茨木市における再生可能エネルギー推計について

西 村 和 志(経済学部経済学科)

1. はじめに

目的 茨木市における再生可能エネルギーを推計する。

2006年度の実施計画

・ 太陽光・太陽熱利用の推計のため実地調査をする。

     バイオマス・水力・風力のエネルギー推計のための実地調査と導入している自治体等を見学する。

     省エネ機器・エコ自動車のメーカーを訪問し、電力・ガス・石油製品の消費量削減の評価をする。再生可能エネルギー推計について研究報告書を作成する。

     太陽光・太陽熱利用の工作物を各班で制作、創意工夫で発展させる。

教育的意義

・ テーマについて実地調査、企業・自治体訪問、文献研究活動を通じて、研究報告書にまとめ公表することで学生に研究活動の方法を学ばせる。

・ 教員と頻繁に各班と連絡を取るので、教員と学生のコミュニケーション、班内の結束と班間の協力が強まる。

  ・ 大学外の関係者と情報交換できるので、就職活動の訓練にもなる。

2.調査報告書

1集の発行 

20063月の卒業式までに、3回生に手伝ってもらって、調査報告書を印刷するよう準備したが,太陽熱の推計の方法を考えると納得できない点があった。結局、金山公夫・馬場 弘『ソーラーエネルギー利用技術』の参考文献から、推計方法を考えた。はじめての試みなので、教員のほうで、準備する部分がかなり多いことになった。結局、2006525日に発行し、参加したゼミ生および関係者に送付することができた。

2集作成と発表

2006年度の演習Tおよび演習Uの学生に、『大阪府茨木市における太陽光・太陽熱利用の推計 調査報告書 第1』を配布し、演習Tの学生には、2006年度の課外活動の内容を調査報告書によって理解させた。ゼミの活動を報告書で学習させることができるので、これまでより、活動で何を目的としているのかゼミ生にわかりやすくなったと思う。

演習Uの学生には、2005年度に活動したことの報告とそこからえた課題を研究させ、第2集を200612月までに原稿を作成させることにした。就職活動があるので春学期は、調査報告書の理解を中心にし、各班の報告書の担当者を決めた。夏休み、9113時、茨木市中央図書館に、14名が集合、5班それぞれに、茨木市および大阪府の資料を収集することを指示して、探した資料を各班ごと検討した後、コピーをとってもらった。これで、各班の研究課題について、茨木市の資料が集まった。

秋学期、各班で担当の原稿を作成し、成果発表会があるので、発表することを目標に原稿を書いてもらった。卒業論文を指導する場合と同じことである。2006105日大学主催の発表会で、バイオ班とガスコージュネ発電班の2班が発表してくれた。就職は全員決まっているせいか、2班とも自信を持って発表してくれたので、何度も繰り返し、積み上げていくことが大切なのだと思った。できあがった原稿は、各班で差ができたが、2007115日まで原稿の書き直しをした熱心な班もあった。問題は各原稿が引用した文献等のチェックである.調査報告書第2集は2007年5月に発行予定である。

3.実地調査の実施経過

 1回 2006年7月1日(土)13時より15時まで、阪急茨木市駅周辺

建築基準法にもとづく住居系用途地域は、第一種低層住居専用地域以外に、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域および準住居地域の5地域がある。今年度は、第一種低層住居専用地域以外の5地域で、太陽光発電および太陽熱利用の推計を実地調査することにした。11名で、小川町、新中条町、東中条町新庄町、別院町、双葉町、園田町、大池1丁目、大池2丁目を調査した。これらの地域は阪急茨木市駅の周辺で商業地域もあり、中高層ビルもある。当日は、雨で、調査用紙がぬれないように用意したが、ぬれた用紙もあった。阪急茨木市駅周辺の調査は残った地域は、当日参加しなかった学生に夏休みまでに調査してもらった。

2回 2006年9月12日(火)および13日(水)11時より15時まで、安威・耳原周辺

第1回と同じく、本学周辺でも、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域および準住居地域の5地域がある。違いがあるか比較するため調査することにした。さらに、市街化調整地域を追加した。参加者は5名で第1回目の調査に参加しなかった学生が主に来て調査した。

秋学期に入って、調査に参加しなかった学生に調査用紙を渡し、調査してもらった。

4.再生可能エネルギーの調査

1) 茨木市北部の河川源流 2006年11月23日(木)13時より17時 

 茨木市の水力発電可能性

小型水力発電を担当している班の演習Uの学生2名と、レンタカーで、茨木市北部の河川の源流をめざして出発した。前年度神鋼電機小型水力発電機を説明していただき、資料で研究してきたが、最後、茨木市で設置可能な場所があるのか確認する必要があった。まず、安威側ダム予定地を川沿いにみたが、ダム工事は凍結中であり、京都府亀岡市に通じる道路が建設中である。代替農地がダム予定の山の上に造成されている。その先には以前からある採石場が山を半分削り取っている。落差のない中級河川でダムを作る意義は発電より水源と防災しかないだろう。途中で、養魚場、釣堀があったが魚がすむほどの美しい清流ではない。砕石のダンプの土ほこりの中、計画と造り捨ての現場と採石場の喧騒は、行政による環境破壊のデパート展示場のようであった。安威川は落差を期待できないが水量・水圧で発電は可能であろう。しかし、現状のままでは、環境破壊しているので、災害の危険性がある。工事凍結でも防災工事と道路工事は進めないと環境悪化の要因は残されたままのような気がした。残り、下音羽川と佐保川の2河川上流を回った。下音羽川の上流に、水道局の貯水場があり、貯水池があった。これは、貯水池下の河川まで落差10mはあったので小型水力発電は可能である。

佐保川の上流は十分な水量と川下の集落まで落差10mはあり、集落の負荷に利用可能である。ともに、現場をビデオで撮影した。

以下の事例研究は、演習Iの学生と各地を訪問した。各事例の参加者は、学生の出身地に近い。今回は、多様な再生エネルギー利用を実践しておられる団体を実地見学することにしている。4年生になって、茨木市での取り組みが可能なのか検討し、CO2削減の寄与を推計し、各事例の研究を報告書にまとめる。

2) あいとうエコプラザ菜の花館 2006年11月26日(日)13時より17時 

滋賀県JR近江八幡に参加者 学生4名、教員1名が集合した。近江鉄道で八日市まで行き、そこから、バスで菜の花館に1450分到着した。廃油精製装置と菜種油精製装置を見学し、ビデオに撮った。菜の花館は、複合コンセプトの集合体で『道の駅』とレストランもある。装置は非常にシンプルだった。稼動するのは平日で廃油精製装置は月曜日が確実に製造を見学できるということだった。菜種油精製装置は春、菜種が収穫できるころ、もう一度くる必要がある。八日市から菜の花館まで乗ったバスは、バイオ・ディーゼル車だった。菜の花館は、外に、神鋼電機製の風力発電機が回っていた。4年生の水力班が神鋼電機を訪問したとき、部長さんがこの風力発電機を説明されたが、ようやく、実物を見ることが出来た。学生にもそのことを説明した。今回はビデオで記録しているので、課題を考える段階でもう一度みれば、研究課題が見つかるのではないかと思う。

3) 兵庫県丹波市役所春日支所 2007年1月5日(金)13時より14時30分

青垣町・バイオメタノール生産計画の事例研究

 JR福知山線柏原(かいばら)に学生2名と私が集合し、丹波市役所春日支所を訪問した。産業経済部農林振興課林務係の2人の職員が対応された。こちらの目的を説明し、青垣町の計画について経過を伺った。青垣町は周辺の5町と合併し、丹波市となり、青垣町・バイオメタノール生産計画は、凍結ということだった。『バイオ・ハンドブック』に紹介されているが、計画は実施されていないので、事情がわからなかった。財政難のため、今後、計画が実施されることは難しいということだった。関連したことを話し合い、最後に、青垣町の計画報告書を拝見した。計画まで、青垣町で委員会の審議経過があり、外部の専門会社が計画を策定したことがわかった。その一部が『バイオ・ハンドブック』に紹介されていたのである。同じ原材料であればバイオメタノール生産計画より、エタノールの時代になってしまった。先駆的な計画であったが、森林組合が合併されたので、バイオエタノール生産計画として将来復活する可能性はある。しかし、職員の方は公社を設立すると赤字セクターとなると予想されるとおっしゃった。原料は森林組合および農協からで、民間会社で生産・販売する方式で、国と地方公共団体がサポートするのは、固定資産の取得やエタノールの税制面での優遇措置であろうというのが、話し合った結論の気がした。学生2名には、今後の研究ため、バイオマスを利用して発電している会社を教えていただいた。

4) 三重県伊賀市奥馬野青山高原道路 2007年1月10日(水)13時より14時30分

青山高原風力発電の事例研究

 学生1名と西村が近鉄大阪線榊原温泉口改札口に集合した。タクシーで伊賀市と津市の境界にある青山高原展望台に20分で到着した。見渡すと風力発電機が数十台回っていた。周辺と発電機をビデオで撮影し、管理事務所は人がいないということなので、榊原温泉口に戻った。タクシーの運転手さんがほぼ設立の経過、運営上状況、中部電力が5台設置する計画で、電力の買い取り価格が高く、採算性があるということだった。タクシーで見学にいく関係者も多いいのだろう。観光資源になっているのかもしれない。これ以上は、三重大学、津市青山高原ウインドファームを訪問しなければわからないと思った。ゼミ生に、1年間、もっと詳しく研究してもらうだろう。山頂に立つと、国定公園でもない茨木の周辺の山地では、山頂に送電線の鉄塔が遠慮なく建っているので、反対運動もなく設置は可能であろうと思った。

5) 滋賀県大津市志賀町木戸 2007年1月13日(土)13時より17時

小型水力発電の事例研究

前年度神鋼電機大阪支社で小型水力発電機を説明していただいたが、実際に設置してあるのは、関西ではないようだった。偶然、2006年9月NHKの大津局発の6時台のニュースで、志賀町の方が水力発電機を設置し扇風機を回されていたのをみた。早速問い合わせると臨時に設置してみたもので、NPO「志賀の森を生かす会」が200612月、小型水力発電装置を設置するということだった。1313JR大津駅に集合、学生が3名来た。駅レンタカーでびわ湖バレー跡のリフト乗り場前に14時前着いた。装置は乗り場のそばにの小川のそばに設置されており、まだ発電はされていなかった。装置等はびわこ成蹊スポーツ大学の教授が大学の費用で500wの発電機をメーカーから購入され、それがパイプで設置された発電所の小屋の中に接続を待っていた。教授とNPOの世話人のお二人に、設置の趣旨と今後の使用目的について話を伺った。11月の小型発電班の演習Uの学生には、そのビデオを115日のゼミで見せたのでよく理解してくれたものと思う。そのあと、NPOの方の案内で、休耕地を借り、子供と森を活用するキャンプ施設と木材チップを製造しようという試みを拝見させていただいた。お二人のお話から、大学とNPOとの連携した活動が滋賀県では盛んなのかなと思った。

6) 高槻市森林資源加工センター・森林観光センター

2007年1月20日(土)13時より16時

バイオマス利用の事例研究

 20日13時JR高槻駅前に学生3名集合した。高槻市営バスの61番中畑行きにのり、森林観光センターで下車する。もう1名が自動車で来ていた。森林観光センターにて、しいたけ栽培所、喫茶店で木材ぺレットストーブを見学した。そのあと、木材加工センターにいった。大阪府森林組合の通常の製材所であった。森林資源加工センターは、京都府大阪府の境界のほうにあるそうで、車で行った。設備は停止中であった。事務所の人に設備を見る許可を得て、学生に説明しながら、森林組合等の木材資源をペレットおよび堆肥に加工する過程を見学した。それらも、ビデオで撮影した。森林観光センターの見学記録はホームページで見ることが出来る。帰るとき、大型トラックが廃材を満載して入ってきた。茨木市大阪府森林組合である。しかし、茨木市の北部の山々を見た感じでは、手入れはあまり行き届いていない感じがする。

5.工作の作成

演習Uうち,3班がソーラークッカー,手漕ぎボートおよびオルゴールの製作するのを残していたので製作した.2005年度の製作から学んだことは,電子基板に回路をまとめることと,電子部品の機能を認識し,部品をハンダ付けする方法を実技できることであった.オルゴールの班には,電子工作の実技解説書で注意する点をしっかり理解してもらい,回路を作成した.

演習Iのゼミ生には,演習Uの作品を見てもらった上で,作品を選んでもらい,材料をそろえた.実際に,制作するのは演習Uになってからになる.電子基板に回路をまとめることと,電子部品の機能を認識し,部品をハンダ付けする方法を実技できるようにすることは,ゼミ生の課題である.

6.おわりに

 調査報告集第1集が発行できたことは、学生たちに課外活動と研究課題を理解してもらうテキストとなった。そして、調査報告書第2集では、学生たちに報告書と研究課題の結果を載せることができた。これで、今後、さらに、研究を蓄積し、環境経済政策の実践への道が開かれたと思う。また、関係者の方々がいろいろな立場で、地球温暖化に対する取り組みを先駆的に進展されていることに感銘を受けた。今後もゼミで立ち上げた実地調査訪問研究発表の流れをゼミ生に実体験させ、実りある成果を上げたいと思う。

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