茨木市における太陽光発電および太陽熱の推計

西 村 和 志(経済学部経済学科)

1. はじめに

目的 茨木市における太陽光発電および太陽熱の推計の

   環境対策をリードする自治体・企業訪問

   太陽光発電および太陽熱の推計の基礎研究

2005年度の実施計画

太陽光発電および太陽熱の推計の実地調査

・ 演習Iは、茨木市における太陽光発電および太陽熱利用の推計について、今年度は用途地域で、住居系7種類のうち、残りの5種類の実地調査をして、発電量の推計をする。

・ 太陽光発電の利用方法について、昨年度、資料を収集したので、それらを参考に、太陽光発電の実用例をグループで作成し、太陽光セルの性質を実感する。
    演習IIは、用途地域における住居系7種類の法規制、日射量の実測値を得ることおよび発電量・発熱量推計式を検討することを中心に研究報告をまとめる。    

自治体・企業訪問

・ 2005年愛・地球博のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)パビリオン見学。

・ 再生可能エネルギーを活用、事業を促進する自治体を訪問して、環境対策に対する取り組みを教えてもらう。

・ 家屋内のエネルギー利用に対する省エネ機器製作の企業を訪問する。

2. 実地調査の実施経過

 5月、2004年度の演習での取り組みを新3回生20名に説明し、(株)京セラのプレゼンテーション資料を演習室の液晶テレビで解説しつつ見せました。そして、2005年度の計画を周知させました。調査班を5班結成し、6月から実地調査に入りましたが、今年度は、第一種低層住居専用地域の未調査地域をテストに調査しました。実地調査の調査用紙は、集計用紙を新たに作成し集計と感想を書いてもらうようにしました。今年度は、茨木市の用途地域を拡大し、すべての住居系地域で調査し、各住居系での違いを検証することです。このために、茨木市の都市計画課において、建蔽率、容積率など各種規制値の確認をさせました。

1回 第一種住居専用地域 6月18日13時〜17時 および6月29日

 4回生が昨年調査した茨木市第一種低層住居専用地域の未調査地域は、白川町、大同町、鮎川町、花園町太田町高田町、室山町、西福井町です。各戸数は少ないのですが、地域が散らばっています。最初に10名で、残りは1名に後日行ってもらいました。これで、昨年来の実地調査は終わりました。なかなか慣れない仕事は班によって終了時間に差がありました。

2回 その他の住居地域 920日 10時〜13時および106日〜11日 

 建築基準法にもとづく住居系用途地域は、第一種低層住居専用地域以外に、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域および準住居地域の5地域があります。今年度は、この地域の太陽光発電および太陽熱利用の推計を実地調査することにしました。11名で、小川町、新中条町、東中条町新庄町、舟木町、稲葉町主原町、末広町、中津町、寺田町を調査しました。これらの地域は阪急茨木市駅の周辺で調査の利便性はありますが、中高層ビルもあります。学生は設置数が少ないと報告しています。

3. 多様なエネルギー活用の見学

ゼミ旅行を2005年愛・地球博の見学とし、NEDOパビリオンと新エネルギープラント見学をするように学生に指示しました。分譲住宅地がすべて太陽光電池設置し、電気給湯器とガス給湯器の新製品が設置されている町を訪ねました。次に畜産し尿からメタンガス発生させ、事業を促進する自治体を訪問して、環境対策に対する取り組みを教えてもらうことにしました。最後に、「太陽光の町」でみた電気給湯器とガス給湯器の新製品エコキュートおよびエコウィルを詳しく知ることにしました。

1)ゼミ旅行、愛知万国博覧会見学 7月29日

   毎年、3回生のゼミではゼミ旅行を実施しています。最近の学生気質かわかりませんが旅行に参加する学生は56人です。2005年は万国博覧会が愛知県で開催され、参加者が多いいことを期待しましたが、3回生は4名でした。目的の1つにNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)パビリオン見学とNEDO連携・新エネルギープラント見学をするように学生に指示しましたが、パビリオン見学は2名が達成し、プラント見学は予約できず陸橋の上から見学ツアーがプラントを順に動くのを見ました。

2)太陽光の町見学 8月1日 13時より15時

   学生10名と、関西国際空港前のりんくうタウンのはずれにある大阪府田尻町「太陽光発電の町」を見学しました。ここは、民間開発業者が全戸太陽光発電をできる住宅を分譲しており、第1期分譲はほぼおわり、第2期工事に入っていました。確かに、各戸の屋根に太陽光電池が搭載、関西電力のエコキュートかまたは大阪ガスのエコウィルが設置してあり、売電電力計が付いていました。エコウィルの設備がちょうどある1軒に設置される状態になっているのを見ることができました。ただ、屋根が東西向きになっていて現場ではこれでも有効なのかと思いました。いずれにせよ、全戸太陽光発電をできる住宅団地というのはこうなるのかと感心しました。学生たちもそれぞれ実地調査をしているので茨木市と比較した感想が多かった。また、エコキュートおよびエコウィルという設備はどういう仕組みなのか興味をもったようです。

3)八木バイオエネルギーセンター訪問 11月16日13時30分〜15時15分

学生3名と、京都府八木町八木バイオエコロジーセンターにおいて、所長さんから1440分頃まで、施設の紹介と運転上の問題点を説明していただき、学生の質問に答えていただいた。そのあと、施設の各設備をシステムの流れに沿って実際に見学をした。このシステムは、周辺で酪農家や養豚業者に相当量の家畜排泄物等があり、それを有料処理しつつ、メタンガスを発生させ、ガス発電機3台を運転し、発生する熱と電気で、固形物を堆肥に、廃液を下水処理して近くの川に排出するシステムです。パイロット的なシステムなので、さまざまな問題点があり、特に24時間運転なのでガス発電機の消耗が激しく、製造させる堆肥の品質はいいが、価格が市販の堆肥より高い、さらに、廃液処理費がかかるというのが問題ということでした。現場は堆肥場がシステムの反対側にあり堆肥臭がひどく、このセンターを運営するのは労働環境もかなりきついものがあります。事業自体はとても意義深いと思いました。参加した学生は、いただいた資料、ホームページその他の資料をもとに、報告書を作成するよう指導することにしました。

 4)大阪ガス生活館見学 11月17日12時〜13時

 吹田市千里万博公園内の大阪ガス生活誕生館に入館し、学生7名とともに、12時から40分間、案内係の指示に従い、館内の展示物等の説明を受けた。そのあと館内の会議室においてコンサルティングリーダーの方から、大阪ガスのエコウィルについて、さらに詳しく説明をしていただき、学生の質問に対して詳しく答えていただきました。エコウィルは、ガス発電により、蓄熱槽に給湯用の温水をため、給湯・床暖房に応じて使用するとともに1KWの発電をして家屋内の電気をまかなうという設備です。また、ガス発電によるエアコンデショナーもありました。送電ロスがなく発熱を利用するのでCO2の削減につながるということでした。女子学生はキッチンに、男子学生は床暖房の暖かさに憧れていました。

 5)関西電力「エルハウス」見学 11月17日15時20分〜16時20分

大阪市淀川区三国本町関西電力「エルハウス」に入館し、40分案内係から説明をうけ、こちらの質問に答えていただきました。オール電化のモデルハウスで、電磁調理器、エアコン、床暖房、そして、深夜電力利用の蓄熱槽に給湯用の温水をため使用するエコキュートがベランダに設置してありました。もちろん太陽光電池も屋根についていました。ここは、3階建ての建物でエレベーターもついており、オール電化の究極のシステムを展示しているので、必ずしもCO2を削減する意図するものではないということがわかりました。学生たちはそれらの総合された設備にそれぞれ関心を示していました。

4. 省エネ機器製作企業訪問

1)ダイキン工業株式会社訪問 12月7日10時〜11時20分

訪問の目的 ダイキン製エコキュートその他ダイキン製品の説明を受ける

学生7名と、堺市金岡町ダイキン工業株式会社堺製作所金岡工場を訪問し、住設営業部員さんに当方の目的を説明したのち、となりの製品展示場にて技術担当者の方とともに、ダイキン各製品の説明を受け、その間、こちらも質問し答えていただきました。エコキュートは、安い深夜電力を利用し、エアコン・冷蔵庫に使われるヒートポンプを蓄熱槽に外付し熱交換した湯を貯めることによって、ヒータ型蓄熱槽より効率的に電気代を節約できる装置です。同じ仕組みで床暖房もできます。あとは、エアコンの新製品のシリーズを説明してもらいました。学生は、エコキュートとエコウィルとの経済的評価と環境負荷の違いを研究する方針を立てました。

2)神鋼電機株式会社訪問 12月19日10時〜11時20分

訪問の目的 マイクロ水力発電装置および小形風力発電装置の説明を受ける

学生4名と神鋼電機株式会社大阪支社を訪問し、エコ発電営業部部長の方に当方の目的を説明したのち、部長さんから神鋼製小形風力発電装置と新発売のマイクロ水力発電装置について、開発の狙いと問題点について説明していただき、われわれの質問に答えていただきました。小形風力発電装置の「そよ風」はすでに納入実績があるということでそれも茨木市でも導入できるタイプでした。マイクロ水力発電装置は、10mの落差があると5KW発電できるとのことです。学生も興味を示し、どのような河川で設置できるのか法制面からの問題があるということも分かりました。この班の研究課題が見えてきました。

3)ヤンマーエネルギーシステム株式会社訪問 2006年1月12日 10時〜11時40分

訪問の目的 マイクロガスコージュネレーション機器と市場環境の説明を受ける

学生5名とヤンマーエネルギーシステム株式会社本社10時訪問しました。営業部空調システムグループ主任さんに10分間当方の目的を説明しました。主任さんからマイクロガスコージュネレーションについて開発の狙いと市場環境について説明していただき、われわれの質問に答えていただきました。1140分過ぎ説明会は終わり、製品のテスト機をすべて見学しました。マイクロガスコージュネレーションは、ヤンマーのエンジン技術を転用し、ガスでエンジンを回し、発電し、熱を回収、蓄熱槽に貯めて利用するシステムで、エアコンにも利用できる装置です。家庭用には5KW以上なので、販路は限られるとのことでしたが、飲食店やクリーニング店など湯を利用する業種には経済性があるし、エコウィルと同様な理由で、環境負荷を削減することができるということがわかりました。学生は、様々な業種で発電量の違いも連結するとかのうなので販路が拡大できると感心していました。私たちは住居系地域で環境負荷の削減を考えてきましたが、商業・工業地域では、この種の装置を利用すると削減できると思いました。

5. 太陽光電池を使った工作

 12月、太陽光発電の利用方法について、昨年度、資料を収集したので、それらを参考に、太陽光発電の実用例を各班で作成し、太陽光セルの性質を実感することを提案しました。各班が選んだ作品は、携帯電話ソーラー充電器、ソーラーカー、ソーラー集音アンプ、ソーラークッカー、ソーラーオルゴールおよびソーラーボートです。このうち、実際に製作に取り掛かったのは携帯電話ソーラー充電器、ソーラーカー、ソーラー集音アンプの3つであり、残りは材料をそろえた段階でこの報告書には間に合いませんでした。結果は、ソーラーカーはメーカーの作品を組み立てるのは製品管理がしっかりしているので成功しました。冬至の近いときでしたが走らせるとスピードがでました。ソーラー集音アンプは回路をハンダで作る必要がありますが、失敗しました。充電器はハンダ付けを練習することにしました。十分、検討、練習しないと結果はでないことがわかりました。

6. 推計結果の報告書作成(演習II)

  2004年度の報告書作成経過は、2005年春休み、就職活動の行事があるときに、航空写真と調査結果を照合しました。4月からは、就職活動で半数しかこないので、ゆっくり、報告書の課題を処理することにしました。まず、6月、第一種の残りの調査を演習Iのゼミ生にしてもらって調査結果を集計しました。7月、枚方の日射量のデータを収集し計算可能にしました。あとは、地図,図,表の作成をしました。秋から、建築基準法の規制を調べ、第一種の選択理由を書きました。太陽光・太陽熱の推計の方法を独自に考えることを目標にしていましたが、結局、京セラの推計式と日本電気硝子の資料から集熱効率の回帰式を採用することにしました。3月の卒業式までに、研究報告書の形で3回生に手伝ってもらって印刷します。

        

注)推計式を照合するのに時間がかかり、第1集は2006年5月25日に発行しました。

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