化ガス削減・省エネ対策を調べる 6/20
第12回:新エネルギー計画から大阪府のエネルギー・ミックスを推測する 6/27
第13回:新エネルギー計画による大阪府下の温暖化ガス削減・省エネ計画を議論する 7/4 家計の省エネ 報告書の調査項目
第14回:大阪府下で、2020年までに温暖化ガス20%削減できるか議論する 7/11オフィスの省エネ 報告書の内容
                                                7/17 報告書のデータ 08年温対法改正に伴う実施計画
第15回:ふりかえり 7/24

準備学習
関連するテーマの新書を読むことが望ましい。以下は開架図書にある。
佐和隆光『地球温暖化を防ぐ』岩波新書、1997年
石弘光『環境税とは何か』岩波新書、1999年
大島憲一『原発のコスト』2011年
西脇文明『再生可能エネルギーがわかる』日経文庫、2012年
三橋規弘『環境経済入門<第4版>』2013年

評価方法

平常点60%、レジュメ(A4、1枚)の報告1回20%、講義中提出のレポート(A4、30行×40字3枚)20% 

テキスト
高村ゆかり・亀山康子『京都議定書の国際制度』信山社、2002年
経済産業省 資源エネルギー庁編『エネルギー基本計画』経済産業調査会、2010年
環境省『環境白書』
大阪府『大阪府環境白書』
 
参考書
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)『IPCC第三次評価報告書』中央法規2002年
IPCC『IPCC第四次評価報告書』中央法規、2009年