『資産形成論2019年テキスト』
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資産形成論 2019年
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2019年4月8日
第1回目 はじめに
2018年に引き続き、資産形成教室を4月8日から、7月15日まで
15回の予定で、『資産形成論 2019年テキスト」を解説するために
このノートを掲載します。
2019年の方針は、①政策、景気等の変動を予想するコメント
②金融デリバティブ市場を入れる
③資産形成計画、運用・管理を充実させることにします。2節の制度は
簡略化します。
今年後半、『金融論2018年テキスト』において、財政・金融政策とマクロ
金融経済について、資産形成計画、運用・管理には、政策、景気等の
変動を予想することが重要な視点であるので、9月16日から12月23日
まで15回の予定で、テキストを解説します。
地球温暖化対策には、各国経済が、持続して、成長を続けながら、
温暖化ガス排出ゼロの経済・社会を実現できるかどうか、が問題であり
そのための技術革新の方向付けをし、投資しつつ、経済・社会を誘導
しなければなりません。そのための経済モデルが、今年後半の課題です。
昨年は、マンデル・フレミング・モデルに、為替市場を追加し、ドーンブッシュ
の対数線形モデルで、長期均衡を考えました。今年も、中長期における
財政・金融政策の効果と、新古典派の技術革新を考えたいと思います。
2019年のテキストは、昨年のノートと、『金融論2018』から導入する
ことを追加、修正して、5月連休後、本ページにアップする予定です。
2018年のテキスト、5.4にあるリバランス管理法が、本教室の結論です。
しかし、第15週までに、景気,政策,海外の景気,政策等の変動を、
市場関係者が予測するように理解することはむつかしい。
そこで、毎週、日本経済新聞日曜版「今週の予定」から、イベントの
「今週の市場」に与える影響を推測します。保有資産や購入予定の資産は、
その結果を反映します。なぜそうなるかは、今年後半の『金融論2019』
によって、理論的な方向性を説明します。
変動要因の発表は,各証券会社のHPに、スケジュールが公表されています。
重大発表は、情報が必ず漏れ伝わってくるので、市場の商品は、発表前に、
反応し、価格が上昇するか、下落してきます。理論にしたがった各商品と
変動要因を表にすると次のようになります。
変動要因 海外
債券 日銀の政策会合 日銀短観 米国準備制度理事会 EU中央銀行
消費者物価 為替レート 消費者物価指数 失業率
株式 政府予算 政策の変更 政府予算 政策の変更
四半期GDP 四半期GDP
企業業績 企業業績
リート 長期金利 都市の地価発表 長期金利 都市の地価発表
為替 貿易収支 資本収支 日米の金利差 戦略商品(原油、金)
バランス 株式30 50 70の構成要素に対して,上記の変動要因按分
インデックス 債券の構成要素,株式の構成要素に対して,上記の変動要因
ETF 債券の構成要素,株式の構成要素に対して,上記の変動要因
今週のイベントは、統計調査の発表と、首脳会談、政策機関の会議があります。
統計調査の発表は、各証券会社のサイトに、掲載されているものもありますが、
教室で使ったのは、マネックス証券のホームページ「投資情報『経済指標カレンダー』」
が指標の予想、結果が出ていて、参考になる。首脳会談、政策機関の会議の
予想、結果は、各紙に観測記事が載るので、参考になります。
今週は、10日臨時EU首脳会議、12日英国の合意なき離脱期限が、ポンド、ユーロの
為替に影響を与えそう。合意なき離脱の可能性が高く、ともに、ドルに対して、安く振れそう。
第2回目
2 公的保険および公的年金制度、企業年金および個人資産形成制度
就職した場合、公的保険制度および公的年金制度に、就職先を通じて
加入することになります。さらに、退職後の公的年金を補う企業年金制度
および個人資産形成制度が、就職先の制度によって、選択可能です。
前者は、就職先としては、できれば、定年まで勤めてもらいたいため、
企業年金制度によって、退職金をつみたて、退職時に、一時金あるいは年金
として受け取ることができるようにした制度です。
2004年頃の年金問題では、新聞記事に、「団塊世代より若い世代は、次第に
保険料総額に支給総額が等しくなる」と試算されていました。それゆえ、
65歳支給開始になりました。この話を当時の学生にすると、講義のあと、
「私は、国民年金は払いません」と言いに来たほどです。
私が勤めていた関西では、2019年から、新入生人口が10年間減少する
大学淘汰の時代に入り、4年後から新入社員が減少していきます。日本は、
人口減少時代に入り、高齢年金支給者の割合が3割を超えだすと年金財政
が悪化し、いずれ、70歳支給開始もありうるかもしれません。
個人資産形成制度は、公的年金の保険料総額に見合う支給総額が、年金財政の
見直しにより、減少するため、政府が、個人資産形成制度により、減少を補完
しようとする制度です。
資産形成を開始する若年世代、住宅ローンがあり、教育資金と老後の安心を貯蓄
する壮年世代は、制度金融を利用すれば、利息、配当に課税されません。現役世代
を15歳から64歳までの労働力人口とし、65歳から退職世代をします。2世代の
制度金融を表にすると次のようになります。
世代別の制度金融
世代別 制度金融
1) 現役世代 公的保険 医療保険、労働保険、雇用保険、介護保険(40歳から)
公的年金 国民年金、厚生年金
企業年金 国民年金基金、確定拠出年金(DC,iDeCo)
確定給付企業年金、厚生年金基金、年金払い退職給付
NISA、つみたてNISA
財形住宅貯蓄
ジュニアNISA(18歳まで)
財形持家融資制度
2)退職世代 年金収入=公的年金(-控除) 公的保険(国保,介護)
DC,iDeCo,財形年金,つみたてNISA等、取り崩し
自宅、不動産担保ローン契約,老人ハウスに終身契約
2.1 公的保険制度と民間保険
2018年テキストでは、制度の概要を厚生労働省のHPより、要約しました。
追加することは、自己負担金です。
医療保険では、保険の事象が生じた場合、かかる費用に、自己負担金があります。
たとえば、介護保険の対象者に認定されると、介護保険サービスが提供されますが
自己負担金は、1割か2割です。身内でサービスを利用するようになり
このシステムを体験しています。老年学という分野があり、年を取り、どういう
機能が落ちていくのか、医科学的にどこまで解明されているのか、分かりませんが
自分のことでもあり、観察しております。
今週のイベントと市場への影響度
今週のイベントは、14日日中ハイレベル経済対話が北京で、15日および16日
日米物品貿易協定(TAG)交渉がワシントンであります。先週のEU首脳会議では、
離脱を延期という政治的決断だったが、政治家の判断では英国の離脱による経済的
損失は発生していないのだろう。市場は10日の結論に反応しなかった。
日中対話および日米交渉は、経済問題に限定しているので、交渉の内容は、株式市場
および為替市場に影響がでるだろう。
統計調査の発表は、17日(日本)3月貿易統計、訪日外国人客数、2月の米貿易収支、
1~3月の中国GDPがあります。米中の貿易収支が、関税による米国の目指す目標、
「対中貿易収支の均衡」に向けて、縮小しているのかどうか、興味深い発表となりそう。
中国のGDPは、統計の信頼性に欠けるが、成長率は前期より低下しているのでは。
マネックス証券の予想が報道機関に依存していました。各種統計の予想は、各研究機関
から、発表されると思うので、予想データの経過と速報、確報を追跡することも必要だ
と思います。
昨年は、米朝首脳会談で、結果が出るのか、東アジア諸国で、大いに関心が集中しました。
今年の交渉の結論は、北朝鮮の核廃棄だそうで、米国は、その代わり、核照準を外すわけ
でもない。休戦状態の認識が、双方違うのは明らかであり、軍事的な引き分けを演出しないと
トランプ大統領では、無理がありそうです。
ただ、日本の拉致被害者の帰国は、日本独自に、日朝首脳会談で、前進させる問題に
なったようです。日本海沿岸で、多くの日本人がある時期、行方不明になった事件に
反応が遅かったのが、日本政府の責任であり、公安が全く感知していなかったようですが。
韓国が、日本政府に対して、対決的になったのも、米朝首脳会談後です。北朝鮮の
終戦がうまくいくならば、韓国にした賠償金をしはらい、日朝の大使館を相互に設置する
段階に移るとみられます。韓国もそれを期待しているようですが。
日ロ関係と同じで、トランプ後、政治家の熱意が失せて、日朝関係は千年このまま
かもしれません。
第3回目 2.2 公的年金制度 および 2.3 企業年金
要点・公的年金制度の概要
・企業年金の概要
確定給付企業年金、確定給付企業年金、個人確定拠出年金(iDeCo)
2.2 公的年金制度
年金制度は、3階立ての構造をしており(本文の図)、1階は、20歳以上60歳までの
国民が加入する老齢基礎年金です。2階は、勤労者であれば、雇用主の条件以上は強制加入
である厚生年金です。3階は、企業年金です。
年金の保険料および給付は、賦課方式と積立方式があります。賦課方式は、毎年の保険料
収入を年金受給者に配分する方法であり、国民年金、厚生年金が賦課方式です。積立方式は、
加入者個人に対して、所定の期間、定期的に一定額の掛金を払込期間まで積立て、受給開始期
以降、給付する方式です。掛金は全額、事業主負担の場合、自営業者等が負担する場合、企業
年金等に加入していない従業員が負担する場合があります。
本文では、国民年金、厚生年金の以下の項目をまとめています。
受給資格
受給開始年齢
保険料
年金額
今年、改めて、気づいたことは、国民年金の保険料と年金給付額算定方式について、調べて
いないことでした。保険料とあるのは、国民年金に保険機能が付与されているためです。5年
ごとに、国勢調査結果、人口統計等から、年金財政の均衡を再計算するはずです。厚生年金は
保険料額表が公表されていて、給与明細書を保存して入れば、簡易計算できます。
いわゆる年金財政の危機は、国民年金の方で、厚生年金ではないようです。受給開始年齢を
70歳にする、保険料支払いを65歳までにする、保険料を上げない代わりに、消費税を20%以上
にし、直接徴収するとか、政官民学が主張する議論があります。
年金額が、年金数理計算で決まると、物価変動に対しては、物価スライド制があり、経済変動
に対しては、マクロ経済スライド制があります。年金額の改訂は、物価上昇および経済成長率に
依存する計算が決められています。アベノミクス政策において、2%物価上昇、経済成長率?%の
目標を5年間、前者は日本銀行が、後者は経済諮問委員会が政策を実施しました。いまだに、目標は
達成できず、日銀は、地方銀行の経営悪化を招き、借り手不足というか、地方は、高齢少子が進み、
企業の廃業が進んでいます。両スライド制で改訂される見込みはなさそうです。
現在、国民年金財政には、過去の余剰金があり、保険料総額>給付総額の状況にあり、日本年金
機構が、余剰金を運用していて、昨年からの米国の金融正常化政策により、株式市場が引き締まって
きました。そのあおりで、日本の株式市場も下落しています。日本年金機構の運用状況は、公表
されるので、株式に損失が出たようです。
運用について、リスク資産は、民間運用会社に競争運用を委託する国もあります。日本の年金財政
の危機は、高齢者の増加による余剰金の減少です。保険料総額<給付総額の状況となり、余剰金で差額
が賄われることになります。
2.3 企業年金
企業年金は、確定給付企業年金、確定拠出企業年金、個人確定拠出年金(iDeCo)に分けられます。
確定給付企業年金が、企業の従業員からの負債となり、企業の事業業績が落ちると、企業は利潤から
積立不足を補てんしなければなりません。株主の配当がその分減少するので、株価の減少要因になり
ます。確定拠出企業年金に移行し、企業は一定額を拠出し、その運用は、従業員に委ねられます。確定
給付企業年金と比較すると、退職金引当金に入らないので、大企業も、この制度に移行するようになって
きました。本教室は、その場合の運用管理をどうするのかに答えるのが、大きな目的です。
昨年度は、大企業が確定給付企業年金制度をもっていますので、概要は省略しました。テキストでは、
確定拠出年金と個人型確定拠出年金の概要は、詳しく、載せています。
今週のイベントと市場への影響度
日本経済新聞の日曜版4月21日号は、日本では、26日までに、決算発表があります。株式市場では、
個別企業の価格変動(Volatility)が生じる銘柄がでます。米国でも、先週、金融株で四半期の決算発表が
ありました。今週もマイクロソフト、キャタピラー等の発表があります。
政策関係では、ロシア疑惑で、トランプ大統領が沈んでいましたが、報告書が出て、発言が回復しつつ
あります。米中関係の修復が、米株式市場では期待されています。
日本は、24日と25日に金融政策決定会合があります。現状維持のようです。国債は、発券銀行の独占
購買力により、市場から、半分買い占めているし、銀行は貸出債権と国債とのポートフォリオが組めません。
また、株式市場において、日本銀行は上場投資信託を買い占めて、株式の流動性を奪っています。
このような日本銀行の独占力の行使は、金融市場の市場機能を失わせ、外国投資家も、逃げ出しています。
間接金融市場が日本銀行の伝統的政策手段の行使する短期金融市場なのですが、日本銀行は、長期金融市場
の債券市場と株式市場に介入し、独占力に任せて、市場を不活発にしています。
日本銀行が長期資産市場から撤退する計画はないようで、資産形成に適した商品は、日本の金融市場では、
玉不足です。市場は硬直化しているので、収益は期待できませんから、海外商品とミックスする、国際分散投資
を目指すしか、中長期は期待できないと思います。
第4回目 2.4 個人資産形成制度
要点・個人資産形成制度の見取り図
・個人確定拠出年金(iDeCo)
・勤労者少額貯蓄制度と財形持家融資制度
・NISA制度
個人資産形成制度の見取り図
2018テキスト5において、ライフ・サイクル・プランの例として、山川家のイベント表
を載せています。ここでは、山川氏の個人資産を制度支援の資産形成制度を当てはめてみ
ます。
山川氏は大学を卒業して、23歳とします。65歳で、現在の会社を退職します。山川氏の
イベント表は、28歳で結婚し、30歳で1子をもちます。妻は共稼ぎです。
山川氏イベント表
年齢夫 23 28 30 35 48 52 60 65
確定拠出年金(iDeCo)
財形住宅貯蓄 財形持家融資制度(フラット25) 住宅ローン完済 年金生活
つみたてNISA NISA
妻 28 30 48 52 60 65
確定拠出年金(iDeCo) 年金生活
つみたてNISA NISA
子
0
18 22 28
ジュニアNISA(18歳まで)(教育資金)
日本経済は、人口減少が始まっていますので、労働力不足になる一方、日本経済は、第3次
産業が主要産業となり、中小零細企業が多数を占める労働集約的産業です。女性労働が必要と
される産業でもあります。
第3次産業は、製造業と違って、寡占的ではないので、いわゆる大企業の賃金水準は支払えま
せん。したがって、男性の給与水準は、35歳以上では、昇給が頭打ちになる傾向があります。
女性は男女格差があり、大卒女子は35歳になると、平均賃金が大卒初任給に戻る傾向があり
ます。
このようなモデル賃金曲線は、サイトでシミュレーションしています。大学では、必ず、
モデル賃金曲線を説明しました。「波乗り3波乗り」と言って、終身雇用・年功序列職階級制
(公務員的ですが、国会議員も似てますが)においては、入社10年後、社員一斉、係長波に乗り
(1年の評価で、平波の場合もあるそうで)、次は課長波、部長波がモデル賃金曲線にあります。
課長波、部長波に乗れるのは、かなり高度な能力がないと乗れないと、説明していました。
業界および業界内でも、モデル賃金曲線は格差があります。在職者は退職までの予想所得の
参考になります。
他方、かつての日本では、このような終身雇用・年功序列職階級制のもとで、男性社員は、
妻を専業主婦で、家族を養えましたが、現在は、係長波は消滅しないにしても、残り2波は、
能力主義が能力しつつあります。夫婦、共稼ぎしないと、家族を養うのは、かなり難しくなり
ます。東京では、3人核家族が多いのも、生活水準を維持しつつ、子を二人以上持つのは、
経済的に苦しいのでしょう。地方では、都会生活が身近にありませんので、子供は2人以上、
所得水準が東京ほどありませんから、共稼ぎの方が専業より多い傾向があります。
個人確定拠出年金(iDeCo)制度
山川氏イベント表で、妻の個人型確定拠出年金(iDeCo)が可能になっています。女性の資産
形成について、山川氏と同様に、会社勤めで、同様に、ライフ・サイクル・プランを運用管理
しているとする場合は、結婚後の共同資産形成になります。これは、昨年では想定していません
でした。しかし、私の身の回りを見ると、死亡率は男性の方が高く、女性は低いのが普通のよう
です。山川氏が平均寿命で亡くなった場合、妻は余命があり、共同財産を相続することになります。
老後の安心には、このことも、ライフ・サイクル・プランでは、考慮すべきイベントです。
自民党が「人生百年」時代と言いますが、それを可能とする退職後のモデル生活は何も政策
導入しませんから、男性の平均寿命が80歳から、20年延びる「稼ぎと体力」、社会保障がある
わけない。むしろ、「失われた20年間」で、所得が失われたので、栄養不足による体力の減退
により、80歳台にとどまると予想するのが普通でしょう。女性もやはり、80歳台に、「失われた
20年間」の「稼ぎと体力」の減少効果が効いてくると思われます。
私の金融論講義では、山川氏は33歳であり、妻は専業主婦です。私自身は、妻に対して、資産
形成を実行してきましたが、これは普通なのか、そうでもないのか。夫婦で、妻には、ライフ・
サイクル・プランをどう考えて、実行しているのか、実態調査があるのでしょうか。
勤労者少額貯蓄制度と財形持家融資制度
勤労者少額貯蓄制度は、厚生労働省の所管で、勤労者財産形成貯蓄、勤労者財産形成年金貯蓄
および勤労者財産形成住宅貯蓄があります。年金と住宅に対しては、利子等非課税措置があります。
従業員の定着性効果を期待する企業では、従業員が金融機関と契約し、運用指示は本人であり、
事業主は給与天引き、金融機関からの運用状況連絡を仲介するだけの負担です。
勤労者財産形成住宅貯蓄は、住宅所有をライフ・サイクル・プランに入れている場合、財形持家
融資制度を利用する、初期資金を貯蓄する制度として有用です。元金利子を含めて、550円まで
非課税ですから、その次の制度は、財形持家融資制度があります。
550万円の頭金が貯蓄できるまで、10年はかかると思われます。係長波が近づいてくるので、
どこに、住宅を所有するかは、夢があり、楽しい計画でもあると思います。
各市の都市計画の用途地域を調べていると、昨今、農地は消滅し、都市計画は完成している市が
多くなっていると思います。その中での選択ですから、家族で住みたくても、物件が少ないかも
しれません。
不動産の将来価値は、公示価格、売買例、利便性評価等で決まりますから、少なくとも、建物の
耐用年数が来るまでに、土地の著しい減価が生じなければ、住宅投資は成功したことになるでしょう。
NISA制度
NISA制度は、金融庁所管で、2014年から始まった少額投資非課税制度(Nippon Individual Savings
Account)です。2016年から、ジュニアNISA、2018年からつみたてNISAが始まりました。ジュニア
NISAは18歳まで原則、払出しができませんから、大学の教育資金に向いていますが、さらに、
高校進学時に、特別払出しができれば、学資資金の性格がでて、よいかもしれません。つみたて
NISAは20歳以上、20年間非課税ですが、制度の延長は定められていません。
以上、個人確定拠出年金(iDeCo)、勤労者少額貯蓄制度と財形持家融資制度およびNISA制度に
よって、家族全体のライフ・サイクル・イベントを設定し、資産を非課税で形成できるように
なってきました。
日本銀行のゼロ金利政策は、2020年4月まで、継続される中、日本の金融商品だけの資産選択は、
収益率目標を達成できそうもありません。長期の資産運用を本教室では、想定しますが、日本債券、
日本株式、そのバランス、上場投資信託、不動産投資信託等の国産商品では、資産運用コスト以上
の成績を上げるのは、今年度、難しそうです。そこで、海外投資信託にも、目を向けることが
大事になります。
海外の経済動向に注目することが、よい投資経験になる1年ではないかと思います。来年度は、
東京オリンピックで、盛り上がると期待する向きも多いので、物価上昇率1.5%は達成でき、
日本銀行も、5月以降、銀行の過剰流動性に対するマイナス金利は、0かプラス0.1に戻し、国債、
上場投資信託を売却させる計画に入ってくれれば、国産商品の収益性は上昇しますが。
今週(2019年4月29日~5月3日)のイベントと市場への影響度
日本の金融市場は、連休のため、休場です。天皇の退位と新天皇の即位行事があり、
10連休です。今年から、日本企業の業績に、中国需要に依存度が高い企業では米中貿易戦争の
減少効果が顕著にでています。10連休の10/365≑0.027,GDP2%追加減少効果があると思います。
日本は、休日が増加する傾向があり、低所得者は、おカネがないので、家でごろ寝ということで、
今回は1ヵ月収入の1/3所得がありません。金融機関の10日分の利息、収益はありません。
10月から、消費税2%増税による、GDP減少効果は明らかです。
米中貿易戦争が、日本の外需の減少効果をもたらしており、内需は、春闘がはかばかしくなく、
非正規労働者の所得が減少する要因が多く、高齢者は消費税増税でさらに節約志向になるので、
期待できないでしょう。ということで、日本株は世界の株式市場と比べて、今年は魅力がなく、
営業日も減少しているので、海外投資家は、様子見の反応をしていると思います。
日経の予定を見ると、米連邦公開市場委員会が開かれ、利上げの休止に対する意見がでるならば、
来週の日本市場に影響があります。米中閣僚旧貿易協議もあります。対中輸入に関税25%をかけ、
任期中に、強制的に、貿易差額を「適切な額」に減少させることは、「公約」なので、来年前半
まで、交渉は続くと思われます。その都度、米経済に減速がみられない限り、米株式市場に、
ショックは軽減される。
2019年5月6日~5月10日のイベントと市場への影響度
日本の金融市場は、7日から、営業を開始します。今週のイベントは、8日に米中閣僚級貿易
協議がワシントンで開かれます。先週から、この協議が、対決より穏やかになるとのシグナルが
出ています。他は、日本の決算発表があります。米中貿易差額次第で、トランプ大統領の対中国
圧力が成功しているとみれば、日米の株価は底打ちかもしれません。
第5回目 3.金融商品と金融市場
第3章では、金融商品の定義と特徴を、分類基準にしたがって、のべています。それらを
取り扱う金融市場を、分類しています。いずれも、個人投資家が選択できる商品とアクセス
できる市場を中心に、紹介しています。最後に、金融商品の貨幣価値、すなわち、商品
価格表示の表し方を示しています。金融市場において、商品1単位が、貨幣でいくらする
のかが、取引者間で決定できれば、取引が成立します。
金融商品の評価は、数列、級数の知識があれば、容易に理解できます。数学ができなくと
も、2期間か、3期間、変化を追うことができれば、経済・経営では問題ありません。
・金融市場の特徴
3.1 金融商品の定義と特徴分類
日本国内で取引できる金融商品は、それらの商品の金融市場で取引されます。小口投資
家が取引できる金融商品を主に取り上げます。金融商品の特徴は、満期期間、最終利回り、
取引単位(1口)および発行の方法で分けられます。
金融商品 満期期間 最終利回り 取引単位(1口)制限条件 購入法
預貯金
普通預金 無し 年利子率 1円 預金口座開設
定期預金 3ヵ月 期間中引出不可 口座預入
6ヵ月 解約可
1~3年 年齢制限がある
定額貯金 10年 半年複利 千、5千円 ゆうちょ銀行取扱
1万、5万円 年齢制限無
消費者ローン 10万、50万円
上限金利10万円未満20% 年齢制限、収入、 カードと口座
100万円未満18%
100万円以上20%
借入額は原則年収の3分の1
信用情報機関に全貸金業者加入義務
がある。銀行は貸金業ではないため、年収制限はない。
クレジットカード 割賦販売手数料0~数% 個人信用審査がある。
(キャシュサービス) 上限金利18% 借入額に制限がある。
住宅ローン ~35年 元利均等返済 住宅金融支援機構の審査がある。
元金均等返済 土地建物以外、たとえば家具類、住宅設備等は銀行ローン利用、
4%以上、期間は交渉。
債券
割引債 リーマン・ショック以前は、割引債が小口で個人が購入できた。
現在、発行されていない。
利付債券 個人向け国債と一部の企業の社債があるが少ない。一口の額が
1万円、100万円等。通常は1億円。
株式 上場企業の株式は、通常は1000株が取引単位である。取引株数が
100株からの小口化を証券取引所が、個人投資家を呼び込み、長期
保有による安定株主化のため、上場企業に進めている。
例えば、任天堂は36,070円(2018/6/26終値)取引単位100株だ
が、投資額は3,607,000円となる。
投資信託 債券、株式は小口化できにくいので、投資信託委託会社が、
テーマ別に、投資家から小口資金を集め、信託財産を購入、信託
会社に信託財産の管理を委託する。投資信託委託会社は、テーマで
設定された運用方針にしたがい、信託会社に信託財産を運用指図
する。投資家に対して、定められた期日に信託報酬および監査報酬
を差し引き、利息・配当等があれば分配金を支払う。
ETF (上場投資信託)
日経平均やTOPIXは、株価指数であり、ETFは、各株式の構
成銘柄をその構成比率で保有し、投資信託証券として、基準化し、
投資家に発行します。ETFは、日経平均やTOPIXに連動した
価格で変動し、証券市場で売買できます。上場されていない投資
信託は、証券会社を通じて売買するので、現物の市場とは、即時性
がありません。
Jリート[日本版不動産投資信託] 投資法人(投資信託および投資法人に関する法律に
基づく法人)が発行する証券を、投資家が購入し、主に、不動産の
賃料を分配し、その際、法人税が免状されるので、投資家には、
収益が多くなります。
Jリートは、証券取引所に上場されていますので、投資家は売却
することもできます。
以上の商品は、国内金融市場の金融商品ですが、銀行、証券会社を経由して、外国の金融
市場の金融商品を売買できます。
金融商品 満期期間 最終利回り 取引単位(1口)制限条件 購入法
外貨 200万円まで、証明書なし 銀行等
外貨預金 年利子率 1(ドル等) 本人確認 預金口座開設
外国債券 証券会社
外国株式 証券会社
外国投資信託 証券会社
国内金融市場における金融派生商品は、次のようなものがあります。
債券先物
債券オプション
金利スワップ
株式先物
株式指数オプション
Jリート先物
3.2 金融市場の特徴
相対(あいたい)取引は,顧客と金融仲介者が1対1で金融仲介者の窓口において金融
商品を取引することをいいます。取引所は、顧客が金融仲介者を通して金融商品を取引
し、金融仲介者自身が自己資金で取引します。金融市場の内、預貯金、外貨預金、貸付金
市場は、金融仲介者が銀行であり、銀行だけが預貯金を取り扱えます。銀行は、預金を貸
付、預金金利と貸付金利との利ザヤを収益とします。
銀行が預金者と借入者とを資金で仲介することを間接金融といいます。債券および株式
は、資金供給者と資金需要者が直接、資金と金融請求権(債券および株式)を取引するこ
とを直接金融といいます。
デリバティブ商品の内、先物、先渡し商品は、投資家の予想を反映して契約価格が決ま
ります。オプションは、オプション価格が確率過程から導かれるため、同じ満期期間で
あっても、先物、先渡しとは、違う値動きをします。オプションは、顧客が取引所の設定
するオプション価格帯から選択し、原資産の損失を前払いで確定できる、保険的商品です。
本教室対象の個人投資家は、保有する原資産額が小さく、それに対してリスク・ヘッジ
するほどでもありませんが、海外を投資対象にしている投資信託の中には、為替変動の
リスクをデリバティブ商品で、価値の下落に対して、保険をかけている商品がありますか
ら、その方法を理解する必要があります。
特徴
金融市場 取引方法 取引期間 金融仲介者
預貯金 相対(あいたい) 1日~10年 銀行
外貨預金 相対 1日~3年 銀行
貸付金 相対
1日~35年 銀行
債券 相対・取引所 3ヵ月~30年 銀行・証券会社
株式 相対・取引所 無期限 証券会社
投資信託 証券会社 ~無期限 銀行・証券会社
Jリート 取引所 ~無期限 銀行・証券会社
デリバティブ 相対・取引所 ~1年 証券会社
先物
先渡
オプション
スワップ
今週(2019年5月13日~5月17日)のイベントと市場への影響度
先週のトランプ大統領の対中関税の全品目25%に引き上げる告知があり、株式市場は、
それを織り込む値下がりが続きました。日本も、現在、米中貿易関連企業の株価の調整が続
いています。国内では、13日、14日に製造業、15日に金融の3月決算があります。米国、
中国の4月統計の発表があります。
トランプ大統領の手法は、はじめに、貿易の不均衡に対して、非友好国ロシア、イラン、
北朝鮮に対して、米国がこれまで取ってきた手法であり、問題は何か、相互で解決する問題
は何なのか、論点整理して、このままでは、国内製造業が壊滅するというので、セイフティ・
ガードとして、関税をかけるという、手順ではない。一方的に、一律に、企業の採算水準25%
に合わせて、関税をかけるという方針を打ち出しました。中国だけ、名指しで、他の国には、
そこまでは、関税はかけません。中国の対外取引原則は、Both Pleasureですから、米国に
一方的に赤字があるというのは、その原則に反するとは、認識しています。
これは、米国の対中国に対するライバル視の表れであり、トランプ大統領が、その一部で
あっても、米国人気質に根差すものかもしれません。モンゴロイドの遺伝子を嫌っているの
かもしれません。旧南北アメリカの旧住民は、モンゴロイド系でしょう。宇宙飛行士も、宇
宙船で小籠包を中国人飛行士と食べたという話はありません。協調性のある日本人飛行士と
寿司を食べたという話はありますが。
米国の戦後、中等教育で、国際関係について、どのような教育をしてきたのか、その結果
がトランプ大統領の国際関係観なのかと思うことがあります。
米中貿易戦争の問題は、米国人のイラン人、ロシア人、中国人観が変化するはずがないと
いうことを示している、根深い人類史的な問題のような気がします。中国人は、米国が一度、
こういうことをすれば、歴史的に記憶するので、醒めた貿易相手国として、米国市場を重視
することは、次第になくなると思います。米国市場で儲けようとは思わないでしょう。
米国が中国を狙い撃ちしているのは確かなので、今後、製造業は、中国以外で製造し、米
国に輸出するしかないでしょう。それが可能な企業は、株価が持ち直すと思います。
第6回目 2019年5月20日
日本の金融商品の取引と現状をのべます。金融商品の貨幣価値、すなわち、金融商品1単位
が、貨幣でいくらするのかという評価方法が、他の商品と違います。
金融商品の評価は、数列、級数の知識があれば、容易に理解できます。数学ができなく
とも、2期間か、3期間、変化を追うことができれば、経済学・経営学あるいは、実践上、
問題ありません。
要点・日本の金融商品の取引と現状
・金融商品の評価
3.3 日本の金融商品の取引と現状
日本の預金、債券、株式の取引と現状
預金:預金取扱金融機関において、本人名義で1円から入金すると、預金口座を開設できる。
普通預金は、公共料金等の自動振り込み、消費者ローンおよび住宅ローンの返済資金
決済に利用される。貯蓄手段としては、原則満期期間2年まで、3年以上は自動更新の定期
預金口座があり、普通預金から、定期的に積み立てることができる。本人が死亡するまで、
預金口座は存続するが、10年以上使用しなければ、休眠口座となり、その預金は公益事業に
活用され、ふたたび、使用すれば、利用できる。預金が没収されるのではない。
預金口座は、本人名義の金融的請求権であり、本人の委託なしに、口座を利用できない。
10万円以上の振り込みには、本人確認書類を要求され、その手続きが不便である。
インターネット銀行や流通業者の銀行が設立され、銀行の窓口に行かないで、決済ができる
ようになった。2年前からは、仮想通貨が学生に流行しだし、金融論講義後、「仮想通貨を
買ってもいいですか」とか、「仮想通貨を買いました」ということを学生が言いに来た。
相場が変動するので、心配なのだろう。通貨というが、本来の通貨との交換レートが変動
する。中央銀行が発行している通貨ではないから、交換レートが仮想通貨取引所で毎日
成立する。仮想通貨は、銀行で金預金、外貨預金と同じように、仮想通貨預金できるように
なるのか、模索が続くだろう。ポイントが流通業者間で共通化されて、物品、サービスと
交換できるようになっている。共通ポイントの場合、物品、サービスの購入の都度、
例えば200円につき1ポイントを店側のメモリーに付与してくれる。1ポイントは1円に
交換して、物品の購入に使える。これも電子マネーのようで、決済手段に使われるので、
業者間では共通通貨である。ポイントを貯める人も多いが、失効期日があり、貯めても、
利息は付かない。学生に聞くと「ポイントは利息が付かない」としっかり認識している。
小銭のおつり分にポイントを使用するのではないかと思う。
債券:満期期日に元本を返済する割引債と満期期間に半年か1年ごとに利息(確定利息)を
支払う利息付債がある。割引債は、かつて、長期信用銀行および東京銀行において、国内
に支店網が少ないため、資金調達のために、割引債を発行し、郵便局から購入できた。
普通銀行は、地域に支店網が多く、預金によって、資金調達可能であったため、発行は
認められなかった。しかし、1998年のバブル破たん処理が本格化して、預金金融機関の
再編が起こり、長期信用銀行および東京銀行は、普通銀行となった。リーマン・ショック
まで、割引債は存続したが、ゼロ金利時代となり、割引債は発行されない。
利息付債は、国債を中心として、発行額は増大している。かつては、インフラストラク
チャー計画のため、建設国債が発行され、「失われた時代」は、税収減から、赤字国債が
発行され、雪だるま式に増大した。リーマン・ショック以降は、社会保障予算が増大し
て、今後、高齢者医療費が増大する時代が30年間つづくだろう。
封建時代であれば、藩の人口減少は、領民の逃亡であり、すなわち、領主の統治能力の
欠如であり、幕府により領地お取り上げとなり、近隣の藩に統合されるのは当然であった。
さしづめ、市であれば、3万人未満になれば、原則的に市政返上となる。地方交付税は、
かなりの部分は人口割であるから、人口が減少すれば、地方交付税が減少し、市は近隣の
市に合併され、国の財政健全化に寄与するし、地方債の発行は、国より健全財政均衡が
求められているので、今後は、減少するだろう。
全国的に、地方自治体の平成大合併時代があったが、近畿では、大阪府が不作為で
あった。維新の会ができて、大阪市を再編しようとか、府と市の行政機関が同じような
業務をしているということで、統合が実現した行政事業もある。また、道州制などの
議論があり、「地方自治体消滅」の研究が発表され、基礎演習などで、学生に勉強させた。
しかし、維新の会では、大阪都は実現できなかった。大阪市、堺市は、今もって、行政
区域は変更なしである。
日本では、社債は、1970年の資本の自由化、1974年以降の変動相場制により、大企業
は、銀行による借入金より、外債発行による、国内金利より低い利息で資金調達をし、
海外進出を図った。海外投資家は、変動相場制により、360円から200円台と、ドル安
を見込んでいるから、為替差益がほぼ確実に期待できた。つまり、1億円、1%で5年債
を発行すると毎年、100万円利息が払われるが、発行時、1ドル280円、次の年260円に
円高になると100万円はドル換算すると、3,571ドルが3,846ドルであるから、差益は
7.7%になる。これが、日本の銀行システムが縮小する原因であり、日本銀行の金融政策が
効きにくくなる原因でもあった。また、メインバンク制による、銀行優位の直接財務管理
(銀行派遣の財務取締役)がきらわれ、企業独自の財務管理へ移行する原因でもあった。
日本では、債券は、国債と地方債が大半であり、後者は、人口減少のため、発行が減少す
る。社債は、海外市場消化を想定した伝統を引き継ぐだろう。トランプ大統領の保護主義
が定着すると、ドルの国際決済の地位は薄れ、ドル安が定着する。
株式:新古典派経済学やケインズ経済学では、株式市場の典型的なモデルはほとんど開発
されていない。債券市場は、新古典派経済学では「投資・貯蓄説」がある。ケインズ
経済学では、貨幣市場という現実にはない市場で、「流動性選好説」があり、債券市場は、
流動性選好説で決まる利回りが債券市場の利回りであり、貨幣市場の均衡で、債券市場の
利回りが決まることになっている。ケインズ経済学はマクロ経済学であり、新古典派経済学
はミクロ経済学もマクロ経済学もある。しかし、株式市場の株価はどう決まるのかは、
はっきりしない。資本主義経済の中核の市場なのだが、モデルはない。
本資産形成論では、4節において、株式市場は、交換経済市場であり、不確実性下の
ミクロ経済学によって、株式価格の市場均衡価格が決まることを論じる。
金融商品の評価
・預金、債券の現在価値と将来価値、最終利回りと市場価格との関係
・住宅ローンの元利均等払いと元金均等払い
・株式の評価
・練習問題
預金、債券は,利息の支払いと元本の償還がある金融商品である。ともに、満期までに、
利払いがあり、利息と元本を足した額を元利合計という。預金は、1口1億円の譲渡性預金
以外は、預金の名義人以外に、途中、譲渡できない。
預金の価値
現在0,将来1、2で表す.現在、銀行に年利子率iでA0円預金する。1年後の元金A0円と
利息i×A0円を合わせた額A1=A0+i×A0=(1+i) A0円を元利合計という。
2年定期預金の元利合計A2 は、元金 A0 、利子率iと表すと単利と複利の2種類がある。
単利 A2 =i×A0 +(1+i) A0 =(1+2i) A0
1年目の利息+ 2年目の利息+元本
複利 A2 =(1+i) ×i×A0
+(1+i) A0 =(1+i) 2A0
1年目利息iA0の+ 2年目の利息+元本
再投資
元金A0を現在価値、1年満期の預金の元利合計を将来価値A1とよぶ。
金融商品の市場価値を現時点で評価する方法は、割引現在価値がある。預金の場合、
現在価値A0の将来価値A1 (1年満期の預金の元利合計) A1 =(1+i) A0
将来価値A1の割引現在価値A0 A0 = A1/(1+i)
ということにする。割引現在価値A0は、預金A1という元利合計の金融商品の現在市場価格
を表す。A0 = A1/(1+i)から、分かるように、利子率iと市場価格A0は反比例の
関係がある。
さらに、従来、利子率は確定利息であるが、期間平均利子率の変動金利もある。預金は
相対取引であるが、預金金利は自由化されていて、各銀行で、顧客との関係で、預金利子
率は違う。現在、日本銀行のマイナス金利政策で、金利差がほとんど目立たない。
住宅ローンの元利均等払いと元金均等払い
家計が住宅を取得するために、住宅金融支援機構や銀行から融資を受ける書類審査の
要件を満たせば、融資の手続きに入る。そのとき、返済方法は、元利均等払いと元金均等
払いがある。
元利均等払い(固定返済型)年固定返済額FR、満期期間 n年,利子率 iとする。借入金
L0は、銀行側は元利合計L0×(1+i)n+1円を返済してもらい、借入者は毎年FR円を
返済する。FR円を利子率iでつみたて運用すれば、
元利合計はFR{(1+i)n+ … +(1+i)2+(1+i)}となる。
L0×(1+i)n+1=FR{(1+i)n+ … +(1+i)2+1+i}
と表せる。両辺を(1+i)n+1で割れば、借入金と固定返済額の現在価値とが等しくなること
を意味する。
L0= FR +FR + … + FR
1+i (1+i)2 (1+i)n
固定返済額 FRは,公式1(金融数学1)を使って
FR = L0÷{ 1 + 1 + …
+ 1 }
1+i (1+i)2 (1+i)n
= L0×i(1+i)n / {(1+i)n -1}
元金均等払い
元金均等払いは、毎回の元金返済を均等にする返済方式である。t回目の返済額をRtと
する。毎回元金均等分L0/nを残存年数間、単利で運用する。
Rt= L0×{1+(n-t+1)×i}
n
総返済額は、R=Σt=1n L0×{1+(n-t+1)×i}=L0+L0×i×n(n+1)
n n 2
このように、元金均等払いは、元金と利払いが分離する。
元利均等払いと元金均等払いの違い
元利均等払いは、利払い額が先行し、元本返済が後半に多くなる。銀行では、元利均等
払いの方が、複利計算により、返済利息にも利息がとられるので利息収入が多い。また、
たとえば、貸付初期5年で借入者が返済不能になっても、借入者には元本分がほとんど
ないので、住宅債権は銀行側に落ちる。銀行側優位の返済方法である。
元金均等払いは、最初から、L0/n円、元本返済が進むので、住宅債権は、最初から
借入者に移っていく。しかも、利息は単利計算なので、元利均等払いと比較しても、支払
利息は少ない。しかし、最初から、L0/n円という返済額は、負担が大きい。住宅ローン
は、借入者の方が、銀行より債務者として、立場が弱いので、銀行の言いなりで、元利
均等払いの返済契約が多いはずである。教育イベントが済めば、退職まで早めに、繰り上げ
返済することが望ましい。
債券の評価
債券は、譲渡可能であるから、証券会社で売却可能である。途中で、売却することは
証券会社では勧めていない。その売却価格が、そのときの市場利子率で評価される。
満期期間、最終利回りの計算法、発行の方法、1口の金額、取引単位で分けられる。
債券を特徴付ける項目は次の通りである。
満期利回り Rn
債券市場価格 P
1期間当りのクーポン C
償還価値 F
残存期間 n
1)
単利の最終利回りをRnとする。各期間のクーポンはその債券に再投資されない。
Rn = C+(F-P)/n
P
2) 複利の最終利回りをRnとする。クーポンCは再投資される。ただし,日本では発行
されることは少ない。
P(1+Rn)n=C(1+Rn)n-1+C(1+Rn)n-2 +…+C(1+Rn)+C+F
これをRnについて解く。
割引債 額面 F、利子率i、満期期間 1年とし、市場価格は現在価値Pであり、満期時に
額面 Fが償還される。
P= A1 / (1+i )
額面 F,利子率i,残存期間 n年とし,市場価格Pである割引債は
P=F/ (1+i )n
国債 額面 F、クーポン C、満期期間 n年、市場利子率iとし、発行時の市場価格P は、
P = C + C + … + C+F
1+i (1+i)2 (1+i)n
債券の最終利回りと市場価格との関係は、割引債、国債ともに反比例である。
株式の評価
1株あたり年配当Dを将来無限に受け取ることができるとする。配当割引モデルにおいて、
株式収益率(安全資産利子率+危険負担率)をρとし、市場株式価格をPとすると
P= D + D + D + … = D
1+ρ (1+ρ)2 (1+ρ)3 ρ
1期間だけで、現在価格P、株式収益率s、1株当たりの今期配当Dと株式の期末予想株式
価値Peとすれば、
s= D +(Pe -P)
P
と定義する。変形すると、
P= D +Pe
1+s
と表される。このとき、Peは、清算価値にあたる。
練習問題
1.1年満期の定期預金に、年利子率0.25%で10,000円預金すると、1年後の元利合計
は( )円である。
2.利子率が、年1%のとき、1年後の1万円を現在価値に割り引くと、( )円で
ある。(少数以下は切り捨てること、分数で答えてよい。)
3.茨木太郎が自動車事故の示談金10万円を貸金業者から、満期期間2年、利子18%、
固定返済型で借り入れるとき、1年分の固定返済額は( )円となる。
4.1年満期期間で、額面100円の割引債が、現在、98円で販売されていれば、その利
回りは、( )%である。(少数以下は切り捨てること)
解答
1.
A1 =(1+i) A0から、 A1 =(1+0.0025)×10,000=10,025
答え(10,025円)
2.
A0 = A1/(1+i)から、A0 = 10,000÷(1+0.01)=9,900.99
答え(9,900円または10,000/1.01)
3. FR =L0×i(1+i)n / {(1+i)n -1}から、
FR =100,000×0.18×(1+0.18)2/ {(1+0.18)2-1}=100,000×0.250632/ 0.3924}
=64,126
答え (64,126円)
4. A0 = A1/(1+i)から、98=100/(1+i)
98(1+i) =100
98i=2
i=2÷98≑0.0204
答え ( 2 )%
今週(2019年5月20日~5月24日)のイベントと市場への影響度
今週は、月曜日の1月~3月期のGDP速報値の発表があります。民間の予想では
マイナス0.2%です。商業の4月売上高発表、財務省の4月貿易統計発表、24日には
5月の月例報告があります。25日には、トランプ大統領の訪日があり、対中国貿易
戦争で、日本に協力を求めるのか、対イラン制裁の協力を求めるのか、分かりませんが、
次期大統領選での実績作りに、表立って行動しています。こういう活動については、
米国株式市場は、肯定的に反応しています。危機は、買いのシグナルなのかもしれません。
日本の株式市場は、貿易戦争による売りは、一巡したようです。GDP速報値は
プラス2.1%と出ましたので、4月の財務省発表後、内需がよければ、買いに反応すると
思います。
第7回目 2019年5月27日
資産市場における行動理論
要点
・ライフ・サイクル理論
・異世代間消費ローン理論
・練習問題
今回は、実質ライフ・サイクル理論および実質異世代消費ローン理論を説明します。
次回、債券現物・先物市場一般均衡論および債券オプション理論を説明します。
練習問題にあるように、公務員試験問題等では、税金を貨幣で納付することになって
いますから、所得、支出、貯蓄、税は、貨幣(円)で評価されています。経済理論の
ように、異時間の経済量の比較は、実質化しないと、比較できないという考えはあり
ません。貨幣自体に資産価値があると認識される国債管理通貨制度の時代になり、
「貨幣ベール観:貨幣自体に価値がない」という考えは、経済が崩壊している国以外は、
取っていません。
現在、日本国内で、経済取引されるものは、貯蔵価値のある通貨単位(円)との
交換比率で表示される相対価格です。りんご1個150円といいますが、通貨単位と
りんごの相対価格は、円/個という比率で表されます。すべての経済財は単位量が円で
評価されます。したがって、円が金という金属との公的交換性がなくなり、その国では、
すべての経済財は円による絶対評価です。継続して、すべての経済財の円評価が増加
すれば、インフレーションであり、逆は、デフレーションです。
現在、黒田日本銀行総裁が金融緩和により、株式や国債を買い上げ、それらの価格
上昇を引き起こしていますが、財・サービス価格は、1%もインフレーションにならない
状態が続いています。財は、中国製品を輸入していて、110円台の為替レートですから、
輸入価格が低下します。サービス価格は、販売、運輸、建設で上昇していますが、財に
転嫁されにくいので、1%もインフレーションにならないのでしょう。第3次産業では、
労働がほとんどであるから、その産業の賃上げは期待できません。資産市場価格の
高止まりには、金融緩和は貢献しているが、サービス市場には、投資がありません。
本題に戻ると、個人がライフ・サイクル理論にしたがって、終生の消費・貯蓄計画を
立てるとき、予想所得および個別の品物の予想貨幣価格で計算すれば、ラスパイレス型
実質化をしていることになります。インフレ時代では、継続的に大幅な物価上昇があり、
実質化して、異時間の経済量を比較して、経済成長を実質的に考察する意義があり、
物価変数は実質的経済成長モデルに入りません。しかし、ほとんど1%以下の物価上昇率の
現代では,物価をモデルに入れた名目的貨幣経済成長論も意義があるのではないでしょうか。
次回において、名目異世代消費ローン理論を取り上げます。
練習問題1は、効用関数がよく使われるタイプで、2期間の予算制約式のもとで、効用を
最大化します。本文は記号ですが、数値を入れる方が分かりやすい、公務員試験では、
所得税を入れています。練習問題2は、退職後も入れたライフ・サイクル理論です。この理論
の特徴は、所得の変化を平準化して、毎期間の消費を同じにするということです。ライフ
スタイルは生涯、変動がないようにすることを意味しています。宵越しの金は持たないとか、
老人になれば、節約志向の生活に変えるとかを計画するのではありません。
練習問題(地方上級試験平成7年度復元問題)
1.ある個人が第1期において得た100万円の所得を2期間にわたって全部支出する。個人の
効用関数は,
u = C1C2 〔u:効用水準,Ci:第i期の支出額(i=1,2)〕
で示され,個人の第1期における貯蓄には5%の利子がつくものとする.個人は効用最大化を
図るものとすると,個人の第1期の貯蓄額はいくらか.ただし,個人の第1期の所得と第2期
の利子収入には10%の所得税が賦課されるものとする.
1 40万円
2 45万円
3 50万円
4 55万円
5 60万円
解答 第1期の予算制約式は,所得税100万円×0.1=10万円を控除し
C1+S1=1,000,000×(1-0.1)と表せ,C1+S1=900,000.
第2期の予算制約式は,利子収入S1×0.05万円から,税金S1×0.05×0.1万円を控除して
C2=S1×(1+0.05)-S1×0.05×0.1と表せ,C2=S1×(1.05-0.005)=1.045S1.
効用関数u =C1C2にC1=900,000-S1,C2=1.045S1を代入し,完全平方を作る.
u =(900,000-S1)×(1.045S1)=-1.045(S1-450,000)2+1.045×450,0002
S1=450,000のとき,効用は最大になる.貯蓄額は45万円である.
答え 2
2.(ERE02.3.3出題)ライフ・サイクル仮説にしたがって消費・貯蓄計画を立てている人が
いるとする.今年31歳のこの人は,60歳で引退するまで毎年300万円の一定の所得があり,
引退後の61歳からは所得がゼロとなるが,80歳まで寿命があると考えている. また,現在の
貯蓄残高は,500万円である.この人が,生涯にわたって毎年の消費額を一定にするように
計画しているとすると,今年の貯蓄額は次のうちいくらになるか.ただし,利子はなく,
死後には資産も借金も遺さないものとする.
(1) 110万円 (3) 150万円
(2) 130万円 (4) 貯蓄しない
解答 毎年の消費額をC万円とする.総所得は300万円×(60-30)=9,000万円.
(貯蓄額+総所得)÷(30年+20年)=(500万円+9,000万円) ÷50年
=9,500÷50(万円/年)=190万円/年.
貯蓄額=300万円-190万円=110万円
答え ( 1 )
今週(2019年5月27日~5月31日)のイベントと市場への影響度
本日、日米首脳会談があります。安倍首相は、官米接待で、トランプ大統領の強硬
政策発言をサミットまで、なにとぞ穏便なサミットでありますように、根回しをして
いるようです。しかし、トラントプ大統領は、ビジネスライクな発言、行動が持ち味
なので、通じるわけがないと思います。やはり、冷徹な短期利益を最大化する時代を
駆け抜けてきているので、遠慮なく、ポイントを稼いでいくと思います。
トランプ・ショックは、今年になってから、顕在化してきていますし、各国との対米
貿易は来年の大統領選まで、どの国も対米貿易差額は縮小します。その分、各国は、
ショックに対する手当をすることになります。トランプ大統領に対する評価は、影響
ある国で低いままです。
日本も、実業界では、中国経由で対米貿易は、採算が合わないので、影響が出てき
ています。台湾に電子部品をおくり、台湾の組み立て委託業者が、カリフォルニアの
中南米移民を農業従事者から、電子製品の組み立てに雇用するなりすれば、サプライ
チェーンを米国側に近づけ、関税回避できます。中南米移民は、最初は奴隷としてこき
使われたと想像しますが、もともと、地元の風土になれており、アフリカ民族と違い、
小部族闘争・戦争、階級制が厳しくなく、民族共同体としての集団意識と、意外と手先が
器用で、根気があるのではないかと思います。
中国も、関税25%に対応して、採算が合わない品目は、対米輸出から落とし、価格
競争力がある品目は、輸出を続行すると思います。米系企業で、たとえば、スポーツ
関連商品も、対米輸出では、撤退し、米国以外では、そのまま、工場を回すと思います。
その調整期間が現在始まっているので、来年、6月までに、対米貿易は、トランプ・
シフトで世界貿易は回っているでしょう。
第8回目 2019年6月3日
資産市場における行動理論
要点
・債券現物・先物市場一般均衡論
・債券オプション理論
・国内総生産GDPの実質化
金融先物の最適化理論
不確実性下2期間貨幣一時的一般均衡モデルによって、債券・株式の2資産市場を考え、
債券・株式の現物・先物価格を決定します。2資産がある現物・先物市場において、投資家は、
価格不確実性に対して主観的確率分布をもち、確実性下の予算制約式と同様に,与えられた
現物価格・先物価格に対して、2期間の最適化をし、市場均衡条件をみたす市場均衡解で、
資産を交換します。
例として、投資家の効用関数をコブ・ダグラス型として、前回の確実性下の問題と比べつつ、
最適解を求めることを示します。主観的確率分布も,例えば,一様分布を仮定すると,先物解
も求められます。
資産市場における消費者の行動と計画
消費者は,2期間の永久債の賦存量b0∈R+ をもつ.ここで,b0は確実に予見できるものとする
.計画時の期首に,消費者は負債をもっていないとする. また,消費者は,市場が開かれる前,
株式k0 ≧
0をもつ.
行動と計画
2期間の債券の流列を,b=(b1,b2)∈R+2,株式の流列を,k=(k1,k2)∈R+2とする.
今期の先物市場における債券先物契約をcb2とする.消費者は,cb2>0であれば,期間2の期首に
債券を受け取る.cb2<0であれば,その逆である.同様に,今期の先物市場における株式先物
契約をck2とする.消費者は,ck2>0であれば,期間2の期首に株式を受け取る.ck2<0で
あれば,その逆である.
消費者は,期間1において,現物資産市場において,将来債券および株式保有計画を決定する.
その後,資産先物市場において,債券および株式先物契約を結ぶ.期間1において,消費者が
現物市場と先物市場での取引を決定することを行動(action)と呼び,a1=(b1,k1,cb2,ck2)
∈R+2×R2で表す.次に,期間2の現物市場において,消費者が取引を決定することを計画(plans)
と呼ぶ.期間2の計画をa2=(b2,k2)∈R+2で表す.
期間1において,市場価格ベクトルは,p1 =(pb1,pk1,qb1,qk1)∈ R+4/{0}であり,
ここで,1は,貨幣の価格であり,p1は,債券・株式の現物価格であり, qは債券・株式の先物
価格である. 期間2の市場価格ベクトルは,
p2=(pb2,pk2)∈R+2である.
効用関数
消費者が,資産流列(b1,b2,k1,k2)を選択する際に,期間1の資産選択行動の成果(b1,k1)は,
確実性下にあり,期間2の資産選択行動の成果(b2,k2)は,不確実性下にあるとする.消費者の
資産流列に対する選好は,von Neumann-Morgenstern の期待効用最大化の仮説をみたす.
予想形成
期間2の現物価格の予想は,先物市場価格qに対して,各期間の現物価格の確率分布ψ(q)を
対応させる.これを将来価格の予想形成という.
仮定 8.4 ψ(q):R+2 /{0}→ M(R+ ).
(1)予想形成ψ(q)は,M(R+)が確率測度の弱収束の位相をもつとき連続である.
(2)すべての q ∈R+2 /{0}に対して, int co supp ψ(q)≠φ.
(3)すべてのq ∈R+2 /{0}に対して, ψ(q)(int R+2)=1.
(1)は,確率分布ψ(q)の連続性を,(2)は,投資家の主観的均衡のための必要十分条件を,
(3)は,1点予想を排除する仮定である.
最適債券量を価格の関数で求め,von Neumann-Morgenstern効用関数uに代入し,予想価格分布
ψ(q)による期待効用vを求める.
仮定 8.5 v= u1+∫R+ u2(b2*(p1),k2*(p1))dψ(q).
現物市場に対する予算制約式
消費者は, 現在においても将来においても,プライス・テーカーであるから, 期間1において,
価格ベクトルp1を所与として, A1=R+2の部分集合β1(p1)={(b1,k1)∈A1∣ pb1・b1+
pk1・k1≦pb1・b0+pb1・k0}に制約された行動(b1,k1)を選択しなければならない. 次に,
期間2で不確実性下にあるため, 消費者は, 将来の現物価格(spot prices)p2が実現するとき,
プライス・テーカーとして計画する. すなわち,期間2で実現する現物価格p2を所与として,
計画(b2,k2)∈A2=R+2を立てる. 期間2の予算制約集合は,
β2(p2)={b2∈A2∣ pb2・b2+pk2・k2≦pb2・b1+pk2・k1}と表す.
選好ルール
期待効用関数vは,市場価格p1 を所与として,任意の行動a1,a1′に対して,成果の空間で
定義された選好関係≿cと次の関係があるとする.
p1を所与とし,任意の行動a1,a 1′∈β1(p1 )に対して,v(p1,a1)≧v(p1,a1′)である
ならば,そのときにかぎり,a1 ≳p1c a1′とする.
現物・先物市場における消費者の最適化
消費者の最適化問題は,次のように設定される.価格ベクトルp1と賦存量(b0,k0)を所与
として,仮定8.3,8.4,8. 5,集合β1,β2のもとで,期待効用関数vを最大にする行動
(b1,k1)および計画(b2,k2)を決定する.
この最適化問題は,ダイナミック・プログラミングによって解く. 2段階で解が求められる.
第1段階は,期間2の価格p2を所与とし,期間2の予算制約式の下で,効用関数uを最大化する
ことにより,期間2の計画(b2,k2)を決定する.そして,第1問題の解b2*,k2*を期待効用
関数vに代入し,第2段階の問題に進む. ステップ1では,次の問題を解く.
例題 8. 1 ( pb1,pk1),
(b0,k0) を所与として,
max u1=b1・k1,subject to pb1・b1+pk1・k1=pb1・b0+pk1・k0.
{b1,k1}
解 u1=b1・k1=b1(pb1・b0+pk1・k0-pb1・b1)/pk1
=-pb1(bb1-pb1・bb0+pk1・bk0) 2+(pb1・bb0+pk1・bk0) 2
効用関数が最大になるb1,k1は,
b1=pb1・bb0+pk1・bk0
, k1 =pb1・bb0+pk1・bk0.
例題 8. 2 p2≫ 0, b1*,k1*≧0を所与として,
max u2 =b2・k2 ,subject
to pb2 b2+pk2・k2=pb2(b1*+cb2)+pk2・(k1*+ck2).
{ b2,k2 }
解 u2=b2・k2=b2(pb2(b1*+cb2)+pk2・(k1*+ck2)-pb2・b2)/pk2
=-pb2(bb2-pb2(b1*+cb2)+pk2・(k1*+ck2)) 2
+(pb2(b1*+cb2)+pk2・(k1*+ck2) )2
b2*=pb2(b1*+cb2)+pk2・(k1*+ck2), k2* =pb2(b1*+cb2)+pk2・(k1*+ck2).
ステップ2では,次の問題を解く.p2 を基準化すると,解が陽表化できる.
例題 8.3 債券先物価格qを基準化して,q=(1,qk2)≫0のもとで
max ∫b2*・k2*d ψ(q),subject
to q・c= 0.
{ cb2,ck2}
解 L=∫b2*・k2*d ψ(q)-λq・c
=∫{(pb2(b1*+cb2)+pk2・(k1*+ck2))}2 d ψ(q) -λq・cとおく.
4 pb2pk
・(k1*+ck2)}d ψ(q)
2pk2 =λ
∫{pb2(b1*+cb2)+pk2・(k1*+ck2)}d ψ(q)=λqk2,q・c=0.
株式オプション価格の二項過程モデル
Black-Scholes[1973,J.P.E.81,石村貞夫・石村園子『金融・証券のためのブラック・
ショールズ微分方程式』東京図書,部分訳第11章190
-199頁]の評価公式は,株式市場
およびオプション市場に対して, 7条件を仮定している.
Black-Scholes金融市場は効率的な完全競争市場である.しかし,オプション市場は,
経済学の市場機構は設定されない.オプション理論は,「金融工学」の理論であるということが,
強調される.したがって,貸付市場および債券・株式市場の市場均衡価格は,オプション理論では,
所与とされる.市場で異なる株価が成立すると,裁定取引によって,現在の企業価値が同じになる
という説明をもちいる.
Cox,J.C.,Ross,S.A.,Rubinstein,M.“OptionPricing:ASimplifiedApproach,”J.F.E7(1979)229-2631,による,
二項過程モデルを紹介する.これは,デルタ・ヘッジで,コール・プレミアムを求める.コピー・
ポートフォリオから,デルタ・ヘッジと同様に,コール・プレミアムを求める論者もいる.
岩田暁一『先物とオプションの理論』東洋経済新報社,1989.榊原・青山・浅野『証券投資論第3版』
,日本経済新聞社,1991
前回のテキストでは,ヘッジド・ポートフォリオでプレミアムを求めているが,コピー・
ポートフォリオとプレミアム公式は同じである.コピー・ポートフォリオは,デルタ・ヘッジと同等である.
混同して,用語を使っていたので,訂正した.
二項過程の1期間モデル
数値例
株式を原資産とし,1期間後,株価S円が上昇するか,下落する二項分布にしたがうとする.
このとき,「コール1単位を売り,株式をδ単位買う」ポートフォリオを考える.
原資産の価格をS円,コールの価格をC円とする.現在価格と権利行使価格はともに
100円とする.2項分布の確率は,0.5とする.
現在 期間1 現在 期間1 コールの収益
120 u×S 20 Cu u=1.2
100 C uは原資産が上昇したときの倍率
80 d×S 0 Cd d=0.8
dは原資産が下落したときの倍率
デルタ・ヘッジ:「コール1単位を売り,株式をδ(デルタ)単位買う」ポートフォリオの
もとで,満期時点で,どんな株価およびコール価格に対しても(上述の例では80円でも120円
でも),収益を同じにする.
このポートフォリオをヘッジド・ポートフォリオという.今,コール1単位を売ると,
C円を得るから,投資額は-C円である.一方,株式x単位買い,100x円を投資する.合計で
100x-C円投資する.満期に,株価が120円になれば,権利行使価格100円で渡すから,
20円損失が出る.株式を売却すれば120x円得るから,収益は合わせて120x-20円である.
80円の場合,権利行使価格100円より,安いので権利放棄し,株式は売却すると80x円収益が出る.
満期の株価
投資額 120 80
コール1単位の売り -C -20 0
株式x単位の買い 100x 120x 80x
合計 100x-C 120x-20 80x
収益 収益
上述の例で,xを決定する.満期では,デルタ・ヘッジしているから,いかなる株価でも
ヘッジド・ポートフォリオの収益は同じである.表から,
120x-20=80x
x=20÷40=0.5
xは0.5である.投資額は100x-C=100×0.5-C= 50-Cである.満期の収益は
120× 0.5 -20=80× 0.5=40である.
コール・プレミアム(価格)の決定
上の結果から,投資額50-Cを非危険利子率0.05で運用すると,ヘッジド・ポートフォリオ
の満期収益40に等しい.なぜなら,効率市場仮説より,投資収益に違いがあれば,裁定取引
が働く.
非危険利子率で運用収益
= ヘッジド・ポートフォリオの満期収益
(50-C)×1.05 = 40
C = 11.9
ゆえに,コール・オプション価格は11.9である.
コピー(replicate)・ポートフォリオ
コールの収益と,資産市場で他の商品と組み合わせたポートフォリオの収益が一致
するものが生成できれば,コールの収益のコピー(replicate)・ポートフォリオという.
コピー(replicate)・ポートフォリオの例として,
①「株式x単位の買いと利子率5%の貯蓄Bの組み合せ」または②「株式x単位の買いと利子率5%
の借入れyの組み合せ」で生成する.
① 120円のときは,120x+1.05B=20 ② 120x-1.05y=20
80円のときは, 80x+1.05B=0 80x-1.05y=0
ともに、辺々引き算すると 40x=20がでる.x=0.5である.
プットの場合は,ヘッジド・ポートフォリオは,「プット1単位の買いに対して,株式x単位
の買い」である.ヘッジド・ポートフォリオの収益は次の表になる.
満期の株価
投資額 120 80
プット1単位の買い P 0 20
株式x単位の買い 100x 120x 80x
合計 100x+P 120x 80x+20
収益 収益
デルタ・ヘッジをすると,120x=80x+20,ゆえに,x=0.5である.投資額 50+Pを非危険資産で
運用すると,(50+P)×1.05=60より,P=60÷1.05-50=7.1
国内総生産GDPの実質化
一国の1年間の経済主体の経済活動は,国民経済計算SNA(System of National Accounts)
で測定・記録・公表される.経済基盤情報として,3カ月ごと,前四半期の国内総生産GDP
(実際は,GDP確報は2年後公表なので,速報性のある国内総支出GDE,会計上GDP≡GDE)
が,政府から公表される.これは,景気観測の情報として重要度が高い.
デフレーターの作成
基準時を0とし,比較時をtとする.商品は,りんごとみかんとする.
商品 基準時0 比較時t
価格P0 数量Q0 価格Pt 数量Qt
りんご 100円 20個 120円 30個
みかん 20円 100個 30円 80個
基準時および比較時のりんごおよびみかんの購入合計は,それぞれ,その時点での名目値
といい,次の通りである.
ΣP0×Q0 = 100×20 + 20×100 =4,000
ΣPt×Qt = 120×30 + 30×80 =6,000
これら名目値同士で,購入額を比較するとき,りんごとみかんの価格が変化しているので
比較できない.そこで,基準時から価格が不変だったとして,価値額ΣP0×Qt を計算する.
これを比較時tの実質値という.上の例では
ΣP0×Qt = 100×30 + 20×80 =4,600
実質値 ΣP0×Qtは,変形すると
ΣP0×Qt = ΣPt×Qt
ΣPt×Qt
ΣP0×Qt
このとき,分母の比率(ΣPt×Qt)/(ΣP0×Qt)をパーシェ型価格指数
(GDPデフレーター)という.この指数で,基準時の名目値を割れば,基準時の
実質値がえられる.上の例では
パーシェ型価格指数=(ΣPt×Qt)/(ΣP0×Qt)=6,000/4,600≒1.3 .
しかし,比較時の数量Qtのデータは,すぐえられないので,
(ΣPt×Q0)/(ΣP0×Q0)
とした,ラスパイレス型価格指数を作成する.これは,消費者物価指数CPI
として用いられている.上の例では,
ΣPt×Q0=120×20 + 30×100 =5,400であるから
ラスパイレス型価格指数=(ΣPt×Q0)/(ΣP0×Q0)=5,400/4,000≒1.35.
これらの価格指数を,集計量を比較可能にするデフレーターとよび,公表され
ている.
資産形成論の本文4.1において,若年世代および壮年世代の消費・貯蓄の
決定をそれぞれ2期間モデルで,示している.経済学教科書では,2期間モデルに
よって,ライフ・サイクル理論が説明される.本文の中で,実質所得,実質消費量,
実質貯蓄量が使われている.これらは,パーシェ型価格指数またはラスパイレス型
価格指数で実質化している.生涯所得の推計という実務(例えば,裁判所の生涯
所得推計法)は,比較時の数量Qtのデータが,得られないので,価格Ptだけを
予想し,基準時の数量データQ0を使うのは合理的である.
国民総生産GNP(Gross
National Product)と国内総生産GDP
(Gross
Domestic Product)の概念の違い
「国内」とは,「ある国の政治的領土からその国に所在する外国政府の公館と外国
軍隊を除き,領土外に所在する当該国の公館と軍隊を加えたもの」である.「国民」
とは, 国内の居住者である.国内総生産GDPは,国内の要素所得Y(付加価値合計)
に固定資本減耗Dおよび間接税-補助金を加えたものである.国民総生産GNPは,
国内総生産に海外からの純要素所得ΔFYを加えたものである.
今週(2019年6月3日~6月7日)のイベントと市場への影響度
4日に、FRB(米連邦準備理事会)が金融政策に関する会議がある。トランプ・
ショックが本格化し、実体経済に東アジアにも表れてきている。トランプ氏の目標が、
現時点では、次期大統領選に移っているので、対中国交渉は、製造大国25年計画に
米国が依存しないし、計画を妨害することを鮮明にし出している。これは、共和党の
強硬派ボルトン氏の意見を採用し、対中国は交渉決裂、北朝鮮和平はぶち壊し、
シリア戦がシリア・イラン・イラクシーア派・ロシアの制圧で終盤を迎え、有志連合
とイスラエルは対イラン戦に踏み切る構えをみせている。ネタニエフ首相は、
90年代から登場、強硬派で、ソビエトからの帰国ユダヤ人かなと思っていたら、米国
だったが、(本来のユダヤ人は、パレスチナ人との和平を望む気があった。)米国の
ユダヤ政治団体とともに、対イランで、イランの核施設、軍事基地を空爆しようかと
いうような強硬意見をもっている。
世界貿易の縮小と世界各国の対米貿易の縮小で、トランプ・ショックは、続きそう
である。市場経済機構の調整力で、米中の貿易不均衡を改善するのであれば、為替を
1元3ドルにする、増価が起きてくるが、中国は変動相場制をとっていない。中国が
世界一のGDPとなるには、金融の自由化は避けて通れないだろう。日本は、プラザ
合意で一時140円台に増加した。
中国も、貿易で稼ぐのではなく、経済の貿易依存度を20%以下に減少させ、対米輸出
は競争力がある製品だけで、米国からの航空機輸入はエアバスか、自国生産にするしか
ないだろう。米国以外との貿易は、突出していないだけに、これからも、相互に拡大
するが、米国分生産は、内需を充実させることに、計画を修正せざるを得ないだろう。
中国は米系会社のsweep outを強力に推し進める必要がある。
米国が主張するNO1で永久にありたいという強欲は、移民国で慣習、倫理、法規制が、
強欲が非難される(108の煩悩があり、すべての煩悩をみたすことを超強欲という)
伝統国に比べると、緩いからであり、伝統国は、必然的に、過去の慣習、倫理、法規制
にしばられる。日本に対して規制緩和を常に要求してきた。すでに、中国の一人当たり
国民所得が米国に肩を並べているわけでもなく、ただ、米国GDPを超えそうだから、
ということで、その発展には協力したくないという論理は、世界の伝統国から、度量が
みみっちい国だと思われるようなショックではある。
第9回目 2019年6月10日
債券の期間構造と株式の収益率
要点
・債券の期間構造
・株式の収益率
第9回は、危険資産のうち、債券と株式の特性を経済理論で分かっている特性と、個別
企業の株式価格および経営成績・財政状態の報告書から導く特性を説明する。
債券利回りと債券市場価格の関係
第7回目において、単利の最終利回りRnは
Rn = C+(F-P)/n
P
複利の最終利回りRn
P(1+Rn)n=C(1+Rn)n-1+C(1+Rn)n-2 +…+C(1+Rn)+C+F
によって、定義した。各期間の短期利子率は、通常異なるから、残存期間n、第i期間の
予想利子率をri、長期利子率をRnとする。
金融理論において長期利子率Rnと各期間の短期利子率riとは、関係があるとする立場と
関係はないとする立場がある。前者は、LutzおよびHicksが主張した利子率の期間構造論
であり、後者はCulbertsonの主張したヘッジ(掛け繋ぎ)理論といわれる。
Lutzの要点は、市場関係者の完全予想を仮定し、Rnはriの平均であり、期間構造は利回
曲線によって決定される。
HicksはLutzの理論を引継ぎ、不確実性下、予想短期利子率を先物短期利子率に置き換え
て、Lutz理論が成立すると主張した。現代の期間構造理論は、Hicksの流動性プレミアム
理論にしたがっている。
ヘッジ理論は、自己の負債Bの満期時点が来るとき、その満期時点に資産Aを合わせて、
B=Aとすれば、途中の短期利子率が変動しても、返済不能にならない。
期間構造理論は、「満期の異なる諸貸付けに代替性があり、異なる満期を裁定し、収益
ないし費用の有利なものを選択できる」。
債券投資リスクの測定
イールド・カーブ(yield curve)の形状
期間構造理論では、利回り曲線は、債券市場の予想形成によって、イールド・カーブ
(yield curve)の形状は、縦軸に利子率R、横軸に満期期間(残存期間)yearをとると、
4種類(図4.5)ある。実際、債券の種類は、満期期間(残存期間)、クーポン、公社債の
発行主体、発行方法によって、多種多様であり、イールド・カーブが専門誌で日々公表
されるほど、期間構造が分析上、重視されているとはいえない。Hicksの理論で、国債先物
短期利子率を代入して、イールド・カーブを図示すると、市場では、先行き何年で、
利子率が上昇すると予想しているか、すなわち、水平から順イールドに転じるかが推測
できる。その転換年が、2019年4月の消費税2%増税から、黒田日銀総裁2022年任期まで
の間にあるはずである。債券投資家の「お喜びの声」が、証券会社に寄せられるときでもある。
デュレーション
市場利子率が変化すると債券価格の変化はどの程度かを測る指標がデュレーションである。
デュレーションDは、(1+R)がパーセント変化したときの債券価格Pのパーセント変化
として、Pのパーセント変化/(1+R)のパーセント変化を計算する。この比を債券価格の
(1+R)弾力性と定義する。(読み方が、分子の分母弾力性となることに注意)
D=- dP /P 。変形して、 dP =-D P (1)
d (1+R)/(1+R) d (1+R) 1+R
デュレーションの値が大きくなると、弾力性が大きい。利子率の変化に対して債券価格の
変化が大きいことを意味する。
最終利回りの計算式P(1+Rn)n=C(1+Rn)n-1+C(1+Rn)n-2 +…+C(1+Rn)+C+F
を市場利子率Rで置き換える。
P= C + C +…+ C + C+F (2)
1+R
(1+R) 2 (1+R)n-1 (1+R)n
取引する債券のクーポンC、満期期間n、額面Fは、決まっているから、投資家の評価する
利子率Rが、債券市場で決まる。(2)式を1+Rで微分すると
dP =-{ C +…+ (n-1) C + n(C+F) }
d (1+R) (1+R) 2 (1+R)n (1+R)n+1
=-1 { C +…+ (n-1) C + n (C+F) } (3)
1+R 1+R (1+R)n-1
(1+R)n
(1) 式と(3)式を比較して
D={ C +…+ (n-1) C + n(C+F) }. (4)
(1+R)P (1+R)n-1P (1+R)n P
デュレーションDは,満期までの年数の加重平均であり、債券の平均回収期間を表して
いる。デュレーションの特性は、(4)式から、
デュレーションの値
残存期間n 長い 項数が増えるから、大きい
クーポンC 大きい 分子の債券価格Pが大きくなるから、小さい
利子率R 大きい 分母の各項の1+Rが大きくなるから、小さい
債券投資戦略にデュレーションは応用することができる。コンベクシティ、信用リスクは、
説明を省略する。投資信託を投資対象とするので、債券投資信託の目論見書を分析する
場合は、さらに研究を要する。
株式の収益率と株式市場価格
各種の株式収益率を定義し、株式投資の指標としての役割をのべる。 企業の経営成績は
損益計算書、企業の財政状態は貸借対照表で情報開示される。投資家は、これら財務諸表
から、総資本事業利益率(ROA: Return On Asset)および自己資本利益率(ROE: Retun
On Equity)投資判断の指標を導いている。ただし、会計期間が1年であり、四半期で仮計算
される企業もある。国民経済計算と同様に、速報と確報がある。
財務指標と株価の関係
ROA
事業利益
ROE 資産
税引き後利益
EPS 自己資本 ×
税引き後利益 × 資産
株数 自己資本 自己資本
株価 × 株数 レバレッジ(てこ率)
株価 BPS
EPS
PER
株価
1株当たり純資産(BPS)
PBR
表において、上下の比率をかける(×)とその前の比率になる。株価=EPS×PER。
ROEおよびROAは、損益計算書と貸借対照表のデータによる比率である。PERと
PBRはともに株価が分子であり、分母は1株当たり税引き後利益、1株当たり純資産を
それぞれあてる。株価は取引日ごとにデータが得られるが、分母は前期の損益計算書と
貸借対照表のデータである。相場の変動により、営業日で変化するのはPERとPBR
であり、これらは、株価の市場評価を表す比率として株式投資の参考指標に使われる。
投資家は自己資本あるいは資産を期間内有効に使って、利益を上げる比率として、ROE
およびROAを意識するから、経営者が株主総会でそれらを経営目標として意識している
ならば、決算でその結果を示す。米国では、経営者は、利益至上主義であるから、ROE
およびROAは、株主に答える目標であるが、日本の経営者で利益至上主義は日産社長や
ソフトバンク社長であるが、それらの比率を経営目標として、意識する人はあまり
いない。会社やっていますという社長は多い。トランプ大統領は、アメリカ人は超強欲
であるという演説をしていたので、アメリカ合衆国の財務諸表の国富を回復させるのが
公約なのである。現代の世界資本主義経済システムにおいて、保護主義で国富を取り
戻せるのか、ドン・キホーテにならないといいが。
今週(2019年6月10日~6月14日)のイベントと市場への影響度
10日に4月分国際収支、5月中国貿易統計、12日に5月米国消費者物価指数、14日5月
米小売売上高、鉱工業生産指数、同月中国の発表がある。先週のFRBの会見から、
米利下げが予想される。そのため、為替が円高に動いている。米国景気もピークを打ち、
後退が予想されている。サミットも、米朝首脳会談が、ボルトン一派の強硬論者で不調に
終わったと同様、米中首脳会談も物別れに終わるだろう。共和党は、民主党と違って、
人権外交が全く皆無である。中国共産党は、人権問題が外交交渉の材料にはならないので、
トランプ大統領の主張する物的生産に関する取引は、中国の経済政策が物的生産性重視に
特化しているので、交渉しやすいはずが、そうでもない。要するに、米国の戦略物資生産
委託は今後排除する、つまり、軍服のワッペンは香港から輸出しない、貿易の不均衡は、
変動為替制度によって、市場調整機能を持たせる、米国債を売却、過剰な米国債を貯め
込むリスクはなくなる。仮に、民主党の大統領になれば、中国にとって、有利であることは
もうないだろう。今後は、粛々と関税効果で、貿易の不均衡が収縮し、しなければ、関税
を35%に上げるだけだろう。米国経済の縮小が始まるのかもしれない。
半面、アジア経済は、米国需要の代替で、米中戦争の影響が好転する見込みがある。
中国の米国産輸入が制裁で減少し、販路をアジア諸国に向けるだろう。原油価格は上昇し
なくなる。対米貿易が縮小すれば、中国経済も、アジア諸国と一帯一路政策を本格化せ
ざるを得ない。ロシア、インドを含めたアジア共存共栄戦略を各国のコンセンサスがある
わけではないが、中国も協調せざるを得ないだろう。
中国はアヘン戦争以来、英国の次は、米国と、碌な付き合いではなかった。日本も
不平等通商条約を押し付けられた。日露戦争も、米国の仲介で、ロシアに有利に決着させ
られた。西部劇の騎兵隊がインデアンの領地の中で開拓民を守るという映画があったが、
そういう意識は変わっていないのだろう。
国際機関が機能しなくなっているが、将来的には、アジア連合の国際機関を設立して、
西部劇の騎兵隊のご厄介にならず、もめ事は、アジア連合に諮って、治めるようにし、
アジア貿易機構において、アジア共存共栄戦略の進捗を協議するようにした方が、安全
保障上の発動が不必要になり、アジアの資本の自由化が進み、各国民の不平等が平準化
されるのではなかろうか。
大阪サミットまで、金融市場は、一進一退だろう。
第10回目 2019年6月17日
資産選択理論 2資産モデル
・各資産を収益率で比較し、ポートフォリオ(資産の一覧表)を作成する。
・各期待収益率に対し、リスク(分散)を最小にするポートフォリオ(有効フロンティア)
を作成する。
・投資家は資産の収益率の確率分布を選び、収益率の実現値に対して効用をもつ。
・投資家は、有効フロンティア上で、期待効用を最大にするポートフォリオを選択する。
今回は、証券投資の教科書で看板の一つである、資産選択理論あるいは平均・分散分析
を、もっとも簡単な貨幣・債券の2種類の資産がある場合で説明する。
消費者は、給与、賞与を定期的にえると、ライフ・サイクル理論で、毎月、貯蓄額を
決める。第8回目の練習問題1では,ある個人が第1期において得た100万円の所得を2期間
にわたって全部支出する。個人の効用関数は、u =C1C2〔u:効用水準,Ci:第i期の
支出額(i=1,2)〕で示され、個人の第1期における貯蓄には5%の利子がつくものとする。
個人は、2期間の予算制約式C1+S1=900,000、C2=1.045S1.のもとで、個人は効用
最大化を図る。これが、ライフ・サイクル理論である。
ライフ・サイクル理論で決まった貯蓄額を他の資産に投資する際、将来価値変動しない
特性のある貨幣と、確率的に価値変動する債券の分け方(割分)を決定する。これを
資産選択理論という。
ライフ・サイクル理論は、予算制約式のもとで、消費者の効用関数を最大化する消費量を
求めるが、資産選択理論は、「期待収益率に対して、ポートフォリオの分散を最小化する
有効フロンティアのもとで、期待効用関数を最大にする最適な投資割分を選択する」。
ポートフォリオ(資産の一覧表)の作成
これまで、金融商品は、現預金、債券、株式の3資産の特性を数値で評価した。ここでは、
現金(貨幣)、利付債、株式の3資産を取り上げる。1期間(月間、年間)の投資収益率を
定義する。1年後の利息は確定しているが、1年後の配当、1年後の利付債単位価格および
1年後の株式1株価格は予想値である。
貨幣の投資収益率 m =1年後の現金1円-現在の1円 =0
現在の1円
利付債投資収益率b =1年後の利息+(1年後の利付債単位価格-現在の利付債単位格)
現在の利付債単位価格
株式の投資収益率s =1年後の1株当りの配当+(1年後の株式価格-現在の株式価格)
現在の株式価格
今回は、貨幣と債券の2種類のポートフォリオを投資家が選択する。以下は、ポート
フォリオの収益率Rを定義し、その期待値(平均値)μRと分散σR2(標準偏差σR)を求める。
貨幣の収益率は0であり、利付債の利息(クーポン)率をr=利息/現在の債券価格、
capital gain or loss率G=(1年後の利付債単位価格-現在の利付債単位価格)/
現在の利付債単位価格とする。貨幣と債券の2種類のポートフォリオ(2資産の一覧表)
の場合、予想値があるのは債券価格のみであり、それが含まれる値上がりまたは値下がり
率Gは、確率変数とする。確率変数Gの性質は、期待値(平均値) μgおよび分散σg2(標
準偏差σg)で表される。μg=σgは一定である。
貨幣と債券のポートフォリオの収益率をRとする。2資産に投資した割合を、それぞれ、
A1、A2≧0とする。A1+A2=1である。ポートフォリオ収益率R=A1×0+A2×(r+G)
=A2×(r+G)の期待値と分散を計算する。
期待値μR=E[R]=E[A2×(r+G)]=A2 E[r+G]=A2 {E[r]+E[G]}
=A2 {r+0}=A2 r (1)
分散σR2=E[R-E[R]]2=E[A2×(r+G)-A2 r]2=E[A2G]2
=A22 E[G]2 =A22σg2 (2)
以上の計算は次の期待値Eの公式を使っている。
定数rのとき、E[r]=r。E[r+G]=E[r]+E[G]。
E[A2×(r+G)]=A2 E[r+G]。
有効フロンティアの作成
有効フロンティアとは、各期待収益率μRに対し、リスク(分散σR2)を最小にする債券
の割合A2を求める。
(1)からA2=μR/ rであり、(2)式に代入すると、σR2=A22σg2=
(σg2/ r2) μR2である。投資家がポートフォリオから、期待する期待収益率μRを
決めると、割分A2=μR/ rが決まり、そのときの分散は(σg2/ r2) μR2となる。
テキスト図4.7の期待収益率と標準偏差の平面上に、描くと、直線μR=(r/σg) σRと
なる。この直線の右側では、各期待収益率μRに対する標準偏差σRがより大きいことが
見て取れる。この直線上がリスク(分散σR2)を最小にする債券の割合A2が描く直線であり、
有効フロンティアという。
投資家の期待効用
投資家が、有効フロンティアのどの期待収益率を選ぶかは、von Neumann-Morgenstern
の「期待効用最大化の仮説」にしたがう。
期待効用最大化の仮説
「各投資家は、期待収益率の実現値R=rに対して、効用関数U(R)をもち、効用関数の
期待値E[U(R)]が最大となる確率分布を選ぶ」
投資家の分類
投資家は、効用関数U(R)によって、主に、3つのタイプに分類される。すなわち、危険
回避者、危険中立者、危険愛好者である。テキストpp. 26-27に、それぞれの効用関数を
特定化し、その期待効用を計算している。危険中立者はリスクに無関心であるので、効用
関数の期待値を取るとリスクの指標である分散が入らない。他の2者は、分散が入ってい
る。
図4.9に示しているように、危険回避者、危険愛好者はともに円の方程式であり、
危険回避者は北西方向に同心円が行くにつれて、期待効用が高くなる。危険愛好者は
北東方向である。危険中立者は、水平線となり、上に行くほど期待効用が高い。
経済学では、危険回避者を想定することが多い。危険愛好者は、投機者である。分散
あるいは標準偏差を経済行動の最適化にもちいるのが、資産選択理論である。
有効フロンティアのもとで、期待効用最大化
投資家は、有効フロンティアμR=(r/σg) σRのもとで、期待効用関数を最大にする
最適な投資割分A2=2r/(r2+σg2)を選択する。この計算は、テキストp27-28にある
ように、危険回避者の場合、北西方向の円と有効フロンティアの接点を求めればよい。
危険愛好者の場合は、点(r, σg)が利付債にすべて投資する場合であるから、この点を
選択する。危険中立者は、E[U(R)]=E[R]=A2 rであるから、危険愛好者と同じく、
利付債にすべて投資する。
まとめ
資産選択理論は、経営学部、商学部において、証券論の一部に、必ず、その章がある。
経済学部の金融論では、金融政策の有効性を問題にすることが多く、日本銀行が政策判断
をする経済モデルは、マクロ計量経済モデルが主流である。債券、株式、為替市場には、
各資産の平均・分散が投資家の行動に影響を及ぼしていることは、資産選択論から明らか
である。従来の日本銀行の政策には、平均・分散を考慮することはなく、購入する資産
は、短期リスクレス資産であり、長期国債などのような長期リスク資産は、政府の財政
規律にモラルハザードを招きかねないので、論外の手段だった。ところが、黒田総裁の
非伝統金融政策では、再インフレーションの政策目標のために、日本銀行自身が、債券、
株式などの危険資産を購入することになり、バーゼル銀行監督委員会の自己資本比率規制
では、中央銀行は問題にならないのか。
財政法に政府の国債発行について、最高発行限度額規定はない。地方財政法にはある
はずだ。また、旧日本銀行法は、大蔵省による日本銀行券最高発行限度額が決められて
いた。新日本銀行法では、なくなった。改正当時、金融学会で議論されたことはない。
政府、国会議員も、日本銀行も、国債発行、日本銀行券発行に番人がいないことをいい
ことに、とめどなく、ばらまいていく、怖れを知らない、親方日の丸主義にはまって
いる。徳川の江戸でも、しばしば、倹約令が発令されたが、東京に生きていると、節約
して、効果を、効率を最高にするという知恵がわかないのだろう。
今週(2019年6月17日~6月21日)のイベントと市場への影響度
今週は、米国の対中関税第4弾の公聴会が開かれる。18日6月の月例経済報告があり、
FOMCが19日まで開かれる。日銀は金融政策決定会合が19日20日まである。21日は政府の
経済財政運営の基本方針、成長戦略の閣議決定がある。FRBが実際に利下げを表明する
ことは、第4弾の発動後、議論されるだろう。トランプ氏の取引は、米中取引の縮小を主張して
いるので、中国としては、製造大国の米国分は、外さざるを得ないし、中国から米国へ輸出する
各国企業も同様なシフトをしている。中国の労賃の魅力が将来的に薄れるので、いい口実で
撤退する企業が増加するだろう。このような交渉は、第4弾を実施して、その流れで、経常収支が
減少していくのを中国が容認するしかないだろう。中国も、米国全輸入品に報復関税25%をかける。
イランのように、同盟国に原油取引を中止する要請をし、代わりに、可能ならば米国産を供給
するということになっているようにみえるが。5Gについても、中国製より、米国製を代替して、
供給することを米国が保証しているようにみえるが。経済制裁を同盟国に要請するならば
そのコストは、米国が補償すべきなのが、国際ビジネスの世界では求められる。今後、対米
ビジネスは、米国が敵視する諸国とビジネスを展開している企業は経済制裁のコストを考慮し
なければならなくなる。そのリスク回避の代替的国際決済システムが必要かもしれない。ドルを
決済で使用せず、共産圏貿易でおなじみのバーター取引で、輸入と輸出を相殺し、差額を
かつては金だったが、国際商品、原油、ガス、希少資源で決済する。
米国の保護主義がつづくようであれば、さらに、国際金融の世界でも、米国離れしなければ、
世界経済は発展しないだろう。
第11回目 2019年6月24日
3資産選択理論とその実践
・2危険資産の有効フロンティアを求める。
・3資産の場合、安全資産があれば、分離定理が成立し、第10回目と同様に、有効
フロンティアを直線にできる。
・資産市場において、最適ポートフォリオにもとづき資産を購入する。
今回は、貨幣、債券、株式の3種類のポートフォリオを投資家が選択する。以下は、
ポートフォリオの収益率Rを定義し、その期待値(平均値)μRと分散σR2(標準偏差
σR)を求める。
利付債の収益率BをB=r +Gbとする。新たに、株式を追加する。Dは株式配当率、
株式のcapital gain or loss率Gsとし、ともに、確率変数である。株式収益率をS=D+Gs
とする。利付債収益率Bは、期待値μB、分散σB2であり、株式収益率をSは、期待値
μS、分散σS2である。共分散はσSB=ρSBσSσBである。計算の簡単化のため、2つ
の確率変数の相関係数ρSBは、統計的独立性を仮定するので、ρSB=0である。
株式と債券のポートフォリオの収益率をRとする。2資産に投資した割合を、それぞ
れ、A1、A2≧0とする。A1+A2=1である。ポートフォリオ収益率R=A1×S+A2×B
の期待値と分散を計算する。σSB=ρSBσSσB =0を使うと簡単になる。
期待値:μR=E[R]=A1 E[B]+(1-A1)E[B]=A1μS+(1-A1)μB
分散:σR2=E[R-E[R]]2=E[A1S+A2B -(A1μS+(1-A1)μB)]2
=E[A1(S-μS) +(1-A1) (B-μB)]2
=A12σS2+2 A1(1-A1) σSB+(1-A1) 2σB2
=(σS2+σB2)A12 -2σB 2A1+σB2
有効フロンティアの作成
有効フロンティアとは、各期待収益率μRに対し、リスク(分散σR2)を最小にする
債券の割合A1を求める。
分散:σR2=(σS2+σB2)A12 -2σB 2A1+σB2の最小値は、完全平方化して、
σR2=(σS2+σB2){A1-σB2/(σS2+σB2)}2+σS2σB2/(σS2+σB2)となる。
A1*=σB2/(σS2+σB2)のとき、分散の最小値σR2*=σS2σB2/(σS2+σB2)
をとる。そのときの平均値は、
μR*=A1*μS+(1-A1*)μB=μB+A1*(μS-μB)である。
4.6式は、(μR*,σR2*)を使って、変形するならば、双曲線の方程式になる。点Bと
点Sを通る曲線が有効フロンティアになる。すなわち、
σR2=(σS2+σB2)(A1-A1*)2+σR2* (1)
μR-μR*=A1μS+(1-A1)μB -{A1*μS+(1-A1*)μB}
=(A1-A1*)(μS-μB)より
A1-A1*=(μR-μR*)/(μS-μB)
σR2 - (μR-μR*) 2 = 1
σR2*(σS2+σB2) σR2*(μS-μB) 2
この曲線は、図4.11に描いている。危険回避者の最適ポートフォリオは、円の期待効用
曲線との接点になる。
テキストでは、数値例で、双曲線の方程式を求めている。
次に、投資家が貨幣、債券、株式の3種類のポートフォリオを選択する場合を考える。
3資産の場合、安全資産があれば、安全資産と危険資産の分離定理が成立し、第10回目と
同様に、有効フロンティアを直線にできる。
貨幣、株式と債券のポートフォリオの収益率をRとする。3資産に投資した割合を、
それぞれ、A1、A2、A3≧0とする。A1+A2+A3=1である。貨幣を安全資産とすると、
危険資産である債券と株式の最小分散は、貨幣の保有割合に影響されないという
「安全資産と危険資産の分離定理」が成立する。
テキストp.29にしたがうと、貨幣、債券、株式の3種類のポートフォリオの収益率Rは
R=A2S+A3B=(1-A1){αS+(1-α)B}、ここで、α=A2/(A1+A2)とおく。
その平均と分散は
μR=(1-A1){αμS +(1-α) μB}、
σR2=(1-A1) 2 E[Rα(S-μS )+(1-α)(B-μB)]2
=(1-A1) 2{(σS2+σB2) α2-2σB 2α+σB2}
A1とαが変数分離されているため、分散を最小化するとき、危険資産間の割合αを決定し、
危険資産だけの有効ポートフォリオの軌跡が描ける。
次に、危険資産有効ポートフォリオ上の点Aをとるとき、原点と点Aを通る直線0Aが
有効フロンティアになる。
μA=αμS +(1-α) μB、σA2=(σS2+σB2) α2-2σB 2α+σB2とおく。
μR=(1-A1) μA、σR2=(1-A1) 2σA2より、原点と点Aを通る直線は、
μR=(μA/σA)σR と表せる。
危険資産有効ポートフォリオ双曲線と点Aを通る直線0Aは、2点で交点をもつが、
直線の傾きが上がるにつれ、2点は直線と双曲線の接点Mに達する。接点Mにおいて、αは
一意に決まり、A1も一意に決まる。投資家は、直線0M上で、期待効用曲線と接する点を
最適ポートフォリオとする。
資産選択理論の実践
資産選択理論によって得られた利子率や資産の収益率とその標準偏差の選択によって、
資産交換が成立するのではなく投資家は選択した平均と標準偏差による割分を、2危険資産
の市場価格に変換し、完全競争市場で売買する。本ノートでは、安全資産を国債投資信託、
危険資産をバランス型投資信託と株式投資信託とする。A2を選択した場合、2/5が債券
であり、3/5が危険資産である。投資額を1万円とするとバランスに2/3、株式に1/3投資
する。結果、債券4,000円、バランス4,000円、株式2,000円投資する。基準価格をそれぞれ、
P1、P2、P3とする。実際は、市場では呼び値に当たるので、それぞれの銘柄に対して、価格に
対して、売り高と買い高の気配値が表示されるイメージである。債券は、口数は4,000/P1(口)
と計算される。市場で、営業日、価格は変動するから、この割合で、1万円を毎月投資し続ける
と危険回避者としての平均・標準偏差の戦略設定通りになるか、再計算する必要がある。
資産選択理論を現実の投資信託市場において、応用する方法は、他にもあるであろうが、
資産選択理論は直接、応用できない。
まとめ
確定拠出企業年金の投資信託をこの理論を応用し、最適ポートフォリオを決定したい。実践
への利用として、その方法を示している。
資産選択理論を現実の資産市場において、平均・分散戦略による資産売買を実践することは、
解説書には、書いていない。
CAPM理論も、3資産最適化の応用であるが、平均と分散の平面で、M点で市場均衡が決まる
ように説明されている。実用主義的にCAPM理論が利用されているということではない。資産
市場において、参加者は様々な戦略をもち、期待収益を最大化するように、売買を繰り返して
いるので、その戦略で投資収益が獲得できなければ、戦略の失敗である。
危険回避者は、許容価格変動幅(標準偏差)のもとで、期待収益率を稼ぐことを戦略として
いる。その戦略のもとで投資信託を売買している点が、強調されることがない。経済学では、
生産者は利潤最大化、企業価値最大化が行動規範であるように、投資家は、資産選択理論を取る
ならば、許容価格変動幅(標準偏差)のもとで、期待収益率を稼ぐが行動規範である。
テキストのように、データを収集し、標本分布の平均と分散を計算し、3資産ポートフォリオを
求め、収益率から資産価格に変換すれば、実際、最適ポートフォリオの割合で、購入できる。
ただし、市場参加者は、資金力の豊富な機関投資家が、資産価格支配力を持つので、危険回避者
だけでなく、危険中立者および危険愛好者がいる。当然、価格変動は、大口投資家の予想価格
変動を織り込んでいるから、クーポンや配当より、capital gain or lossは、大幅に変動する。過去
のデータが有用な情報であるとは限らない。
今週(2019年6月24日~6月28日)のイベントと市場への影響度
25日米国で、第4弾の公聴会が終わる。第4弾は、中国からの全輸入品に関税がかかるので、
香港植民地時代の広州、開放経済下の深圳特区からの対米輸入品があるから、上海からよりは、
米国民になじみ深い商品も関税がかかる。中小零細企業が多いから、価格転嫁しないと利益が
ない。日本もかつて、米国向けの内職で、クリスマスツリーのデコレーションで、ビーズや星を
フェルトに縫い付けていた。中学生のころ、私も母の内職の手伝いをした。京都に下宿して、
そこのおばさんが戦争未亡人で、日中、針金に綿か糸を巻きつける内職をしていた。米国向けだ
そうだった。米国対中国貿易の歴史が変わる時代が来たようである。
28日から20か国の首脳会議があり、米国と中国の主の会議次第で、第4弾は発動される。それ
以上の強硬措置は、第4弾の効果がでるクリスマスセールまで、ないだろう。
米国の景気が減速し、FRBは、利下げし、米株式市場は、停滞する。
日本の株式市場は、第4弾については、日本から中国に移された商品ばかりなので、影響は
少ない。むしろ、5Gに対する企業投資が活発化する見込みがある。日本の地方にいると、
全国allチャンネルは、実現していないから、東京本社のほとんどは、全国広告はしていない。
住民は、地方では情報不足であり、地方企業も都市圏に販促はできない。日本は山がちで、
電波はさえぎられて届かない。光ケーブルで、全国ネットを作り、端末から、5Gを飛ばす
ことが考えられている。
今、金沢まで新幹線が通っているが、染色工場を訪問したとき、デザインは、衛星で受信する
と言っていた。衛星はデジタルで、ISDNがはやり始めた時で、これからはアナログから、
デジタルだろうと思ったが、電波法等の規制が強そうで、やれやれとため息が出た。
米国アクションのセガール主演の映画で、アフリカのある国に中国人のセールスマンが
通信システムを売り込む話がある。セールスマンは、中国国旗を掲げて、機器の修理に行く。
次に時代は「中国は5Gだ」と言っていた。実に、興味深い映画だった。日本の経営者は、
情報を隠す、ごまかすことは得意だが、事業に必要な情報を即時的に取り込むことは、苦手
のようだ。小田原評定的な、イギリス議会的な、決断と実行が3年4年かかるのは、
ざらみたいである。
第12回目 2019年7月1日
5.資産形成計画と運用・管理
・イベント分析の枠組み
・若年世代、壮年世代、老年世代の金融行動の目的
・制度金融の利用
これまで、第2章制度金融、第3章金融市場と金融商品の特性、評価方法、第4章で、
金融商品の選択と決定を学んできた。第5章では、それらの知識を応用して、具体的に、
計画を立て、資産を売買し、管理する方法を学ぶ。
資産形成計画は、開始年齢で、終了期間までの期間が大きく異なる。本ノートでは、
若年世代、壮年世代、老年世代の3世代を想定している。若年世代は、20歳~32歳、
壮年世代は、33歳~65歳、老年世代は66歳~85歳である。20歳は自己の責任において
金融取引ができる年齢である。
世代開始年齢と所得
33歳は、本文にある山川家のイベント表の開始年齢である。日本銀行の関連会社から、
毎年、最も廉価な家計簿が発行されている。山川家の生活設計プランが142ページに
2006年まで、掲載されていた。年功序列制度では、入社10年で、ミスをしなければ、
最初の係長という管理職になれる。しかし、1年間の評価で格下げになることもある。
33歳は、その年齢であると理解していた。後は、課長、部長で、それぞれ、5~10年で、
昇格する。これが年功序列制度の昇格波乗り3段階であり、その波ごとに、モデル賃金
カーブが上昇する。
2006年まで、日本銀行関連会社では、山川家を標準家計としていたのだが、資産形成
計画は、預貯金だけであり、先行きの物価上昇率は年1.0%、預金金利は、年0.2%、住宅
金利は年3%を想定してあった。しかし、2007年から、このページはなくなった。リーマン
・ショックもあり、日経は1万円を割り、預金金利は0.01%であり、貯蓄は現金を残すに
等しい。日本は、安倍政権の誕生から、日経は戻し、日銀の過剰緩和から、預金、債券は
低下したままであるが、米国は、FRBの利上げとともに、資産市場が正常化しだしている
ので、再び、山川家の資産形成計画は可能になっている。
最後に、65歳は、退職年齢であるが、山川さんは60歳退職であった。年金開始は65歳
だから、つなぎの5年間、働かないと退職金を食いつぶしてしまう。団塊世代から、この
空白期間が始まった。政府も退職者の雇用について、65歳定年は掛け声だけで、強制性が
ないので、だらだらと空白期間が続いている。地方都市では、中堅企業以上が、東京本社
になっている例が多く、山川さんのようなサラリーマンはそれほど多くはいない。
令和時代が始まり、昨年の山川さんは、現役のサラリーマンである。退職後の85歳まで、
資産形成計画を立てるのであるが、退職後の住宅と住む市によって、現在、社会保障の
サービスが行き届かない格差は、存在するだろう。現在、市の財政基盤が、潤沢であり、
社会保障制度の施設が完備し、医者も多く、介護の人材も十分あれば、問題ないが、
経済的活力が湯水のように湧き出し、市の財政基盤が潤沢でありつづけるかどうかは、
しっかり、考慮する必要がある。
若年世代20歳~32歳の金融行動の目的
33歳から64歳までは、壮年世代の目的、65歳から85歳までは、老年世代の目的で説明する。
それゆえ、若年世代の12年間は、仕事に習熟することと、家族をもつかどうかが主な目的に
なる。すなわち、この世代は、消費生活を充実するために貯蓄し、財形住宅貯蓄をする。
イベント分析の枠組み
演習 新入社員の場合をイベント分析の枠組みをテキストに例示している。消費生活の
イベントを7月、8月の旅行としている。8月の資金不足を普通預金から5千円引出し、8月
の預金は0円である。イベント表は、
イベント表
収入 /月 |
1804 |
1805 |
1806 |
1807 |
1808 |
1809 |
給与 |
200,000 |
200,000 |
200,000 |
200,000 |
200,000 |
200,000 |
ボーナス |
0 |
0 |
0 |
400,000 |
0 |
0 |
その他 |
0 |
0 |
0 |
0 |
5,000 |
0 |
収入合計 |
200,000 |
200,000 |
200,000 |
600,000 |
205,000 |
200,000 |
生活費 |
100,000 |
100,000 |
100,000 |
100,000 |
100,000 |
100,000 |
家賃 |
50,000 |
50,000 |
50,000 |
50,000 |
50,000 |
50,000 |
通信費 |
10,000 |
10,000 |
10,000 |
10,000 |
10,000 |
10,000 |
旅行費 |
0 |
0 |
0 |
20,000 |
20,000 |
0 |
その他 |
15000 |
15000 |
15000 |
15000 |
0 |
15000 |
支出合計 |
175,000 |
175,000 |
175,000 |
195,000 |
180,000 |
175,000 |
収支差額 |
25,000 |
25,000 |
25,000 |
405,000 |
25,000 |
25,000 |
貯蓄配分表
1804 |
1805 |
1806 |
1807 |
1808 |
1809 |
累積額 |
|
収支差額 |
25,000 |
25,000 |
25,000 |
405,000 |
25,000 |
25,000 |
520,000 |
iDeCo |
10,000 |
10,000 |
10,000 |
10,000 |
10,000 |
10,000 |
60,000 |
財形住宅 |
0 |
0 |
0 |
200,000 |
0 |
0 |
200,000 |
NISA |
10,000 |
10,000 |
10,000 |
10,000 |
10,000 |
10,000 |
60,000 |
普通預金 |
5,000 |
5,000 |
5,000 |
185,000 |
Δ5,000 |
5,000 |
200,000 |
投資額 |
25,000 |
25,000 |
25,000 |
405,000 |
15,000 |
25,000 |
520,000 |
新入社員は、12年間に、この表を延長する。iDeCo、財形住宅貯蓄、NISAの資産運用は、
ドル・コスト平均法なので、第4節で学んだように、選択する資産を変更し、期待収益率
と価格変動の偏差値を何十%許容するかを決めることになる。
まとめ
京都市は、伝統産業という零細企業や個人商店が多く、厚生年金ではなく、国民年金
だけの市民が多い。零細企業や個人商店、それらの従業員は、国民基礎年金だけであり、
老齢者の年金形態は、国民基礎年金家計が多いはずだ。京都市は、教育機関が多く、
社会主義、共産主義思想の支持者は多い。その理想では、完全雇用、国民皆年金、社会
保障制度の充実を謳う。右肩上がりの経済成長時代であれば、パイが大きくなるので、
分配率を固定しても、給料は上がった。土地神話があり、不動産価格も上昇した。
しかし、平成時代は、伝統産業の受難の時代であり、バブルの崩壊で、戦後高所得者が、
不動産価値の下落で、伝統産業の高額品を購入できなくなった。着物産業は衰退した。
茶道、華道、仏壇、神棚、床の間の和室文化は、崩壊した。京都市では、朝食はパンに
コーヒー、夕食はおばんざいのてんこ盛りとなり、会席型個人盛ではなくなった。日本
料理の形は、京都にあるのだが、これも受難の時代である。食器の数が減って、後片付け
が簡単になった。信楽焼、備前焼など芸術化を目指していたが、買い手がいない。輪島塗は、
会席型個人盛に合うように、漆器が生産されているのであるが、盛り合わせ時代では、
漆器を手入れして、収納する手がない。箸すら、手間暇かかっているので、駄箸のように、
食器乾燥機に入れられるか訊ねたら、目をむいて、「だめです」と言われた。
京都市の場合、京都大学を中心に、戦後の関西社会経済設計に対して、社会主義理念を、
経済発展より優位においてきた節がある。九州では、九州大学を中心に、マルクス主義
経済学が経済学の主流であり、東北地方は東北大学、北海道は北海道大学と、近代経済学は
負けていた。労使協調路線を労働者が選択しているとき、紛争時代までの学生は、マルクス
主義を選択していた。高度経済成長は1970年に終了し、緩やかな低成長時代が続き、
バブル後、関西経済は、関東経済に吸い寄せられ、長期衰退期に入ってしまった。
特に、京都市の経済発展は、高度成長時代がなく、江戸時代の町構造に延長し、周辺田畑
をつぶし、個人住宅地用に碁盤の目状を作って行った。これでは、株式会社の居場所がない。
しかたなく、医者、税理士、弁護士等の個人業主が、人間関係がない、面白くもない新興
住宅地に住んでいる。残念ながら、市民の大半に、現代日本の厚生年金、企業年金、健康
保険制度は立ち上がらなかったようだ。
株式会社のない、オール公務員の社会主義世界では、公共サービスは無料だが、京都市
地下鉄は、初乗りが210円である。理由は、路面電車を廃止し、京都市地下鉄はバブル期に
完成し、経済発展のない碁盤の目都市に、需要がなかった。建設費2兆円の債務は、永久に
返済できないだろうし、毎年の税収で、社会保障制度や施設を他都市並みに、充実させること
はできないだろう。地下鉄自体が、資本主義社会の活動のためにあるのである。愚痴を言って
もしょうがないが、近鉄、京阪に地下鉄、市バスを売却、富山市のように、東西、南北を電車
の環状線で、補完すれば、利便性、効率が増すかもしれない。しかし、公営にすると、京都市
公務員の賃金水準は、大勢を占める零細企業や個人商店の賃金水準より、上であるから、
赤字になる。
少子高齢社会に日本は入ってきたので、全国の自治体で、戦後の発展が、各自治体の努力に
もかかわらず、うまくいっていない場合も明らかになるだろう。山川さんが、どの地域に住ん
でも、ライフ・プランは、影響されないとはいえない。
私は、関西で学生、そして、教員をやってきて、関西経済を観察してきた結果、地方から
来た学生には、必ず、Uターンを進めた。奈良県、和歌山県、兵庫県でも同じだ。理由は、
サラリーマンの土地が狭い。交通網は燃費が高くつく。そこで、生涯所得の6千万円を住宅に
投資するのは、 地方都市の方が広く、安く手に入る。また、両親も帰ってくれることを願って
いると思っていた。ゼミ旅行で地方の上場企業を訪問すると、仕事はあると思うのだろう。
ただし、関西の企業活動は、しっかり勉強しなさいと言っていた。
今週(2019年7月1日~7月5日)のイベントと市場への影響度
大阪サミットにおいて、米中の首脳会談の結果、残りの商品に対する関税は、見送りに
なった。知的財産権等の遵守について、法制度を作ることを要求し、これからも、協議する
ことになった。今年のクリスマス・プレゼント商品に25%課税すると、ヨーロッパの
スウェーデンなみの消費税になり、零細商品なので、100%転嫁するだろう。トランプ大統領
の人気は落ちるにちがいない。大統領選挙モードで、露骨に、各国に取引を仕掛けているのが、
よくわかる。クリスマス商戦が終わるまで、米中戦争は、休戦だろう。世界景気の足を
引っ張りだした効果がでてきたので、米の輸出産業も悪化しているはずだ。
板門店での米朝韓首脳会談で、継続協議を確認し、今年後半は、対イラン取引に、力を入れる
ようだ。ペルシャ湾から、米海軍が撤退するのかもしれない。イランは、もともと、外国軍隊が、
ペルシャ湾にいることに反対しているから、イランの軍事力が大きくなると、米海軍もリスクが
大きくなってきた思っているのかもしれない。
第13回目 2019年7月16日
5.2 資産形成計画
・イベント分析の枠組み
・壮年世代、老年世代の金融行動の目的
・制度金融の利用
今回は、壮年世代、老年世代の金融行動の目的を設定し、山川氏と高原氏それぞれの場合、
イベント表の仮定と推計を例示する。収支差額を、制度金融を利用した貯蓄配分表に、運用
結果を評価する貸借対照表を作成した。
2)壮年世代33歳~65歳の金融行動の目的
壮年世代33歳から65歳までの金融行動の目的を説明する。33歳から48歳まで2人子供の
教育資金と36才まで住宅取得の頭金・建設資金が貯蓄の主な目的になる。前者は、子供の
入学時に順次、取り崩す。2000年に入って、日本経済は、金融システムの再編があり、大手
金融機関、中小金融機関は統合され、企業も再編された。そのため、非正規雇用が増加し、
正社員の賃金カーブも40歳以上ではフラット化してきた。
大学に、キャリア教育が導入され、企業の採用後、社員教育をしてきたコストを大学教育に
求めるようになってきたと理解していた。まさに、学生は、正真正味の即戦力となる厳選採用
だった。壮年世代は、年収のダウンで教育資金どころではなく、大学進学の塾費用までの家庭も
多かったのではなかろうか。民主党政権が誕生した背景は、教育費の負担ができず、学生は、
奨学金で授業料を支払い、生活費はアルバイトだった。現在、教育資金は、貯蓄できるほど、
30歳代の所得は、回復しているとも思えない。
住宅取得の頭金・建設資金は、主要な貯蓄目的になるが、その目標額と取得時期は、各家庭
で目標が違うであろう。住宅ローンの返済に入った世代では、余分の貯蓄差額9は、老後の安心
になる。しかし、中小企業では、高齢少子時代で、需要が減少、市場が縮小し、廃業していく
事業継承リスクが目立ち始めた昨今、退職金が出せない企業もあるという。したがって、転職
すれば、退職金は振出しに戻るので、あてにできず、自己積立にできる確定拠出年金iDeCoに
加入するのが、老後の安心になる。
イベント表の仮定と推計
収入の推計
モデル賃金カーブを次のように想定する。33才で、手取り年収500万円とする。42才まで、
年10万円増加する。43才から55才まで年5万円増加する。56才から。60才定年まで500万円
であり、61才から65才まで350万円で再雇用される。物価上昇率は想定しない。モデル賃金から、
計算したわけではないが、66才から、企業年金70万円と基礎年金+厚生年金160万円を受給する。
68才から。妻の基礎年金78万円が支給される。
基礎年金の受取額は、厚生労働省のHPから毎年分かる。厚生年金は、モデル賃金カーブから
シミュレーションするが、簡単ではない。賞与からも保険料を支払うようになっている。各業界
で各年齢の所得を計算したサイトがあるので、モデル賃金カーブを作成、利用する。
支出の推計
消費支出
山川家では、現役時代は、収入の6割を消費支出にあてる。61才から65才まで収入の8割、66才、
67才は、年金を全額消費する。夫婦で基礎年金を受給する68才から年金の9割を消費する。
その他
収支差額は、その他とする。山川家のローン返済前は、教育資金と住宅準備金の貯蓄が主な
使い道であるが、ローン返済が始まると、貯蓄と返済が使い道になる。テキストには、資金運用を
しない年間教育資金を計算している。住宅取得計画は、住宅を選定する時間を多くとり、山川家
では36歳から60歳まで、年3%、25年ローンを元利均等払いで組んでいる。山川家イベント表は
2018年資産形成論を参照のこと。
山川家イベント表
年齢 33 35 36 44 46 48 56 60 61 65 66 68
30 32
33 41 43 45 53 57 58 62
63 65
8 21
5 20
供給増になる現象が目立ち始めている。親子2世帯同居ではなく、子供は賃貸で、親は住宅地に
住んでいる過渡期の状況である。親の住宅は、手放す例がぽつぽつ、新興地で見られるし、地方でも
見られ、建て替えも増加している。高齢・少子時代から、本格的な人口減少時代に、入っている
ので、町を観察していると、新規開業しても、続かず、廃業してしまう。地元農家資本の店も
ほとんど廃業した。客がいなくなっているのだ。住宅取得者は住宅用地の超過供給の状況があるので、
宅地であれば、既成の住宅地は、候補の一つになる。
さらに、百年に一度、二百年に一度、五百年に一度とか、災害の強度が大きくなっている昨今、
地域災害史とハザードマップは、しっかり、検討することが大事である。地球温暖化によって、
その強度が、二百年の一度レベルに上昇している。その回数は、毎年起きてもおかしくない。もし、
災害により住宅が被害にあうと、保険でカバーできなければ、二重ローンは、老後の安心をつぎ込む
ことになる。また、保険会社も、想定できる災害の種類と実際のデータ増加に伴い、住宅の被災確率を
計算しているから、新築住宅に保険をかけると、災害確率の高い住宅地は、保険料を高くするだろう。
貯蓄配分表
教育資金計画
16年間目標積立額700万円、毎年の積立額43.75万円
住宅取得計画
33歳期首財形住宅貯蓄350万円、残り3年間頭金年間50万円、
25年間借入額2,500万円、年間返済額143.6円元利均等払い(利息43.6万円、元金100万円)とする。
老後の安心
残額を老後の安心とする。
以下の貯蓄配分表は、イベント表の抜粋である。期末貸借対照表は、33歳から48歳までである。
貯蓄配分表 期末貸借対照表
年齢 教育資金 差額
年齢 財形 積立 預金
固定資産 負債 純資産
33 43.75 106.25 33 400 43.75 106.25 550
35 114.25 34 450 87.5
216.5 754
36 24.65 35 500 131.25
330.75 962
48 43.75 62.65 36
175 355.4
3000 2500 1030.4
49 118.4 37
218.75 384.05 3000 2400
1202.8
55 120.4 38
262.5 416.7
3000 2300 1379.2
56 56.4 39
306.25 453.35 3000 2200
1559.6
60 56.4 40
350 494
3000 2100
1744
61 70 41 393.75
538.65 3000 2000
1932.4
62 70 42 437.5 587.3
3000 1900 2124.9
65 70 43 481.25 639.95 3000 1800
2321.2
66 0 44
525 694.6
3000 1700 2519.6
67 0 45
568.75 751.25 3000 1600
2720
68 30 46
612.25 809.9
3000 1500 2922.15
47 656.25 870.55 3000 1400
3126.8
48 699.5 933.2
3000 1300 3332.7
運用計画と非課税制度
第2章の非課税制度を運用計画に適用すると次のようになる。
1子の教育費 ジュニアNISA(18歳まで)子1名年80万円
(400万円)
2住宅資産形成 財形持家融資制度低利融資 (財形住宅貯蓄550万円)
3老後の安心 財形年金貯蓄元利合計550万円まで、非課税 550万円
NISA5年間1名年120万円まで非課税 合計1,200万円
つみたてNISA1名年40万円60歳まで非課税
夫婦で(20年間拠出額1600万円)
1
山川家イベント表から,毎年,教育資金を43.75万円,16年間,貯蓄する.
教育資金は,ジュニアNISAが,最も適している.
2
住宅ローンは,頭金が3年残っているので,その間,住宅の選択に入り,36才
から,住宅ローンを開始し,25年間返済し,60才で返済を終える.
3 収支差額が毎年発生するが,その総額は,非課税枠内に入る.まず,老後の
安心のために,iDeCo,残りは,つみたてNISAにする.
3)老年世代65歳~85歳の金融行動の目的
老年世代65歳から85歳までの金融行動の目的を説明する。老年世代になると、
公的年金を受給できるが、公的保険を支払う義務が生じる。公的年金から公的保険
を天引きする。生活に不足する分は、資産形成と退職金から、取り崩すことになる。
資産形成と退職金は、目減りしないように、制度枠を利用しつつ、運用を続ける
ことになる。山川氏と代わって、退職した高原氏のイベント表を作成する。
イベント表の仮定と推計枠組み
公的年金および厚生年金は、算出方法が公開されているので、正確であるが、
将来予測はできない。現在給付高をそのまま使う。企業年金も拠出額は、算出可能
だが、運用額は、資産管理会社の通知で分かる。老後の安心も、銀行・証券会社で
拠出額と運用額が分かる。
収入の推計
公的年金(-控除)公的保険(国保,介護)=公的年金収入
実例 公的年金収入=基礎年金(779,300円×2)-公的保険(国保270,309円
総所得200万円2人簡易計算,介護126,720円第8段階)=1,161,571
厚生年金(779,300円基礎年金と同額とする)
年金手取り額1,940,871円=公的年金収入+厚生年金=1,161,571円+779,300円
企業年金(確定拠出年金):23歳から60歳まで、拠出月数=12カ月×38年=
456カ月、企業拠出総額=2万円×456=912万円、企業年金(確定拠出年金)運用額
=拠出総額×1.2倍=912万円×1.2=1094.4万円
老後の安心拠出総額=2,285万円 運用額(平均2%)=2,285万円×1.02=2330.7万円
退職時資産:金融資産=企業年金1094.4万円(退職金に相当)+自己資産2330.7万円
=3425.1万円
支出の推計
消費支出
高原氏は、平均寿命85歳で終わるように、見込んでいるから、支出を年270万円
とすると、2,700,000-1,940,871=759,129 となり、年約76万円不足する。高原氏
の資産は、3425.1万円÷20=171.255万円であり、十分、賄える。
高原家イベント表
年齢 66 67 68 69 70 71 72 73
85
収入 270 270 270 270
年金 116 116 194 194
取り崩し 154 154 76 76
支出 270 270 270 270
期首貸借対照表
年齢 資産 現預金 投資信託 固定資産 負債 純資産
66
3425.1 1500 0 4925.1
運用計画
金融資産取り崩しで、年間76万円取り崩すので、その額を年金化する方が、運用の
わずらわしさから、開放されるだろう。この問題は、次回、以降で、取り扱う。実物
資産である自宅については、その資産価値は、日本の住宅では、通常、建物は耐用年数
30年で、0になる。個人住宅では、減価償却引当金を積み立てていないためそうなる。
固定資産の内、建物の価値は0円である。退職後、20年間、さらに、住むわけである
から、リフォームが必要になるかもしれない。
非課税制度利用
第2章の非課税制度を運用計画に適用すると次のようになる。
高原家イベント表から、NISAが、最も適している。
NISA5年間1名年120万円まで非課税 合計1,200万円
収支差額が毎年発生するが、その総額は、非課税枠内に入る。
今週(2019年7月16日~7月19日)のイベントと市場への影響度
先週は、私がカナダへ海外研究旅行のため、休みました。
FRBのパウエル議長の議会証言で、利下げ含みの待機中であることが、米株式市場では
好感され、上昇しました。トランプ大統領は、対米交渉を継続し、中国からの全輸入品に
対する25%関税は、発動待機中としました。「クリスマス・セールまで、米国の消費需要
を押し下げることは、選挙のため、慎もう」ということのようです。FRBおよびトランプ
大統領ともに、米国の景気減速を意識して、金融政策(利下げ)、財政政策(租税)を
稼働させる用意をしている。
今週の予定では、15日中国GDP4~6月の発表、16日6月米小売り売上、6月鉱工業生産、
17日米地区連銀経済報告、6月米住宅着工件数18日7月米景況指数が発表され、米景気の
減速が生じているのか、判断できる材料が発表されます。先週、10日に議会証言があり、
これらの情報を踏まえての発言と推測されます。日本は、参議院選挙選挙中で、6月の貿易
統計が目を引きます。日本の株式市場では、外需要因が米中休戦で、変化なく、トランプ
政権の対イラン戦略へ集中し、原油価格上昇懸念に市場の関心が移りそうです。
第14回目 2019年7月22日
5.3ドルコスト平均法
・制度金融の利用枠のもとでのドルコスト平均法
・新入社員海原氏の場合
・山川氏の場合
・退職者高原氏の場合
制度金融の利用枠のもとでのドルコスト平均法
会社員の制度金融利用枠は、企業に制度がある場合、財形住宅、財形年金、確定拠出年金
DC、個人加入できるiDeCoの制度がある。個人貯蓄では、ジュニアNISA、つみたてNISA、
NISAの制度がある。
これまでの各節で、段階的に計算してきたイベント目標額を企業加入制度、個人加入制度
によって、利用枠を決める。新入社員は月別、山川家、退職者は年別で、貯蓄・投資額が
決まる。制度別は、拠出額がさらに決っている。実践では、月別の貯蓄・投資額を金融商品に
割り当てる。企業加入制度では、資産管理・運用会社が指定され、金融商品も指定されている。
個人加入制度では、任意に契約できるが、資産管理・運用会社を替えることは、コストがかかる。
したがって、これらの制度枠利用は、月別、資産管理・運用会社が決まっていることが前提
である。その上で、投資者は、その会社の提供する商品を選択することになる。資産選択理論を
利用すれば、自分の期待収益率とその分散の傾向を自覚し、提供商品リストから、傾向に適合
する割合が決まる。毎月、第11回目の実践の式を使い、市場で購入する。ただし、有効フロン
ティア計算のためのデータ取得は、月1回、月次データをデータ表に記録するだけでも、
根気がいる。
ドルコスト平均法:
ドルコスト平均法は、毎月、決まった商品を定額資金で購入する投資方法である。
10年以上の少額投資では、換金の心配がない。契約期間の満期が近づけば、一時金受け取りか
年金受け取りかを考慮すればよいだけである。10年以上の少額投資の基本戦略は、ドルコスト
平均法である。商品の選択は、変更は可能であるが、頻繁の変更はドルコスト平均法ではなくなる。
1)海原氏の場合
第12回目に戻ると、新入社員は、貯蓄配分表を作成した。企業加入制度は、および個人加入
制度は、例として、SBI証券とインターネット銀行を契約したとする。インターネット証券・
銀行の場合、スマホ取引が可能であり、売買の指示が即時的である。取引手数料も安い。
新入社員の場合、企業の拠出額は、月1万円とする。SBI証券のサイトにおいて、iDeCoの
商品リストを見る。投資信託受託証券は、すでに、分散投資になっているので、個人でさらに
資産選択をする必要はない。商品は、主に、日本債券、日本株式、外国債券、外国株式に分類
される。後は、それらのミックスである、バランス型になる。
2019年10月から、2020年3月までの投資戦略を考える。まず、日本債券は、マイナス金利政策が、
来年3月まで、維持される見込みである。外国債券は、先進国と新興国があるが、米国景気減速で
米国の利下げがある、新興国は為替リスクが減少する。英国のEU離脱とEUの景気減速で
金融政策は緩和を維持する。債券はグローバルかもしれない。
日本株式、外国株式が選択肢にある場合、グローバルの方が、国債投資分散になる。今年度
後半の株式投資信託は、欧米の金融緩和にもどる。世界の過剰流動性は、収縮しないので、株式
市場に流入する資金は増加する。したがって、株価は持ち直す。
ということで、この教室の始まる前、SBI証券のサイトにおいて、選んだのが、次の2本である。
選択に理由は、信託報酬率が1%以下、投資総額が多い、長期間の実績がある。
日興-DCインデックスバランス(株式60)
SBI-EXE-iグローバルREITファンド
基準価格データ
2019年1月~2019年6月まで,半年の基準価格データを毎月27日から記録する。
基準価格
1/27 2/27
3/27 4/26 5/27 6/27 信託報酬 トータルリターン
日興DC 20,949 21,582 21,683
21,884 21,291 21454 0.2052 +5.33%(6ヵ月)
SBI 13,557 14,170 14,535 14,576 14,415
14,092 0.3464 +11.65%(6ヵ月)
戦略長期投資で途中引き出しができない。ドルコスト平均法で、9月まで、同じ商品を買う。
SBIを買う。
口数の計算法
10,000(円)投資額:基準価格(円)=x(口数):10,000(口数)
x口数=(10,000(円)投資額÷基準価格)×10,000(口数)
SBI 10/27 7,387=10,000÷13,536×10,000
10/27 11/27 12/27 1/29 2/27 3/27 口数合計
SBI 13,536 13,665 13,816
13,498 12,544 12,202
口数 7,387 7,317 7,237 7,408 7,971 8,195 45,515
3月総評価額=口数合計÷10,000×基準価格
=45,515÷10,000×3月末基準価格(12,202円)
=4.5515×12,202円=55,537円(評価損4,463円)
2019年10月以降の戦略
2019年10月~2020年3月までの戦略は、4カ月の投資評価をすると、4万円の投資に対し、
評価益がでており、分配金も出ている。分配金は再投資することになっている。SBIは分配金が
なかった。35本から、さらに、1本追加する際、信託報酬率が1%以下、投資総額が多い、
長期間の実績に、分配金を考慮に入れる。
次に、個人の投資額は、月1万円である。iDeCoの例と同様に、半年ごと、ドルコスト平均法で、
月1万円6ヵ月、選んだ投資信託を変更しない。年2回、20万円を財形住宅貯金とする。ボーナス月、
7月および12月が投資選択の月である。半年後の結果を検討し、投資信託商品を検討する。財形住宅
貯蓄制度がなければ、つみたてNISAを選択する。制度設計では、株式投資をする投資家に対する
中長期投資である。NISA専用の商品リストがあるが、投資信託の収益率が高ければ、信託報酬率等
が高い。途中償還もある。リスト以外、株式自身も選択できる。
2)山川氏の場合
・企業加入制度は、企業の拠出額を2万円とする。標準月収が増加すれば、拠出額は増加する。
新入社員は月1万円としたよりは、商品選択は少なくとも2本可能である。
・子の教育費 ジュニアNISA(18歳まで)子1名年80万円
(400万円)
・収支差額が毎年発生するが、その総額は、非課税枠内に入る。まず、老後の安心のために、
iDeCo、残りは、つみたてNISAにする。
本教室では、投資信託リストの中で、信託報酬率が1%以下、投資総額が多い、長期間の実績、
分配金でしぼり、ドルコスト平均法を半年ごと、見直し、できれば、次の半年の国際資産市場を
展望し、次の半年の投資信託を維持するか、選択範囲内でスウィチすることを考えてきた。
平均・分散戦略をとるならば、2本の基準価格の5年以上のデータから、月次収益率のデータに
加工し、分散を計算する。その上で、2資産の有効フロンティアを求め、原点との接点Mを求める。
その上で、直線0Mを5等分し、選好点を決める。
海原氏と比較すると、投資資金が毎月とボーナスが大きい。すでに10年以上の投資経験がある。
累積金額も大きいので、リスクを回避する傾向がある。2019年7月における世界経済から、2020年
3月まで、見通しを立てると、株式下落リスクを回避、日興-DCインデックスバランスは株式40か
20を選択する。東京オリンピックもあり、ニッセイ-DCニッセイJ-REITインデックスファンドAにする。
3)高原氏の場合
高原氏の安心運用資金は、運用無しで、2,285万円である。上述のドルコスト平均法で、元本が減少
しない投資信託を半分以上、10年間、バランス型(株式20)とたとえばSBI-EXE-i先進国
債券ファンドの投資信託で運用する。残りは、10年間、元本維持型の定期預金か個人国債で、
取り崩し資金にする。
運用計画
金融資産取り崩しで、年間76万円取り崩すので、その額を年金化する方が、運用のわずらわしさから、
開放されるだろう。実物資産である自宅については、その資産価値は、日本の住宅では、通常、
耐用年数30年で、0になる。山川邸は、減価償却引当金を積み立てていないためそうなる。退職後、
20年間、さらに、住むわけであるから、リフォームが必要になるかもしれない。
今週(2019年7月22日~7月27日)のイベントと市場への影響度
先週は、米国の小売は予想より上昇、鉱工業、住宅、景気先行等は予想を下回りました。
中国のGDPは予想と結果は同じ、6.2でした。NYダウ工業株は15日終値27,359.16 ドル、19日
終値27,159.2ドルで、0.7%下落した。日経平均は16日終値21,535.25円、19日終値21,466.99円で、
0.3%下落した。
今週は、22日月曜日に参議院選挙結果が分かり、6月全国コンビニエンスストア売上高、
23日6月全国百貨店売上高、全国スーパー売上高によって、消費動向が、7月の月例経済報告で、
GDE国内総支出の政府判断が分かる。24日から、26日まで決算発表がある。電器・通信、
IT関連の業績が注目される。26日は4~6月期米GDPが発表され、米景気は減速している
のかが分かる。
米株式市場には、イラン対有志連合の動向以外、影響するイベントはない。26日の米GDPが
1.8と予想されているが、結果が上回る傾向が続いている。日本は、対韓国への半導体材料輸出規制で、
対韓貿易の減少、中国のスマホ関連製造に減産がでて、中国への部品が減産すると予想されている。
韓国が台湾と同様に、中国を組み立て工場として製品を米国等に出荷していたが、トランプの
関税政策と5G関連機材の不採用を打ち出しているのに対応して、韓国は台湾のシフトより、
敏速に動いていない。
韓国は、中国のユーラシア政策に同調し、自国製品を中国製品と同様に、売り込もうとして
いたから、トランプ氏にはしごを外されて、立ち往生しているのが現状だろう。私は、
アセアン諸国を2000年から特に、毎年、訪問してきたが、アセアン諸国でも韓国のビジネスマンは
目立っている。一連の日本排撃政策は、家電を中心に、韓国ブランドを定着化させることに、
官民挙げての宣伝の一貫である。
日本は、この20年間、「経済は人間関係だ」という誤った社会主義に毒された教育を受けた
ビジネスマンが、業績の悪いのは人のせいだという、わけのわからない取締役会が多く、
「人財切り仁左衛門」に悪役をお願いした電機業界等があったと思う。その結果、多くの産業で、
まごころこもった製品、途上国製品より品質が高い製品を手抜きして、韓国、中国製品の品質に
合わせて、価格競争に対応したのではないだろうか。これは、韓国家電業界の思うつぼで、多くの
家電シェアーを日本から奪うことに成功した。
韓国の5G対応スマホとファーウエイのスマホの、欧米5G対応も製造しなければ、輸出できる国は
限定される。家電もIoT化するから、5Gの互換性がなければ、同じことになる。韓国経済は、
輸出依存度が極めて高いので、トランプ・ショック、半導体材料規制で、GDP減少になるだろう。
日本経済への影響は、韓国と取引のある業界では、出てくるだろうが、長期的には、欧米5G対応、
IoT家電によって、失われたシェアーを取り戻せるかもしれない。しかし、中国、韓国、アメリカと
覇権的志向が国是にまで、高めているのと比較すると、日本の製造業は、世界一という覇気もなく、
世界需要に対する自社の供給力という覇権戦略もないから、人口減の日本で消滅するしかない。
興味深い週となる。
第15回目 2019年7月29日
5.4リバランス法
・ドルコスト平均法を半年、継続中、何をすべきか。
・次の半年の変動要因を、予想する。
・リバランス法
・本教室のまとめ
金融商品は、例として、SBI証券の[iDeCo]の欄をクリック、次に[運用商品一覧]を
クリックすると各投資信託が表示される。[つみたてNISA]の欄をクリック、次に[つみたてNISA
の取扱商品]をクリックすると各投資信託が表示される。
ドルコスト平均法継続中、何をすべきか
契約証券会社サイトにおいて、若年世代および壮年世代は、毎月の拠出額は、少額定額設定である。
投資戦略は、ドルコスト平均法で購入し、iDeCoでは、60歳まで、引出はできない。ある商品の全額を
売却、他の商品にスイッチする戦略は、売却に手数料がかかり、購入も手数料がかかるので、
ドルコスト平均法に反する。
個人貯蓄の制度利用の場合は、NISAか、またはつみたてNISAを契約する。投資信託の場合、株式の
割合が高くても、平均分散化されているので、基準価格の変動は、激しくない。NISAは売却益の非課税
が5年以内なので、目標上昇率が15%であれば、目標上昇率を達成すれば、売却し、利益を確定する。
その後、再購入するか、別の商品を購入するのが、非課税制度利用の方法である。
購入した商品は、それぞれ、証券会社のサイトに登録できる。実際に、毎月、ドルコスト平均法で
購入していれば、登録リストに、投資信託の評価額が表示される。個別の投資信託の日々の変動も見る
ことができる。
次の半年の変動要因を予想
若年世代および壮年世代は、所属する業界に対する景気,政策,海外の景気,各国の政策等の変動は、
毎日の仕事に反映されているはずである。変動要因が変化すると、仕事量が変化する。それは、夏、
冬のボーナスに成果として、反映されるので、まったく無関心な勤労者はいない。ゆえに、半年ごと、
その間の成果と、次期の予想は、おぼろげながらでも、商品を変更、売却、新規購入の判断は、立て
なくてはならない。
選択した商品に影響する、景気,政策,海外の景気,政策等の変動要因の重要度を考える。今年度は、
日本経済新聞の日曜版「今週の市場」において、今週の予定を検討し、金融市場への影響を推論した。
経済指標の発表の場合、マネックス証券の「投資情報・レポート一覧」から「経済指標カレンダー」を
クリック、さらに、予想・結果をクリックすると時系列が表示される。予想より結果が下回ると
失望売りで市場は反応する。
商品リスト 変動要因
海外
債券 日銀の政策会合 日銀短観 米国準備制度理事会 EU中央銀行
消費者物価
為替レート 消費者物価指数 失業率
株式 政府予算 政策の変更 政府予算
政策の変更
四半期 GDP 四半期 GDP
リート 長期金利 都市の地価発表 長期金利 都市の地価発表
バランス 株式 30 50 70 の構成要素に対して、上記の変動要因按分
インデックス 債券の構成要素、株式の構成要素に対して、上記の変動要因
ETF 債券の構成要素、株式の構成要素に対して、上記の変動要因
変動要因の発表は、各証券会社の HP に、スケジュールが公表されている。重大発表は、情報が必ず
漏れ伝わってくるので、市場の商品は、発表前に、反応し、価格が上昇するか、下落してくる。変動許容
範囲上下 20%以内ならば、再び、平均回帰する見込みが強い。20%を超えると、短期で回帰するのは、
無理がある。
著しく運用成績が変化すると、選択した資産構成比率に戻すために、成績のよい商品の一部を売却し、
他の商品に再配分し、固定比率を回復することをリバランスという。ドルコスト平均法で作成した場合、
売却、スイッチはコストが高い。購入を中断し、別の商品を購入する。
本講義では、投資家は、各商品の平均収益率だけでなく、リスクを考慮する。平均分散の有効フロンティア
と確定型証券の収益率からの直線との交点で、リスク資産の合成資産が決まる。投資家がその直線の最適点を
選択するというのが、教科書的な投資戦略である。その戦略にしたがえば、バランス型投資信託を選択する
ことになる。そして、時系列的には、ドルコスト平均法で、定額購入を半年継続する。リバランスの状況が
生じるかは、バランス型投資信託以外の投資信託を選択している場合になる。本講義では、2本あれば、
変動が少ない方を買い続ける。半年たって、見直すと、それがリバランスに自動的になるのではないか。
[iDeCo]の[運用商品一覧]および[つみたてNISA]の[つみたてNISAの取扱商品]の範囲の中で、
どのように運用管理すると、投資家の満足する成果が得られるのか。
平均分散戦略とドルコスト平均法の関係と、さらにリバランス法との関係は、理論的に考える問題がある。
今週(2019年7月29日~8月2日)のイベントと市場への影響度
夏季休暇前で、金融政策の重要決定がある月である。30日31日は米連邦公開市場委員会で0.25%の利下げ
がある。日本銀行の政策委員会の金融政策決定会合が30日まであり、黒田総裁の会見が30日にある。
日本銀行の場合は、来年の3月まで、マイナス金利政策の変更はない。10月からの2%消費税増税が、
3%増税で1~2%消費者物価指数の上昇効果があったが、かつて、3%から5%に増税されたときより、
1%より少ない効果でしかないだろう。日米の貿易不均衡是正交渉もあり、米国農産物や海外物価の
デフレ傾向により、日本銀行の政策目標2%は未達に終わる。日本の金融政策は、物価には依存しない
という経験則が成立しているようだ。その結果、金利政策の直接効果がある間接金融システムが収縮して、
将来的に、金利政策さえも無意味になるのではなかろうか。すなわち、今回の消費税対策で、ペイ決済を
推奨しているから、70歳の高齢者まで、ペイ決済をし出すと、銀行の普通預金、当座預金は、減少、
金利ゼロかプレミアムが付き、日本銀行券すら、必要なくなることが発展していく。
つまり、通貨は「自由鋳造」になる。
安倍政権は東京オリンピックを花道に、連続3期の任期を終わる。任期中、国内は災害が多く、
原発事故の廃炉計画も進まず、東北復興税の未消化もあり、廃炉計画に未消化予算を転用し、力強く、
廃炉計画を前進させるわけもない。三陸沿岸と福島の放射能汚染地域では、離れた住民がもどってくる条件を
整備しても、高齢者が多くなり、養殖業以外の生業を一から起業するのは困難であろう。ただし、三陸沿岸の
高速道が福島から、青森まで、つながるようで、東北道から、各沿岸へ、2時間かかる国道があるだけだった
よりは、東北沿岸道の建設は、将来の三陸海岸の特殊性を軽減する役割を果たしそうである。
安倍首相は海外出張に絶え間なく出かけ、各国首脳を招いた。民主党が外交機能を果たしていなかったが、
安倍政権は中国との領海、領空問題、北方領土、拉致問題、慰安婦・徴用工、沖縄の辺野古基地、
対米貿易交渉、最近では、米の対イラン経済制裁の仲介などをしたが、日本の商船が攻撃され、沈黙している。
ただし、米国抜きで、TPPは発効し、中韓はずしの多国間貿易協定であったが、米国も抜けてしまった。
トランプ外交はTPPよりは、直接、中国貿易に介入することになってしまった。秋から、対米貿易交渉が
始まるが、米国との議論はTPP交渉で尽くされているから、交渉でバランスを取りやすいのではなかろうか。
本教室のまとめ
資産形成論は、昨年度に引き続き、考え残した課題を整理した。15回の説明で、平均分散法を、ドルコスト
平均法にもちいて、2つの制度利用の投資する戦略を考えた。『資産形成論2019年』は、このノートを反映して
修正中である。9月までにはアップできる。
商品は、投資信託から選ぶので、もともと、多数商品をなんらかの平均分散で、投資割合を決めているから、
その上で、平均分散にしたがって、投資信託の割合を決めるのは、二重計算のような気がする。また、投資信託
の平均分散のデータを集計表に収集するのも、一般の人にはわずらわしい。
貯蓄は、0の数で、収益額が大きくなる。1万円と100万円の1%はそれぞれ、100円と1万円である。
千円はゴミだが、1万円は、資金である。損益も0の数で、大きくなるので、その場合、平均分散のデータを
日々収集するのも、気合が違うと思うし、リバランス法も、投資家の満足度に回帰させるのに、効果がある。
9月から、本ページにおいて、『金融論2019年』を開講し、トランプ大統領の貿易戦争効果と、世界経済の
成長軌道への回帰があるかどうか、「今週の市場動向」の観察とともに、考察してみたい。開放マクロ貨幣経済
モデルを『金融論2018年』には書いているが、説明していない。教科書のマンデル・フレミング・モデルに、
為替市場を陽表的にあらわし、金融政策を論じる。
この開放マクロ貨幣経済モデルは、短期・中期・長期排出量推計モデルの設定に応用する。理論的に、経済主体
の経済活動の方向性が説明できるようにしたい。
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