資産形成論説明ノート2024


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                7/31 第14回240527SBIGREIT平均収益率を訂正した。
1回目 202448

1 はじめに

2023年に引き続き、資産形成教室を48日から、715日まで15回の予定で、『資産形成論 2024年テキスト』を解説するために、このノートを掲載します。テキストは、昨年度のテキストに、2023年説明ノートを反映して、改訂中です。例年、6月になりますが完成したら、ホームページに掲載します。それまで、『資産形成論 2023年テキスト』を参考にしてください。

 就職すると、まず、公的保険制度に加入し、失業、労働災害、疾病、介護等の保険事象が、身にふりかかって来た時の備えをします。同時に、生涯にわたる資産形成は、公的年金制度および財形制度を利用しつつ、毎月の給与および夏冬2期の賞与を、天引きして、利息、配当、収益などが非課税になる資産に投資することが、基本です。公的年金制度(国民基礎年金+厚生年金)、財形制度(住宅財形550万円+年金財形550万円)、企業年金(企業型年金、個人型確定拠出年金iDeCo)および新NISA制度(家族一人あたり終身1800万円)の投資可能資産総額は、平均的勤労者が、可処分所得から、毎月の消費支出を引いた、貯蓄額をもとに、定年まで、各種資産に投資する合計額を超えています。

いわゆる資産家は、制度的非課税枠を超える自己資産を所有、経済・金融知識があり、自分で、資産運用でき、資産収益を平均以上、稼ぐことができる人です。自己資産が多いが、資産運用に専念できない人は、大口資産投資専門業者に資産を委ねることができます。

2024年の資産形成教室の方針

『資産形成論 2023年テキスト』第2において、公的保険制度、年金制度および財形制度の概略を頭に入れることを目的としています。20241月から、新NISA制度がはじまり、特に、株式投資を主体とする投信信託および個別株への投資額が、毎年、つみたて枠NISA120万円、成長枠に240万円を上限として投資でき、生涯上限1800万円まで投資信託および上場株式に投資できるようになりました。夫婦では、3600万円まで、非課税になります。

3では、年金制度、財形制度および新NISA制度を用いて、資産形成する資産の特徴と、それらの資産を市場で購入する場合、そのような制限があるかを学びます。また、売買する資産の価格は、計算方法が違っている場合があります。その評価方法を実例で計算します。先物商品では、予想収益率およびその標準偏差が価格の計算に入ります。

4では、個人が、一生涯にわたるライフ・サイクル期間において、定期収入を消費に支出し、過不足を自己金融あるいは、金融機関から融資を受け、貯蓄、返済をくりかえし、退職後の年金生活に十分な資産形成をすることを、計算で求めます。ライフ・サイクルの途中では、定期収入を超える出費があるイベントがあります。たとえば、子供の進学時の入学金・授業料等です。また、車や住宅を購入するばあいです。その過不足を自己金融すれば資産の取り崩し、あるいは、金融機関から融資を受け、返済します。退職すれば、退職金と年金および老後の蓄えで、残りの生涯を過ごすことになります。
 そのようなイベントに対応して、定期収入から天引き貯蓄される額を、財形制度(住宅財形550万円+年金財形550万円)、企業年金(企業型年金、個人型確定拠出年金iDeCo)および新NISA制度(家族一人1800万円)に、配分して、各イベントに備える資産形成は、どのように、決めるとよいかを次のように理論的に求めます。

 経済学の金融論では、家計は、1期間に稼いだ所得と繰越貨幣量をもとに、予算制約式を立て、その中で、効用関数を最大にする消費支出と次期繰越貨幣量を求めます。この計画期間を終身までのばすと、ライフ・サイクル理論になります。例えば、80歳まで、計画することができます。

① 貨幣一時的一般均衡論を確実性下2期間モデルで、住宅ローンの場合を説明する

ライフ・サイクル理論の応用は、1期間に稼いだ所得と銀行からの借入金をもとに、消費支出を決めて、次期から、返済期間ほど、返済金を決めることができます。

② 資産選択理論を3資産モデルで説明し、最適ポートフォリオに従った、資産売買を説明する

資産形成論では、次期繰越貨幣量と前期の投資収益を、3資産、預金、国債、株式に、平均収益率と、リスクの指標である平均収益率の標準偏差で作られる有効フロンティアから、期待効用関数が最大となる、資産構成(ポートフリオ)を選択します。

③ 貨幣一時的一般均衡論を応用して、不確実性下債券・株式の現物・先物市場均衡論を説明する

 ①では、将来が確実性下の多期間一般均衡理論でした。②では、不確実性下にある資産市場で、3資産の投資割合を決定しました。③において、不確実性下にある2期間モデルで、前期保有の3資産と今期繰り越し貨幣をもとに、期待効用を最大にするように、今期、資産需要を決めます。その際、期間2では、資産の先物市場が開かれているとします。3資産の先物契約量が決定されます。

④資産先物理論とオプション理論の関係を説明し、オプション市場の使い方を考える

 ③で契約した資産の先物市場価格をもとに、期間2において、いかなる価格が成立しても、資産価値が変化しないように、オプション保険料を、今期支払う、または、受け取るオプション理論を説明します。

 5では、若年世代、壮年世代、老年世代の3世代のライフイベントを想定し、第4章の理論・方法にもとづく資産形成計画、運用・管理を考えます。運用管理については、運用は、天引きの定額拠出を原則としていますから、そのような運用法は、商品を固定し、定額で購入するドルコスト平均法が、推奨されます。しかし、運用期間が6カ月を越えると、複数以上の商品では、経済・金融変動で、収益率の平均値やその標準偏差が、予定の幅を外れることが生じます。そのときは、当該商品の購入を止め、範囲内の商品を購入するリバランス法があります。

  新卒、海原氏を例にとると、海原氏は、新卒で、入社後、10年間のイベント表を作成する。イベントは、仕事を習熟すること、婚活をすることである。企業キャリアアップ制度、厚労省キャリアアップ制度を利用、自己研鑽を心がけ、年収を少なくとも年12万円昇給させる。入社10年間で、この最低限の昇給制度がない企業は、大学卒を必要としない業種である。

2000年の米国IT不況、2003年の金融再編で、毎年の就職活動は、内定率が下がり、超氷河期になった。2008年リーマン・ショックで、米国は再び、金融恐慌に陥り、欧州も南欧を中心に、国債価格が下落し、不況に入った。その間、貿易が縮小、日本経済の停滞は継続した。大手企業は、新入社員の選好を絞り、速戦のある学生を採用するので、大学4年間で、入社前職業訓練をするように、4年間段階的に、大学キャリア教育カリキュラムで、自己研鑽の方法を身につけさせようになった。現在も、そのカリキュラムは、全国の大学で、実施されているはずである。

新卒社員海原氏は、入社した企業で研修をし、10年間のライフイベントに、キャリアアップの社内外、自己研修プログラムの時間を取り、各種資格の一つをとって、有資格者の昇給を手にする。その費用は、入社3年から、厚労省、当該企業の助成金を得られる。私のゼミでは、FP3級、宅地建物取引主任者、簿記3級受験を勧め、ゼミでも、過去問を解いていた。2000年から、大卒の就職事情が悪化していたため、就職指導もするようになったのである。就職後も、昇給には、資格があると、職種の範囲が増えるので、資格試験問題の解き方は、身に着けた方がよい。その自己負担金と、時間を定期的にさかなければならない。

消費支出は、年収の8割である。消費生活を充実しないと、自己研鑽費、婚活費は消費支出に含まれる。年2回のボーナスで、実物資産形成として、住宅頭金500万円を貯蓄する。収支差額が出るが、これを金融資産形成に使う。テキストでは、海原氏のイベント表にもとづく期末貸借対照表を作成しているが、その運用益を反映していない。本教室では、この運用益が出る方法を学ぶ。

 最後に、実際の投資は、商品を固定し、定額で購入するドルコスト平均法をとり、半年以上1年で、その間の経済・金融変動で、収益率の平均値やその標準偏差が、予定の幅を外れることが生じます。そのときは、当該商品の購入を止め、範囲内の商品を購入するリバランス法をとります。したがって、この投資方法は、経済学でいう動学的な経済・金融情勢に判断に基づいて、動学的な方法であることが分かります。

 資産形成計画、運用・管理には、政策、景気等の変動を予想することが重要な視点であるので、2024年、911日から1218日まで15回の予定で、財政・金融政策とマクロ金融経済について、『金融論2023年テキスト』を解説します。

 経済政策について

コロナ禍において、日本政府の長期政策方針が転換されました。

1)地球温暖化対策には、各国経済が、持続して、成長を続けながら、温暖化ガス排出ゼロの経済・社会を実現できるかどうかが問題であり、そのための技術革新の方向付けをし、投資しつつ、経済・社会を誘導しなければなりません。政府は、2050年実質ゼロの目標を取っています。実際に、政府は、ウクライナ戦争を機に、実質ゼロの目標を取り入れた、エネルギー源の多様性に向かった行動計画をしている。

2)実質ゼロ目標年次計画にしたがう、国際技術革新のための投資計画、中国の一帯一路世界戦略に対抗して、自由開放貿易圏防衛協力計画が、新たに策定され、民生用車両、航空機、船舶、陸上軍車両、軍艦船、軍用機、ミサイルのCO2排出ゼロ化のため、新燃料、新型エンジン装備によって、輸送CO2排出ゼロ化を実現する方向性が出てきました。

3)デジタル庁の設置により、経済活動および社会活動によって、送受信される情報量が多い情報社会が、日本の仮想情報社会で、実現する方向性で、政府が活動するようになりました。世界の情報社会に、接続され、情報の送受信が盛んになります。

4)中国の半導体戦略に対抗して、米欧日台韓の半導体開発が、自前主義に移行しました。日本の半導体研究開発は、全分野にわたって、日本で生産されるわけではなく、得意な分野だけ、日本で生産していました。政府は、開発促進策をとり、熊本県に、台湾企業の工場を誘致しました。半導体不足で、家電、情報機器、自動車の製造に1年以上の遅れが出て、輸出減、原油・LNGインフレの輸入増で、日本独自の金融緩和の世界金利差が5%開き、円安になり、日本のGDPを下げました。今後、半導体関連企業は、国策支援をバックに、半導体全分野で、自前開発に投資をするかもしれません。

 岸田政権は、以上の基本方針に従いつつ、長期政策方針にもとづき、日本経済を成長路線に乗せて、成長成果を労使双方が分配を享受でき、税制・投資資金支援をうけられる経済政策を目指しているように見えます。

金融政策について

日本経済は、大企業の寡占価格が市場を支配していて、物価はほとんど動きません。デフレではありません。ところが、ウクライナ戦争突入前後から、エネルギー価格、食料品価格が5%以上上がり続け、黒田日銀は、賃金率上昇を伴わないということで、少なくとも、金融緩和政策は、維持しました。

その間、新規国債10年債利回りが2022410.21520233310.32、債券先物10年債(6)の利回りが、2022410.68820233310.802でした。その差は202241日で0.48220233310.473でした。これが黒田地銀のイールド操作いう、仕事でした。日本国債のプレーヤーは国と日銀で、イールド操作して、円安、原材料価格高騰に、全く、効果はなかった。日銀の職員の給料・賞与は、予算化されていて、日銀券で支給されるので、そういう無意味な仕事しても、文句はいわれない。しかし、金融緩和政策の離脱ために、国債を一定率で減少させる資産調整を一切いなかったために、黒田総裁以降の日銀総裁は、金利利上げすれば、国債市場の買い手に安く保有国債を手放さざるを得なくなる。そのままでは、日銀バランスシートの[貸付金+債券|預金]の資産<預金で、日銀は破たんする。国内外の関係者、専門家も、黒田総裁が退任するまで、何もしない日銀だろうと予想して、資金運用、調達して来た。国債市場を機能させるには、イールド操作は止めざるを得ない。

 世界的にインフレが燃え盛り、経済成長しなくなり、実質賃金率が低下し、国民の購買力が減少しました。円高、202241122円が、2023331133.48円になり、輸入燃料、食料の高騰に、国民生活は圧迫されました。

物価上昇率は、一般物価指数の上昇率を言い、名目賃金率は、物価指数には入りません。黒田日銀では、物価上昇率2%と政策目標でした。物価上昇率+名目賃金率上昇率を政策目標に入れる中央銀行はありません。なぜなら、賃金率は、所得分配構造から決まり、社会主義国では、国の機関が、最低賃金と賃金階級を決めます。欧米では、最低賃金は、各自治体で決まりますが、最低賃金以上の賃金階級は、労使双方で決めます。賃金上昇に対して、中央銀行では、関与する政策手段はありません。

黒田日銀も、賃金上昇率が伴わないとは言いましたが、2%以上あれば、金融引締めに移行するとは、最後まで言及しませんでした。20223月から、毎月、消費者物価指数は2%を越えました。その間、最低賃金は全国で、上昇しました。しかし、基本給が上がらないので、一貫して、実質賃金率(実質賃金率は、賃金率Wを物価指数Pで割ったWPで定義します。)は減少し、生活困窮者、年金生活者に、インフレによる生活水準の切り詰めが常態化しています。2023年の春闘から、大企業も数パーセントの賃金上昇に踏み切りました。2022年度のインフレで、年金支給額が改訂されることになります。

植田日銀総裁に交代しましたが、依然、日銀はインフレを阻止できていません。黒田日銀の物価上昇および物価上昇に伴う賃金上昇が顕在化しきますので、金融引締めへ政策変更しなければ、秋まで、インフレは止まらない。

欧米は、インフレ対策で、足並みをそろえて、金融引締めに入りましたが、利上げのオーバー・キルで、銀行システムに、利上げに見合う金融投資先がなく、保有する債券は利上げで評価損となり、預金金利は上がるで、バランスシートの[貸付金+債券|預金]の資産<預金で、破たんする。

景気,政策,海外の景気,政策等の変動予測 
 マンデル・フレミング開放経済モデル(MFEXモデル)は、『金融論2021年テキスト』で、理論的な論証はめどが付きました。『金融論2023年テキスト』では,MFEXモデル)、ほとんど変更はありません。

MFEXモデルに従い、四半期統計国民総支出発表によって、簡易的に、次の四半期の国民総支出を試算することに取りかかっています。

 国内総生産GDPは、総供給=総需要の等式では、GDPGDE+統計誤差です。国内総支出GDECIvIGExImと定義すれば、GDPの速報値では、左辺の数値が確定するのは2年後ですから、右辺のGDEに従って、各需要の構成要素CIGExImが発表されます。それらのデータをもちいて、構成要素の重回帰曲線を推計します。

  15週までに、景気,政策,海外の景気,政策等の変動を、市場関係者が予測するように理解することはむつかしい。そこで、毎週、日本経済新聞日曜版「今週の予定」から、イベントの「今週の市場」に与える影響を推測します。保有資産や購入予定の資産は、その結果を反映します。なぜそうなるかは、今年後半の『金融論2024』によって、理論的な方向性を説明します。

MFEXモデルは、比較動学モデルであり、与件の一つが変化すれば、長期均衡値に収束する経路を表します。経済成長論や景気変動論のテキストでは、比較動学モデルでなく、人口成長率、生産関数に技術進歩率が仮定され、動学方程式が、一定の比率を満たして、成長するかを示しています。MFEXモデルは、不均衡市場と均衡市場の2種類に分けて、分析しました。経済成長論や景気変動論も2種類あります。しかし、貨幣をふくむ3資産、外国資産がある経済成長論や景気変動論は、複雑すぎて、テキストになるほどの典型モデルはありません。要するに、経済学は、内生変数、外生変数が、経済主体を増やせば、それだけ、増えてきて、物理学より、宇宙物理学のような、無数の天体の動きを、統一した理論で把握できるのかという話になるのです。
 
手に負えなくなるほどの変数はまだない貨幣的
MFEXモデルの均衡市場モデルを貨幣的経済成長論・景気変動から、動学微分方程式を設定し、解経路を求めれば、資本主義経済の発展経路を理論的に示すことになります。これが、経済予測のトレンドを理論的にしめすことになる。

変動要因の発表は、各証券会社のHPに、スケジュールが公表されています。重大発表は、情報が必ず漏れ伝わってくるので、市場の商品は、発表前に、反応し、価格が上昇するか、下落してきます.理論にしたがった各商品と変動要因を表にすると次のようになります。

商品        変動要因           海外

債券      日銀の政策会合 日銀短観  米国準備制度理事会 EU中央銀行

        消費者物価 為替レート   消費者物価指数 失業率

株式      政府予算 政策の変更    政府予算 政策の変更 

        四半期GDP          四半期GDP

        企業業績          企業業績

リート     長期金利 都市の地価発表  長期金利 都市の地価発表

為替      貿易収支 資本収支 日米の金利差 戦略商品(原油、金)

バランス    株式30 50 70の構成要素に対して,上記の変動要因按分

インデックス  債券の構成要素,株式の構成要素に対して,上記の変動要因

ETF       債券の構成要素,株式の構成要素に対して,上記の変動要因

統計調査の発表は、各証券会社のサイトに、掲載されているものもありますが、教室で使うのは、マネックス証券のホームページ「投資情報『経済指標カレンダー』」が指標の予想、結果が出ていて、参考になります。首脳会談、政策機関の会議の予想、結果は、新聞各紙に観測記事が載るので、参考になります。

今週(202448日~412)のイベントと市場への影響度

今週のイベントは、8日岸田首相が訪米します。10日ワシントンで日米首脳会談があります。11日欧州中央銀行理事会がフランクフルトで開かれます。

今週の統計は、次の発表があります。

                     予測値     実績値

8日  日3月景気ウオッチャー調査     51.4    

    日2月毎月勤労統計        1.9

    日経常収支            270億円

    日貿易収支           -1735億円

9日  日3月消費動向調査         39.5

3月工作機械受注額       

10日  米3月消費者物価指数(前年比)    3.5

11日  中3月消費者物価指数(前年比)    0.5

    ECB政策金利            4.5

12日  中3月貿易統計          

    日鉱工業生産指数(前年比)     -3.4

 統計は、国民総支出GDE構成要素、物価、利子率について、日本、米国、中国の発表結果を一覧で以下に表します。

 日本                  4月         5

GDP(前期比) 

消費コンビニ売上高

  スーパー売上高

  百貨店売上高  

投資(工作機械受注統計)

輸出         

輸入         

貿易収支      

物価指数       

利子率        

株価           

(2金曜日の前営業日)

原油価格       

ドバイ、現物1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)

個人所得(毎月勤労統計) 

完全失業率       

景気動向一致指数    

先行指数     

米国                   4月         5

GDP(前期比) 

個人消費

投資(工作機械受注統計)

輸出         

輸入         

貿易収支      

物価指数       

利子率        

株価           

(2金曜日の前営業日)

原油価格       

NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)

個人所得

完全失業率     

景気動向指数    

指数     

中国                    4月         5

GDP(前期比) 

個人消費

投資

輸出         

輸入         

貿易収支      

物価指数       

利子率        

株価(上海)           

(2金曜日の前営業日)

個人所得

完全失業率     

景気動向指数    

指数


2回目 2024415

 テキスト『資産形成論2024年』は改訂中です。2023年度のテキストで、修正・追加する内容は、本ノートに載せます。改訂が済めば、本ページの冒頭に、PDFファイルでリンクします。昨年は、2023630日でした。

2章 公的保険および公的年金制度、企業年金および個人資産形成制度

 就職した場合、公的保険制度および公的年金制度に、就職先を通じて加入することになります。さらに、退職後の公的年金を補う企業年金制度および個人資産形成制度が、就職先の制度によって、選択可能です。前者は、就職先としては、できれば、定年まで勤めてもらいたいため、企業年金制度によって、退職金をつみたて、退職時に、一時金あるいは年金として受け取ることができるようにした制度です。
 
 個人資産形成制度は、人生100年の長寿社会を政府が認識し出し、そのために、公的年金、企業年金を補充して、個人が老後の蓄えを保有する場合、制度的優遇措置を取るための制度です。これは、老年世代が、人生平均寿命85歳を目標にすると、70歳を過ぎれば、リスクレスの定期預金で貯蓄しがちですが、昨今の長期ゼロ金利政策では、利息は、蚊の涙でしかありません。それでは、人生100年とすると、実は、介護老人のリスクが増大し、そのための出費が増加するのです。いわゆる、長生きリスクが高くなるので、元気なうちは、リスクオンで老後の蓄えを成長させなければならない事例が増えてきました。

 他方、公的年金について、2004年頃の年金問題では、新聞記事に、「団塊世代より若い世代は、次第に、保険料総額に支給総額が等しくなる」と試算されていました。それゆえ、65歳支給開始になりました。この話を当時の学生にすると、講義のあと、「私は、国民年金は払いません。」と言いに来たほどです。
 
 私が勤めていた関西では、2019年から、新入生人口が10年間減少する大学淘汰の時代に入り、4年後から新入社員が減少していきます。日本は、人口減少時代に入り、高齢年金支給者の割合が3割を超えだすと年金財政が悪化し、いずれ、70歳支給開始もありうるかもしれません。
 
 コロナ流行期、明らかに、適齢期の男女が結婚や出産の延期をしたため、出生率が減少しました。コロナ後、壊れた機会が復活するかは、経済・社会活動の回復次第ですが、将来の年金財政に影響は避けられません。政府も少子化対策に、子供世代の養育負担を軽減する財政・税制措置を講じはじめています。政府の政策により、若年世代の幼年期の子育て費用、壮年世代の教育資金が軽減されるならば、従来通りの形成目標、住宅、老後の安心に重点を移すことができます。
 
 資産形成を開始する若年世代、住宅ローンがあり、教育資金と老後の安心を貯蓄する壮年世代は、制度金融を利用すれば、利息、配当に課税されません。現役世代を15歳から64歳までの労働力人口とし、65歳から退職世代とします。2世代の利用可能な制度金融を表にすると次のようになります。
 NISAつみたてNISAは、今年度、新NISAに併合され、2024年から、新制度に変更されました。今年の教室の中で、新NISAを取り上げます。旧制度の資産は、そのまま、最大5年まで、保有できます。その後は、新NISA制度に従います。

世代別の制度金融
    
        世代別      制度金融
     1)   現役世代      公的保険    医療保険, 労働保険, 雇用保険, 介護保険(40歳から)
                  
                  公的年金    国民年金, 厚生年金

             企業年金    国民年金基金, 確定拠出年金(DCiDeCo確定給付企業年金, 厚生年金基金, 年金払い退職給付

            NISA(成長枠),つみたてNISA(つみたて投資枠)
                  ジュニアNISA(18歳まで)廃止

            財形住宅貯蓄

            財形持家融資制度   

       2)退職世代      公的保険(国保,介護)
                 
                年金収入=公的年金(-税控除)

            DCiDeCo,財形年金,NISA,つみたてNISA等の取り崩し 

           自宅, 不動産担保ローン契約,老人ハウスに終身契約

21 公的保険制度と民間保険

 2023年テキストでは、制度の概要を厚生労働省のHPより、要約しました。
 公的保険制度は、現役世代では、医療保険、労働保険、雇用保険、介護保険(40歳から)があります。事業所の規模、組織によって、これらの保険料や、給付金が異なり、雇用者の所得によっても、自己負担の保険料が異なります。
 医療保険では、保険の事象が生じた場合、かかる費用に、自己負担金があります。介護保険の対象者に認定されると、介護保険サービスが提供されますが自己負担金は、1割か2割です。

 私は、退職世代に属します。その立場から、公的保険と民間保険を資産形成の立場から、どうかけたらよいのかを考えます。

 退職世代の公的保険は、国民健康保険および介護保険であり、所得に応じて、保険料がランクづけられています。健康診断は毎年、基本的な項目で無料、有料の案内が市役所から送られてきます。介護保険により、各種サービスを受けるのであれば、要介護認定を判定委員会にしてもらいます。その際、毎年、介護認定に至った事由で診療した医者から、診断書を委員会に提出してもらいます。要介護に認定されると、要介護12であれば、その地域のケアマネジャーと自宅介護の契約をし、毎月、介護計画を立て、介護施設のデイサービス利用、介護ヘルパーの自宅派遣、介護補助具等のレンタル契約できます。要介護345であれば、特別養護老人ホームに入所できます。例外的に、要介護12でも認知症の程度により、特養に入所できます。ただし、申し込み順です。
 
 現職世代では、民間生命保険があります。現役世代に掛ける理由は、死亡保険金を年収の3倍以下で、掛けて置き、残された家族の生活保障を担保することです。退職に近づくと、退職後の終身医療保障に掛ける理由が切り替わります。成人病等の疾患を現役世代中に患った場合は、特に、入院、手術する場合があるので、国民健康保険でカバーできない自己負担金が発生し、要介護に認定され、介護施設を利用すると自己負担金が発生します。疾病と介護を民間保険金で補うようにすると、年金や資産形成資金から、自己負担金を支出しなくてもよいことになります。終身医療保険の死亡保険金は葬式ができますという程度、100万円にします。葬式は、最近は、家族葬が多く、身内だけで、葬儀会館で行う場合が増えてきました。

 現役世代で、自家用車保険、住宅保険などの損害賠償保険をかけることがあります。
 民間生命保険および民間損害賠償保険は、現役世代で、所得階層の内、余裕階層に属すれば、税制上、社会保険控除できますから、それらの民間保険の実質負担は減ります。医療・介護で、自己負担金が発生した場合は、確定申告で負担を還付されます。

今週(2024415日~419)のイベントと市場への影響度
 先週は、8日岸田首相が訪米しました。10日ワシントンで日米首脳会談がありました。11日欧州中央銀行理事会がフランクフルトで開かれました。
 今週は、16日、衆議院東京15区、島根1区、長崎3区の補欠選挙が告示されます。国際通貨基金世界経済見通しが発表されます。17日、イタリアで、19日まで、G7外相会合が開かれます。イスラエルが、ダマスカスのイラン大使館内のイラン革命防衛隊幹部を殺害したため、イラン本土からイスラエルを報復空爆しました。ペルシャ湾が緊張で、原油価格に影響がでそうです。
 
 先週の統計は、次の発表がありました。
                     予測値     実績値
 8日  日3月景気ウオッチャー調査    51.4      49.8
     日2月毎月勤労統計        1.9%      1.8
     日経常収支            3700億円  26442億円
     日貿易収支           -1735億円  -2809億円
 9日  日3月消費動向調査         39.5%     39.5
      3月工作機械受注額               
 10日  米3月消費者物価指数(前年比)    3.4%     3.5
 11日  中3月消費者物価指数(前年比)    0.5%     0.1
     ECB政策金利            4.5%     4.5
 12日  中3月貿易統計                  -4159億元
     日鉱工業生産指数(前年比)     -3.4%     -3.9
 
 今週の統計は、次の発表があります。
                     予測値     
 15日  日2月機械受注統計
     米3月小売売上高(前月比)     0.4
 16日  中13月期実質GDP(前年比)     4.9
      3月小売売上高(前年比)      5.0
      3月鉱工業生産指数(前年比)    6.1
      米3月鉱工業生産指数(前月比)    0.4
 17日  日3月通関ベース貿易収支       2820億円
 19日  日3月全国消費者物価指数       2.9

 統計は、国民総支出GDE構成要素、物価、利子率について、日本、米国、中国の発表結果を一覧で以下に表します。

日本                3月             4月         5

GDP(前期比) 
消費コンビニ売上高
  スーパー売上高
  百貨店売上高  
投資(工作機械受注統計)    1356億6470万円
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       
利子率          
株価(2金曜日の前営業日)
原油価格       
ドバイ、現物1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得(毎月勤労統計) 
完全失業率       
景気動向一致指数    
      先行指数     

米国                 3月                4月         5

GDP(前期比) 
個人消費
投資(工作機械受注統計)
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       
利子率        
株価(2金曜日の前営業日)
原油価格       
NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率     
景気動向先行指数      

中国                  3月                4月         5

GDP(前期比) 
個人消費
投資
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       
利子率       
株価(上海)(2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率     
景気動向指数    


3回目 2024422日 

個人資産形成制度の見取り図
22 公的年金制度、23 企業年金
要点・公的年金制度の概要
  ・企業年金の概要
   確定給付企業年金、確定拠出企業年金、個人確定拠出年金(iDeCo)

個人資産形成制度の見取り図
 テキスト5において、ライフ・サイクル・プランの例として、海原さん、山川家、高原家のイベント表を載せています。山川氏の個人資産を制度支援の資産形成制度を当てはめてみます。

 海原さんは、大学を卒業して、23歳とします。65歳で、現在の会社を退職します。海原さんのイベント表は、30歳で結婚し、31歳で1子をもちます。家族ができると、山川家のライフル・サイクル・プランに移ります。したがって、海原さんは、30歳までのシングル・プランです。

海原さんイベント表

年齢  23         30   35                 60           65
    確定拠出年金(iDeCo
    財形住宅貯蓄       財形持家融資制度(フラット25) 住宅ローン完済 年金生活
    成長枠NISA
     つみたてNISA
 
 山川氏は大学を卒業して、33歳とします。65歳で、現在の会社を退職します。山川氏のイベント表は、25歳で結婚し、26歳で1子をもちます。妻は共稼ぎです。結婚後の資産形成は、所有権は半分ずつです。基礎年金は、個別保有の権利ですが、共稼ぎの2人の厚生年金は、半分ずつに分割されます。その他の資産は、結婚期間の共同財産ですから、離婚すれば、半分ずつです。同様に、遺族年金は、半分です。
 
 私のゼミ生で、離婚すると、結婚期間の厚生年金が半分に分割されるようになった、経緯を研究テーマに修士論文を書いたものがいます。当時、企業は、大企業は確定給付企業年金制度があり、従業員の拠出はなく、企業が退職時支払ってくれる退職金でした。この制度をもつ大企業に就職すると、退職時には、公的年金と企業年金の3階建ての年金がもらえるのです。企業は、毎月、支払うであろう給料を企業負債として、退職給付を積立て、退職時から、一時金か年金で支払う制度です。
 2000年に入って、バブルの清算で、超氷河期に入り、退職給付の積み立て不足に陥り、従業員負債が増大するのを嫌い、確定給付企業年金から、確定拠出企業年金に移行する企業が増えていきます。金融危機で、企業の再編もあり、企業価値の永続性が壊れました。米国も同様に、ITバブルが崩壊し、確定給付型から、確定拠出企業年金401k制度を選択するようになります。その日本版が、確定拠出企業年金制度です。要するに、創業百年以上、事業を継続できなくなり、いわゆる、老舗倒産や、そのままの事業形態では、企業が存続できなくなったのです。
 退職給付引当金と株価の関係を統計的に実証し、有意性を実証したゼミ生もいます。5年ごとの2004年、年金財政再計算を控え、年金問題が重大な政治課題だった時代です。金融リストラの時代でもあり、大阪府から、企業の広告看板が下ろされ、御堂筋の両側は、全国、海外の金融機関が軒を連ねていましたが、次々に撤退しまし、寂しくなっていった時代です。企業年金の、確定給付企業年金は維持できず、大企業でも、確定拠出型に移行するのが、新聞で話題になりました。国の年金財政の補完として、自己積立年金制度を充実させようということで、確定拠出年金制度が拡充されました。
 一方、株式市場の低迷で、米国のファンドから企業乗っ取りが流行し、あの村上ファンドや堀江モンが評判になりました。従来、銀行・保険等金融機関が持ち合い株で、流動化を阻止していたのが、日本の金融システムが再編されにつれて、持ち株を売却する銀行・保険会社も増えました。国は、株式市場形成時代から、個人投資家を育成する行政をしませんでした。戦前は、オーナー企業、5大財閥で、機関銀行の持ち合いが普通で、浮動株が少なく、相場師が暗躍、「博打場」のように、株価が乱高下したと言われています。
 戦後、企業は、株主総会において、総会屋に会場の株主を取り仕切ってもらい、経営者側優位に議事が進行するのが通常でした。これは、総会屋の横行がはなはだしく、株主民主主義の原則から、総会屋の議事進行妨害は出来なくなり、企業も総会屋を支援できなくなりました。
 戦後、銀行の株式保有には5%以下というルールがあり、系列機関で、株式を持ち合えば、企業側は安定株主の議決権51%を確保できました。金融リストラが始まって、安定株主がいなくなってしまうと、株主民主主義が機能し、3年間業績不振の経営者には、解任動議が通ることになりました。

 財務省は、証券市場が縮小するので、NISA制度で、個人投資家を投資可能な全世代に向けて、小口証券投資を税制で優遇しようとNISAが始まりました。同時に、金融商品のリスクを承知の上で、資産形成の方法を生徒・学生に学ばせる金融教育の機会を業界が提供し、文科省でも、小学校高学年から、金融教育を社会科学の分野で取り入れる流れがあります。個人は、50パーセント以上、銀行預金か保険で、資産形成をしていましたから、金融行政全体から、直接証券保有を推奨する体制に流れが進んでいるのです。

山川家イベント表

年齢夫     33    35       48   56          60   65   68

    確定拠出年金(iDeCo)                     年金生活
    財形住宅貯蓄         財形持家融資制度(フラット25)     住宅ローン完済
 
   成長枠NISA
    つみたてNISA   
 
  妻      30          46   53        58   62     65
       確定拠出年金(iDeCo                                         年金生活
       成長枠NISA
        つみたてNISA


高原家イベント表

年齢夫  65                           85
     老齢基礎年金・厚生年金受給
      確定拠出年金(iDeCo)受給
     成長枠NISA
     つみたてNISA
   
   妻  65                           85
      老齢基礎年金・厚生年金受給
       確定拠出年金(iDeCo)受給                            
      成長枠NISA
      つみたてNISA

22 公的年金制度

 年金制度は、3階立ての構造をしており(本文の図)、1階は、20歳以上60歳までの国民が加入する老齢基礎年金です。2階は、勤労者であれば、雇用主の条件以上は強制加入である厚生年金です。3階は、企業年金です。
 年金の保険料および給付は、賦課方式と積立方式があります。賦課方式は、毎年の保険料収入を年金受給者に配分する方法であり、国民年金、厚生年金が賦課方式です。積立方式は、加入者個人に対して、所定の期間、定期的に一定額の掛金を払込期間まで積立て、受給開始期以降、給付する方式です。掛金は全額、事業主負担の場合、自営業者等が負担する場合、企業年金等に加入していない従業員が負担する場合があります。
 本文では、国民年金、厚生年金の以下の項目をまとめています。
受給資格
受給開始年齢
保険料
年金額
 国民年金の保険料と年金給付額算定方式について、将来の受給額については、日本年金機構のHP「ねんきんネット」で、保険料の支払い記録と年金受け取り見込み額を知ることができます。国民年金、厚生年金に、保険料とあるのは、年金に保険機能が付与されているためです。5年ごとに、国勢調査結果、人口統計等から、年金財政の均衡を再計算し、保険料を改訂します。厚生年金は保険料額表が公表されていて、給与明細書を保存していれば、簡易計算できます。厚生年金は、一元化されましたが、厚生年金機構に、一元化されていないので、もとの制度にしたがうしかありません。それゆえ、「厚生ねんきんネット」はないので、保険料の支払い記録と年金受け取り見込み額は、いろいろな金融機関等の簡易計算で、推測するしかありません。
 いわゆる年金財政の危機は、国庫負担が50%となった国民年金の方で、厚生年金ではない。受給開始年齢を70歳にする、保険料支払いを65歳までにする、保険料を上げない代わりに、消費税を20%以上にし、消費税から直接徴収するとか、政官民学が主張する議論があります。
 年金額が、年金数理計算で決まると、物価変動に対しては、物価スライド制があり、経済変動に対しては、マクロ経済スライド制があります。年金額の改訂は、物価上昇および経済成長率に依存する計算が決められています。アベノミクス政策において、2%物価上昇、経済成長率?%の目標を5年間、前者は日本銀行が、後者は経済諮問委員会が政策を実施しました。いまだに、目標は達成できず、日銀は、地方銀行の経営悪化を招き、借り手不足というか、地方は、高齢少子が進み、企業の廃業が進んでいます。2020年度、マクロ経済スライド制が発動され、年金増加額が0.2%に抑制されました。2021年度は、両制度は物価上昇、経済成長が規定に達成せず、発動されませんでしたが、年金は-0.1%減額されました。
 国民年金財政には、過去の余剰金があり、保険料総額>給付総額の状況にあり、日本年金機構が、余剰金を運用していて、昨年からの米国の金融正常化政策により、株式市場が引き締まってきました。そのあおりで、日本の株式市場も下落しています。日本年金機構の運用状況は、公表されるので、株式に損失が出たようです。20199月から、日本株式市場に海外投資家の資金が流入し、米国の金融緩和回帰があり、米国の株式市場も上昇しましたが、中国の新型コロナウイルスの世界拡散が発生し、ダウは3分の1消滅しました。20207月から、規制は緩和されました。コロナショックから、財政支出で持ち直し、米FRBは、金融緩和に戻しました。2021年、コロナワクチンの接種率が上がるとともに、世界経済は、緩やかに、回復過程に入りました。
 運用について、リスク資産は、民間運用会社に競争運用を委託する国もあります。日本の年金財政の危機は、高齢者の増加で、受給者が増加し、保険料総額<給付総額の状況となり、余剰金で差額が賄われので、余剰金が減少することです。

23 企業年金
 
 企業年金は、確定給付企業年金、確定拠出企業年金、個人確定拠出年金(iDeCo)に分けられます。確定給付企業年金が、企業の従業員からの負債となり、企業の事業業績が落ちると、企業は利潤から積立不足を補てんしなければなりません。株主の配当がその分減少するので、株価の減少要因になります。確定拠出企業年金に移行し、企業は一定額を拠出し、その運用は、従業員に委ねられます。確定給付企業年金と比較すると、退職給付引当金に入らないので、大企業も、この制度に移行するようになってきました。本教室は、従業員が、その場合の運用管理をどうするのかに答えるのが、大きな目的です。
 大企業が確定給付企業年金制度をもっていますので、概要は省略しました。テキストでは、確定拠出年金と個人型確定拠出年金の概要は、詳しく、載せています。

今週(2024422日~427)のイベントと市場への影響度
 
 先週のイベントは、16日、衆議院東京15区、島根1区、長崎3区の補欠選挙が告示されました。国際通貨基金世界経済見通しが発表されました。17日、イタリアで、19日まで、G7外相会合が開かれました。イランが、革命防衛隊幹部をダマスカスのイラン大使館で殺害したため、イスラエルを報復攻撃しました。ペルシャ湾が緊張で、原油価格に影響がでています。20日、米国の2324年度海外予算が、下院で可決しました。ウクライナ軍の軍事支援600億ドルが、昨年の10月から4月まで支出できないため、ロシア軍に、じわりと再侵攻されていましたが、ようやく、5月から押し返すことができます。米国の来年度予算の海外予算は、なじれ議会で政争のえさにされると、戦争が動いているとき、支援の途絶えで、相手国の優勢になってしまうことが明らかになりました。
 NATOおよびEUは、ウクライナ軍が前進できる軍装備を1年分、余力を持たせることが、この教訓で分かりました。ウクライナ政府も、最前線を押していく場合、軍消耗品の補充は潤沢に、後方、隣国に保有していなければ、昨年の反転攻勢の失敗になると分ってきました。
 
 現在のように、軍消耗品の枯渇をねらって、最前線がロシア軍に突破され、再侵攻を許すと、それまでの、
NATOおよびEU軍支援と、双方の兵士の犠牲は報われない。政治で、戦争を、もて遊ばれては、戦場で戦う兵士は、やり切れない想いでいっぱいだろう。1ヵ月間、塹壕を守って、砲弾・食糧の補給、補充の救援部隊が来ないなら、撤退させなければ、突撃して全滅するしかない。これは、旧日本陸軍の玉砕戦法だった。直接・間接関与を問わず、各国の政治家は、戦時下に入ると、戦争当時者なのである。

 今週のイベントは、日銀政策委・金融政策決定会合が25日、26日に開かれます。23日から、上場企業の3月期決算の発表があります。

先週の統計は、次の発表がありました。
                     予測値     実績値
15日  日2月機械受注統計(前月比)          1142800万円(2.9)
    米3月小売売上高(前月比)     0.4%   0.7
16日 中13月期実質GDP(前年比)     4.9%   5.3
     3月小売売上高(前年比)      5.0%   3.1
     3月鉱工業生産指数(前年比)    6.1%   4.5
   米3月鉱工業生産指数(前月比)     0.4%   0.4
17日 日3月通関ベース貿易収支      3400億円  3665億円
18日 米3月景気先行指数          -0.1   -0.3%  
19日 日3月全国消費者物価指数       2.9%   2.7

 今週の統計は、次の発表があります。
23日 日4月月例経済報告(内閣府)      
    3月全国スーパー売上高
25日 日3月全国百貨店売上高
        3月景気動向指数一致       110.9
            先行        111.8
   米3月期国内総生産(速報値)    2.3
    GDPデフレータ           2.9
26日 日日銀政策金利上限         0.1
          下限          0.0
      3月東京都区部CPI         2.2
   米3月個人所得            0.6
        個人消費支出          0.6
      PCEデフレータ         2.6

統計は、国民総支出GDE構成要素、物価、利子率について、日本、米国、中国の発表結果を一覧で以下に表します。

日本            3月        4月         5

GDP(前期比) 
消費コンビニ売上高
  スーパー売上高
  百貨店売上高  
投資(工作機械受注統計)    1356億6470万円
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       
利子率          
株価(2金曜日の前営業日)
原油価格       
ドバイ、現物1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得(毎月勤労統計) 
完全失業率       
景気動向一致指数    
      先行指数     

米国                 3月                4 月        5

GDP(前期比) 
個人消費
投資(工作機械受注統計)
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       
利子率        
株価(2金曜日の前営業日)
原油価格       
NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率     
景気動向先行指数      

中国                  3月                4 月        5

GDP(前期比) 
個人消費
投資
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       
利子率       
株価
(上海)(2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率     
景気動向指数    


4回目 2024429日 

24 勤労者少額貯蓄制度
25 NISA制度

要点・モデル賃金カーブ(収入系列の推定)
  ・一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄

  ・成長投資枠NISA、つみたて投資枠NISA

 前回、ライフ・サイクル・プランの例として、山川家のイベント表を載せています。ここでは、山川氏の個人資産を制度支援の資産形成制度を当てはめてみます。
 山川氏は大学を卒業して、33歳とします。65歳で、現在の会社を退職します。山川氏のイベント表は、妻は、30歳で6歳の子がいます。

                      山川家イベント表
年齢夫     33    35       48   56          60   65   68

    確定拠出年金(iDeCo)                      年金生活
    財形住宅貯蓄   財形持家融資制度(フラット25)        住宅ローン完済
    つみたて投資枠NISA   
     成長投資枠NISA

  妻    30           45   53         57  62     65
       確定拠出年金(iDeCo                                         年金生活
       つみたて投資枠NISA
        成長投資枠NISA

  子    6                     21

 テキスト第5では、資産形成の期間(フロー)表である収支差額表と資産の時価評価表(ストック)である期末貸借対照表をモデル計算しています。経済社会活動の結果は、経済活動した期間中の財・サービスの変動量の収支を合計するフロー表と、活動期間の期末時点に、資産/負債・正味資産を評価したストック表で記録することになっています。家計部門である山川家に、ライフ・プラン計画期間において、各年のフロー表とストック表を作成しています。
各年、各月の収入の見通し
 現役世代である海原さんと山川家は、各年、各月の収入の見通しが決まっていないとライフ・プラン計画表は作成できません。各年、各月の収入の見通しは、日本経済と世界経済の見通しが必要です。世界経済の見通しは、OECDIMFの毎年(少なくとも2年先)の予測が発表されます。日本経済の見通しは、内閣府から、1月発表されていますが、単年度であり、長期見通しは、日本において、権威がある見通しの定期的公表はないと思います。
モデル賃金カーブ
 ライフ・プラン計画期間において、現役世代の給与見通しをどう計算すればよいのでしょうか。私は、教職員組合に、就職と同時に全員加入で、退職まで、組合員でした。大阪府下大学教職員組合で定期的に、職種別賃金、年齢別賃金、ボーナス、退職金、研究費等組合間でデータが印刷されています。モデル賃金カーブは、推計するのが容易でした。しかし、他の業界と同様に、組合員は、1998年日本金融危機以後、雇用不安、新卒の超氷河期とつづき、全国的に、組合員は減少していきました。私の勤めていた大学もそうでした。教授は、管理職ですが、組合員のままでは、大学行政の管理職にはなりにくい傾向があります。現在でも、他の業界でも、組合員が労務担当管理職になれても、一般管理職はむつかしいのではないでしょうか。
 
 私的には、そういう行政管理職に野心は全くありませんから、学務、教務、研究に集中する一方、地方経済の国際競争力向上、アジアの経済発展に貢献したいと、国内、アジアを視察して、現場で考えていきました。私は、社会主義者ではありませんが、組合員であれば、大学行政の労務情報は、非組合員より、得ることはできますので、満足していました。38年間で、最初は、賃金交渉、教育・研究費でしたが、阪神淡路大震災後、互助会が解散、2000年以降、創立時の教職員が退職するのに伴い、退職金規定の大改正をしました。賃金カーブは、大阪府教職員に準拠していましたが、独自の賃金カーブになりました。その後は、1998年以降の金融危機が終わり、団塊ジュニアの入学増も終わり、日本経済は、本格的な停滞期に沈みました。大学の組合員は減少、賃金は上がりませんでした。

 金融危機以前は、組合の団体交渉にも参加したし、そこで、関西の大学教職員のモデル賃金を知ることができました。普通の会社員では、その資料は配布されませんので、自分の会社のモデル賃金は、サイトで、知るしか方法はありません。大阪市では、モデル賃金統計表がありましたが、維新の会が府政、市政を統合する段階で、発行しなくなったようです。もちろん、公務員は、公開されているので、調べることができます。特に、年齢別に、各業界の平均賃金を知ることができれば、ライフ・プラン計画期間の給与所得を推計できます。サイトで、業界の年齢別給与所得は推計があります。関西の大学教職員のモデル賃金等一覧ほど詳細な資料は、公務員資料と同じだと思いますが、他の民間企業の労働組合で、そのような業界モデル賃金資料があります。例えば、産業総合研究所『2024年版モデル賃金実態資料』がありますが、市の図書館には、ありません。類似の『2019年版モデル賃金・年収と昇給・賞与』はありました。
モデル賃金曲線で定年までの収入系列を推定する
 さて、このようなモデル賃金曲線は、サイトでシミュレーションしています。大学では、学生に、必ず、モデル賃金曲線を説明しました。「波乗り3波乗り」と言って、終身雇用・年功序列職階級制(公務員的ですが)においては、入社10年後、社員一斉、係長波に乗り(1年の評価で、平波の場合もあるそうで)、次は課長波、部長波がモデル賃金曲線にあります。課長波、部長波に乗れるのは、かなり高度な能力がないと乗れないと、説明していました。
 
男性社員は、妻を専業主婦で、家族を養えましたが、現在は、係長波は消滅しないにしても、残り2波は、年功序列より、能力主義になっています。夫婦、共稼ぎしないと、家族を養うのは、かなり難しくなります。東京では、3人核家族が多いのも、生活水準を維持しつつ、子を二人以上持つのは、経済的に苦しいのでしょう。地方では、都会生活が身近にありませんので、子供は2人以上、所得水準が東京ほどありませんから、共稼ぎの方が専業より多い傾向があります。
 業界および業界内でも、モデル賃金曲線は格差があります。モデル賃金曲線が会社から開示されれば、在職者は退職までの予想所得の参考になります。一般の業界に就職して、組合員用のモデル賃金曲線は、会社側から、提示されることは、まずないでしょう。
 かつての日本では、終身雇用・年功序列職階級制のもとでは、年齢で、給与が上昇するので、モデル賃金曲線は、次年度の上昇率をみれば、知る必要もなかったかもしれません。
終身雇用・年功序列職階級制から、日本流能力主義へ移行
 さて、日本経済は、人口減少が始まっていますので、労働力不足になる一方、日本経済は、第3次産業が主要産業となり、中小零細企業が多数を占める労働集約的産業です。男女賃金格差が是正されないため、低賃金の女性労働が必要とされる産業でもあります。第3次産業は、製造業と違って、寡占的ではないので、いわゆる大企業の賃金水準は支払えません。したがって、男性の給与水準は、35歳以上では、昇給が頭打ちになる傾向があります。女性は、男女格差があり、大卒女子は、35歳になると、平均賃金が大卒初任給に戻る傾向があります。
 日本の大都市の第3次産業が進行し、労働の内容が、知的労働生産をともなわない事務職は、生産性に見合う賃金を測定できないので、2000年の金融業界から製造業を中心とした業界再編で、終身雇用・年功序列職階級制で、賃金は支払えず、能力主義に移行したといわれますが、第3次産業のサービス業では、元来、能力の評価は、上司の主観、人的関係に依存しやすい。上司の能力を越えれば、上司のいじめ、降格、転勤、転籍もあります。
 神戸大学大学院時代、アメリカに研究にいかれた後尾哲夫先生と雑談で、「アメリカで、研究するのと、日本とどう違いうのですか。」とたずねると、「アメリカでは、なんでも、日本より大きく育つ。日本では、鉛筆と紙でしか研究できないから、研究成果は小さい。」私が大学院に入学し
、後尾教授の演習と数学・統計研究会で、勉強した数学統計、分布ラグ、コアは、どうも、米国留学の持ち帰りの様です。他方、経済成長論が、林ゼミ、置塩ゼミで5年間盛んでした。ただし、私は、確率過程を経済に導入するというのが、当時の課題でした。これは、後尾先生も研究されなかった。研究者の層の厚さと研究資金が日本と違うということです。
 アメリカは、能力主義の殿堂ですが、日本の大都市で、日本流能力主義になると、能力評価が恣意的になり、伸びるものは引きずり落とす、日本古来の「出る杭は叩かれる。」になりがちです。
20年間、東京の大卒賃金は、実質賃金は上昇しない。日本流能力主義賃金の公正価値は測れない。日本の自民党すら、政策のエキスパートが、大臣になる仕組みではないようで、選挙当選回数と派閥関係で、任命され、不適合で、任命責任が問われることが非常に多かった。
 大谷選手と監督、大谷選手と水原通訳との関係をみると、アメリカの能力主義で、世界一のプレーヤーに輝かせるには、監督がどう部下を評価し、励ますかで分かる。水原通訳には、自分と比べると、大谷選手は、北海道から大リーグにポット出のくせに、莫大な年俸を稼いで、全米の人気をはくす。水原通訳の20代は、米国で失敗した10年間だった。最初、賭博学校で、賭博には向いていないと判定されても、大谷選手の使わない金が、近くにあると、盗ってまで、賭博にハマっていき、最後は「大谷選手を道連れに、球界から去る。」という結末で、終わりたかったようです。しかし、長年培われてきた、アメリカの能力主義で雇用されている、大谷選手は、野球という天職を奪われず、より能力を高めてくれるアメリカ社会に、水原通訳の邪悪な陰謀を跳ね返されたと思います。日本流能力主義に従う賃金波乗り曲線は、各業界で、試行錯誤をへて、安定した波になることを期待します。

海原さんイベント表
 海原さんイベント表で、各年の収支差額表が計算できると、勤労者少額貯蓄制度の内、勤労者財産形成住宅貯蓄によって、毎年、ボーナスを入れて、住宅取得頭金を550万円貯蓄することが、主要な資産形成の目的になります。結婚が難しくとも、退職後、老後の安心による、退職後の生活資金資産形成より、住居の手当はライフ・サイクル・プランでは最も重要です。それを控除した差額が、退職後の生活資金資産形成になり、個人確定拠出年金(iDeCo)を事業主の負担を利用しつつ、運用します。海原さんの場合は、毎月、最大1万円、残りは、中期目的の自己資産形成でNISA制度を利用します。海原さんの収入では、NISA制度の上限を超えることありません。

                        海原さんイベント

年齢  23         30   35                 60           65
    確定拠出年金(iDeCo
    財形住宅貯蓄       財形持家融資制度(フラット25)  住宅ローン完済  年金生活
    つみたて投資枠NISA
    成長投資枠NISA

 資産家と違い、勤労者は、毎月の月給から、少額積み立てをします。制度金融では、預金以外の金融商品を、選択できますから、例えば、住宅資金の目標550万円は、10年より早く達成できます。教育資金でも、預金以外の金融商品で、長期積立をすれば、目標期間を短縮できます。

2.3 勤労者少額貯蓄制度
 山川氏イベント表で、妻の個人型確定拠出年金(iDeCo)が可能になっています。女性の資産形成について、山川氏と同様に、会社勤めで、同様に、ライフ・サイクル・プランを運用管理しているとする場合は、結婚後の共同資産形成になります。個人型確定拠出年金は、勤めている企業が、企業型確定拠出年金に加入していない場合、妻が専業主婦で、第3号被保険者である場合、個人で加入できます。転職や再就職の機会が多い業種であれば、企業加入していると、企業負担を再開できます。
 私の身の回りを見ると、死亡率は男性の方が高く、女性は低いのが普通のようです。山川氏が平均寿命で亡くなった場合、妻は余命があり、共同財産を相続することになります。老後の安心には、このことも、ライフ・サイクル・プランでは、考慮すべきイベントです。自民党が「人生百年」時代と言いますが、それを可能とする退職後のモデル生活は何も政策導入しませんから、男性の平均寿命が80歳から、20年延びる「稼ぎと体力」、社会保障があるわけない。むしろ、「失われた20年間」で、所得が失われたので、栄養不足による体力の減退により、80歳台にとどまると予想するのが普通でしょう。女性もやはり、90歳台に、「失われた20年間」の「稼ぎと体力」の減少効果が効いてくると思われます。退職後、なんらかの運動を継続し、ミネラル、ビタミン、たんぱく質が不足しがちの、1週間の3食献立に変化がなく、惣菜ばかりをたべていると、筋肉が落ち、寝たきりになるようです。老後の食生活は、野菜中心の脂肪・たんぱく質を減らした、精進料理かという、想像をする人がいますが、それでは、体力維持に必要な栄養素が不足するのです。食は、生命の根源に与える活力ですから、少ない稼ぎから、食費を節約はしない方が、元気で長生きできます。
 私の『資産形成論2023年テキスト』では、山川氏は33歳であり、妻は専業主婦です。私自身は、妻に対して、資産形成を実行してきましたが、これは普通なのか、そうでもないのか。夫婦で、妻には、ライフ・サイクル・プランをどう考えて、実行しているのか、実態調査があるのでしょうか。
勤労者少額貯蓄制度と財形持家融資制度
 勤労者少額貯蓄制度は、厚生労働省の所管で、勤労者財産形成貯蓄、勤労者財産形成年金貯蓄および財形持家融資制度があります。年金と住宅に対しては、利子等非課税措置があります。従業員の定着性効果を期待する企業では、従業員が金融機関と契約し、運用指示は本人であり、事業主は給与天引き、金融機関からの運用状況連絡を仲介するだけの負担です。必ずしも、就職した企業が、これらの制度に加入していない場合は、年金および住宅頭金をつくる財形住宅貯蓄は、個人確定年金制度(iDeCo)およびNISA制度を利用するとよいでしょう。
 財形持家融資制度は、財形貯蓄・年金の残高に応じた融資を、事業主を通じて又は直接に、長期・低利な住宅ローンを35年間受けることができます。融資額は、財形貯蓄残高の10倍相当額(最高4,000万円)で、実際に要する費用の90%相当額までです。住宅金融支援機構の融資と併用できます。事業主は社内融資制度を国の資金の転貸で、負担を軽減できます。
 勤労者財産形成住宅貯蓄は、住宅所有をライフ・サイクル・プランに入れている場合、財形持家融資制度を利用する、初期資金を貯蓄する制度として有用です。元金利子を含めて、550円まで非課税ですから、その次の制度は、財形持家融資制度があります。

 日本銀行の超金融緩和が10年続き、預金利子率は001%程度でしたから、月2万円、年間24万円を10年間、続けても、240万円+1万円以下の利息しかなりませんでした。住宅頭金や教育資金は、定期預金では、目標額を貯蓄するのは、無理で、投資信託にすれば、10年で2倍になっています。新規購入層の住宅頭金は、超金融緩和期と名目賃金上昇がなく、現在の30代は、10年間、目標額の半分しか貯蓄していないことになります。金融政策で、ゼロ金利政策を10年続けると、住宅ローン借入者には、金利負担が少なくてすむが、年々、新規購入者には、頭金が未達になり、政策解除すると、金利が上がり、購入費が上ります。世代で負担の不公平性を生んでしまいました。
住宅地の選択
 海原さんは、就職後、婚活をするとともに、係長級に昇進した後、住宅地を選択し、マイホームを実現する計画で、若年世代は卒業です。各市の都市計画の用途地域を調べていると、昨今、農地は消滅し、都市計画は完成している市が多くなっていると思います。その中での選択ですから、家族で住みたくても、物件が少ないかもしれません。不動産の将来価値は、公示価格、売買例、利便性評価等で決まりますから、少なくとも、建物の耐用年数が来るまでに、土地の著しい減価が生じなければ、住宅投資は成功したことになるでしょう。

2.4 NISA制度
 NISA制度は、金融庁所管で、2014年から始まった少額投資非課税制度(Nippon Individual Savings Account)です。2016年から、ジュニアNISA2018年からつみたてNISAが始まりました。ジュニアNISA18歳まで原則、払出しができませんから、大学の教育資金に向いていますが、さらに、高校進学時に、特別払出しができれば、学資資金の性格がでて、よいかもしれません。つみたてNISA20歳以上、20年間非課税ですが、制度の延長は定められていません。
NISA制度
「令和5年度税制改正の大綱」において、NISA制度は、新NISA制度に移行、2024年度以降のNISA制度は、抜本的拡充・恒久化の方針が示されました。

開始時期 20241月から

対象者  18歳以上、1口座開設できる。

投資枠        つみたて投資枠 (併用化)   成長投資枠

年間投資枠         120万円         240万円

非課税保有期間       無期限          無期限

非課税保有限度額           1,800万円(内 成長投資枠1,200万円)

口座開設期間        恒久化          恒久化

投資対象商品     積立・分散投資に適した    上場株式・投資信託等
                一定の投資信託       (毎月分配型投資信託等は除く)

2023年末までのNISA制度で投資した商品は、新NISA制度の外枠で、非課税制度を適用しますが、定められた保有期間が過ぎると、その商品を新NISA制度の口座に繰り越し(ロールオーバー)できません。

今週(2024429日~53)のイベントと市場への影響度
 先週のイベントは、日銀政策委・金融政策決定会合が26日、27日に開かれました。植田日銀総裁は、最近の円安に、言及はありますが、輸入インフレに影響がでなければ、利上げをする可能性は否定しませんでした。一時的に、市場介入するのは、財務省の権限ですから、鈴木財務大臣は、介入するようには見えません。海外市場にシェアをもつ企業は、利益を送金すると、円安で水増しになります。その分円買いで、円高にふれます。利益は、日本国内投資をせず、現地投資しているように見えます。中国の成長鈍化によって、中国進出企業の利益が減少していることも、影響しているかもしれません。
 今週のイベントは、30日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が1日まであります。30日は統計発表の集中日です。アジア開発銀行総会が5日まであります。13月期決算と3月期決算があります。

 経済統計は、次の発表がありました。
                      予測値   実現値
22日 日3月全国コンビニエンストア売上高        97009600万円(0.3%)
23日 日4月月例経済報告(内閣府)            穏やかに回復
    3月全国スーパー売上高             14156014万円(6.3)
25日 日3月全国百貨店売上高                          5109億円(9.9)
        3月景気動向指数一致         110.9   111.6
            先行         111.8   111.8
   米3月期国内総生産(速報値)     2.5%   1.6
    GDPデフレータ            2.9%   3.1
26日 日日銀政策金利上限           0.1%   0.1
          下限           0.0%   0.0
      3月東京都区部CPI           2.2%   1.6
   米3月個人所得              0.6%   0.5
        個人消費支出            0.6%   0.8
      PCEデフレータ           2.6%   2.8
 経済統計は、次の発表があります。
                      予測値   
30日 3月有効求人倍率           1.26
    3月完全失業率            2.6
    3月鉱工業生産指数         4.6
   中4月製造業PMI               
1日  米ISM製造業景況感指数        50.1
2日 米FRB政策金利上限           5.5
    FRB正先金利下限           5.25
    3月貿易収支            -673億ドル
    3月失業率              3.8

 統計は、国民総支出GDE構成要素、物価、利子率について、日本、米国、中国の発表結果を一覧で以下に表します。
日本            3月        4 月        5
GDP(前期比)     
消費コンビニ売上高  97009600万円
  スーパー売上高  14156014万円
  百貨店売上高   5109億円
投資(工作機械受注統計)
輸出         
輸入         
貿易収支      
物価指数       
利子率        0.1
株価(2金曜日の前営業日)
原油価格       
ドバイ、現物1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得(毎月勤労統計) 
完全失業率       
景気動向一致指数    
      先行指数     

米国                 3月                4 月        5

GDP(前期比) 
個人消費
投資(工作機械受注統計)
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       
利子率        
株価(2金曜日の前営業日)
原油価格       
NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率     
景気動向先行指数      

中国                  3月                4 月        5

GDP(前期比) 
個人消費
投資
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       
利子率       
株価
(上海)(2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率     
景気動向指数    

 5回目 202456日 

要点3. 金融商品と金融市場の分類と特徴

  ・3.1 金融商品の特徴、金融市場の特徴と分類

  3.2 日本の(1)預金、(4)債券、(5)株式の取引と現状

3.金融商品と金融市場の分類と特徴

3章では、はじめに、金融商品の定義と特徴を述べ、それらを取り扱う金融市場を、銀行の間接金融市場と、金融機関および取引所の直接金融市場に分類します。個人投資家が選択できる商品とアクセスできる市場を中心に、紹介しています。

次に、個別に特徴のある商品を詳しく説明しています。最後に、金融商品の貨幣価値、すなわち、商品価格表示の表し方を示しています。金融市場において、商品1単位が、貨幣価格でいくらするかが、取引者間で決定できるとき、取引が成立します。

金融商品の評価は、数列、級数の知識があれば、容易に理解できます。各金融商品は、満期期間があり、その間の価格変動は、平均(期待)収益率および標準偏差で測ります。そのため、確率と統計の知識が必要です。第4章で、満期期間とリスクが異なる商品を購入する理論を学ぶので、そのとき、高校数学程度の初歩的な確率と統計の知識を示しています。数学ができなくとも、2期間か、3期間、価格が上がるか下がるか、変化を追うことができれば、経済学・経営学では問題ありません。

3.1 金融商品の定義および金融市場の分類と特徴

金融商品の定義と特徴
 日本国内で取引できる金融商品は、それらの商品の金融市場で取引されます。小口投資家が取引できる金融商品を主に取り上げます。金融商品の特徴は、満期期間、最終利回り、制限条件、取引単位(1口)および発行の方法で分けられます。

預貯金

消費者ローンクレジットカード住宅ローン債券株式投資信託ETF (上場投資信託) リート[日本版不動産投資信託]

外貨 外貨預金 外国債券 外国株式 外国投資信託

 国内金融市場における金融派生商品は、次のようなものがあります。外国と比較すると、機関投資家が取り扱う商品です。個別株式オプションはないので、個別株式にオプションをかけることは、日本ではできません。株式指数を保有、あるいは購入予定がある場合、日経平均株価、TOPIX等に、オプション取引をすることができます。投資信託商品は、リスクヘッジを金融派生商品で掛けている場合があります。仕組みを理解するのも、むつかしいですが、個人投資家が利用することも、使い勝手が悪い商品です。

金融商品      限月     権利行使価格(刻み)  取引単位(1口)    証拠金

債券先物      2限月     1円        額面1億円       あり

債券オプション   最長1年    任意        任意(額面1億円以上) なし

金利先物      3限月     0.25ポイント    元本1億円       なし

株式指数オプション 直近連続4カ月 500(日経)    原資産の1,000倍    あり

Jリート先物            

金融市場の特徴 

相対(あいたい)取引は、顧客と金融仲介者が11で金融仲介者の窓口において金融商品を取引することをいいます。店頭取引ともいいます。取引所は、顧客が金融仲介者を通して金融商品を取引し、金融仲介者自身が自己資金で取引します。金融市場の内、預貯金、外貨預金、貸付金市場は、金融仲介者が銀行であり、銀行だけが預貯金を取り扱えます。銀行は、預金を貸付、預金金利と貸付金利との利ザヤを収益とします。

銀行が預金者と借入者とを資金で仲介することを間接金融といいます。債券および株式は、資金供給者と資金需要者が、直接、資金と金融請求権(債券および株式)を取引することを直接金融といいます。
 デリバティブ商品の内、先物、先渡し商品は、投資家の予想を反映して、契約価格が決まります。オプションは、オプション価格が確率過程から導かれるため、同じ満期期間であっても、先物、先渡しとは、違う値動きをします。オプションは、顧客が取引所の設定するオプション価格帯から選択し、原資産の損失を前払いで確定できる、保険的商品す。投機的に、利用することもできますが、オプション商品は、業界では、保険的認識で運用しているようです。日本では、原資産が指数である金融商品に対して、証券取引所で取引できます。個別商品のオプションは、相対取引になります。

本教室対象の個人投資家は、保有する原資産額が小さく、それに対してリスク・ヘッジするほどでもありませんが、海外を投資対象にしている投資信託の中には、為替変動のリスクをデリバティブ商品で、価値の下落に対して、保険をかけている商品がありますから、その方法を理解する必要があります。
 4章では、コール・オプションをとりあげて、先物市場とオプション価格付けの違いを考えました。オプション価格付けでは、投資家が、取引所が指定する満期時点の権利行使価格を選びます。満期時点の商品価格は不確実性下にあり、取引所では正規分布を指定します。株式1単位の購入とそのコールδ単位の売りというポートフォリオを考え、満期時で、いかなる価格が実現しても、損益が変わらないδを決めます。現時点のポートフォリオの価値を確定利子率で運用した収益は、満期時の収益と一致するように、裁定取引が働きます。その方程式が解ければ、オプション価格付けが決まります。このようなヘッジを前提とした計算過程をみると、オプション価格付けは、取引所で決められます。投資家は、たとえば、ある株式をx単位保有していれば、コールxδ単位売りで、現行利子率で代金を運用しておけば、損失を少なくすることができます。

現在の金融市場とその先物市場との関係は、経済学で、価格が決まると考えられます。しかし、経済学では、株式市場の価格理論およびその先物市場の価格理論も、周知の理論があるわけではありません。したがって、経済学の価格理論とデリバティブ商品理論との関係は、価格理論によって決定される先決変数(現行株価、その価格分布、株価の時間的推移を表す確率過程)を所与として、取引所が提示する権利行使価格(経済学では満期時先物価格)の幅で、ヘッジ目的にしばられて、コール価格付けが提示され、コールの売買で、現金が受け渡しされます。経済学の先物市場では、先物契約で、証拠金の差出はあっても、現時点での現金の授受はありません。

経済学へのデリバティブ商品理論の影響は、現先資産市場の価格決定と、資産予想価格分布および資産価格確率過程を研究する接近法として、役立っていると思います。

金融市場の特徴

金融市場     取引方法      取引期間     金融仲介者   

間接金融市場

預貯金    相対(あいたい)  1日~10年    銀行

外貨預金    相対       1日~3年    銀行

貸付金    相対           1日~35      銀行

直接金融市場

債券     相対・取引所   3ヵ月~30年  銀行・証券会社 

株式     相対・取引所   無期限    証券会社

投資信託   証券会社     ~無期限    銀行・証券会社

Jリート   取引所        ~無期限     銀行・証券会社

金融派生市場

先物         取引所    ~1年       取引所・証券会社

先渡     相対     ~1年       証券会社

 オプション  取引所    直近連続4ヵ月   取引所

 スワップ   相対     ~1年       銀行

3.2 日本の(1)預金、(2)債券、(3)株式の取引と現状
 個別金融商品の内、関接金融市場では、(1)預金、(2)外貨、外貨預金、(3)住宅ローン、直接金融市場では、(4)債券、(5)株式、(6)投資信託、(7ETF(8)Jリートを取り上げている。取引の方法と、市場の現状について、(1)預金、(4)債券、(5)株式を取り上げて、説明する。

(1)預金:預金取扱金融機関において、本人名義で1円から入金すると、預金口座を開設できる。普通預金は、公共料金等の自動振り込み、消費者ローンおよび住宅ローンの返済資金決済に利用される。貯蓄手段としては、原則満期期間2年まで、3年以上は自動更新の定期預金口座があり、普通預金から、定期的に積み立てることができる。本人が死亡するまで、預金口座は存続するが、10年以上使用しなければ、休眠口座となり、その預金は公益事業に活用され、ふたたび、使用すれば、利用できる。預金が没収されるのではない。
 預金口座は、本人名義の金融請求権であり、本人の委託なしに、口座を利用できない。10万円以上の振り込みには、本人確認書類を要求され、その手続きが不便である。インターネット銀行や流通業者の銀行が設立され、銀行の窓口に行かないで、決済ができる。

仮想通貨が流行しだし、取引所も増えた。通貨というが、本来の通貨との交換レートが変動する。中央銀行が発行している通貨ではないから、交換レートが仮想通貨取引所で毎日成立する。仮想通貨は、銀行で金預金、外貨預金と同様、仮想通貨預金できるようになるのか、模索が続くだろう。
 ポイントが流通業者間で共通化されて、物品、サービスと交換できるようになっている。共通ポイントの場合、物品、サービスの購入の都度、例えば200円につき1ポイントを店側のメモリーに付与してくれる。1ポイントは1円に交換して、物品の購入に使える。これも電子マネーのようで、決済手段に使われるので、業者間では共通通貨である。ポイントを貯める人も多いが、失効期日があり、貯めても、利息は付かない。小銭のおつり分にポイントを使用するのではないかと思う。
(4)債券:満期期日に元本を返済する割引債と満期期間に半年か1年ごとに利息(確定利息)を支払う利息付債がある。割引債は、かつて、長期信用銀行および東京銀行において、国内に支店網が少ないため、資金調達のために、割引債を発行し、郵便局から購入できた。普通銀行は、地域に支店網が多く、預金によって、資金調達可能であったため、発行は認められなかった。しかし、1998年のバブル破たん処理が本格化して、預金金融機関の再編が起こり、長期信用銀行および東京銀行は、普通銀行となった。リーマン・ショックまで、割引債は存続したが、ゼロ金利時代となり、割引債は発行されない。
 利息付債は、国債を中心として、発行額は増大している。かつては、インフラ・ストラクチャー計画のため、建設国債が発行され、「失われた時代」は、税収減から、赤字国債が発行され、雪だるま式に増大した。リーマン・ショック以降は、社会保障予算が増大して、今後、高齢者医療費が増大する時代が30年間つづくだろう。

 封建時代であれば、藩の人口減少は、領民の逃亡であり、すなわち、領主の統治能力の欠如であり、幕府により領地お取り上げとなり、近隣の藩に統合されるのは当然であった。さしずめ、市であれば、3万人未満になれば、原則的に市政返上となる。地方交付税は、かなりの部分は人口割であるから、人口が減少すれば、地方交付税が減少し、市は近隣の市に合併され、国の財政健全化に寄与するし、地方債の発行は、国より健全財政均衡が求められているので、今後は、減少するだろう。
 全国的に、地方自治体の平成大合併時代があったが、近畿では、大阪府が不作為であった。維新の会ができて、大阪市を再編しようとか、府と市の行政機関が同じような業務をしているということで、統合が実現した行政事業もある。また、道州制などの議論があり、「地方自治体消滅」の研究が発表されたこともある。しかし、維新の会では、大阪都は実現できなかった。大阪市、堺市は、今もって、行政区域は変更なしである。

 日本では、社債は、1970年の資本の自由化、1974年以降の変動相場制により、大企業は、銀行による借入金より、外債発行による、国内金利より低い利息で資金調達をし、海外進出を図った。海外投資家は、変動相場制により、360円から200円台と、ドル安を見込んでいるから、為替差益がほぼ確実に期待できた。つまり、1億円、1%で5年債を発行すると毎年、100万円利息が払われるが、発行時、1ドル280円、次の年260円に円高になると100万円はドル換算すると、3,571ドルが3,846ドルであるから、差益は7.7%になる。これが、日本の銀行システムが縮小する原因であり、日本銀行の金融政策が効きにくくなる原因でもあった。

また、企業の投資案件は、企業成長に欠かせないが、資金調達の段階で、銀行の借入金より、社債発行の方が、資本調達コストは低い。しかし、戦後の産業成長期に、社債市場は育成されず、社債発行費用が高かった。1970年代、変動為替制に移行し、大企業は、海外市場で資金調達に出る。日本独特のメインバンク制(銀行が大株主の地位をもちい、財務取締役に銀行員を派遣し、財務管理をする。)による、銀行の直接財務管理がきらわれ、企業独自の財務管理へ移行する。海外市場をもたない中小企業では、社債を発行しても、買い手が限られる。株式の増資となるとさらに引き受けてはいないから、依然、間接金融優位であり、メインバンク制は残っている。

日本では、債券は、国債と地方債が大半であり、地方債は、人口減少のため、発行が減少する。社債は、海外市場消化を想定した伝統を引き継ぐだろう。
(5)株式:新古典派経済学やケインズ経済学では、株式市場の典型的なモデルはほとんど開発されていない。債券市場は、新古典派経済学では「投資・貯蓄説」がある。ケインズ経済学では、貨幣市場という現実にはない市場で、「流動性選好説」があり、債券市場は、流動性選好説で決まる利回りが債券市場の利回りである。貨幣市場の均衡で、債券市場の利回りが決まることになっている。ケインズ経済学はマクロ経済学であり、新古典派経済学はミクロ経済学もマクロ経済学もある。しかし、両学派のモデルには、株式市場の株価はどう決まるのかは、はっきりしない。株式市場は、資本主義経済の中核の市場なのだが、モデルはない。

 本資産形成論では、4章において、株式市場は、交換経済市場であり、不確実性下のミクロ経済学によって、株式価格の市場均衡価格が決まることを論じる。

今週(202456日~510)のイベントと市場への影響度

 先週のイベントは、30日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が1日までありました。30日は統計発表の集中日でした。アジア開発銀行総会がジョージアのトビリシで、5日までありました。閣僚級会議では、気候変動対策に資金供給することが話し合われました。13月期決算と3月期決算がありました。財務省が、為替市場介入を2回し、それぞれ、5円ほど、一時的に円高になりました。経済界の大企業では、これ以上の円安は、海外投資ができなくなると言っていました。

円安の始まりは、FRBの利上げが20221月から始まり、世界の中央銀行も、インフレの高進から、FRBと協調し、現在、日本は0.1%、FRB5.5%、ECBは、4.5%です。その間、孤立した日本は、0.1%としましたが、為替市場では相手にされず、160円を先週超えだすと、さすがに、介入に入りました。アベノミクスの超金融緩和で、2021年まで110円台の円高のとき、大企業は日本の全市場で、国内停滞か縮小とみて、国内投資をしないから、国内成長はせず、海外市場に、円高、超金融緩和で、直接投資して来た。アベノミクス第3段階で、国内投資がないため、失速しているのです。超金融緩和しても、国内成長効果はゼロ以下だったということです。世界の中央銀行が、その物価の番人としての第1義的責任と義務において、世界高インフレならば、ためらわず、果敢に、超金融緩和は解除しても何も問題はなかったのです。

ケインジアンマクロ経済理論、新古典派貨幣マクロ経済理論的で、超金融緩和をすれば、インフレになり、しかも、経済成長するとは、明快に示す理論はない。黒田前総裁で、実験的に、日本経済で、超金融緩和をすれば、デフレ脱却し、実質的に経済成長することを実証しようとしたと見えるが、実際は、そうはならなかった。円安は、開放マクロ経済モデルの示す通り、金利差が開くと円安になり、実証されました。経済成長論では、労働供給が人口成長率n%で、供給されることが前提ですが、恐ろしいことに、日本の最近の人口成長率は-n%で減少していて、過去の経済成長論では、経済活動が縮小し、日本は滅亡している。国内工作機械の受注は、22年から、毎月前年減で、いまだに、縮小中です。大企業は、今回の160円では、さすがに、増益にならない直接投資はできない水準のようです。少子対策に、税負担か社会保障費上乗せかという、原資をもとに、子供を増やす支出に当てようとしているが、他方、海外移民を増やせばいいではないかという、バイデン大統領の突飛な、日本他民族排外政策を取っているという議論もある。中南米、中国、中東移民圧力に苦しむ米国ならでは、発言のようだ。アベノミクスの間、社会保障負担は増加し、実質賃金はマイナスで、経済的要因で、出生率は減少するのは、当然だ。岸田少子政策を強行すれば、自民党は下野するだろう。

今週のイベントは、3月期の主要企業の決算があります。

経済統計は、次の発表がありました。
                     予測値     実績値
30日 3月有効求人倍率         1.26倍    1.28
    3月完全失業率           2.6%     2.6
    3月鉱工業生産指数        4.6%    -6.7
   中4月製造業PMI                 50.4
1日  米ISM製造業景況感指数      50.1     49.2
2日 米FRB政策金利上限         5.5%     5.5
    FRB政策金利下限         5.25%    5.25
    3月貿易収支           -699億ドル -694億ドル
    3月失業率             3.8%    3.9
3日 米ISM非製造業景況感指数      51.9     49.4
 経済統計は、次の発表があります。       
                     予測値
59日 日3月景気動向指数一致    113.8
             先行    111.0
     3月毎月勤労統計      1.4
    中4月貿易収支
10日  日3月国際収支経常      3431億円
           貿易      5486億円
     3月家計調査        -2.3
     3月景気ウォッチャー調査   50.3
11日  中4月消費者物価指数

統計は、国民総支出GDE構成要素、物価、利子率について、日本、米国、中国の発表結果を一覧で以下に表します。
GDP(前期比)     
消費コンビニ売上高  97009600万円
  スーパー売上高  14156014万円
  百貨店売上高   5109億円
投資(工作機械受注統計)
輸出         
輸入         
貿易収支      
物価指数       
利子率        0.1
株価(2金曜日の前営業日)
原油価格       
ドバイ、現物1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得(毎月勤労統計) 
完全失業率       
景気動向一致指数    
      先行指数     

米国                 3月                4 月        5

GDP(前期比) 
個人消費
投資(工作機械受注統計)
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       
利子率        
株価(2金曜日の前営業日)
原油価格       
NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率     
景気動向先行指数      

中国                  3月                4 月        5

GDP(前期比) 
個人消費
投資
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       
利子率       
株価
(上海)(2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率     
景気動向指数    


6回目 2024513

 日本の金融商品の取引と現状をのべます。金融商品の貨幣価値、すなわち、金融商品1単位が、貨幣でいくらするのかという評価方法が、他の商品と違います。

要点・金融商品の評価

金融商品の評価
・預金、債券の現在価値と将来価値、最終利回りと市場価格との関係
・住宅ローンの元利均等払いと元金均等払い
・帰属家賃の計算と賃貸か持家か
・株式の評価
・投資信託の評価
・貴金属投資の取引価格

 預金、債券は、利息の支払いと元本の償還がある金融商品である。ともに、満期までに、利払いがあり、利息と元本を足した額を元利合計という。預金は、11億円の譲渡性預金以外は、預金の名義人以外に、途中、譲渡できない。

預金の価値
 現在0、将来12で表す.現在、銀行に年利子率iA0円預金する。1年後の元金A0円と利息i×A0円を合わせた額A1A0i×A0=(1i) A0円を元利合計という。
 2年定期預金の元利合計A2 元金 A0 、利子率iと表すと単利と複利の2種類がある。
     単利   A2 i×A0   + (1i) A0    =(12i) A0
            1年目の利息+  2年目の利息+元本
     複利   A2 =(1i) ×i×A0    +(1iA0       =(1i) 2A0

            1年目利息iA0の + 2年目の利息+元本
            再投資
元金A0を現在価値、1年満期の預金の元利合計を将来価値A1とよぶ。
 金融商品の市場価値を現時点で評価する方法は、割引現在価値がある。預金の場合、
現在価値A0将来価値A1 1年満期の預金の元利合計)   A1 =(1iA0
将来価値A1割引現在価値A0              A0  A1/(1i)
ということにする。割引現在価値A0は、預金A1という元利合計の金融商品の現在市場価格を表す。A0  A1/(1i)から、分かるように、利子率iと市場価格A0は反比例の関係がある。
 さらに、従来、利子率は確定利息であるが、期間平均利子率の変動金利もある。預金は相対取引であるが、預金金利は自由化されていて、各銀行で、顧客との関係で、預金利子率は違う。現在、日本銀行のマイナス金利政策で、金利差がほとんど目立たない。

外貨の価値
 外貨交換所で、1万円でドルを購入する場合、為替レートは、午前11時過ぎに、当日の銀区間為替レートが決まり、そのレートに、手数料が追加された為替レートで、購入できる。
 2021514日中心相場は、109.6/ドルであった。対顧客電信売相場は、110.63/ドルであった。1万円で、90.39ドルと交換される。例えば、9月に、ロサンジェルスに旅行する予定であれば、旅行期間中のクーポン以外の現金保有ドルを20万円とすれば、現在、対顧客電信売相場が円高で、108/ドルになったとき、銀行で1851.85ドル購入する。帰国後、300ドル使い残した場合、買い相場110/ドルで円安になったとき、33,000円に交換する。

外貨預金の価値
 外貨の現金保有は、利子がつかないが、外貨預金は利子がつく。現在、米国は、金融緩和中で、定期預金利子率は、年0.01%、日本の銀行で、スーパー定期(300万未満)0.002%である。現在(2023年)、世界の先進国の利子率は年0.01%である。世界は、金融緩和時代でも、日銀の金利政策は、飛びぬけて、低金利である。
 外貨預金は、現金保有より、利子がつく。方法は、銀行で外貨預金口座を開き、現金か、円預金から振り返れば、定期預金となり、自動更新できる。引出は、外貨ではできない。海外旅行中、外貨で引き出しできる場合もある。
 1ヵ月定期に、200万円を1年定期預金すると、110.63/ドルで、18,07827ドル預金する。1か月後、買相場112/ドルで、18,07827ドルを引き出すと、2,024,766.24×(10.0001)2,024,968円である。為替差益と利息が稼げる。収益の主な成分は、為替差益であり、売りtimingが悪ければ、1ヵ月定期を自動更新すると、複利が効き、売りtiming好時に、満期解約損を少なくし、差益を機動的に稼げることが分かる。ただし、国内で外貨預金をした場合、利息は20%、課税され、満期・解約時に発生する為替差損益は、雑所得として、分離課税ではなく、総合課税される。

外貨建MMFMoney Manegement Fund)投資信託
 証券会社は、預金取扱機関ではない。その代わりに、外国短期証券又は国債の投資信託があり、外貨建ての他の金融資産を売買するとき、外貨建MMFを使って、1ドル単位で決済が可能である。外貨預金は、為替差益等は総合課税になるが、外貨建MMFは外貨建て短期投資信託のため、売却した場合、分離課税になる。外貨建て投資信託である外貨建MMFは、短期証券の価格動向で、毎月分配型利回りが計算され、外貨預金の確定利子と比較すると価格安定性はない。外貨建MMFを売却すれば、為替手数料を支払い、ドルを円に交換できる。

 2024513日、野村證券ドル建てMMF利回りは、4.768%、為替手数料50(58)、三菱UFJ銀行ドル預金は、510日普通預金1(年率)1ヵ月外貨定期預金インターネット優遇金利10%為替手数料0円である。

住宅ローンの元利均等払いと元金均等払い
 家計が住宅を取得するために、住宅金融支援機構や銀行から融資を受ける書類審査の要件を満たせば、融資の手続きに入る。そのとき、返済方法は、元利均等払いと元金均等払いがある。

元利均等払い(固定返済型)年固定返済額FR、満期期間 n年、利子率 iとする。借入 L0は、銀行側は元利合計0×(1i)n1円を返済してもらい、借入者は毎年FR円を返済する。FR円を利子率iでつみたて運用すれば、
元利合計はFR(1i)n+ … +1i2+(1i)}となる。 

L0×(1i)n1FR(1i)n+ … +(1i21i

と表せる。両辺を(1i)n1で割れば、借入金と固定返済額の現在価値とが等しくなることを意味する。

L0  FR FR    + … + FR 
     1i 1i2         (1i)n

固定返済額 FRは,公式1(金融数学1)を使って

FR  L0÷{                … +    
              1i      1i2          (1i)n
   L0×i(1i)n / {(1i)n 1}

元金均等払い
 
元金均等払いは、毎回の元金返済を均等にする返済方式である。t回目の返済額をRtする。毎回元金均等分L0nを残存年数間、単利で運用する。
Rt L0×{1+(nt1)×i}
   n

総返済額は、R=Σt=1n L0×{1+(nt1)×i}L0L0×i×n(n1)
            n               n    2

このように、元金均等払いは、元金と利払いが分離する。

元利均等払いと元金均等払いの違い
 元利均等払いは、利払い額が先行し、元本返済が後半に多くなる。銀行では、元利均等払いの方が、複利計算により、返済利息にも利息がとられるので利息収入が多い。また、たとえば、貸付初期5年で借入者が返済不能になっても、借入者には元本分がほとんどないので、住宅債権は銀行側に落ちる。銀行側優位の返済方法である。
 元金均等払いは、最初からL0n円、元本返済が進むので、住宅債権は、最初から借入者に移っていく。しかも、利息は単利計算なので、元利均等払いと比較しても、支払利息は少ない。しかし、最初から、L0n円という返済額は、負担が大きい。住宅ローンは、借入者の方が、銀行より債務者として、立場が弱いので、銀行の言いなりで、元利均等払いの返済契約が多いはずである。子供の教育イベントが済めば、退職まで早めに、繰り上げ返済することが望ましい。

賃貸住宅の帰属家賃の計算方法
 山川家は、4人家族なので、山川氏が定年退職60歳まで、2階建て賃貸4LDKに住み、61歳から、平屋3DKに移る。退職後は、2階は、高齢化で、ほとんど使用しないため、平屋の方が、高齢者の階段転落事故がなく、介護等にも動線がフラットで安全である。前者が月8万円、共益費5千円、後者が月6万円、共益費5千円とする。家賃・共益費が一定であると、帰属家賃の総額は、

LDK[(家賃+共益費)×12か月×25年+更新料×13]+3DK [同計算]
 85000×12×2580000×1365000×12×2560000×132550000010400001950000078000046820000

である。

 例として、(2022年賃貸住宅HPから、物件を選択した。)山川氏は、東京都あきる野市で、新築戸建て、土地120(37)、4LDK95㎡、3000万円が気に入り、自己資金500万円、借入金2500万円で、購入することにした。建築費は、住宅展示場で、好みの住宅を選び、建築費を参考にする。建築費は、3000万円のうち60%、1800万円であり、残り1200万円が土地代になる。ローン返済後、土地1200万円が資産として残る。25年間のローン支払総額は、1436千円×123590万円である。
 
 中古住宅は、団塊の世代のラストが75歳になるので、その住宅も含め、中古住宅・空き家は、全国的に増加する。中古住宅をローンで購入することができるが、土地の評価と家屋の残存価値で、評価される。土地流通評価額+補強・増改築工事費(更地費用300万円<工事費<新築費)+仲介手数料で中古住宅の取引価格が決まる。ただし、各都道府県不動産住宅市場で、仲介業者による新・中古住宅市場価格はなく、店頭取引である。

注意 以上の計算は、インフレ期、家賃もインフレに追随することが考慮されていない。金融資産の株式と同じく、インフレ期には、株式価値もインフレになり株価が上昇するきぎゅがあるのは、企業が土地建物・機械の実物資産の評価が上がるからである。米国では、インフレ期にあり、賃貸住宅が10%上昇、家賃払えなく人々がすでに出ている。年金高齢者で、フロリダに成功者が集まるのは、暖房費が要らず、年金と資産で、快適な老後を過ごせた人々だけである。

(1)賃貸か新築かの判定条件
 帰属家賃の総額4682万円(住設・固定費込み)>ローン支払総額3590万円
戸建の固定資産税および建物の修繕費は含まれていない。都市計画法にもとづく用途別で、土地価格が異なり、住宅専用地域から、用途指定が雑多な用途になるにつれて、建蔽率および容積率が,緩和され、その分、日当たりが減少する。あきる野市で、37坪では、地価の上昇は、期待できない。120㎡程度の小規模宅地では、売却して、投資額を回収できるほどの資産価値は期待できない。
(2)ローン返済能力条件
 年間所得の27%がローン返済であるから,消費生活の健全性をクリアしている.したがって,住宅金融支援機構の審査を合格し,取次の銀行の審査にも合格する.

債券の評価
 債券は、譲渡可能であるから、証券会社で売却可能である。途中で、売却することは証券会社では勧めていない。その売却価格が、そのときの市場利子率で評価される。
 満期期間、最終利回りの計算法、発行の方法、1口の金額、取引単位で分けられる。
 債券を特徴付ける項目は次の通りである。

 満期利回り        R
 債券市場価格        P
 1期間当りのクーポン    C
 償還価値         F
 残存期間         

1)     単利の最終利回りをRnとする。各期間のクーポンはその債券に再投資されない。
  Rn = C+(FP)/n
         P 
2) 複利の最終利回りをRnとする。クーポンCは再投資される。ただし,日本では発行されることは少ない。
     P(1Rn)nC(1Rn)n-1C(1+Rn)n2 +…+C(1+Rn)CF 
これをRnについて解く。

割引債の評価   額面 F、利子率i、満期期間 1年とし、市場価格は現在価値Pであり、満期時に額面 Fが償還される。
       P A1 / (1i 
額面 F、利子率i、残存期間 n年とし、市場価格Pである割引債は
     PF/ (1i )n 

国債の評価  額面 F、クーポン C、満期期間 n年、市場利子率iとし、発行時の市場価格P は、
            P   C      C   +    CF
            1i   1i2          (1i)n 
債券の最終利回りと市場価格との関係は、割引債、国債ともに反比例である。証券取引所では、10年国債の場合、額面100円、クーポン6円、満期期間10年で標準化される。実際に発行されている国債は、クーポンは、市場利子率の実勢に応じて、発行されるから、10年国債は存在しない。現物を購入したい顧客は、10年国債を基準に、クーポン、残存期間に応じて、交換比率(conversion factor)が計算される。

株式の評価
 1株あたり年配当Dを将来無限に受け取ることができるとする。配当割引モデルにおいて、株式収益率(安全資産利子率+危険負担率)をρとし、市場株式価格をPとすると 
           P  D       D       D    + … = D   
          1+ρ    1+ρ)2   (1+ρ)       ρ 
1期間だけで、現在価格P、株式収益率s1株当たりの今期配当Dと株式の期末予想株式価値Peとすれば、
   s= D +(Pe P
         P
と定義する。変形すると、
     P= D +Pe 
           1s
と表される。このとき、Peは、清算価値にあたる。

投資信託の評価
 投資信託受益証券は、投資信託会社が、投資方針で、投資家から資金を募集し、資産を購入、当初10,000口、10,000円を当初の基準価格とする。総資産の各時点での評価額を投資口数で割って、時価の基準価格が新聞に公表される。

口数の計算法(10,000円で、ある投資信託を購入する場合)次の比例式から

10,000(円)投資額  基準価格(円)=x(口数)  10,000(口数)
                      x(口数){10,000(円)投資額÷基準価格}×10,000(口数)

 償還期間は無期限から、1年未満まである。購入時に買付手数料がかかり、商品保管のための信託報酬料がかかる。投資信託は、利息や配当が定期的に確定するが、それらは、口数に応じて分配され、追加投資されるか、または、税引き後、払い出される。

 本教室で扱う、日興DCインデックスバランス(株式20)の場合、基準価格(2022513)16,663円、純資産9,561百万円、信託報酬0.1450%、設定日20021210日、組入れ比率(株式20.2%、債券74.6%、その他、5.2)、無期限である。基準価格10,000円より低い、投資投信は、運用成績が設定よりは低い。
 投資方針は、株式、債券、REIT、バランス等がある。それぞれ、国内資産と国際資産がある。国際地域別がある。商品は、目論見書の閲覧確認が義務化されているので、必ず、投資方針の確認はしなければならない。
 格付け(レーティング) 各商品は、モーニングスター社等の格付け会社によって、格付け(レーティング)してある。
 買付手数料がかかるが、手数料0円もある。
 信託報酬料は、商品ごとで、違いがある。

貴金属投資の取引価格
 貴金属で、金は、国際通貨の地位を金本位制下では、長らく、保ってきた。現在は、世界の中央銀行は、その名残で、金保有を紙幣発行の担保として保有している。日本銀行は、戦後、国際的担保として金保有する規定はない。新日本銀行法でもない。国際通貨価値の番人である財務省にも、円の国際価値の担保として、国庫に金保有が省令で定められていない。権威国化したロシア連邦、中国は、金保有している。伝統的に、インドは、民需もあり、金保有している。金保有が乏しい国の通貨は、国内インフレの変動も大きい。
 そのような国際価値を持つ金は、商品取引されるが、現物と先物がある。日本では、(東京、大口需要家渡し、持ち込み、現金、円)で、59日午後4時現在)金(99.99%以上、1g)11,576円である。昨今、円安と世界インフレーションの影響があり、202157日では、6,375円だった。為替レートは、109.13円であった。
 金融論研究者は、金本位制の歴史が、1971年ドル金本位制が崩壊、変動相場制に移行した時代から、50数年であるので、金融論の考慮外に置くわけにはいかない。研究者、関係者は、多少とも金を保有し、その魔力が国際金融の世界では、衰えていないことを思い知る昨今である。金は、日本では、3年間で、1.8倍は、驚異の大化け商品となっている。日銀・財務省が、大胆かつ果敢に、世界の金融潮流を乗りこなす技量・政策遂行能力に欠けていた、大蔵省出身黒田前総裁と財務省のタッグチームは、世界経済競争リーグ4位に転落、世界経済競争では惨敗している。日本に、大谷選手はいないのか、貧乏神と就任当時から、陰口をたたかれていたが、この世界リーグ成績では、国際的に評価を落としているから、本人は、気づかないだろうが、岸田政策は成功していない。
 日本経済は、世界インフレーションのストロー効果で、30年間デフレ基調からインフレ基調に転換している。資産選択の商品取引の内、個人投資家が小口から取引できる現物商品もあり、投資信託もある。筆者は、長期投資として、現物金小口つみたて商品をドルコスト平均法で購入し、10年過ぎて、売却し、車の購入費、家族の海外旅行に使った。3年間で、これほど大化けになると、資産選択の多様化の一つとして、国際金融取引にも影響する、金のドルコスト平均法で購入することを付け加える。

今週(2024513日~517)のイベントと市場への影響度
 先週のイベントは、3月期の主要企業の決算がありました。
 今週のイベントは、日本企業の3月期決算発表13日から17日まであります。

 経済統計は、次の発表がありました。
                     予測値        実現値
59日 日3月景気動向指数一致      113.8          113.9
             先行      111.0          111.4
     3月毎月勤労統計         1.4%          0.6
    中4月貿易収支        -            5135億元
10日   日3月国際収支経常     34313億円      33988億円
            貿易      5486億円                 4910億円
      3月家計調査        -2.3%         -1.2
      3月景気ウォッチャー調査  50.3           47.4

 経済統計は、次の発表があります。
                     予測値        
514日 日4月工作機械受注額    
15日   米4月消費者物価指数      3.4
      4月小売売上高(前月比)     0.3
16日   日13月期国内総生産     -0.4
        GDPデフレータ      3.3
          鉱工業生産     -6.7
      米4月鉱工業生産指数(前月比)  0.1
17日   中4月小売売上高        3.7
        鉱工業生産指数(前年比)   5.3
 
 統計は、国民総支出GDE構成要素、物価、利子率について、日本、米国、中国の発表結果を一覧で以下に表します。
GDP(前期比)     
消費コンビニ売上高  97009600万円
  スーパー売上高  14156014万円
  百貨店売上高   5109億円
投資(工作機械受注統計)
輸出         
輸入         
貿易収支      
物価指数       
利子率        0.1
株価(2金曜日の前営業日)
原油価格       
ドバイ、現物1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得(毎月勤労統計) 
完全失業率       
景気動向一致指数    
      先行指数     

米国                 3月                4 月        5

GDP(前期比) 
個人消費
投資(工作機械受注統計)
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       
利子率        
株価(2金曜日の前営業日)
原油価格       
NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率     
景気動向先行指数      

中国                  3月                4 月        5

GDP(前期比) 
個人消費
投資
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       
利子率       
株価
(上海)(2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率     
景気動向指数    


7回目 2024520

4.資産市場における行動理論

要点・ライフ・サイクル理論
   ・貨幣一時的一般均衡理論 
   2024年、世界政治の見通し
    
IMFOPECADBOPECプラスの経済見通し
      ウクライナ戦争、ガザ侵攻と中東、EU、米国大統領選、中国、ASEANおよびインド、日本

4.資産市場における行動理論

今回は、伝統的実質ライフ・サイクル理論および貨幣一時的一般均衡理論による名目ライフ・サイクル理論を説明します。消費者が、1期間、予算内で、消費者の効用関数のもとで、効用が最大になる消費量の組を決める問題があります。この消費決定問題を、2期間以上に拡大して、終身まで計画する問題にすると、ライフ・サイクル理論になります。伝統的経済理論では、異時間の経済量の比較は、実質化して比較します。ところが、日常生活では、練習問題にあるように、経済取引は、貨幣を用いますから、消費者の所得、支出、貯蓄、税は、貨幣(円)で評価されます。
 貨幣には、比較時間内の交換手段、価値尺度および異時間の価値比較尺度という機能があります。お店で、台湾パイナップル700円を買うとき、700円と交換して、パイナップルを手にします。700円が貨幣の価値尺度で評価した値です。異時間の価値比較は、次の週、同じ店で、台湾パイナップル1個買うとき、円の価値尺度で、700円で、表示されていることをいいます。このため、貨幣は貯蔵手段として使用できます。さらに、貨幣自体に資産価値があると認識される国債管理通貨制度の時代になり、「貨幣ベール観:貨幣自体に価値がない」という考えは、経済が崩壊している国以外は、取っていません。
 現在、日本国内で、経済取引されるものは、貯蔵価値のある通貨単位(円)との交換比率で表示される相対価格です。りんご1269円といいますが、通貨単位とりんごの相対価格は、円/個という比率で表されます。すべての経済財は単位量が円で評価されます。かつては、金や銀の貨幣がありましたが、紙幣と金との交換比率を法律で定め、兌換紙幣を発行しました。現在は、すべての紙幣は、不換紙幣です。日本も、円が金という金属との公的交換性がなくなり、すべての経済財は円による絶対評価です。継続して、すべての経済財の円評価が増加すれば、インフレーションであり、逆は、デフレーションです。
 現在、植田日本銀行総裁が、ゼロ金利政策は解除しましたが、金融緩和は続行、株式や国債を買い上げ、それらの価格上昇を引き起こしています。財・サービス価格は、海外市場のインフレーションと為替レートの日本円価値減少(減価または円安)により、3%のインフレーション状態が続いています。財は、中国製品を輸入していて、150円台の為替レートですから、輸入価格が上昇しています。サービス価格は、販売、運輸、建設で上昇していますが、財に転嫁されにくいのですが、政府が転嫁するように、大企業に要請しています。3次産業では、労働が生産費のほとんどを占めますから、その産業の賃上げは期待できませんでしたが、政府が、今年の春闘から、中小企業の多い第3次産業に賃上げを要請しました。資産市場価格の高止まりには、金融緩和が貢献していますが、一年間、毎月、生鮮食料品を中心に、値上げが続き、消費者の節約志向が強く働き、消費需要が減少しています。第3次産業のサービス市場には、店舗新築・改装等の投資がありません。

 本題に戻ると、個人がライフ・サイクル理論にしたがって、終身の消費・貯蓄計画を立てるとき、予想所得および個別の品物の予想貨幣価格で計算すれば、ラスパイレス型注)実質化をしていることになります。インフレ時代では、継続的に大幅な物価上昇があり、実質化して、異時間の経済量を比較して、経済成長を実質的に考察する意義があり、物価変数は実質的経済成長論に入りません。日本経済のように、逆に、デフレーションが20年間続き、リフレーション政策を取ったのが、黒田前日銀総裁の超金融緩和です。結果は、%程度のインフレーションとなりましたが、所得は増加せず、実質賃金率が長期間マイナスでした。消費需要増、それに伴う投資増で、経済成長が加速され、インフレが増幅されるという世界には戻れませんでした。
 1970年代、1971年ドル金本位崩壊、変動相場制移行、1974年石油危機、狂乱物価まで、世界経済成長モデルは、実質的経済成長論が全盛期でした。しかし、物価変動が経済成長率より、大きい経済変動をすると、物価予想は、経済成長ないし変動モデルに入ってきます。マクロ貨幣的経済成長論はありましたが、貨幣・資産市場のマクロ動学化は研究が進んでいません。1970年から、ヨーロッパで、Hicks=Patinkinの流れをくむ、ミクロ貨幣一時一般均衡論の数学モデルの研究が始まりました。貨幣・資産市場のミクロ動学化は、研究が進んでいません。しかし、家計部門において、名目ライフ・サイクル理論は、実質モデルに貨幣・債券を入れた予算制約式のもとで、多期間効用関数を最大化するので、形はあまり変りありません。

注)ラスパイレス型価格指数(消費者物価指数CPI)は、比較時の数量は、2年後でなければ手に入らないので、基準時のままとし、比較時の価格は手に入るため、比較時価格×基準時数量で合計した比較時価値合計を作成し、CPI比較時価値合計/基準時価値合計を計算したものです。比較時の価値の実質化は、比較時の価値をCPIで割ります。今回の終わりに、国内総生産GDPの実質化を載せています。

実質ライフ・サイクル理論
 問題4. の解は、次のようになる。
0*a0y0y1/(1i)      c1*(1i) a0y0y1/(1i)} s0 * a0y0y1/(1i)  
      
2              2                 2      
41に、消費者の最適解が原点に凸の無差別曲線と北西から南東へ引かれた直線が、この消費者の予算線である。点Aは、(消費者の初期資産+現在所得a0y0、将来所得y1)の組を表す。点Aをとおる予算線上で、消費者は最適消費量を選択する。選択する判断は、同じ効用を表す無差別曲線u101(定数u1のとき、双曲線として描ける。)と予算線との交点を選ぶ。無差別曲線は、右上にいくほど、選好順位が高くなる。無差別曲線と予算線とが接する点が、消費者均衡点Eである。

名目ライフ・サイクル理論
 問題4. 3の解は、次のようになる。
1*p1e1p2e2m0  c2*p1e1p2e2m0   m1 *p1e1p2e2m0                
        2 p1             2 p2              2  
4. 5に、最適解の点Eを示している。貨幣残高m0があるため、消費は期間1では、e1m0p1まで可能である。
 問題は、予想価格p2である。消費者が現在価格p1と同じp2を予想している場合、p1が十分低い水準から上昇させるならば、予算線EAの傾きは変化せず、m0p1が小さくなるから、点線のように左側へ並行移動し、同じ点線の無差別曲線との新均衡点では、消費財の需要は減少する。これは、実質貨幣残高m0p1が減少するためで、実質残高効果という。
 ところが、消費者が、インフレーションp1p2を予想していると、予算線の傾きはEAより、BAのように傾斜が緩やかになる。需要は、いったん、左へ移動する実質残高効果で減少するが、次に、無差別効用線u2上に移動する異時間代替効果が働き、需要が増加する場合がある。例えば、20223月から、世界ほどではないが、日本も、インフレーションに入っている。収入は上がらないので、購入額ほど、食料品量は買えない。実質残高効果が働く。しかし、インフレーションは続くと考えれば、あがりそうな食品は、今買う方が安く買えると思い、その現在消費量を増やそうとする。これが異時間代替効果である。灯油が上がるから、今、タンクいっぱいにする行動である。
 デフレーションの場合は、傾きは急になる。均衡点は、右に移動する。
 すべての消費者は、インフレーションp1p2を予想し、初期の貨幣残高m0を保有しているとする。財市場において、p1が十分低いとき、競り価格p1を上げると、個別超過需要c1 e1は正である。財市場の総超過需要がゼロにならないので、市場は均衡しない。少なくとも一人の消費者が予想価格p2を固定していると、その人の縦軸切片(p1p2)e1+ e2+m0p2は上昇し、横軸切片e1+m0p1は減少して、BA線が右上に回転移動し、異時間効果が働かなくなる。この人の個別超過需要は0になって行き、市場は均衡する。
 
 貨幣をもつ一般均衡理論では、予想条件では、市場均衡しない場合がある。消費者の将来価格予想が取り扱える点で、実質ライフ・サイクル理論と異なり、将来価格予想を分析できるようになった。さらに、貨幣を公定歩合で各主体に供給できる中央銀行を導入すると、中央銀行は、金融政策の手段である公開市場操作および貸出政策を実施できる。

国内総生産GDPの実質化  
 一国の1年間の経済主体の経済活動は、国民経済計算SNASystem of National Accounts)で測定・記録・公表される。経済基盤情報として、3カ月ごと、前四半期の国内総生産GDP(実際は、GDP確報は2年後公表なので、速報性のある国内総支出GDE,会計上GDPGDE)が政府から公表される。これは、景気観測の情報として重要度が高い。
デフレーターの作成
  基準時を0とし、比較時をtとする。商品は、りんごとみかんとする。
      商品           基準時                      比較時t
                 価格P    数量Q0               価格Pt     数量Qt
      りんご     100      20                 120      30
      みかん      20     100                  30      80
基準時および比較時のりんごおよびみかんの購入合計は、それぞれ、その時点での名目値といい、次の通りである。
ΣP0×Q 100×20  20×100 4,000
ΣPt×Q 120×30  30×80   6,000
これら名目値同士で、購入額を比較するとき、りんごとみかんの価格が変化しているので比較できない。そこで、基準時から価格が不変だったとして、価値額ΣP0×Qを計算する。これを比較時t実質値という。上の例では
ΣP0×Q 100×30  20×80 4,600

実質値  ΣP0×Qtは、変形すると
ΣP0×Qt    ΣPt×Qt    
                 ΣPt×Qt
                
  ΣP0×Qt
このとき、分母の比率(ΣPt×Qt)/(ΣP0×Qt)をパーシェ型価格指数GDPデフレーター)という。この指数で、基準時の名目値を割れば、基準時の実質値がえられる。上の例では

パーシェ型価格指数=(ΣPt×Qt)/(ΣP0×Qt)=6,0004,6001.

しかし、比較時の数量Qtのデータは、すぐえられないので、(ΣPt×Q0)/(ΣP0×Q0)とした、ラスパイレス型価格指数を作成する。これは、消費者物価指数CPIとして用いられている。上の例では、
ΣPt×Q0120×20  30×100 5,400であるから

ラスパイレス型価格指数=(ΣPt×Q0)/(ΣP0×Q0)=5,4004,0001.35

これらの価格指数を、集計量を比較可能にするデフレーターとよび、公表されている。
 
 資産形成論の本文41において、若年世代および壮年世代の消費・貯蓄の決定をそれぞれ2期間モデルで示している。経済学教科書では、2期間モデルによって、ライフ・サイクル理論が説明される。本文の中で、実質所得、実質消費量、実質貯蓄量が使われている。これらは、パーシェ型価格指数またはラスパイレス型価格指数で実質化している。生涯所得の推計という実務(例えば,裁判所の生涯所得推計法)は、比較時の数量Qtのデータが得られないので、価格Ptだけを予想し、基準時の数量データQ0を使うのは合理的である。

国民総生産GNPGross National Product)と国内総生産GDPGross Domestic Product)の概念の違い
「国内」とは、「ある国の政治的領土からその国に所在する外国政府の公館と外国軍隊を除き、領土外に所在する当該国の公館と軍隊を加えたもの」である。「国民」とは国内の居住者である。国内総生産GDPは、国内の要素所得Y(付加価値合計)に固定資本減耗Dおよび間接税-補助金を加えたものである。国民総生産GNPは、国内総生産に海外からの純要素所得ΔFYを加えたものである。

2024年 世界経済・政治の見通し
       IMFOECDADBの経済見通し、IEAOPEC
       ウクライナ戦争、ガザ侵攻と中東、EU・英国、米国、インドおよびASEAN、中国、日本

IMFOECDADBの経済見通しとIEAOPECの石油需要予測
 IMFの世界経済見通し、OECDの加盟国経済見通しおよびADBの新興アジアの経済見通しが、経済成長率とインフレ率の2024年および2025年の予測値が公表されている。
 ウクライナ戦争で、世界インフレがはじまり、中央銀行は、自国のインフレを押させるため、政策決定会議ごとに、政策金利を上げてきた。今年は、インフレ率が、政策金利を下回り、消費需要のインフレ抑制が効いて、GDP伸び率が止まってきている。各見通しは、政策金利とインフレ率の交差から、消費需要のインフレ対応が終わり、遅れた賃金・所得の上昇で、消費需要が回復すると見ている。ユーロ圏・英国では、成長率が25年は、上昇を見込んでいる。しかし、他は、インフレが2%台に落ち着いても、成長率は下がると見ている。 石油需要予測は、IEAOPECともに、25年は、需要が減少する。中国とインドの経済成長率が減少し、石油需要が減る。

IMF世界経済2024年、2025年の見通し      OECD
2024/4/11発表2023   2024   2025   2024/2/5発表2024   2025

  世界GDP  3.2       3.2       3.2          3.1    3.2
   米国   2.5       2.7       1.9                  2.6       2.2
   ユーロ圏  0.4    0.8    1.5                  0.7       1.5
   英国   0.1    0.5    1.5                  0.4       1.1
   日本   1.9   0.9    1.0                 0.5      1.1
 新興・途上国 4.3   4.2     4.2
   中国   5.2   4.6     4.1                 4.9      4.5
   インド  7.8   6.8     6.5                 6.6      6.6
世界インフレ率 6.8   5.9     4.5               

 ADB(アジア開発銀行)の新興アジア経済見通し
 2024/4/11発表     2023   2024   2025
新興アジア        5.0    4.9   4.9
   中国        5.2    4.8   4.5
   インド        7.6    4.8   4.5
新興アジアインフレ率 3.3      3.2    3

 IEA石油需要予測   
 2024/5/15発表   2024     2025
 日量        120万バレル 110万バレル
 OPEC石油需要予測
 2024/5/14発表   225万バレル 185万バレル

ウクライナ戦争
 ロシア軍は、ドンバス地域を202359日の戦勝記念日まで、完全制圧を命令したが、その間目立った戦闘は、バフムート攻防戦に限定され、ワグナー会社と精鋭部隊を投入したが、制圧できなかった。6月ワグナー社は、バフムート市街を奪還、社員を撤退させ、ロストフ市ロシア軍司令部に帰還、モスクワまで進軍、プーチンと決裂、ベラルーシに移動した。その後、プーチンとの話し合いが不調、自家用機と共に、墜落した。
 ウクライナ軍の反転攻勢は20234月からだっだが、EU諸国の戦闘車、戦車、砲弾等軍備と乗員の訓練に遅れがあり、東部・南部の天候待ちで、6月からになった。ウクライナ軍が反転攻勢を開始したが、9月南部戦線で、第1防衛線を突破、ロボチィネ村まで到達したが、米軍の予算が成立せず、弾薬不足に陥り、他方、ロシア軍は北朝鮮から、弾薬、ロケット弾、ミサイルを調達、南部戦線は膠着し、東部のバフムートから、50㎞南、ドネツク市から15㎞のアウディイウカ陣地に、ロシア軍が猛攻をかけて来た。ウクライナ軍は、南部戦線の機械化旅団を救援したが、20242月で、すべての前線で、弾薬はつきて、シルスキー新総司令官は、アウディイウカ守備隊を完全撤退させた。6月からの反転攻勢は、失敗に終わった。その責任は、ウクライナ軍を3方向から攻勢させたこと、軍装備、弾薬も、3分散されたため、ロシア軍を圧倒、突破できなかった。
 大統領選後、反対に、ロシア軍は、ハルキュウ州境とドネツク市間の東部戦線に戦力を集中、特に、202310月から、20243月大統領選の戦果としてアウディイウカ陣地陥落をめざし、兵力・軍装備と北朝鮮砲弾・ミサイルを飽和攻撃し、ウクライナ軍は負けて西方に撤退した
 
2024年~2025年ウクライナ戦争見通し
 ロシア軍は、2年目になる軍事目標である、ドンバス地域を202459日の戦勝記念日まで、完全制圧は達成できなかった。プーチンが新大統領に就任し、現在、新政府閣僚を任命している。ゲラシモフ総司令官は再任、ショイグ国防相は、ベロウソフ新国防相に交代した。ロシア新体制は、プーチンの演説から、特別軍事作戦の続行が、核心にあり、その作戦が終了するのは、クリミア半島、東南部4州を6年間、維持することだろう。その間、軍需産業を主体に、新たに、NATOに加盟したフィンランド・スウェーデンとの国境線から、バルト海、バルト3国・ポーランド・ウクライナ含め、ロシア連邦の熱い国境線防衛に、軍装備・施設を増強、毎年、予算を増やす必要がある。
 2024年前半、ロシア軍はアウディイウカ陣地攻略と、ハルキュウ州まで、バフムートを含む北東部で、西進した。さらに、ハルキュウ州からベルゴロド州に、反ロシア軍事組織が頻繁に奇襲攻撃をかけてくるため、看過できず、5万人5個師団を投入、ハルキュウ州国境10㎞を確保するため、侵略を開始した。ウクライナ軍の軍資源の枯渇を見て、新たに、ベルゴロド州国境からハルキュウ州巾10を侵略したことは、ロシア政府は、敵国がGDP10倍である限り、遠慮なく侵略する意思を示した。ロシア国境周辺国は、この政権がNATO諸国に軍資源で勝てば、問答無用で、侵略をすると、枯渇しないように、軍備を圧倒すべきである。今回のように、ロシア軍が国境を越えてくれば、NATOは、逆に、ロシア領に10km、保安措置で、進軍すべきである。今のロシア政府に、国際法に基づく主張は、聞く耳はもたない。
 2024年後半、ロシア国防予算は、すでに、半分は消化、残り、5兆ルーブルを年末までに消化する。ロシア軍は、バフムート・アウディイウカ・ドネツク市を結ぶ線は、2年間で10兆ルーブルを費やし占領した。2年間で、兵士の戦死傷者30万人以上・陸海空軍装備・外国からの輸入軍装備を消耗した。戦時経済からみれば、流動費30万人は、戦時労働者として、消失した。固定費の海軍艦船、空軍航空機・防空システム、陸軍火砲、装甲車、戦闘車、戦車等を破壊された。プチーチンは、ウクライナ占領地に、新たに、兵士17万を投入するというから、年間、戦時労働者を損失した予測値15万と数値がほぼ一致する。破壊された固定設備は、2024年で、2023年で失われた分を、軍需産業に発注する。ロシア企業の生産能力から、艦船、航空機、装甲車、戦闘車、戦車・S400等、重量設備ほど、年間充足率は落ちる。軍事消耗品である砲弾、ミサイル、ドローンとちがって、艦船、航空機、装甲車、戦闘車、戦車・S400は、外国から購入は出来ない。

 ウクライナ軍は軍重装備を、西側から供与を受けるから、ロシア軍より優越していく。ウクライナ徴兵と適性配属がすんなり、決まり、訓練がすむ20248月以降のウクライナ軍の反転攻勢は、第1次反転攻勢よりは、戦果が確実に見込める。ウクライナ戦争におけるウ・ロ軍装備の優劣が明白になり、NATOおよび日本は、軍重装備は、新装備に切り替えが必要になっている。GDP2%を防衛費に投入する方向に、コンセンサスができつつあり、ユーロ圏20カ国では、2023年名目GDPは、155483億ドルである。その2%は、3109.66億ドル(466449億円)となる。日本は2023年名目GDP5914820億円で、その2%は118296億円である。
 2024年後半、ウクライナ軍重装備は、占領地のロシア軍重装備より、優越していく。昨年秋から、ウクライアン軍は枯渇し、ロシア軍は調達できた砲弾、ミサイル、ドローンは、秋以降、両軍生産、ウクライナは供与を受け、量は11の互角になる。1000㎞のロシア軍防衛線は、南部をふたたび、第1次反転攻勢の3倍で進軍すれば、すなわち、5万以上の5個師団が、秋から、進軍すれば、南部の分断に成功し、東部ロストフ市およびクリミア半島からのロシア軍の兵站は遮断できる。しかし、F16の実戦配備があっても、昨年と同様な、数個旅団1万程度では、2重防衛線と、幹線沿い高地に陣取る火砲群の餌食になり、南部分断作戦は成功しない。

ガザと中東
 2023107日、ガザから、隣接したイスラエル領に、ハマスが奇襲をかけ、村と国際コンサート会場を攻撃し、1400人以上の死傷者と220人の人質をとって、ガザに引きあげた。イスラエル軍は、直ちに、30万人を召集、ガザ北部と南部を分断、北部市民を南部に避難させた後、空爆、市街地と地下トンネルを破壊した。南部と北部を建機で、分断、ハマスと人質解放をカタールおよびエジプトで、継続して、人質半数は、解放したが残りは、解放しない。現在、南部も空爆、エジプト国境ラファ検問所まで、北部と同様、空爆する状態にある。その間、南イエーメンのフーシ派のミサイル攻撃と紅海・アデン湾の商船をミサイル攻撃したが、欧米の艦船が、基地を同様にミサイル攻撃、商船の通航を護衛している。シリア・ダマスカスにあるイラン大使館にいたイラン革命防衛隊幹部をイスラエルが空爆した。イランは、300発ミサイル・ドローンによる、イスラエル報復攻撃後、レバノン・ヒズボラ、シリア・イラク・シーア派のイスラエル攻撃も収まっている。イスラエルのイランへの反撃は、規模が小さかった。
 イスラエルは、南部を北部と同様、空爆で破壊、地下トンネルの基地を破壊するまで、作戦は続行するだろう。停戦できず、南部に潜むハマス隊員は脱出できず、人質は、交渉では、生存しては帰らないだろう。ハマスは、すでに、ガザ居住地はラファ近郊以外、灰塵に帰し、ハマス組織は、ガザ指揮部は壊滅した。ハマスの奇襲目的が、ガザ市民の居住地をそのままに、イスラエルにとらわれている同志を奪還するのが、目的だったとしたら、奇襲は目的を達成できず、220万人ガザ市民をキャンプ生活に追い込んだ責任は重い。ガザでは、ハマス隊員を壊滅させられ、家無き難民220万人市民に、生活保障をする財源もない。2024年ハマス組織は、ガザにおいて、テロ組織となり、恒久的に、ガザで政治軍事活動は出来ない。パレスチナ暫定政府が、家無きガザ市民を説得、自治組織を立ち上げ、国連の支援とともに、ガザ自治を回復するようになるだろう。

EU・英国
 EU・英国は、ウクライナの軍民支援を継続するが、EUで、先端産業の育成に、海外企業を呼び込むことは進展した。ロシアに依存したエネルギー構造から脱却する代替エネルギー設備投資は、期待ほど進んでいない。ドイツは、洋上LNG液化工場船を建造している。EUは、基礎食料の自給率は100%を越えているので、ロシア産の食糧に依存はしない。むしろ、ロシアへの農産物・加工品の輸出が停止し、EU生産者の販路が失われた損失はある。
 昨年は、フィンランドおよびスウェーデンのNATO加盟があった。ウクライナは、EU加盟の候補国になった。今年は、3月から、5月まで、NATO9万規模の大演習が実施された。米国のウクライナ軍支援予算案が4月下旬まで可決せず、ウクライナ軍は、アウディイウカ陣地を占領され、前線は後退した。この事実に、EUの軍需産業は、米国からの武器供与は、信頼できず、NATOのヨーロッパ独自の武器備蓄の必要性が意識された。トランプ氏が大統領になれば、GDP2%を要請するはずである。EU独自で、兵器開発を開始することも、始まった。
 EUおよび英国は、インフレが収まらず、ECBは、4.5%の政策金利を維持、英中央銀行は5.25%である。インフレが続くと、消費者は、節約で対抗するので、消費需要は実質減少していく。日本と違って、賃金は流動的で、インフレに遅れて上昇。消費は手持ち現金で買うので、不必要な財は買わなくなる。景気はなかなか、上がらない。
 ウクライナ戦争疲れ、ガザ侵攻疲れで、消費は委縮しているのは、世界各国皆同じである。ヨーロッパが夏休みに入り、7月、パリ・オリンピックがあり、コロナが弱体化し、再び、世界から観光客が回帰してくる。サービス業を中心に、EU経済回復が加速されるだろう。日本では、春から、大谷事件で、開幕した米メジャーリーグは、大谷選手の活躍で、盛り上がっている。日本人も、ドジャーズが勝ち、大谷選手が活躍すると、元気が出るという人もいるようだ。パリ・オリンピックは、バカンス入りとともに、ヨーロッパの委縮した経済活動を活性化させる。
 英国は、EUを脱退し、NATOとの安全保障は、つながっている。ウクライナ戦争で、ロシアの資源に、依存はしないが、高インフレーションの影響もあって、経済成長が停止した。当時の保守党政権は、EU脱退当時の東欧移住者の増加、漁業の漁獲高の調整がつかず、EUの法制度に従うことを嫌っていた。故エリザベス女王も、暗黙の脱退了解があった。現保守党は、人気が落ちて、EUとの経済協定を加盟国並みにもどす方が、成長率は、回復するだろう。
 ロシア経済は、IMF4月予測では、20243.2%、20251.8%成長である。軍事予算の倍増と、軍事産業に増産させ、外国資本設備を摂取、類似製品を生産したため、成長率が上がっている。ロシア人の夏のバカンスは、パリ・オリンピックでも、ロシア連邦からの観光客はこない。ウクライナ戦争以前は、南欧諸国がロシア観光客の人気地であっただろうが、戦争が長引くにつれ、ロシア人は、東南アジアに行っている。その分、観光収入が減るが、これが、6年間、常態となり、ロシア経済と完全に分断される。

米国
 米国経済は、昨年に引き続き、先進国では、2.7%成長で、インフレ率は直近では3%で、安定している。政策金利5.25%は、インフレ率の2倍あり、利下げが、市場では予想されている。設備投資、住宅建設に影響する長期金利は、直近では、44.539%である。米国では、インフレと賃金率上昇が同時化するから、消費需要は、実質的に変化しない。11月大統領選があり、0.25%利下げが、611日~12日の公開市場委員会で決まる。大統領選の論点として、中国貿易について、バイデン大統領は、戦略物資の取引禁止、半導体工場の国内誘致、トランプ氏は、中国企業のEV車メキシコからの輸入禁止、対中関税を引き上げるという。米中貿易に、直接、減少を狙っている政策は、トランプ氏である。

インドおよびASEAN
 インドは、ウクライナ戦争のエネルギー・食糧インフレーションに対し、エネルギー面では、ロシアから割引価格で、原油を輸入し、国内消費を上回る石油製品は、EUに輸出した。食料は、主食が米であり、ウクライナ、ロシアの小麦粉には依存しない。どういうわけか、米の輸出国だが、輸出禁止にした。エネルギー・食糧インフレーションは、遮断され、高度成長を2年間続けている。
 製造業の発展に、力を入れるようになったのが、最近のインド経済の特徴である。人口成長で、中国抜き、世界一の人口大国になる。インド南部で、ソフト産業が、1985年の頃から、世界的に有名だったが、最近は、人口増を農業部門で吸収できず、余剰人口は、製造業の付加価値の高い産業を育成、雇用し、経済成長することに力を入れ出したのであろう。
 東南アジア諸国は、コロナから、サービス業が回復し、自律成長軌道に入っている。ADBアジア開発銀行の予測では、2024年は成長率4.8%、25年は4.7%、インフレ率は、3.2%、3%である。
 域内の問題は、中国の南シナ海進出に対し、フィリッピン政府が、前政権の中国寄り立場から、対決型になり、漁船、中国海警船との衝突が増え、日本は、巡視船をフリッピン政府に借款している。今年も、追加、建造する。
 ミャンマー軍事政権は、2023年は、反軍勢力の政府軍攻撃が強まり、3方向から、首都ネピドーは、包囲されて、国軍兵士の降伏も多く、徴兵令を強化しているが、隣国に逃れている。中国の軍事支援が、国軍本営に届いているのかわからないが、空軍の空爆は続いている。反軍3勢力に、携帯ミサイルが届くようになれば、国軍機械化部隊による軍事的優位は薄れる。国軍は、兵弾つきて、ネピドーから、市民が避難するような事態にりそうだ。

中国
 中国は、不動産業界の主要企業が、債務超過に陥り、不動産投資は止まり、全国の都市住宅価格は、下落が続いている。台湾侵攻問題で、海外企業直接投資は減少傾向にあり、米国の半導体国内回帰政策で、中国に米先端品が輸出されず、中国先端商品に搭載できず、輸出が減少している。中国は、伝統的雑貨・衣類製造は、米国市場が制限されても、アジア、欧州、経済制裁を受けるロシア連邦には、依然、輸出力は強い。各種ドローン、G対応携帯やEV等の世界最先端、高付加価値製品は、輸出に摩擦がでてきた。
 来年は、製造大国25の完成年であるが、習主席には、その目標は達成できない。その輸出輸入経路である一帯一路も、相手国に、断られる事例も出ている。2025年、不動産市況の回復、不動産投資の底打ちはせず、国有銀行、地方銀行の不良債権処理は、手つかずのようで、金融破たんが発生するまで、その抜本的処理は行われないだろう。

日本
 日本は、岸田首相が、政治資金規正法で、自民党の有力者をはずし、9月までの、総裁選で、選出されないのは明らかで、政権誕生以来、インフレ、円安、安倍氏暗殺、岸田氏暗殺未遂事件があり、国民生活は、毎月3%の必需品値上げで、2023年春闘で賃上げはなく、非正規の最低賃金は十円玉程度の時給を決めた程度の所得では、すべての家計は、節約、倹約生活を1年以上続けていたことが、四半期GDPの消費需要の減少に表れている。岸田政権は、20246月から、1年間、月4万円の減税をするというが、インフレが日本では、2%台になり、中小零細の賃金が3%を越えるのは、今年もむつかしい。IMFは、0.9%の成長率を予想している。日本は、高インフレにはならなかったが、成長率は、1%以下のユーロ圏・英国と同じで、米国が戦争利益を得ている結果になっている。岸田政権は、所得が上がらない中での毎月3%インフレで、国民は、節約疲れしている。マスクをはずすと、カスハラが横行、暴力団のしのぎを求めているのかというとそうでもなく、そういう生活困窮の憂さ晴らしをする人がいる。国民生活は解除後、ネチネチした値上げで、財布は増えず、買い上げ点数を、毎月、減らす生活は、相当こたえるのだろう。政権与党が人気がなくなるのは当然だ。世界各国で、持続的に、消費需要を減少させる無策を続けていると、政権与党への風当たりは強くなる。

今週(2024520日~524)のイベントと市場への影響度
 先週のイベントは、プーチンが、516中国を訪問し、習主席と会談しました。日本企業の3月期決算発表15日から19日までありました。17日黒竜江省ハルビン市を訪問し、ロシアのエネルギーを売り込みましたが、シベリア2の契約はありません。
 今週のイベントは、20日台湾総統頼清徳氏の就任式があります。23日、主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議がイタリアで25日まで開かれます。

 経済統計は、次の発表がありました。
                    予測値     実現値
15日   米4月消費者物価指数      3.4%      3.4
      4月小売売上高(前月比)     0.3%      0.0
16日   日13月期国内総生産     -0.4%     -0.5
           GDPデフレータ   3.3%      3.6
           鉱工業生産    -6.7%     -6.2
     米4月鉱工業生産指数(前月比)   0.1%      0.0
17日   中4月小売売上高        3.7%      2.3
        鉱工業生産指数(前年比)  5.3%      6.7
 経済統計は、次の発表があります。
                     予測値
520日 日全国コンビニエンスストア売上高
22日   日4月貿易統計         -2950億円
       3月機械受注統計        2.4
23日   日4月全国スーパー売上高
       4月工作機械受注額
24日   日4月全国消費者物価指数     2.5
       4月全国百貨店売上高
 
 統計は、国民総支出GDE構成要素、物価、利子率について、日本の発表結果を一覧で以下に表します。

日本          3月         4月         5

GDP(前期比)     
消費コンビニ売上高  97009600万円
  スーパー売上高  14156014万円
  百貨店売上高   5109億円
投資(工作機械受注統計)
輸出         
輸入         
貿易収支      
物価指数       
利子率        0.1
株価(2金曜日の前営業日)
原油価格       
ドバイ、現物1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得(毎月勤労統計) 
完全失業率       
景気動向一致指数    
      先行指数     

米国                 3月                4 月        5

GDP(前期比) 
個人消費
投資(工作機械受注統計)
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       
利子率        
株価(2金曜日の前営業日)
原油価格       
NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率     
景気動向先行指数      

中国                  3月                4 月        5

GDP(前期比) 
個人消費
投資
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       
利子率       
株価
(上海)(2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率     
景気動向指数    


8回目 2024527

資産市場における行動理論
要点 4. 3 債券・株式現物・先物市場一般均衡論
     4. 4 債券期間構造理論

4. 3 3資産現物・先物一時的一般均衡理論
 
 前回の確実性下の貨幣一般均衡モデルを、不確実性下2期間貨幣一時的一般均衡モデルによって、債券・株式の2資産市場を考え、債券・株式の現物・先物価格を決定します。このモデルは、Grandmont,  J.-M., “On the Short Run Equilibrium in a Monetary Ecomomy,” 1974, およびGreenJ.R.,“Temporary General Equilibrium in a Sequential Trading Model with Spot and Futures Transactions,”1974を合体し、筆者が、貨幣があり、現物・先物取引のある交換経済における一時的一般均衡モデル (NishimuraK.,‟Temporary General Equilibrium in Multi-period Forward Markets,”)がもとになっています。
 2資産現物・先物市場において、投資家は、資産価格不確実性に対して主観的確率分布をもち、確実性下の予算制約式と同様に、自己清算制約式のもとで、与えられた現物価格・先物価格に対して、2期間の最適化をし、市場均衡条件をみたす市場均衡解で、資産を交換し、期間2の先物契約をします。主観的確率分布を仮定することが、数学的で、準備がなければ、分かりません。他は、確実性下と同じ設定になります。例として、投資家の効用関数をコブ・ダグラス型として、前回の確実性下の問題と比べつつ、分布関数によらない最適解を求めました。

資産市場における消費者の行動と計画
 消費者は、2期間の永久債の賦存量b0R+ をもつ。ここで,b0は確実に予見できるものとする。計画時の期首に、消費者は負債をもっていないとする。また、消費者は、市場が開かれる前、株式k0 0をもつ。
行動と計画
 2期間の債券の流列を、b=(b1b2R+2、株式の流列を、k=(k1k2R+2とする。今期の先物市場における債券先物契約をcb2とする。消費者は、cb2>0であれば、期間2の期首に債券を受け取る。cb2<0であれば、その逆である。同様に、今期の先物市場における株式先物契約をck2とする。消費者は、ck2>0であれば、期間2の期首に株式を受け取る。ck2<0であれば、その逆である。
 消費者は、期間1において、現物資産市場において、将来債券および株式保有計画を決定する。その後、資産先物市場において、債券および株式先物契約を結ぶ。期間1において、消費者が現物市場と先物市場での取引を決定することを行動actionと呼び、a1(b1k1cb2ck2)R2×R2で表す。次に、期間2の現物市場において、消費者が取引を決定することを計画plansと呼ぶ。期間2の計画をa2(b2k2)R+2で表す。
 期間1において、市場価格ベクトルは、p1 =(pb1pk1qb1qk1 R+4/0}であり、ここで、1は、貨幣の価格であり、p1は、債券・株式の現物価格であり、qは債券・株式の先物価格である。期間2の市場価格ベクトルは、p2=(pb2pk2R+2である。
効用関数
 消費者が、資産流列(b1b2k1k2)を選択する際に、期間1の資産選択行動の成果(b1k1)は、確実性下にあり、期間2の資産選択行動の成果(b2k2)は,不確実性下にあるとする。消費者の資産流列に対する選好は、von Neumann-Morgenstern の期待効用最大化の仮説をみたす。
予想形成
 期間2の現物価格の予想は、先物市場価格qに対して、各期間の現物価格の確率分布ψqを対応させる。これを将来価格の予想形成という。
仮定 44 ψq):R+2 /0M(R+ )
1予想形成ψq)は、M(R+)が確率測度の弱収束の位相をもつとき連続である。
2すべての q R+2 /0に対して、int  co  supp ψqφ
3すべてのq R+2 /0に対して、ψq)(int R+2)=1

 1)は、確率分布ψq)の連続性を、2)は、投資家の主観的均衡のための必要十分条件を、(3)は、1点予想を排除する仮定である。
 
 最適債券量を価格の関数で求め、von Neumann-Morgenstern効用関数uに代入し、予想価格分布ψqによる期待効用vを求める
仮定 45   v u1+∫R u2b2(p1),k2(p1)dψ(q           
現物市場に対する予算制約式
 消費者は、 現在においても将来においても、プライス・テーカーであるから、期間1において、価格ベクトルp1を所与として、 pb1b1pk1k1pb1b0pb1k0に制約された行動(b1k1)を選択しなければならない。次に、期間2で不確実性下にあるため、消費者は、期間2で実現する現物価格p2を所与として、計画(b2k2)を立てる。期間2の予算制約集合は、pb2b2pk2k2pb2b1pk2k1と表す。
選好ルール
 期待効用関数vは、市場価格p1 を所与として、任意の行動a1a1に対して、成果の空間で定義された選好関係cと次の関係があるとする。

p1を所与とし、任意の行動a1a 1∈β1p1 に対して、v(p1a1)v(p1a1′)であるならば、そのときにかぎり、a1 p1c a1とする。
先物市場に対する予算制約式
 現物市場の最適化問題41から、最適債券量b1最適株式量k1が求められた。先物市場では、自己清算取引戦略qb2q k2)・(cb2, ck20が予算制約式となる。これにより、自己清算取引戦略であれば、いかなる契約価格qqb2q k2)であっても、富W2pb2・(b1cb2pk2・(k1ck2はヘッジされる。
仮定 46  qb2q k2)・(cb2, ck20。                   
 先物市場における消費者の予算制約式は、
β2cp2)={(b2k2A2pb2b2pk2k2pb2・(b1cb2pk2・(k1ck2)}と表す。
 期間2の期首における支払い可能条件を次のように仮定する。
仮定 47  任意のpb2pk2suppψq)に対して、pb2・(b1cb2pk2・(k1ck2)≧0

現物・先物市場における消費者の最適化
 消費者の最適化問題は、次のように設定される。価格ベクトルp1と賦存量(b0k0を所与として、予算制約式のもとで、期待効用関数vを最大にする行動(b1k1)および計画b2k2)を決定する。以下、効用関数は、コブ・ダグラス型を仮定し、テキストにある、問題4. 4,問題4. 5、問題4. 6をそれぞれ、次の例題で計算する。この最適化問題は、ダイナミック・プログラミングによって解く。ステップ1では、次の問題を解いて、現物市場における行動(b1k1)を決定する。

例題 4. 1 pb1pk1)、 (b0k0) を所与として、
   max   u1b1k1subject to pb1b1pk1k1pb1b0pk1k0
b1k1}                       
  u1b1k1b1(pb1b0pk1k0pb1b1)pk1
   =pb1(bb1pb1bb0pk1bk0) 2(pb1bb0pk1bk0) 2
     pk1     2 pb1            4 pb1 pk1

効用関数が最大になるb1k1は、
   b1pb1bb0pk1bk0 k1 pb1bb0pk1bk0 
          2 pb1                            2 pk1                     
 
 先物市場における最適解は、2段階で求められる。第1段階は、例題4. 2のように、期間2の価格p2を所与とし、期間2の予算制約式の下で、効用関数u2を最大化することにより、期間2の計画b2k2)を決定する。そして、例題4. 2の解b2k2を期待効用関数vに代入し、第2段階の例題4. 3に進む。

例題 4. 2  p20 b1k10を所与として、
    max  u2b2k2 subject to pb2 b2pk2k2pb2b1cb2pk2・(k1ck2
  
{ b2k2 }
 u2b2k2b2{pb2b1cb2pk2・(k1ck2)-pb2b2}pk2
   =pb2{b2pb2b1cb2pk2・(k1ck2} 2
     pk2     2 pb2                 
                            (pb2b1cb2pk2・(k1ck2) 2
                                        4 pb2 pk2          

b2pb2b1cb2pk2・(k1ck2k2 pb2b1cb2pk2・(k1ck2) 
         2 pb1                                          2 pk1             


 ステップ2では、次の問題を解いて、最適債券・株式の最適契約(cb2ck2)を求める。p2 を基準化すると、解が陽表化できる。

例題   43   債券・株式先物価格qを基準化して、q=(1qk20のもとで
    max  b2k2d ψ(q)subject to qc= 0 。  
  { cb2ck2}          
 

Lb2k2d ψ(q)-λqc
   ∫{pb2b1cb2pk2・(k1ck2))}2 d ψ(q) -λqcとおく。  
                   4 pb2pk2
 ∫{pb2b1cb2pk2・(k1ck2)}d ψ(q)=λ
         2pk2

 ∫{pb2b1cb2pk2・(k1ck2)}d ψ(q)=λqk2qc0
            2 pb2                                      

 さらに、債券・株式予想価格p2を基準化して、p2=(1pk20とする。例題43は、次のようになる。最適解は、E[1/ pk2]およびEpk2]に依存し、その分布関数形に依存しない。

例題   44   債券・株式予想価格p2を基準化して、p2=(1pk20とし、債券・株式先物価格qを基準化して、q=(1qk20のもとで
     max  b2k2d ψ(q)subject to qc= 0 。
   { cb2ck2}           

   b1cb2E[1/ pk2]+(k1ck2)=λ

         2
b1cb2+(k1ck2Epk2]=λqk2、λを消去して、
             2              

b1cb2+(k1ck2Epk2]=qk2b1cb2E[1/ pk2]+(k1ck2)}
 (cb2ck2)1qk2)=0は、cb2qk2 ck2であるから、上式に代入して、

b1qk2 ck2+(k1ck2Epk2]=qk2b1qk2 ck2E[1/ pk2]+(k1ck2)}。 
qk2Epk2]-qk22 E[1/ pk2]ck2qk2b1E[1/ pk2]k1)-(b1k1Epk2])。
ゆえに、最適先物解は、
ck2{qk2b1E[1/ pk2]k1)-(b1k1Epk2])}/qk2Epk2-qk22E[1/pk2]
cb2qk2 ck2                                      

4. 4 債券期間構造理論

 ライフ・サイクル理論にもとづくならば、各年齢の消費者は、残りの生存期間に得る所得を平均化して、一定の消費額を決め、残りを貯蓄する。さらに、資産選択理論にもとづき、消費者は、貯蓄を安全資産と危険資産に分けて、資産運用を計画する。ただし、資産選択理論は、安全資産と危険資産の配分を決めるが、消費者が、その比率で、安全資産と危険資産を、それぞれの市場でどのようにして獲得できるかは示していない。本教室では、4.8で、各資産市場均衡を理論的に考察しているので、資産選択理論を資産市場の一般均衡とつなぐ。現実に、利用可能な需要関数を求める。
 経済理論では、異時間の交換比率として、利子率がもちいられる。現実の資産市場では、債券と株式の金融商品が取引され、市場均衡債券価格および株式価格が決まる。債券価格と株式価格は、実際に受け払われる単位価格である。債券利子率および株式収益率と債券価格および株式価格との対応関係を定義する。すなわち、貨幣で取引される現実の資産市場を、経済理論市場で均衡を考察するために、変数を変換する。
 危険資産のうち、債券と株式の特性を経済理論で分かっている特性と、個別企業の株式価格および経営成績・財政状態の報告書から導く特性を説明する。

債券利回りと債券市場価格の関係
 6回目において、単利の最終利回りRn
Rn = C+(FP)/n
       P
複利の最終利回りRn
P(1+Rn)nC(1+Rn)n-1C(1+Rn)n2 +C(1+Rn)CF     
によって、定義した。各期間の短期利子率は、通常異なるから、残存期間n、第i期間の予想利子率をri、長期利子率をRnとする。
 金融理論において長期利子率Rnと各期間の短期利子率riとは、関係があるとする立場と関係はないとする立場がある。前者は、LutzおよびHicksが主張した利子率の期間構造論であり、後者はCulbertsonの主張したヘッジ(掛け繋ぎ)理論といわれる。
Lutzの要点は、市場関係者の完全予想を仮定し、Rnriの平均であり、期間構造は利回り曲線によって決定される。
HicksLutzの理論を引継ぎ、不確実性下、予想短期利子率を先物短期利子率に置き換えて、Lutz理論が成立すると主張した。現代の期間構造理論は、Hicksの流動性プレミアム理論にしたがっている。
 HicksLutzの予想理論を受け継ぎ,以下を仮定する.
 ・ 将来の債券価格は不確実であり,評価損を先物で回避する.
     長期貸付は期間1の直物貸付けと残りの期間の先物貸付からなる.
予想短期利子率は,先物短期利子率に代えられ,次のように定義される.
 先物短期利子率 fi = ri Lii 2, , n
 予想短期利子率 ri
流動性プレミアム LiL2L3<…<L n
 単利の場合,長期利子率は
  RnR1r2 L2)+…+(rn Ln)    1  ∑(R1ri)+ 1 Li             1
                             n                n                    n
Lutzとの違いは、流動性プレミアムの平均が加わることである。
1)式の左辺は、長期利子率であり、右辺は、長期利子率を先物短期利子率で表した平均利子率である。長期債券市場と各期の先物債券市場は、期間1の直物貸付けと残りの期間の先物貸付で構成された平均長期利子率とで裁定取引が行われ、市場均衡では、1)式の裁定取引式が成立すると説明される。
 ヘッジ理論は、自己の負債Bの満期時点が来るとき、その満期時点に資産Aを合わせて、BAとすれば、途中の短期利子率が変動しても、返済不能にならない。
 本教室では、先物債券市場は、ヘッジ理論に従っている市場均衡論を説明している。①期間構造をいれた多期間モデルで、資産市場の一般均衡論の立場から、期間構造が決まる理論がある。さらに、オプション理論は、デルタ・ヘッジ戦略にしたがった裁定取引式が成立する。②短期債券市場と長期債券市場において、市場均衡すれば、期間構造論の主張する1)式の裁定取引式が成立するのかを理論的に示す試みはある。③また、現実市場のデータから、期間構造論のイールド・カーブを推定する試みもある。
 ④一般的には、期間構造論は離散期間であるが、オプション理論では、ブラック・ショールズ連続モデルが基本であり、瞬間的利子率をもちいる期間構造モデルがある。資産市場の一般均衡論の立場から、連続一般均衡モデルに拡張して、期間構造を示すことはできる。
以上、①の離散時間で,一時的一般均衡理論から,現物・先物資産市場均衡を示すことは、私のモデルで、提案している。②については、オプションの連続モデルで、金利については、平均回帰する確率微分方程式をもちいて、期間構造を示すことは、各モデルがある。③は、それらのモデルに従い、イールド・カーブを推定している。④については、連続的一般均衡理論になるが、確率微分方程式による動学一般均衡理論は、開発中である。本教室では、2期間のオプション理論を例示した。連続時間のオプションは、ブラック・ショールズ連続モデルを要約しただけである。次は、多期間、連続時間のオプション理論を紹介する。①および②の債券の期間構造の決定理論は、それらを応用して、示す。

債券投資リスクの測定
 イールド・カーブ(yield curve)の形状
 期間構造理論では、利回り曲線は、債券市場の予想形成によって、イールド・カーブ(yield curve)の形状は、縦軸に利子率R、横軸に満期期間(残存期間)yearをとると、4種類(図45)ある。実際、債券の種類は、満期期間(残存期間)、クーポン、公社債の発行主体、発行方法によって、多種多様であり、イールド・カーブが専門誌で日々公表されるほど、期間構造が分析上、重視されているとはいえない。Hicksの理論で、国債先物短期利子率を代入して、イールド・カーブを図示すると、市場では、先行き何年で、利子率が上昇すると予想しているか、すなわち、水平から順イールドに転じるかが推測できる。
 デュレーション
 市場利子率が変化すると債券価格の変化はどの程度かを測る指標がデュレーションである。デュレーションDは、(1+R)がパーセント変化したときの債券価格Pのパーセント変化として、Pのパーセント変化/(1+R)のパーセント変化を計算する。この比を債券価格の(1+R)弾力性と定義する。(読み方が、分子の分母弾力性となることに注意)
D=- dP /P   。変形して、  dP  =-D P            (1)
   d (1+R)(1+R)        d (1+R)     1+R
デュレーションの値が大きくなると、弾力性が大きい。利子率の変化に対して債券価格の変化が大きいことを意味する。

 最終利回りの計算式P(1+Rn)nC(1+Rn)n-1C(1+Rn)n2 +C(1+Rn)CF を市場利子率Rで置き換える。
P C  +  C  C    CF               (2)
  1+R       (1+R) 2    (1+R)n-1   (1+R)n 
取引する債券のクーポンC、満期期間n、額面Fは、決まっているから、投資家の評価する利子率Rが、債券市場で決まる。(2)式を1+Rで微分すると
dP     =-{ C  (n1) C    n(CF) 
d (1+R)            (1+R) 2               (1+R)n      (1+R)n+1
    = 1  C  (n1) C    n (CF) }      (3)
      1+R  1+R             1+R)n-1       (1+R)n
(1)  式と(3)式を比較して
D={  C    (n1) C    n(CF) }。          (4)  
   (
1+RP              (1+R)n-1P     (1+R)n P
デュレーションDは,満期までの年数の加重平均であり、債券の平均回収期間を表している。デュレーションの特性は、(4)式から、 
                   デュレーションの値
残存期間n    長い     項数が増えるから、大きい
クーポンC   大きい    分子の債券価格Pが大きくなるから、小さい
利子率R    大きい    分母の各項の1+Rが大きくなるから、小さい

債券投資戦略にデュレーションは応用することができる。
コンベクシティ(Convexity
さらに、近似精度を上げるために、価格変化に対してテーラー展開式を用いるコンベクシティ(Convexityがある。
(2)式の債券価格関数を、現在利回り1+R0のまわりで、テーラー展開すると、
ΔP  dP    Δ(1+R) d2P    Δ(1+R) 2+…+      dn1P    Δ(1+R) 2Rn  (5) 
     1!d (1+R)         2!d (1+R) 2       (n1)d (1+R) n1
Rnは剰余である。 (3)式を微分して、
 d2P    1・2C  (n1) C   n(n1) (CF) 
d (1+R) 2     (1+R) 3                  (1+R)n          (1+R)n2
d2Pd (1+R) 2 )/P Cvコンベクシティ(Convexityと定義する。(5)式から、
Cv d2P     1  [ 1・2C  (n1) C   n(n1) (CF) ]  1  
   d (1+R) 2   P         (1+R) 3                  (1+R)n          (1+R)n2            P

テーラー展開式(5)Pで割り、第二項まで取ると、
ΔP   dP     Δ(1+R)  d2P      Δ(1+R) 2
P   1!d (1+R)   P       2!d (1+R) 2   P
  =- D Δ(1+R)  Cv Δ(1+R) 2
    1+R          2
これは、債券価格の変化率は、デュレーションとコンべクシティで近似できることを表している。
2項は、正であり、利子率の変化が大きければ、価格変化率は正に大きくなる。コンべクシティが大きい債券ほど、価格上昇の効果が大きいと期待できる。

市場リスクValue at Risk(VaR)
 (2)式に定義したように、債券価格Pは、債券の満期期間までの利息と償還元本の現在価値Pである。満期時点Tで、債券の価格変動ΔPは、ある水準-xを下回るという確率事象が確率αで生じるとき、債券の水準100(1-α)%の期間TVaRと定義する。

Pr[ΔPx]α

満期時点tに依存して、割引利子率Rtは、市場で決まる。イールド・カーブは、満期期間を横軸に、割引利子率Rを縦軸にとって、描いた曲線である。実際は、満期期間は、離散的に決められるから、連続的なイールド・カーブは市場データからえられない。有限個の市場利子率データから、イールド・カーブを推測し、その変動モデルを作成する理論がある。イールド・カーブ変動モデルから、デュレーション・コンべクシティを計算することができる。また、デュレーション・コンべクシティから、VaRを求めることができる。

信用リスク(債務不履行リスク)
 債券は、信用リスク(債務不履行リスク)があり、格付機関が、債券を格付けしている。銀行では、各貸付金に対して、その貸付金が債務不履行におちいった場合、損失を5段階に評価し、貸倒引当金を準備する。その貸付金評価モデルといえる。信用リスクを計量するには、統計学の知識をもちい、倒産確率を推定する。倒産確率をもったまま、倒産確率過程のモデルを作成する。
 債券の信用リスクは、無リスク資産である国債と事業債の利回り格差(イールド・スプレッド)は、信用リスクの期待収益を表しているとみる。イールド・スプレッドを推計するモデルが考えられている。

今週(2024527日~531)のイベントと市場への影響度
 先週のイベントは、20日台湾総統頼清徳氏の就任式がありました。23日、主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議がイタリアで25日まで開かれました。
 今週のイベントは、30日、NATO外相会議がチェコで31日まで開かれます。31日、アジア安全保障会議がシンガポールで、62日まで開かれます。
 経済統計は、次の発表がありました。
                                                        予測値   実現値
520日 日全国コンビニエンスストア売上高          95394500万円
  22日 日4月貿易統計            -2950億円  -4625億円
      3月機械受注統計            2.4%    2.5
23日   日4月全国スーパー売上高              11463207万円
       4月工作機械受注額                11726200万円
24日   日4月全国消費者物価指数        2.5%     2.5
       4月全国百貨店売上高               4441億円
 経済統計は、次の発表があります。
                                                      予測値
527日 日4月景気先行指数                       111.4 
        景気一致指数                        113.9
31日   日4月有効求人倍率           1.28
       4月完全失業率             2.6
       4月東京消費者物価指数         1.9
       4月鉱工業生産指数          -1.2
      米4月個人所得             0.9
         4月個人消費支出           0.3
       4PCEデフレータ          2.7
 
 統計は、国民総支出GDE構成要素、物価、利子率について、日本の発表結果を一覧で以下に表します。
日本          3月          4月         5

GDP(前期比)     
消費コンビニ売上高  97009600万円      95394500万円
  スーパー売上高  14156014万円   11463207万円
  百貨店売上高   5109億円       4441億円
投資(工作機械受注統計)                11726200万円
輸出         
輸入         
貿易収支      
為替レート(/ドル)   147.46           153.01       155.58
(2金曜日の前営業日) 3/8             4/12        5/10
物価指数       2.5%
利子率        0.1
株価(2金曜日の前営業日)39,688.9        39523.55     38229.11
原油価格       83            90.4        84.9
ドバイ、現物1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得(毎月勤労統計) 
完全失業率       
景気動向一致指数    
      先行指数     

米国                 3月                4 月        5

GDP(前期比) 
個人消費
投資(工作機械受注統計)
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       
利子率        
株価(2金曜日の前営業日)
原油価格       
NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率     
景気動向先行指数      

中国                  3月                4 月        5

GDP(前期比) 
個人消費
投資
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       
利子率       
株価
(上海)(2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率     
景気動向指数    


9回目 202463

4.5 株式の収益率と株式市場価格
4.6 株式オプション価格の二項過程モデル(離散確率過程)
4.7 Black-Scholes オプション価格の決定論(連続確率過程)

要点  株式の収益率と株式市場価格
     株式オプション価格の二項過程モデル

4.5 株式の収益率と株式市場価格
 
 各種の株式収益率を定義し、株式投資の指標としての役割をのべる。 企業の経営成績は損益計算書、企業の財政状態は貸借対照表で情報開示される。投資家は、これら財務諸表から、総資本事業利益率(ROA: Return On Asset)および自己資本利益率(ROE: Retun On Equity)投資判断の指標を導いている。ただし、会計期間が1年であり、四半期で仮計算される企業もある。国民経済計算と同様に、速報と確報がある。

                                              財務指標と株価の関係

                    ROA
                            事業利益
             ROE      資産
            税引き後利益
     EPS      自己資本   ×
     税引き後利益   ×    資産
     株数      自己資本  自己資本
株価    ×      株数    レバレッジ(てこ率)
     株価      BPS
     EPS      
     PER      

     株価
     1株当たり純資産(BPS
     PBR

表において、上下の比率をかける(×)とその前の比率になる。株価=EPS×PER

 ROEおよびROAは、財務諸表の損益計算書と貸借対照表のデータによる比率である。PERPBRはともに株価が分子であり、分母は1株当たり税引き後利益、1株当たり純資産をそれぞれあてる。株価は取引日ごとにデータが得られるが、分母は前期の損益計算書と貸借対照表のデータである。相場の変動により、営業日で変化するのはPERPBRであり、これらは、株価の市場評価を表す比率として株式投資の参考指標に使われる。投資家は自己資本あるいは資産を期間内有効に使って、利益を上げる比率として、ROEおよびROAを意識するから、経営者が株主総会でそれらを経営目標として意識しているならば、決算でその結果を示す。
 
 米国では、経営者は、利益至上主義であるから、ROEおよびROAは、株主に答える経営目標である。日本の経営者で利益至上主義は、前ゴーン日産社長やソフトバンク社長であるが、少数である。ゴーン氏はレバノン生まれ、孫氏は在日韓国人である。日本の企業も国際化し、外国人経営者も増えているが多くはない。ROEおよびROAの比率を経営目標として、意識する人はあまりいない。業界横並び的配当政策と、その控えめな配当に、見合った経営報酬を得ることで満足し、会社やっていますという社長は多い。
 
 株式市場における投資理論は、株価と1株当たり税引き後利益または1株当たり純資産の比率を参考指標にするように、株価は、配当率EPSまたは純資産比率BPSに依存して決まると考える。株式市場の株価形成の決定的理論は、ほとんどないが、企業の投資理論は、今期以降の配当系列と実物資産の将来最適資本量を計算することによって、今期以降の投資計画が決まることを示す。株式市場の投資家は、次期以降の利益と投資計画を株価に織り込むことで、日々、株式市場において、株式を売買し、株式保有の最適資産選択を構成している。
 
 債券オプションには、債券市場価格形成の一般均衡理論を織り込む理論があるが、株式市場価格形成の一般均衡理論は、理論化されていない。株価形成を説明する、主要な2つの要素、利益予想と純資産の最適量の評価が株価形成に影響する株価決定論がないためである。

46 株式オプション価格の二項過程モデル

 Black-Scholes[1973J.P.E.81石村貞夫・石村園子『金融・証券のためのブラック・ショールズ微分方程式』東京図書、部分訳第11190 -199]の評価公式は、株式市場およびオプション市場に対して、 7条件を仮定している。
 Black-Scholes金融市場は効率的な完全競争市場である。しかし、オプション市場は、経済学の市場機構は設定されない。オプション理論は、「金融工学」の理論であるということが強調される。したがって、貸付市場および債券・株式市場の市場均衡価格は、オプション理論では、所与とされる。
 オプションは、株式市場で、将来のある期日に、ある企業の株価が想定以下、また以上になると、投資家は、損失が出るので、その場合は、買いまたは売りが放棄できる契約がり、現時点で、放棄のオプションに対する権利を、ある価格で売買する。先物契約は、損失が出る場合も契約を履行しなければならない。
 オプション商品があれば、先物契約よりは、投資家は、損失価値を放棄できる。契約の相手側は、逆に、損失価値を負担するから、権利放棄前払い金を高くしたい。双方にとって、合意できるオプション代金(価値)を決めたい。現物・先物市場は、市場参加者の売買の動機が経済学的な法則に従うが、オプション市場は、現物・先物市場取引を前提として、それらの価値を所与として、損切り契約ができるようにする。そのような虫の良い商品が、現物・先物市場で取引された商品をもとに、どのように、作成されるかが、オプション理論である。その中心戦略は、掛けつなぎ(Hedge)である。オプション市場参加者は、将来期日での、ある資産の権利行使価格を想定する。将来期日において、予想価格分布にしたがって、資産市場価格が実現するが、オプション取引参加者は、どのような資産価格が実現しても、そのオプション価値が変動しないことを期待する。
 
 掛けつなぎの(ヘッジ)戦略は、どのような資産価格が実現しても、純資産価値=資産価値-負債価値が非負(純資産価値0)となるように、資産および負債を現時点で、構成する。純資産価値=0であれば、損も得もしない。
 
 オプション商品は、損失を0にする契約であるから、ヘッジ戦略を取っているが、商品が1種類、オプションだけでは、反対側の商品がない。そこで、現時点で現物商品を購入させ、満期日契約商品(オプション)とで、ポートフォリオを組み、純資産価値0となるように、ヘッジする。すなわち、同一原資産である(現物・オプション)商品をポートフォリオに組むことで、ヘッジするのである。

 Black-Scholesでは、
「原資産を株式とし,時点tにおける株価をxt)とする.オプションの値をw(xt)とする.オプションは,株式の買い建て1株とそのオプションの売り建てを同時に行うヘッジ・ポジションをとる.すなわち,時点tにおいて,xt)×1w(xt)×オプション数=0となるように,オプション数Cを決めれば,任意の価格(xtw(xt))で相殺される.」
とある。
 前述の先物理論において、同時期の債券と株式で、自己清算条件、仮定4. 6qb2q k2)・(cb2, ck20を投資家に付けていることは、同様なヘッジしているのである。価格変化で、将来賦存量の価値変動を、先物契約によって、2種類以上の商品で、1商品の売りに対し、他の商品の買いに「掛けつなぎ(満期到来の資産に、同時期の負債を対応させる。)」、変動をゼロにしている。

 二項過程の1期間モデルにもどって、コール・オプション1単位の売りにその株式δ単位を購入するポートフォリオを考える。δをヘッジ比率という。二項分布で,STKSTとする。投資家が、デルタ・ヘッジ戦略をとるならば、「満期時Tのポートフォリオ(1,δ)の価値は、いかなる資産価格(CTST)でも、同じであるから,(-CT ST)(1,δ)=(0 ST)(1,δ)とする方程式から、δCT(STST)。株式のヘッジ比率が決まる。ここで、満期時Tのコール・オプションの価値CTMax[0STK]および株式価格STKは権利行使価格する。数値例では、確率0.5で、ST 120円とST 80円、権利行使価格はK 100円であり、二項分布の平均値は、0.5×1200.5×80100である。権利行使価格は平均値に設定されている。

 さて、δは決まったが、現時点でのコール・オプションの価値Cは決まらない。そこで、現時点のポートフォリオの価値-C×1S×δを資金市場において、利子率rで、満期Tまで運用すると、ポートフォリオの価値-CT×1ST×δに等しくなるはずである。なぜなら、価値が等しくなければ、現時点での資産運用を投資額の低い方へ投資する裁定取引が働き、価値が等しくなるよう調整する。
 将来収益が同じであるが、企業財務構成が異なる、2つの企業が、市場で異なる企業価値が成立すると、裁定取引によって、企業価値が同じになるように、市場で評価が調整され、同一の企業価値になるという説明をもちいる。
ゆえに、(1r)(C×1S×δ)=-CT×1ST×δから、

C=(CT×1ST×δ)/(1r)S×δ

のように、コール・オプション価値Cが求められる。

 テキストでは、
①俊野雅司・大村敬一『ゼミナール オプション 仕組みと実際』東洋経済新報社,1993年,pp. 94-68
SharpW.F., Investment, 1978 (岩田暁一『先物とオプションの理論』東洋経済新報社,1989年,pp. 122-124)
Cox, J.C., Ross, S.A.,Rubinstein,M. “OptionPricing:A Simplified Approach,”J. F. E 7(1979)229-2631
による、二項過程モデルを紹介している。

①モデルのポートフォリオは、ヘッジド(hedged)・ポートフォリオ:コール1単位の売りと株式x単位の買いを組み合せ」でポートフォリオを生成する。
デルタ・ヘッジ:満期時点で、どんな株価およびコール価格に対しても、ヘッジド・ポートフォリオの収益を同じにする。
②および③モデルは、コピー(replicate)・ポートフォリオ:コールの収益と、資産市場で他の商品と組み合わせたポートフォリオの収益が一致するポートフォリオが生成できれば、コールの収益のコピー(replicate)ポートフォリオという。

テキストで示すように、①、②および③は、みな、デルタ・ヘッジしているから、コール・オプションおよびプット・オプションの価値公式が同値なのである。

 オプションは、現物・先物市場をもとに、証券取引所・証券会社で、5つ以内の権利行使価格が提示され、以上のヘッジモデルから計算されたオプション価値で売買する仕組みである。通常の市場環境では、権利行使価格が先物市場価格の幅に入っており、満期時の確率分布は、個人の予想分布でなく、証券取引所・証券会社の決める対数正規分布である。いくらヘッジされた商品であっても、市場環境の激変では、契約の権利行使価格は、幅をはずれることがある。基本的には、収益を期待する商品ではないから、ヘッジか池での指摘されるように、ヘッジ幅から、著しくかい離すれば、ヘッジ機能を果たさない場合がある。経済学の立場から言えば、オプションは、先物市場に直接影響を与えるというより、先物市場から、派生した商品であると認識した方がよいだろう。

今週(202463日~67)のイベントと市場への影響度
 先週のイベントは、30日、NATO外相会議がチェコで31日まで開かれました。米国が、ウクライナに供与するミサイルをロシア国境に属するロシア領に使用する許可を与えました。ロシア政府関係者は、大いに反発しています。31日、アジア安全保障会議がシンガポールで、62日まで開かれました。
 今週のイベントは、4日インド総選挙の開票が始まります。サンクトペテルブルク国際経済フォーラムが8日まであります。6日欧州議会選挙が、9日まであります。欧州中央銀行理事会が開かれます。

 経済統計は、次の発表がありました。
                                               予測値   実現値
527日 日4月景気先行指数              111.4     112.2
        景気一致指数               113.9     113.6
31日   日4月有効求人倍率     1.28倍    1.26
        4月完全失業率      2.6%     2.6
       4月東京消費者物価指数   1.9%     1.9
       4月鉱工業生産指数    -1.2%    -1.0
      米4月個人所得        0.4%     0.3
         4月個人消費支出     0.3%     0.2
       4PCEデフレータ     2.8%     2.8

 経済統計は、次の発表があります。
                                               予測値 
63日 米5ISM製造業景況感指数   49.8
5日   日4月毎月勤労統計       1.7
6日  EU ECB政策金利        4.25
    米4月貿易収支        -700億ドル
7日  日4月家計調査          0.5
     4月景気動向指数先行         
            一致          
   米5月雇用統計                            3.9
   中5月貿易統計

 統計は、国民総支出GDE構成要素、物価、利子率について、日本の発表結果を一覧で以下に表します。
日本          3月          4月         5
GDP(前期比)     0.5
消費コンビニ売上高  97009600万円    95394500万円
  スーパー売上高  14156014万円 11463207万円
  百貨店売上高   5109億円       4441億円
投資(工作機械受注統計) 13565000万円   1209200万円
輸出         93767億円    89807億円
輸入         88797億円    94433億円
 貿易収支        4910億円     Δ4625億円
為替レート(/ドル)  147.46        153.01       155.58
物価指数       2.7%             2.5%
利子率        0.1%                        0.1%
株価         39,688.9        39523.55      38229.11
(2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
原油価格       83           90.4        84.9
ドバイ、現物1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得(毎月勤労統計) 
完全失業率       2.6%         2.6
景気動向一致指数   111.6         113.6 
      先行指数    111.8         112.2 

米国           3月            4月         5
GDP(前期比)     2.5
個人消費       0.8%       0.2
投資(耐久財受注)   0.8%        0.7         
輸出         25762000万ドル 24901500万ドル
輸入         32699200万ドル 32356700万ドル
 貿易収支      Δ694億ドル     Δ746億ドル
物価指数       3.5%         3.4
利子率        5.25%        5.25
株価(NY)     38722.69       37983.24      39512.84
2金曜日の前営業日) 3/8         4/12       5/10
原油価格       78.01         85.41        78.26
NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得                0.5%         0.3
完全失業率      3.9

中国           3月             4月         5
GDP(前期比)     5.3
個人消費       3.1%       2.3
投資
輸出         
輸入         
 貿易収支    Δ4159億元      5135億元  
物価指数      0.5% 
利子率        
株価(上海)      3046.02       3619.47       3154.55
(2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
個人所得      
完全失業率     
景気動向指数       


10回目 2024610

要点 5.最適資産選択理論
     5.1 資産選択理論
       1) 1安全資産と1危険資産
       2) 2危険資産
       3) 1安全資産と2危険資産

5.1 最適資産選択理論

・各資産を収益率で比較し、ポートフォリオ(資産の一覧表)を作成する。
・各期待収益率に対し、リスク(分散)を最小にするポートフォリオ(有効フロンティア)を作成する。
・投資家は資産の収益率の確率分布を選び、収益率の実現値に対して効用をもつ。
・投資家は、有効フロンティア上で、期待効用を最大にするポートフォリオを選択する。

 今回は、証券投資の教科書で看板の一つである、資産選択理論あるいは平均・分散分析を、もっとも簡単な貨幣・債券の2種類の資産がある場合、債券・株式の2危険資産および貨幣・債券・株式の3資産の場合を説明する。
 消費者は、給与、賞与を定期的にえると、ライフ・サイクル理論で、毎月、貯蓄額を決める。第6回目の練習問題1では,ある個人が第1期において得た100万円の所得を2期間にわたって全部支出する。個人の効用関数は、u C1C2u:効用水準,Ci:第i期の支出額(i12)〕で示され,個人の第1期における貯蓄には5%の利子がつくものとする。個人は、2期間の予算制約式C1S1900,000C21.045S1のもとで、個人は効用最大化を図る。これが、ライフ・サイクル理論である。
 ライフ・サイクル理論で決まった貯蓄額を他の資産に投資する際、将来価値変動しない特性のある貨幣と、確率的に価値変動する債券の分け方(割分)を決定する。これを資産選択理論という。
 ライフ・サイクル理論は、予算制約式のもとで、消費者の効用関数を最大化する消費量を求めるが、資産選択理論は、「期待収益率に対して、ポートフォリオの分散を最小化する有効フロンティアのもとで、期待効用関数を最大にする最適な投資割分を選択する」。

ポートフォリオ(資産の一覧表)の作成
 これまで、金融商品は、現預金、債券、株式の3資産の特性を数値で評価した。ここでは、現金(貨幣)、利付債、株式の3資産を取り上げる。1期間(月間、年間)の投資収益率を定義する。1年後の利息は確定しているが、1年後の配当、1年後の利付債単位価格および1年後の株式1株価格は予想値である。

貨幣の投資収益率m 1年後の現金1円-現在の1 = 0
                現在の1
利付債投資収益率b 1年後の利息+(1年後の利付債単位価格-現在の利付債単位価格)
                現在の利付債単位価格
株式の投資収益率s1年後の1株当りの配当+(1年後の株式価格-現在の株式価格)
                現在の株式価格

1) 1安全資産・1危険資産モデル
 投資家は、貨幣と債券の2種類のポートフォリオを選択する。以下は、ポートフォリオの収益率Rを定義し、その期待値(平均値)μRと分散σR2(標準偏差σR)を求める。
貨幣の収益率は0であり、利付債の利息(クーポン)率を
r=利息/現在の債券価格
capital gain or lossG=(1年後の利付債単位価格-現在の利付債単位価格)/現在の利付債単位価格
とする。
 貨幣と債券の
2種類のポートフォリオ(2資産の一覧表)の場合、予想値があるのは債券価格のみであり、それが含まれる値上がりまたは値下がりGは、確率変数とする。確率変数Gの性質は、期待値(平均値μgおよび分散σg2(標準偏差σg)で表される。μg0およびσgは一定である。
 貨幣と債券のポートフォリオの収益率をRとする。2資産に投資した割合を、それぞれ、A1A20とする。A1A21である。ポートフォリオ収益率RA1×0A2×(rG)=A2×(rG)の期待値と分散を計算する。

期待値μRER]=EA2×(rG)]=A2 ErG]=A2 Er]+EG]}

 A2 r0}=A2 r                        1
分散σR2ERER]]2EA2×(rG)-A2 r2EA2G2

 A22 EG2 =A22σg2                        2

以上の計算は期待値Eの公式を使っている。すなわち
定数rのとき、Er]=rErG]=Er]+EG]。
         EA2×(rG)]=A2 ErG]。

有効フロンティアの作成
 有効フロンティアとは、各期待収益率μRに対し、リスク(分散σR2)を最小にする債券の割合A2を求める。
1からA2=μR rであり、2式に代入すると、σR2A22σg2(σg2 r2μR2である。投資家がポートフォリオから、期待する期待収益率μRを決めると、割分A2=μR rが決まり、そのときの分散は(σg2 r2μR2となる。
 テキスト図48の期待収益率と標準偏差の平面上に、描くと、直線μR(r/σgσRとなる。この直線の右側では、各期待収益率μRに対する標準偏差σRがより大きいことが見て取れる。この直線上がリスク(分散σR2)を最小にする債券の割合A2が描く直線であり、有効フロンティアという。

投資家の期待効用
 投資家が、有効フロンティアのどの期待収益率を選ぶかは、von Neumann-Morgensternの「期待効用最大化の仮説」にしたがう。

期待効用最大化の仮説
「各投資家は、期待収益率の実現値Rrに対して、効用関数U(R)をもち、効用関数の期待値EU(R)が最大となる確率分布を選ぶ」

投資家の分類
 投資家は、効用関数U(R)によって、主に、3つのタイプに分類される。すなわち、危険回避者、危険中立者、危険愛好者である。テキスpp. 51-52に、それぞれの効用関数を特定化し、その期待効用を計算している。危険中立者はリスクに無関心であるので、効用関数の期待値を取るとリスクの指標である分散が入らない。他の2者は、分散が入っている。
 410に示しているように、危険回避者、危険愛好者はともに円の方程式であり、危険回避者は北西方向に同心円が行くにつれて、期待効用が高くなる。危険愛好者は北東方向である。危険中立者は、水平線となり、上に行くほど期待効用が高い。
 経済学では、危険回避者を想定することが多い。危険愛好者は、投機者である。分散あるいは標準偏差を経済行動の最適化にもちいるのが、資産選択理論である。

有効フロンティアのもとで、期待効用最大化
 投資家は、有効フロンティアμR(r/σgσRのもとで、期待効用関数を最大にする
最適な投資割分A22r(r2+σg2)を選択する。この計算は、テキストp52にある.図411に示しているように、危険回避者の場合、北西方向の円と有効フロンティアの接点を求めればよい。危険愛好者の場合は、点(rσg)が利付債にすべて投資する場合であるから、この点を選択する。危険中立者は、EU(R)ER=μRA2 rであるから、μR rA2 1のとき、期待効用は最大になる。ゆえに、危険愛好者と同じく、利付債にすべて投資する。

2) 2危険資産モデル
2危険資産の有効フロンティアを求める。
・有効フロンティア上で、期待効用を最大にするポートフォリオを求める。

 2危険資産を仮定し、株式の収益率をS、債券の収益率をBとする。収益率RA1S +(1-A1B と定義する。収益率の分散σR2 は、

σR2ERE [R]]=(σS2+σB22 ρSB σSσB A12
                                     2 (ρSB σSσB -σB2A1σB2

=(σS2+σB22 ρSB σSσB ){A1+(ρSB σSσB -σB2)/Δ}2σB2-(ρSB σSσB -σB22/Δ   (8)

と表わされる。ここで、Δ=σS2+σB22ρSBσSσBである。この分散は、A1の値を変化させることにより、最小値σR2 が求まる。

 σR2= σS2σB2 (1 ρSB2) 
          Δ  

また、そのときのA1の値は、A1=(σB2 -ρSB σSσB )/Δである。最小値σR2 のときの平均値μRは、μR=μBA1(μS-μBで表されるから、(8)式は、双曲線の方程式に変形する。

σR2=Δ{A1A12σR2Δ(μR-μR2/(μS-μB2σR2

(μR-μR2σR2 -σR2)(μS-μB2                          (9)

               Δ 

となる。双曲線の形(金融数学2)に、(9)式を変形すると、次の式になる。

σR2       (μR-μR2       =  1
     σR2     σR2(μS-μB2 /Δ   


最適ポートフォリオを求める図解

 横軸にリスクを表す、標準偏差σRをとり、縦軸に期待収益率μRをとる。4.12のように、有効フロンティア(9)は、双曲線である。危険回避者の期待効用曲線は,(4)式より、中心(02)の同心円である。有効フロンティアと期待効用の無差別曲線は、点(σR**μR**)において接する。この点が、最適なポートフォリオである。接点の求め方は、(9)式を全微分して、双曲線上の接線の傾きを求め、(7)式の傾きと一致させて、σRを消去する。
解答 (9)式を全微分する。
2(μR-μRdμR2σR (μS-μB2 dσR
               Δ 
dμR σR (μS-μB2
dσR    (μR-μR)Δ 。
(7)式の傾きは、
dμR= - σR
dσR     μR2 。

ゆえに、σR (μS-μB2 = -  σR
       (μR-μR)Δ    μR2 。

(μR2(μS-μB2=-(μR-μR)Δ

{(μS-μB2Δ}μR= 2(μS-μB2μRΔ

μR**= {2(μS-μB2μRΔ}/{(μS-μB2Δ}。 
(9)式にμR**を代入する。
(μR**-μR2σR2 -σR2)(μS-μB2            
               Δ 

σR2=(μR**-μR2Δ+σR2(μS-μB2

σR**=√{(μR**-μR2Δ+σR2(μS-μB2}。

収益率RA1S+(1A1Bであるから、μR**A1μS+(1A1μBより、

A1**(μR**μB)(μS-μB)が最適ポートフォリオである。

3 1安全資産・2危険資産モデル
2危険資産の有効フロンティアを求める。
3資産の場合、安全資産があれば、分離定理が成立し、 (貨幣、債券)モデルと同様に、有効フロンティアを直線にできる。

 貨幣、債券、株式の3種類のポートフォリオを投資家が選択する。以下は、ポートフォリオの収益率Rを定義し、その期待値(平均値)μRと分散σR2(標準偏差σR)を求める。
 利付債の収益率BBGbとする。新たに、株式を追加する。Dは株式配当率、株式のcapital gain or lossGsとし、ともに、確率変数である。株式収益率をSDGsとする。利付債収益率Bは、期待値μB、分散σB2であり、株式収益率をSは、期待値μS、分散σS2である。共分散はσSB=ρSBσSσBである。計算の簡単化のため、2つの確率変数の相関係数ρSBは、統計的独立性を仮定するので、ρSB0である。

 株式と債券のポートフォリオの収益率をRとする。2資産に投資した割合を、それぞれ、A1A20とする。A1A21である。ポートフォリオ収益率RA1×SA2×Bの期待値と分散を計算する。σSB=ρSBσSσB 0を使うと簡単になる。

期待値:μRERA1 EB(1A1)EBA1μS(1A1)μB

分散:σR2ERER]]2EA1SA2(A1μS(1A1)μB)2
     =EA1(S-μS) (1A1) (B-μB)2
       A12σS22 A1(1A1) σSB(1A1) 2σB2
     =(σS2+σB2)A12 2σB 2A1+σB2             

有効フロンティアの作成
 有効フロンティアとは、各期待収益率μRに対し、リスク(分散σR2)を最小にする債券の割合A1を求める。
分散:σR2(σS2+σB2)A12 2σB 2A1+σB2の最小値は、完全平方化して、

σR2(σS2+σB2)A1-σB2(σS2+σB2)2+σS2σB2(σS2+σB2)     (10)

となる。
A1=σB2(σS2+σB2)のとき、分散の最小値σR2=σS2σB2(σS2+σB2)をとる。そのときの平均値は、
μRA1μS(1A1)μB=μBA1(μS-μB)である。

(10)式は、(μR,σR2)を使って、変形するならば、双曲線の方程式になる。点Bと点Sを通る曲線が有効フロンティアになる。すなわち、
σR2(σS2+σB2)A1A12+σR2                                 (1)
μR-μRA1μS(1A1)μB {A1μS(1A1)μB}=(A1A1(μS-μB)より

A1A1(μR-μR)(μS-μB)
(1)式に代入し、整理すると
   σ
R2        -    (μR-μR) 2   = 1
σR2(σS2+σB2       σR2(μS-μB) 2

この曲線は、図412に描いている。危険回避者の最適ポートフォリオは、円の期待効用曲線との接点になる。テキストでは、数値例で、双曲線の方程式を求めている。
 次に、投資家が貨幣、債券、株式の3種類のポートフォリオを選択する場合を考える。3資産の場合、安全資産があれば、安全資産と危険資産の分離定理が成立し、2資産モデルと同様に、有効フロンティアを直線にできる。
 貨幣、株式と債券のポートフォリオの収益率をRとする。3資産に投資した割合を、それぞれ、A1A2A30とする。A1A2A31である。貨幣を安全資産とすると、危険資産である債券と株式の最小分散は、貨幣の保有割合に影響されないという「安全資産と危険資産の分離定理」が成立する。
 テキストにしたがうと、貨幣、債券、株式の3種類のポートフォリオの収益率RRA2SA3B(1A1){αS(1-α)B}、ここで、α=A2(A1A2)とおく。その平均と分散は

μR(1A1){αμS (1-αμB}、

σR2(1A1) 2 ERα(S-μS )(1-α)(B-μB)2
  =(1A1) 2(σS2+σB2α22σB 2α+σB2

A1とαが変数分離されているため、分散を最小化するとき、危険資産間の割合αを決定し、危険資産だけの有効ポートフォリオの軌跡が描ける。
 
 次に、危険資産有効ポートフォリオ上の点Aをとるとき、原点と点Aを通る直線0Aが有効フロンティアになる。
μA=αμS (1-αμB、σA2(σS2+σB2α22σB 2α+σB2とおく。μR(1A1μA、σR2(1A1) 2σA2より、原点と点Aを通る直線は、μR(μA/σA)σR と表せる。                               
 危険資産有効ポートフォリオ双曲線と点
Aを通る直線0Aは、2点で交点をもつが、直線の傾きが上がるにつれ、2点は直線と双曲線の接点Mに達する。接点Mにおいて、αは意に決まり、A1も一意に決まる。投資家は、直線0M上で、期待効用曲線と接する点を最適ポートフォリオとする。テキストp55-56に計算している。グラフの点座標(σRμR)で、第一座標は、横軸で、標準偏差、第二座標は、縦軸で、期待収益率を表す。合成資産Mは、点(σRMγ/σRM)である。ここで、

γ√{(ΔμR2ΔσR2(μS-μB2}/ΔσR2* 

σRM=ΔγμR{Δγ2(μS-μB2}。

A1=σB2(σS2+σB2)を代入して、
μRA1μS(1A1)μB=μBA1(μS-μB)
    =μB (μS-μB) σB2(σS2+σB2)
σR2=σS2σB2(σS2+σB2)

線分0M上に、危険回避者が期待効用の無差別曲線との接点で、最適ポートフォリオが決まる。危険愛好者および危険中立者は、点Mが最適ポートフォリオである。
 
 以上の3資産モデルを実践する場合を考えた。銀行・証券会社が、投資家のリスク性向を判定する場合も、応用できる。最適資産選択理論を投資実践に応用する方法は、期待効用関数を仮定することがむつかしく、線分0Mを、機械的に、五等分しする。投資家の均衡点Eを、機械的に、5リスク・ランクとして、投資家は、標準偏差のランクから、自分の望ましい分点を選択する。選んだ最適資産選択比率(A1´ A2 ´ A3´)にしたがって、投資家は、手持ち投資資金から、貨幣、債券、株式を市場価格で購入する。

5章のまとめ

 資産選択理論は、経営学部、商学部において、証券論の一部に、必ず、その章がある。経済学部の金融論では、ミクロ経済理論から、消費者の貯蓄を資産配分する場合、資産選択理論で説明する。他方、金融論は、金融政策の有効性を問題にすることが多く、日本銀行が政策判断をする経済モデルは、マクロ計量経済モデルが主流である。マクロ経済モデルで、貨幣以外の資産を取り込んだ理論には、Tobinの資産市場一般均衡論(J.Tobin, “A General Equilibrium Approach to Monetary Theory,” Journal of Monetary, Credit, and Banking, Vol. 1, No. 1, 1969, pp. 15-29)Sargentのマクロ経済モデル(T.J.Sargent, Macroeconomic Theory Second Edition, 1989, Ch, pp.7-49)がある。私は、ふたりのマクロモデルを合体した、金融システムのある開放マクロ貨幣経済モデル(追手門学院大学追手門経済・経営研究第1820113月)を構成し、均衡方程式を導いている。このモデルでは、国内3資産、海外3資産市場を明示化している。
 
 従来のマクロ金融理論では、IS=LMASAD分析が教科書になっている。この程度のマクロ理論の認識で、資産は貨幣のみで、中央銀行は貨幣供給を増加させる拡張政策手段と、公定歩合を引き上げる緊縮政策手段を使って、最終政策目標は、景気局面において、GDP成長率、失業率、物価上昇率、為替レートのいずれかの目標数値を取ることが、アナウンスメント効果になっているだけで、目標を達成するマクロ理論的根拠はない。
 2019年から、私の金融論教室では、IS=LMASAD分析を開放マクロモデルに拡張したマンデル=フレミングモデルに、債券市場および為替市場を陽表化したMFEXモデルを示している。本教室の5.5に、不完全雇用モデルを示し、図解している。中央銀行が最終目標を金融緩和におき、貨幣供給量を増加させれば、市場均衡式がシフトし、新均衡がえられることが理解でき、計算可能である。
 マクロ貨幣経済モデルに、リスク(分散)を考慮する資産選択理論を導入する試みは、意外にない。貨幣市場に、予想物価を導入した理論はない。貸付資金、債券・株式市場のマクロモデルはない。この方向は、現在、SNAまたは資金循環表にもとづく、制度部門別主体がリスクを考慮する資産市場均衡モデルを研究している。つまり、IS=LMASAD分析では、経済主体は、国民と政策主体の政府・中央銀行であり、資産は貨幣のみ陽表化されている。そこで、国民を制度部門に分割し、ストック資産市場を国内資産、海外資産市場市場で開放モデルに構成し、資産均衡を求める。この方向は、産業連関表分析に対応する金融連関表を作成することになる。
 この立場に立つと、国民と政策主体の政府・中央銀行のマクロ理論は、制度部門別のミクロ理論で説明することになる。つまり、ミクロ一般均衡理論で、制度部門別のフロー・ストック市場均衡の存在が証明されれば、マクロ理論は存在しない。このモデルを、動学モデルにすることができれば、この経済で、政策主体がその政策手段をもちいて、政策目標を達成できるかどうか、計算できることになる。
 さて、国民と政策主体の政府・中央銀行のマクロ理論で価格予想を導入するのは、外生的で困難であった。予想形成は、統計学的な予想形成を借用することが多かった。ミクロ一般均衡理論においても、平均分散の最適化をした消費者が、資産市場において、最適比率にもとづいて、資産を交換するミクロの一般均衡の存在は定式化されてこなかった。これは、私の『多期間一般均衡モデルの確率的動学』晃洋書房、20183月、第11章で、示している。すなわち、投資家が最適平均分散投資比率を決めたら、その比率で、資産の売買の個別需要関数を求めることができる。その応用が、リスク・ランクの計算である。
 債券市場に、中央銀行が政府の委託を受け、新規国債供給をし、満期国債を償還する働きや、貨幣供給量または公定歩合の政策手段で、予想物価に作用し、現物・先物金融市場に関与することを定式化し、現先資産市場の均衡の存在を示すモデルになる。

今週(2024610日~614)のイベントと市場への影響度
 先週のイベントは、4日インド総選挙の開票が始まりました。モディ連立政権が過半数を得ましたが、人民党は議席を減らしました。サンクトペテルブルク国際経済フォーラムが8日までありました。プーチンは、EUとの貿易が閉ざされ、BRICSおよびアジア・アフリカ・中南米に、ロシア連邦の成長を依存せざるを得ないと表明しています。欧米のs支援国の反対体制側に、ロシア製武器を資源とバーター取引で、軍支援をすることを表明しました。これまで、ロシア政府は、間接的に、傭兵会社を通じて、反体制側を支援して来ました。今回、欧米とこれらの地域において、ロシア連邦国家戦略として、ヨーロッパ以外で対決姿勢を強化し、欧米の海外軍事支援を消耗させ、紛争国の内戦を激化させ、アジア・アフリカ・中南米の欧米支援国と、全面的に戦う姿勢を示しました。ロシア連邦は、ウクライナ戦争以前から、BRICSおよびアジア・アフリカ・中南米の各国・企業を、毎年、各国際フォーラムに集合させ、ロシア連邦世界戦略を、推進してきたため、その間の経済協定・安全保障協定を、ウクライナ戦争の結果によって、中断、放棄をしないことを表明、継続している。
 
6日欧州議会選挙が、9日までありました。ノルマンディー上陸記念行事に、関係国が集まり、ウクライナ戦争に対峙しているゼレンスキー大統領を招き、ロシア連邦に対する団結を確認しました。6日、欧州中央銀行理事会が開かれ、インフレは鈍化したとし、政策金利を0.25%引き下げ、4.25%としました。
 今週のイベントは、11日から12日まで、米連邦公開市場委員会が開かれます。13日から14日まで、日銀政策委員会の金融政策決定会合が開かれます。13日主要7カ国首脳会議が15日まで、イタリアで開かれます。15日世界平和サミットが16日スイスで開かれます。
 
 経済統計は、次の発表がありました。
                      予測値     実現値
63日 米5ISM製造業景況感指数    49.8      48.7
    中5月財新製造業PMI       51.7      51.7
5日  日4月毎月勤労統計         1.7%     2.1
6日  EU ECB政策金利          4.25%    4.25
    米4月貿易収支           -750億ドル -746億ドル
7日  日4月家計調査            0.5%     0.5
    4月景気動向指数先行       111.5     111.6
            一致       
114.4     115.2   
    米5月雇用統計                            3.9%     4.0
    中5月貿易統計                 -5864億元

 経済統計は、次の発表があります。
                      予測値     
10日 日4月貿易収支           -3450億円
    5月景気ウォッチャー調査       48.5
11日   日5月工作機械受注額      
12日   米5月消費者物価指数       3.4
     中5月消費者物価指数       0.4
13日  米FRB政策金利(上限)      5.5
            (下限)      5.25
14日  日政策金利
     5月鉱工業生産指数        -1.0%    

 統計は、国民総支出GDE構成要素、物価、利子率について、日本の発表結果を一覧で以下に表します。
日本          3月          4月         5
GDP(前期比)     0.5
消費コンビニ売上高  97009600万円    95394500万円
  スーパー売上高  14156014万円 11463207万円
  百貨店売上高   5109億円       4441億円
投資(工作機械受注統計) 13565000万円   1209200万円
輸出         93767億円    89807億円
輸入         88797億円    94433億円
 貿易収支        4910億円     Δ4625億円
為替レート(/ドル)  147.46        153.01       155.58
物価指数(総合指数)  2.6%          2.5%       
利子率        0.1                           0.1        0.1
株価         39,688.9        39523.55     38229.11
(2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
原油価格       83           90.4        84.9
ドバイ、現物1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得(毎月勤労統計)  302,060円(1.0%) 速報296,884(2.1)
完全失業率       2.6%         2.6%      
景気動向一致指数   111.6         113.6       115.2
      先行指数    111.8         112.2       111.6
米国           3月            4月         5
GDP(前期比)     2.5
個人消費       0.8%        0.2
投資(耐久財受注)   0.8%        0.7       
輸出         25762000万ドル 24901500万ドル
輸入         32699200万ドル 32356700万ドル
 貿易収支      Δ694億ドル     Δ746億ドル
物価指数       3.5%         3.4
利子率        5.25%        5.25
株価(NY)     38722.69       37983.24      39512.84
2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
原油価格       78.01         85.41        78.26
NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得                 0.5%        0.3
完全失業率      3.9%        3.9%        4.0
中国           3月             4月         5
GDP(前期比)     5.3
個人消費       3.1%        2.3
全国固定資産投資(1~3月期)1042億元(4.5%)
輸出(前年同期)    Δ7.5%       1.5
輸入         Δ1.97%      8.5
 貿易収支    Δ4159億元      5135億元  
物価指数      0.1%          0.3
利子率(1年物LPR3.45%         3.45%        
株価(上海)      3046.02       3619.47       3154.55
(2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
個人所得      
完全失業率     5.3%         5.2%         5.0


11回目 2024617

要点
6.資産形成計画と運用・管理

 6.1 イベント分析の枠組み
  ・イベント分析表
  世代開始年齢と所得
  ・制度金融の利用

6.資産形成計画と運用・管理

 これまで、第2章制度金融、第3章金融市場と金融商品の特性、評価方法を学んだ。4章では、家計のライフ・サイクル理論にもとづく、消費・貯蓄、消費・借入決定を問題として、2期間モデルで、解答を得た。物価と貨幣が入る、貨幣一般均衡理論で、価格の予想を入れた場合、現物市場と先物市場の主体的均衡を求めた。貨幣、債券、株式の3資産市場において、現物と先物の最適問題を解いて、市場均衡条件を求めた。さらに、多期間債券の期間構造の問題と、株式オプション価格の決定を先物価格2項過程で求めた。先物価格連続確率過程のもとで、Black-Scholesオプション価格の決定論を要約した。5章では、最適資産選択理論にもとづき、1)貨幣と債券、2)債券と株式、3)貨幣、債券と株式の資産に、投資家の富を、それぞれ、案分した割合で投資するとき、総合収益率の平均と分散が計算され、分散が最小になる案分割合を求めた。所与の市場価格で、各資産に、最小分散の割合にしたがい、投資する額が、簡単な変換式で求められる。
 6章では、第2章から第5章までの知識を応用して、家計のライフ・サイクル理論にもとづき、具体的に、計画を立て、資産を売買し、管理する方法を学ぶ。

6.1 イベント分析の枠組み

 家計のライフ・サイクル理論にしたがうと、家計は、世帯主の現年齢から、終生まで、生涯消費・貯蓄計画および資産形成計画を立てる。この分野で、相談に応じる専門家は、FP技能士である。生涯計画の展望は、重要な節目のイベント表を作成し、その表に、経済計算を推測し、表を完成すると、各年齢で、所得を稼ぎ、節目のイベントを成功させることになる。日本では、中間所得階層が多く、少額であるが、様々な生涯イベントに対して、貯蓄し、資産形成できる。政府は、個人の少額つみたて資産形成に対して、収益・利息に課税せず、追加投資できる少額つみたて非課税制度を各種つくっている。
 このような家計の資産形成計画主義は、経済学が普及した世界各国の家計において、経済学史的、普遍的に、普及は、全くしていない。大多数の開発途上国では、中間所得層が薄く、生活困窮者の子沢山と昔から言われるように、子供は働き手であり、家計の所得を増やすことができる。大金持ちの子沢山は、それと同様に、資産が多すぎて、一族に資産分配を図っているのである。国家資本主義であるロシアにおいて、ロシアの中間層がいない中で、新興資産家のプーチンは、資産家の子沢山で、家族・愛人に資産を分配している。
 
 世界各国では、現在、国家権力を担う政党・政治組織が、その国の経済・政治・治安・外交・対外安全保障を司っている。現在、内紛・対外戦争を起こしている国は、経済・政治・治安・外交・対外安全保障のいくつかが、機能していない。したがって、それらの障害を取り除く国家権力を担う政党・政治組織は、長期にわたって、最終的手段である国内治安手段・武力を維持するだけに追い込まれている国が数多くある。
 開発途上国では、国の方針を決定する国家機構が、国内外で不安定であり、内紛、内戦、対外戦争に対応するために、国の生産・所得・支出の重要部分を、国防・治安予算に、つぎ込まざるを得ず、国民の大多数は、生活困窮者であり、しかも、子沢山である。一部の資産家に富が集中している。そのような国においては、家計の労働・所得が、毎月不安定である。国内金融機構は、国外の支援国・国際金融機構の支援に依存しており、国民の大多数の生活困窮者は、個人の資産形成は不可能である。高・中所得国では、ほぼ、国内外で、制度的に安定して、中所得者層も多く、個人の生涯人生計画が立てられる。

 国家権力を担う政党・政治組織が選出される過程は、いろいろあるが、日本は民主主義によって選出されている。自民・公明連立政権は、10年近く、政権を担っているが、デフレ脱却、インフレ化、所得上昇で、失われた30年から、経済成長軌道に、復帰するはずだったが、東京オリンピック延期開催辺りから、腰折れし、金融緩和のまま、恥ずかしながら、ウクライナ戦争による世界インフレさえ、追従できず、経済・金融はへたってしまった。超円安で、輸出産業は、莫大な利益を上げるはずが、自動車関連半導体不足、検査不正も発覚、生産中止を余儀なくされた。他の輸出産業も同様で、輸出はふるわない。人件費の安い中国を始め、逆輸入型のサプライチェーンは、超円安で、輸入インフレに陥り、さらに、資源インフレで、貿易赤字となり、世界金利差と慢性的貿易赤字で、ダブルの円安要因は逆転しようがない。
 このまま、超円安が定着すると、逆輸入型のサプライチェーンは、採算があわず、中国・東南アジアから、撤退、日本は、人口減少に入ったため、国内生産は人手不足で回帰すらできない。超円安は、大企業に、最先端の研究をする人材が、海外流出する状況を作っている。大谷選手のような海外評価が数十倍高いトップランナーが、米国で、雇用される状況は、頭脳流出の機会が増えていることを示している。日本国内企業は、同業種、同職種の世界的賃金比較で格差が開き、海外要因で、従業員の賃金抑制を持続可能ではいられない。また、超円安は、海外労働者が来なくなる事態を招いている。日本が、国際比較低賃金国になれば、国際賃金格差は、均等化する逆転現象が起きかねない

所得予測が困難な日本経済
 日本経済は、実質賃金がここ10年マイナスであり、近年23年持続している2%台のインフレにもかかわらず、賃金率が硬直的であるため、資産形成計画に、その予測の見直しをせざるを得なくなっている。中所得階層が格落ちし、低所得層に入り、中所得者の生活水準が下がり、子供がもてなく、単身家計が増加している。つまり、永続従業員の年齢に応じた家族手当を充当しできない企業が、すでに、発生している証拠である。家族構成員数が増加すれば、新規家族の消費が増加し、それを養う所得増が必要である。家族が子離れするまで、壮年世代の年収が増加するのは、住居・扶養家族手当が支給できる企業に勤めていることを暗黙に示している。実際は、日本企業は、終身雇用制を維持できなくなり、壮年世代の40歳台で、家族手当に相当する部分は、支給していない。企業に忠誠を誓う従業員はいなくしているのである。日本は、コロナ期に、経済活動が減少すると、連続して、出生率は低下、高齢者の死亡率は、コロナ対策が終了後、増加する、本格的な人口減少期に突入している。政府は、人口減少事態に、予算、社会保障負担増で、政策を取りだした。

家族構成員数と住居・扶養費増加の考慮
 資産形成計画は、制度的には、本教室の第2章に見られるように、非課税制度が拡充されている。それ等を利用すれば、若年、壮年、老年世代の主要なイベントは、中間所得層の年収の範囲で、目標は達成で来るだろう。家族の構成員が何人まで増やすことが可能なのかは、全く考慮していない。専業主婦の2人、子供1~2人、それ以上の家族構成を考慮すると、所得はどれだけ必要なのかという問題である。低所得者の場合は、共稼ぎ世帯になり、実勢に適合した、共稼ぎ優遇所得課税のもとで、イベントの内、養育費・教育費は、国・自治体子育て支援給付金および教育費給付制度を利用するようになる。
 人口減少時代が、顕在化してきた日本では、低所得者・子沢山世帯において、資産形成は、老後の安心程度となり、家族の就学・就業イベントは、人口減少社会保障制度利用を考慮するようになる。今後、資産形成論で取り扱う事例になるだろう。
 
 資産形成計画は、開始年齢で、終了期間までの期間が大きく異なる。本教室では、若年世代、壮年世代、老年世代の3世代を想定している。若年世代は、20歳~32歳、壮年世代は、33歳~65歳、老年世代は66歳~85歳である。20歳は自己の責任において金融取引ができる年齢である。

若年世代の10年イベント表
 若年世代の10年間は、仕事に習熟することと、家族をもつかどうかが主な目的になりなる。すなわち、この世代は、年間の所得水準が低く、10年間で、毎年の昇給が1歳上がるごとに月1万円以下上がる。23歳で基本給月23万円が、24歳で月24万円である。
 海原氏イベント表において、23歳で、ボーナス・残業込み、年収300万でスタートすると仮定する。次年度は、12万昇給する生活を切り詰める貯蓄は寂しいので、社会性を広げるために、短期1年間の消費生活を充実する、たとえば、車、旅行、趣味、スポーツ等のために、半年で使い切る貯蓄、および住宅購入の頭金を貯蓄する財形住宅貯蓄を夏冬ボーナスで年間50万円、残金があれば、結婚資金にする。30歳で結婚すると仮定する。

                海原氏イベント表
     就職             結婚
年齢海原氏23  24   25    26    27    28  29  30    31    32 

                                                    28   29   30    

収入  300 312    324   336  348   360 372  384  396  408 

消費支出 240 249.6  259.2  268.8 278.4  288  297.6  307.2 316.8  326.4
住宅頭金  50   50      50      50     50     50   50    50    50    50
合計    290  299.6 309.2  318.8  328.4   338  347.6  357.2 366.8  376.4
収支差額  10  12.4   14.8   17.2   19.6     22   24.4   26.8  29.2   31.6

世代開始年齢と所得
 33歳は、本文にある山川家のイベント表の開始年齢である。日本銀行の関連会社から、毎年、最も廉価な『明るい暮らしの家計簿』が発行されている。山川家の生活設計プランが142ページに2006年まで、掲載されていた。年功序列制度では、入社10年で、ミスをしなければ、最初の係長という管理職になれる。しかし、1年間の評価で格下げになることもある。33歳は、その年齢であると理解していた。後は、課長、部長で、それぞれ、510年で、昇格する。これが年功序列制度の昇格波乗り3段階といい、その波ごとに、モデル賃金カーブが上昇する。
 2006年まで、日本銀行関連会社では、山川家を標準家計としていたのだが、資産形成計画は、預貯金だけであり、先行きの物価上昇率は年1.0%、預金金利は、年0.2%、住宅金利は年3%を想定してあった。しかし、2007年から、このページはなくなった。リーマン・ショックもあり、日経は1万円を割り、預金金利は0.01%であり、貯蓄は現金を残すに等しい。日本は、安倍政権の誕生以来、日経平均は戻し、日銀の過剰緩和から、預金利子率、債券利回りは低下したままである。20234月、黒田総裁は任期満了で、退職、植田新総裁が着任した。
 米国は、FRBの利上げとともに、資産市場が正常化しだした。コロナ禍で、FRBは、金融緩和し、再び、米株式市場は上昇した。しかし、2021年後半、インフレーションが始まり、202112月から、ウクライナ状勢が悪化、食糧・エネルギー価格の上昇が始まり、20222月ウクライナ開戦後は、食料価格が上昇しだした。これらの事象は、経済回復期の供給制約のインフレーションではない。通常のインフーションに23%追加され、各国中央銀行は、高インフレーションを抑制するために、金利を上昇させだした。持続的インフレーション下で、株価が低下し、景気を減速させるスタグフレーションになりそうな気配がある。

 2024617日、日本の預貯金利子率はほどんど0.025%であり、613日日本国債市場は、新発10年国債の利回りは0.965%である。日本株式市場は、202461338720.47円である。為替市場は156.8円で推移している。この資産市場の状態で、山川家の主なイベントである、教育、子供の結婚、老後の安心、住宅ローンの返済を計画的に、達成する資産購入、運用、管理をすることを考える。テキストでは、どこで、住宅を取得するか、選択した現地で、取得費を帰属家賃と比較して、計算する。
 最後に、65歳は、退職年齢であるが、山川さんは60歳退職であった。年金開始は65歳だから、つなぎの5年間、働かないと退職金を食いつぶしてしまう。団塊世代から、この空白期間が始まった。政府も退職者の雇用について、65歳定年は掛け声だけで、強制性がないので、だらだらと空白期間が続いている。地方都市では、中堅企業以上が、東京本社になっている例が多く、山川さんのようなサラリーマンはそれほど多くはいない。子供も手を離れ、持ち家であれば、2階建ての4LDKは、老夫婦二人には、2階部分はいらなくなる。2LDKで十分なのである。2階は、階段から落ちると骨折するので、掃除にも上がらなくなるのが普通である。退職金で余裕がれば、2階をなくし、老夫婦の利便性を考えた、自宅介護可能に、改築することを勧める。
 日本の基本エネルギー計画では、今後十年、全世界化石燃料火力発電を全廃することになっていないから、化石燃料インフレーションは、10年間悩まされる。改築時に、屋根に太陽電池と蓄電池をつけ、一部、外部買電にすると、今回の電気代に悩まされることはない。その間、EV車つき家庭内IOTで、この10年間、完全自動化・管理システムが、日本全国の建物で、設置される流れになるだろう。安全・安心の住宅、賃貸住宅、職場、商業施設、公官庁、教育施設、医療施設になる。コロナ禍で、政府は公官庁、教育施設、医療施設等のデジタル化で情報共有を目指すだけでなく、完全自動化・管理システムを究極的に構築することになるだろう。
 令和時代が始まり、山川さんは、現役のサラリーマンである。退職後の85歳まで、資産形成計画を立てるのであるが、退職後の住宅と住む市によって、現在、社会保障のサービスが行き届かない格差は、存在するだろう。現在、市の財政基盤が、潤沢であり、社会保障制度の施設が完備し、医者も多く、介護の人材も十分あれば、問題ないが、経済的活力が湯水のように湧き出し、市の財政基盤が潤沢でありつづけるかどうかは、しっかり、考慮する必要がある。

制度金融の利用
 各世代の固有のライフイベントが決まり、生涯の資産形成計画が、大まかに決まってくる。サラリーマンの場合、退職後、国の基礎年金および事業体の厚生年金、企業年金を制度的につみたてた結果の給付を受け、自己資産の取り崩しで、老後の生活を支える。若年世代は、生涯期間が長く、ライフイベントは不確実である。自己積立資金も少ない。毎月、定額的に、給与天引きで、制度金融を利用する。運用方法は、定額購入のいわゆる「ドルコスト平均法」で購入する。壮年世代は、生涯期間が中間期間に当たり、ライフイベントも明確になっている。資産形成の基本は、毎月、定額的に、給与天引きで、制度金融を利用する。ただし、年間拠出額が増えているので、多様な金融商品選択でき、運用経験も10年以上ある。運用方法の「ドルコスト平均法」は、日本・米中景気変動、経済金融政策の変更に注意しつつ、制度金融は、引出ができない場合が多いから、選択する資産購入の一部、停止,他の資産に運用を振替る「リバランス法」が必要になる。

今週(2024617日~621)のイベントと市場への影響度
 先週のイベントは、11日から12日まで、米連邦公開市場委員会が開かれました。年3回利下げを年1回と、予定しました。13日から14日まで、日銀政策委員会の金融政策決定会合が開かれました。国債買い上げを減額しました。利上げはしません。次回以降になるのではという観測があります。13日主要7カ国首脳会議が15日まで、イタリアで開かれました。15日世界平和サミットが16日まで、スイスで開かれました。
 今週のイベントは、20日東京都知事選挙があります。

 経済統計は、次の発表がありました。
                    予測値     実現値
10日 日4月貿易収支        -3450億円  -6615億円
     5月景気ウォッチャー調査     48.5      45.7
11日 日5月工作機械受注額               1245億円
12日 米5月消費者物価指数       3.4%       3.3
    5月消費者物価指数       0.4%       0.3
13日 米FRB政策金利(上限)      5.5%      5.5
           (下限)      5.25%     5.25
14日 日政策金利             0.1%      0.1
    5月鉱工業生産指数        1.0%      1.8
 経済統計は、次の発表があります。
                    予測値

617 4月機械受注統計      -0.2
    中5月小売売上高        3.9
       鉱工業生産指数      6.3
18日  米5月小売売上高        0.3
19日  日5月貿易統計       -1兆2985億円
20日  米5月経常収支       2061億ドル
21日  日5月全国消費者物価指数    2.8
    米6月製造業PMI       0.3

統計は、国民総支出GDE構成要素、物価、利子率について、日本の発表結果を一覧で以下に表します。

日本          3月          4 月        5
GDP(前期比)     0.5
消費コンビニ売上高  97009600万円    95394500万円
  スーパー売上高  14156014万円 11463207万円
  百貨店売上高   5109億円       4441億円
投資(工作機械受注統計) 13565000万円   1209200万円
輸出         93767億円    89807億円
輸入         88797億円    94433億円
 貿易収支        4910億円     Δ4625億円
為替レート(/ドル)  147.46        153.01       155.58
物価指数(総合指数)  2.6%          2.5%       
利子率        0.1                           0.1        0.1
株価         39,688.9        39523.55     38229.11
(2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
原油価格       83           90.4        84.9
ドバイ、現物1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得(毎月勤労統計)  302,060円(1.0%) 速報296,884(2.1)
完全失業率       2.6%         2.6%      
景気動向一致指数   111.6         113.6       115.2
      先行指数    111.8         112.2       111.6
米国           3月            4 月        5
GDP(前期比)     2.5
個人消費       0.8%        0.2
投資(耐久財受注)   0.8%        0.7       
輸出         25762000万ドル 24901500万ドル
輸入         32699200万ドル 32356700万ドル
 貿易収支      Δ694億ドル     Δ746億ドル
物価指数       3.5 %        3.4        3.3%
利子率        5.5%        5.5%      5.5
株価(NY)     38722.69       37983.24      39512.84
2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
原油価格       78.01         85.41        78.26
NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得                 0.5%        0.3
完全失業率      3.9%        3.9%        4.0
中国           3月             4 月        5
GDP(前期比)     5.3
個人消費       3.1%        2.3
全国固定資産投資(1~3月期)1042億元(4.5%)
輸出(前年同期)    Δ7.5%       1.5
輸入         Δ1.97%      8.5
 貿易収支    Δ4159億元      5135億元  
物価指数      0.1%          0.3           0.3%
利子率(1年物LPR3.45%         3.45%        
株価(上海)      3046.02       3619.47       3154.55
(2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
個人所得      
完全失業率     5.3%         5.2%         5.0


12回目 2024624

要点 62 イベントに基づく資産形成計画
        1) 世帯のイベント表の作成
        2) 各世代のイベント表の特徴
          ① 若年世代23歳~32歳の金融行動の目的
          ② 壮年世代33歳~65歳の金融行動の目的
          ③ 老年世代66歳~85歳の金融行動の目的

62 イベントに基づく資産形成計画

 若年世代、壮年世代、老年世代の金融行動の目的を設定し、山川家と高原家それぞれの場合、イベント表の仮定と推計法を例示します。収支差額を、制度金融を利用した貯蓄配分表に投資し、運用結果を評価する期末貸借対照表を作成しました。

1) 世帯のイベント表作成手順
収入の流列の推計
 物価上昇率を決めて、世帯主の所得の推計をする。23歳から32歳まで、毎年、3%で所得上昇、ボーナスは年2回、4か月分を標準とする。33歳から45才まで、2%で所得上昇、46歳から55歳まで1%上昇、56歳から60歳まで、1割減で、フラット化する。61歳から65歳までに再就職する。年収は現役の6割とする。
 65歳から年金受給を推計する。
   公的年金       生涯平均年収の5割(65歳から)
   企業年金       
    確定給付企業年金の場合、平均年収の2割(60歳から10年間年金)
    確定拠出企業年金の場合、拠出総額の2倍(最大)
    確定拠出個人年金iDeCo 拠出総額の2倍(最大)
    財形貯蓄        拠出総額の2倍(最大)
支出の流列の推計
 家族の主要なイベントを想定し、イベントの目標額を見積もる。
 
住宅ローンを推計する。
 
主なイベントの年間必要額(月額)を計算する。
 イベント表に数値をいれる。
 収支、差額を計算する。差額を期首退職対照表に繰り入れ、期間資産変動、負債残高を記入して、期末貸借対照表を作成する。

2) 各世代のイベント表の特徴
①若年世代23歳~32歳の金融行動
 若年世代の10年間は、仕事に習熟することと、家族をもつかどうかが主な目的になりなります。すなわち、この世代は、年間の所得水準が低く、10年間で、毎年の昇給が1歳上がるごとに月1万円以下上がる。23歳で基本給月23万円が、24歳で月24万円です。
 海原氏イベント表において、23歳で、ボーナス・残業込み、年収300万でスタートすると仮定します。次年度は、12万昇給する生活を切り詰める貯蓄は寂しいので、社会性を広げるために、短期1年間の消費生活を充実する、たとえば、車、旅行、趣味、スポーツ等のために、半年で使い切る貯蓄、および住宅購入の頭金を貯蓄する財形住宅貯蓄をし、残金があれば、結婚資金にします。30歳で結婚すると仮定します。

イベント分析の枠組み

              海原氏イベント表
年齢    23  24   25    26    27    28  29  30     31    32 
                                                28  29 30    
収入  300 312    324   336  348   360 372 384  396  408 
消費支出 240 249.6  259.2  268.8 278.4  288  297.6  307.2 316.8  326.4
住宅頭金  50   50     50     50     50    50   50     50   50    50
合計    290  299.6 309.2  318.8  328.4  338  347.6  357.2 366.8  376.4
収支差額  10  12.4   14.8   17.2   19.6   22   24.4   26.8  29.2   31.6
イベント表の仮定と推計
収入の推計
 海原氏の初任給は年収300万円(ボーナス込み)とします。基本給22万×12264万、ボーナス基本給×4(ヵ月)88万円を想定しました。諸税を52万円としています。毎年、12万円昇給があるとしています。
支出の推計
 消費支出は、年収の8割とし、短期の消費生活充実に使います。
住宅取得計画
  住宅頭金は、年50万円貯蓄します。33歳、期首財形住宅貯蓄500万円が目標です。住宅取得の目的がなければ、NISA制度を利用します。目的は、結婚資金等です。

    収支差額表               期末貸借対照表
年齢   収支差額       資産 (財形 iDeCo 預金) 負債 純資産
23     10              50   10   0       0     60
24    12.4                  100   22   0.4     0    122.4
25    14.8             150   34   3.2     0    187.2
26        17.2                 200   46   8.4     0    254.4
27        19.6                         250   58     16       0    324
28        22                           300   70     26       0    396
29        24.4                         350   82     38.4     0    470.4
30    26.8                     400   94     53.2     0    547.2
31        29.2                         450   106     70.4     0    626.4
32        31.6                         500   118     90       0    708
合計  208                500  118  90  0 708

運用計画と非課税制度利用
 就職を期に、企業年金iDeCoに加入し、毎月1万円、会社から1万円で、指図運用します。残金が発生しますが、預金か、NISAで運用することを想定します。
 2章の非課税制度を運用計画に適用すると次のようになります。

住宅資産形成  財形持家融資制度低利融資(財形住宅貯蓄550万円)夏冬ボーナス月天引
老後の安心  企業年金iDeCo                 毎月給与から天引
その他     NISA5年間1名年120万円まで非課税 (120万円) 差額の自己運用

2)壮年世代33歳~65歳の金融行動
 壮年世代33歳から65歳までの金融行動の目的を説明します。33歳から48歳まで2人子供の教育資金と36才まで住宅取得の頭金・建設資金が貯蓄の主な目的です。前者は、子供の入学時に順次、取り崩します。
 2000年に入って、日本経済は、金融システムの再編があり、大手金融機関、中小金融機関は統合され、企業も再編されました。そのため、非正規雇用が増加し、正社員の賃金カーブも40歳以上ではフラット化してきました。
 大学に、キャリア教育が導入され、企業は、企業の採用後、社員教育をしてきたコストを大学教育に求めるようになってきたと理解していました。まさに、学生は、正真正味の即戦力となる厳選採用でした。2008年の世界的なリーマン・ショックも発生し、壮年世代は、年収のダウンで教育資金どころではなく、大学進学の塾費用まで減らした家庭も多かったでしょうか。子ども手当、授業料無料化を公約する民主党政権が誕生した背景は、教育費の負担ができず、学生は、奨学金で授業料を支払い、生活費はアルバイトだったことも、大きく選挙結果に表れています。現在、教育資金は、貯蓄できるほど、30歳代の所得は、回復しているとも思えません。政権を転覆した自公が、教育負担の公費政策で、教育負担が減る仕組みを作りました。したがって、教育資金は、低所得者、子だくさん家庭ほど、貯蓄して、準備する必要が軽減されています。一般的に、高校進学時の一時金30万円+大学入学金・授業料400万円が教育資金の目安です。大学の奨学金制度や日本学生支援機構のサイトから、各種奨学金の額と給付条件を調べて、目標額を設定する方が具体的でいいです。
 ちなみに、私は学部学生の間は、父の所得が高かったため、奨学金を受給していません。当時の入学金・授業料は、はるかに低かった。阪急電車の通学定期も安かった。大学院入学後は、学生援護会の奨学金を確か、5年間受給しました。返済額120万円だったと思います。大学院退学と同時に、追手門学院大学に教員として採用されてからは、教員のため、在職証明を8年以上出して、制度改正で12年に延長され、ついに、返還免除されました。この間、海外を飛び回り、毎年、ますます、命がけになりましたが、死ねば、この借金が残るのが気になっていました。海外旅行はVISA、アメックスを持っていきました。東西冷戦終結し、命がけでなくなりましたが、結婚後は、家族のことがあるので、普通は3千万円でしょうが、団体生命保険5千万円をかけて、海外旅行保険5千万円とで出かけました。
 住宅取得の頭金・建設資金は、主要な貯蓄目的になりますが、その目標額と取得時期は、各家庭で目標が違うでしょう。住宅ローンの返済に入った世代では、余分の貯蓄差額は、老後の安心になります。しかし、中小企業では、高齢少子時代で、需要が減少、市場が縮小し、廃業していく事業継承リスクが目立ち始めた昨今、退職金が出せない企業が増えています。廃業する見込みの企業にとっては、退職金制度は、負債でしかありません。また、転職すれば、退職金は算定が勤続年数0年に戻るので、あてにできず、自己積立にできる確定拠出年金iDeCoに加入するのが、老後の安心になります。

イベント分析の枠組み
                     山川家イベント表
年齢  33  35 36        44   46 48   56    60   61   65 66  68
    30  32  33         41   43 45   53   57  58  62  63   65
     8                             21
         5                                20
収入 500 520 530     605  615 625  500  500 350 350 230 300
支出  300 312    318       363  369 375    300      300  280  280 230   270
住宅ローン       143.6                               143.6
住宅頭金50   50
教育費 43.75                          43.75                    
合計  393.75 405.75 505.35    550.35    556.35   443.6   443.6 280  280 230   270
差額   106.25 110.25  24.65    48.65     62.65     56.4   56.4  70   70   0    30

                                    
イベント表の仮定と推計
収入の推計
 モデル賃金カーブを次のように想定する。33才で、手取り年収500万円とする。42才まで、年10万円増加する。43才から55才まで年5万円増加する。56才から。60才定年まで500万円であり、61才から65才まで350万円で再雇用される。物価上昇率は想定しない。モデル賃金から、計算したわけではないが、66才から、企業年金70万円と基礎年金+厚生年金160万円を受給する。68才から。妻の基礎年金78万円が支給される。 
 基礎年金の受取額は、厚生労働省のHPから毎年分かる。厚生年金は、モデル賃金カーブからシミュレーションするが、簡単ではない。賞与からも保険料を支払うようになっている。各業界で、各年齢の所得を計算したサイトがあるので、モデル賃金カーブを作成、利用する。
支出の推計
 消費支出
 山川家では、現役時代は、収入の6割を消費支出にあてる。61才から65才まで収入の8割、66才、67才は、年金を全額消費する。夫婦で基礎年金を受給する68才から年金の9割を消費する。
財務計画
 収支差額は、その他とする。山川家のローン契約前は、教育資金と住宅準備金の貯蓄が主な使い道であるが、ローン返済が始まると、貯蓄と返済が使い道になる。テキストには、資金運用をしない年間教育資金を計算している。住宅取得計画は、住宅を選定する時間を多くとり、山川家では36歳から60歳まで、年3%、25年ローンを元利均等払いで組んでいる。
住宅取得計画 
どこに住宅を求めるか。最近は、減反農政も終了し、都市農家の廃業に伴い、農地売却が増加、供給増になる現象が目立っている。親子
2世帯同居ではなく、子供は賃貸で、親は住宅地に住んでいる過渡期の状況である。親の住宅は、手放す例がぽつぽつ、新興地で見られるし、地方でも見られ、建て替えも増加している。高齢・少子時代から、本格的な人口減少時代に、入っているので、町を観察していると、新規開業しても、続かず、廃業してしまう。地元農家資本の店もほとんど廃業した。客がいなくなっているのだ。住宅取得者は住宅用地の超過供給の状況があるので、宅地であれば、既成の住宅地は、候補の一つになる。さらに、百年に一度、二百年に一度、五百年に一度とか、災害の強度が大きくなっている昨今、地域災害史とハザードマップは、しっかり、検討することが大事である。
 さて、地球温暖化によって、その災害強度が、二百年に一度レベルに上昇している。その回数は、毎年起きてもおかしくない。もし、災害により住宅が被害にあうと、保険でカバーできなければ、二重ローンは、老後の安心をつぎ込むことになる。(住宅供給公社が開発したなら、被害後、再建費用は軽減される。)また、保険会社も、想定できる災害の種類と実際のデータ増加に伴い、住宅の被災確率を計算しているから、新築住宅に保険をかけると、災害確率の高い住宅地は、保険料を高くするだろう。
 災害で、JRの地方線では、最近の集中豪雨で、線路や橋が流され、各社では復旧工事費が捻出できず、自治体と廃線の方向しかないところもある。国有鉄道に時代では、線路、路肩、関連鉄橋工事は、国の予算で復旧できた。JRが民間会社となり、鉄路の維持管理費は、各社持ちになっている。JR本体の財政では、災害復旧工事費は、賄いきれないのだろう。すでに、沿線の人口減少で、採算割れもしている。地方の高齢社会では、運転免許の返上に伴う、代替交通の確保がなければ、高齢生活は維持できない。

貯蓄配分表
 教育資金計画
 16年間目標積立額700万円、毎年の積立額43.75万円とする。最近は、出生率低下を阻止する国・自治体の少子対策で、子供手当、授業料無料化等による、生活費・教育費公費扶助・補助がつき、自己負担が軽減されている。年収と子供の能力・将来を勘案して、教育資金計画を立てることになる。年収不足で、さらに無計画だと、子供の成長期に、教育資金を政府金融機関で借り入れることになる。しかし、大学進学は、少子対策による、奨学金等の支給条件の多様化で、低所得者層の教育費を支給するようになってきた。
 住宅取得計画
 33歳、期首財形住宅貯蓄350万円、残り3年間頭金年間50万円、25年間借入額2,500万円、年間返済額143.6円元利均等払い(利息43.6円、元金100万円)とする。
 老後の安心
 残額を老後の安心とする。

以下の貯蓄配分表は、イベント表の抜粋である。期末貸借対照表は、33歳から48歳までである。
貯蓄配分                 期末貸借対照表
年齢   教育資金  差額      年齢 財形 積立    預金  固定資産 負債  純資産
33     43.75       106.25     33    400  43.75   106.25                   550
35                114.25   34    450   87.5     216.5                     754
36                 24.65   35  500 131.25    330.75                    962
48        43.75        62.65      36         175       355.4  3000      2500    1030.4
49                    118.4       37         218.75    384.05 3000      2400    1202.8
55                    120.4       38         262.5     416.7  3000      2300    1379.2
56                     56.4       39         306.25    453.35 3000      2200    1559.6
60                56.4    40       350       494    3000      2100    174
61                     70         41         393.75    538.65 3000      2000    1932.4
62                     70         42         437.5     587.3  3000      1900    2124.9
65                     70         43         481.25    639.95 3000      1800    2321.2
66                      0         44         525       694.6  3000      1700    2519.6
67                      0         45         568.75    751.25 3000      1600    2720
68                     30         46         612.25    809.9  3000      1500    2922.15
                                  47         656.25    870.55 3000      1400    3126.8
                                  48         699.5     933.2  3000      1300    3332.7

運用計画と非課税制度利用
 2章の非課税制度を運用計画に適用すると次のようになる。
1子の教育費    旧ジュニアNISA(18歳まで)180万円    400万円)
          新NISA制度では、廃止。両親1800万円×2の枠で積み立てる。
2住宅資産形成      財形持家融資制度低利融資       (財形住宅貯蓄550万円)
3老後の安心  財形年金貯蓄元利合計550万円まで、非課税        550万円
        NISA成長投資枠、年240万円まで非課税       
        NISAつみたて投資枠、年120万円まで非課税   合計1,800万円
                                          夫婦で(3,600万円)
1      山川家イベント表から,毎年,教育資金を43.75万円,16年間,貯蓄する.教育資は,新NISAのつみたて投資枠が,最も適している.
2      住宅ローンは,頭金が3年残っているので,その間,住宅の選択に入り,36才から,住宅ローンを開始し,25年間返済し,60才で返済を終える.3      収支差額が毎年発生するが,その総額は,非課税枠内に入る.まず,老後の安心のために,iDeCo,残りは,つみたて投資枠か、成長投資枠にする.
3)老年世代65歳~85歳の金融行動
 老年世代65歳から85歳までの金融行動の目的を説明する。老年世代になると、公的年金を受給できるが、公的保険を支払う義務が生じる。公的年金から公的保険を天引きする。生活に不足する分は、資産形成と退職金から、取り崩すことになる。
 資産形成と退職金は、目減りしないように、新NISAつみたて投資枠または成長投資枠を利用しつつ、運用を続けることになる。山川氏と代わって、退職した高原氏のイベント表を作成する。
 
                       イベント分析の枠組み
高原家イベント表
年齢      66  67  68  69  70  71  72    73        85               
        64   65   66  67  68  69  70  71      82   83   84    85
 年金         116   116   194   194  194  194   194   194        194  103  103  103
 取り崩し   154   154    76    76   76   76    76    76            76    32   32   32
支出      270  270   270  270 270  270  270   270          270 135  135  135

イベント表の仮定と推計枠組み
 公的年金および厚生年金は、算出方法が公開されているので、正確であるが、将来予測はできない。現在給付高をそのまま使う。企業年金も拠出額は、算出可能だが、運用額は、資産管理会社の通知で分かる。老後の安心も、銀行・証券会社で拠出額と運用額が分かる。

収入の推計
 公的年金(-控除)公的保険(国保,介護)=公的年金収入

実例 
 公的年金収入=基礎年金779,300×2-公的保険(国保270,309円総所得200万円2人簡易計算介護126,720円第8段階1,161,571
 厚生年金779,300円基礎年金と同額とする
 年金手取り額1,940,871円=公的年金収入+厚生年金=1,161,571779,300
 企業年金(確定拠出年金)23歳から60歳まで、拠出月数=12カ月×38年=456カ月、企業拠出総額=2万円×456912万円、企業年金(確定拠出年金)運用額=拠出総額×1.2912万円×1.21094.4万円
 老後の安心拠出総額2,285万円 運用額(平均2)2,285万円×1.022330.7万円
 退職時資産:金融資産=企業年金1094.4万円(退職金に相当)+自己資産2330.7万円
            =3425.1万円
支出の推計
 消費支出
 高原氏は、平均寿命85歳で終わるように、見込んでいるから、支出を年270万円とすると、2,700,0001,940,871759,129 となり、年約76万円不足する。高原氏の資産は、運用額で、3425.1万円であるから、3425.1万円÷20171.255万円であり、十分、賄える。

収支差額表                    期首貸借対照表
年齢  取り崩し          資産  現預金 投資信託 固定資産  負債 純資産
66    154                 2234         0      3000       0    5238
67        154                                2084         0      3000       0    5084
以下の表は、テキスト本文pp.6768にある。

運用計画と非課税制度利用
 金融資産取り崩しで、年間76万円取り崩すので、その額を年金化する方が、運用のわずらわしさから、開放されるだろう。この問題は、次回、以降で、取り扱う。実物資産である自宅については、その資産価値は、日本の住宅では、通常、建物は耐用年数30年で、0になる。個人住宅では、減価償却引当金を積み立てていないためそうなる。固定資産の内、建物の価値は0円である。退職後、20年間、さらに、住むわけであるから、リフォームが必要になるかもしれない。
 2章の非課税制度を運用計画に適用すると次のようになる。
 高原家イベント表から、NISAが、最も適している。一人、NISAつみたて投資枠年120万円または成長投資枠240万円まで非課税であり、5年間で、投資枠は360万円×51,800万円である。夫婦で、合計,600万円可能である。収支差額が毎年取り崩し76万円である。ただし、どちらかが死亡すると、投資信託と株式では、相続時点での評価が異なり、現物を相続しても、相続人の投資枠制限がかかる場合がある。

今週(2024624日~628)のイベントと市場への影響度
 先週のイベントは、19日プーチンが平壌で、ロ朝首脳会談を開き、包括的戦略パートナーシップ条約を締結しました。20日、プーチンがハノイを訪問、ベトナム手法と会談しました。東アジアの友好国を訪問し、西側との経済・外交・安全保障・運輸・人流の全方向から、完全に、ロシア連邦を封鎖されつつあるため、東アジアでは、ウクライナ戦争前からの友好国と連携をつなぎ、経済・外交・安全保障の窓を開いておく戦略をとった。ロシア産資源の輸出と中国からの最終製品の輸入だから、貿易赤字が長期的に続く。ロシア資源の生産は、付加価値の増加を伴わない。西側の企業は撤退したから、ロシアの国内総生産は、戦時経済で、付加価値が少ない軍需生産に資源が取られ、軍需品はウクライナ戦線に運ばれ、ウクライナを破壊し、浪費する。ウクライナ側からは、対ロシア連邦に対する損害賠償請求額が増加する。国内最終消費財の生産は減少する。資源を輸出し、国内最終消費財の生産の不足分は、中国から輸入する。貿易赤字が持続し、外貨が減少、物々交換の貿易になる。2024年国防予算は、国家予算の3分の1である18兆円だったが、来年度は、国債増発しても引き受け手がいなく、税収不足で、増やせなくなるだろう。ロシア経済の縮小は早く訪れる。
 20日東京都知事選挙の告示がありました。小池現都知事、蓮舫氏はじめ56名が立候補しました。
 今週のイベントは、25日夏季ダボス会議が大連で開かれます。27日欧州連合首脳会議が28日まで行われます。米大統領選候補の第1回テレビ討論会が行われます。28日イラン大統領選が始まります。
 
 経済統計は、次の発表がありました。
                     予測値     実現値
617 4月機械受注統計        -0.2%     0.7
    中5月小売売上高          3.9%     3.7
       鉱工業生産指数        6.3%     5.6
18日  米5月小売売上高          0.3%     0.9% 
19日  日5月貿易統計        -1兆2985億円 -12213億円  
20日  米5月経常収支          2061億ドル 2,376億ドル
21日  日5月全国消費者物価指数       2.8%      2.8
    米6月製造業PMI          0.3%      0.5
 経済統計は、次の発表があります。
                     予測値 
624日 日5月全国百貨店売上高    
25日   日5月全国スーパー売上高   
27日   米実質GDP          1.5
      GDPデフレータ        3.0
      個人消費           2.0
      耐久財受注          0.1
28日   日5月有効求人倍率       1.25
      5月完全失業率        2.6
      5月鉱工業生産指数      0.2
      6月東京都区部消費者物価指数
     米5月個人消費支出      0.3
      5月個人所得         0.4
      5PCEコアデフレータ   2.6%

 統計は、国民総支出GDE構成要素、物価、利子率について、日本の発表結果を一覧で以下に表します。
日本          3月          4月         5
GDP(前期比)     0.5
消費コンビニ売上高  97009600万円    95394500万円
  スーパー売上高  14156014万円 11463207万円
  百貨店売上高   5109億円       4441億円
投資(工作機械受注統計) 13565000万円   1209200万円   1245億円
輸出         93767億円    89807億円
輸入         88797億円    94433億円
 貿易収支        4910億円      Δ4625億円         Δ6615億円
為替レート(/ドル)  147.46        153.01       155.58
物価指数(総合指数)  2.6%          2.5%       2.8%
利子率        0.1                           0.1        0.1
株価         39,688.9        39523.55     38229.11
(2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
原油価格       83           90.4        84.9
ドバイ、現物1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得(毎月勤労統計)  302,060円(1.0%) 速報296,884(2.1)
完全失業率       2.6%         2.6%     
景気動向一致指数   111.6         113.6       115.2
      先行指数    111.8         112.2       111.6
米国           3月            4月         5
GDP(前期比)     2.5
個人消費       0.8%        0.2
投資(耐久財受注)   0.8%        0.7       
輸出         25762000万ドル 24901500万ドル
輸入         32699200万ドル 32356700万ドル
 貿易収支      Δ694億ドル     Δ746億ドル
物価指数       3.5%         3.4%       3.3
利子率        5.5%         5.5%       5.5
株価(NY)     38722.69       37983.24      39512.84
2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
原油価格       78.01         85.41        78.26
NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得            0.5%         0.3
完全失業率     3.9%         3.9%        4.0
中国           3月             4月         5
GDP(前期比)     5.3
個人消費       3.1%        2.3
全国固定資産投資(1~3月期)1042億元(4.5%)
輸出(前年同期)    Δ7.5%       1.5
輸入         Δ1.97%      8.5
 貿易収支    Δ4159億元      5135億元  
物価指数      0.1%          0.3%        0.3
利子率(1年物LPR3.45%         3.45%        3.45
株価(上海)      3046.02       3619.47       3154.55
(2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
個人所得      
完全失業率     5.3%         5.2%         5.0


13回目 202471

6.3ドルコスト平均法
 ・制度金融の利用枠のもとでのドルコスト平均法
 (1)海原さんの場合
 (2)山川家の場合
 (3)高原家の場合

6.3ドルコスト平均法

制度金融の利用枠のもとでのドルコスト平均法
 会社員の制度金融利用枠は、企業に制度がある場合、財形住宅、財形年金、確定拠出年金DC、個人加入できるiDeCoの制度がある。個人貯蓄では、成長投資枠NISA、つみたて投資枠NISAの制度がある
 これまでの各節で、段階的に計算してきたイベント目標額を企業加入制度、個人加入制度によって、利用枠を決める。新入社員は月別、山川家、退職者は年別で、貯蓄・投資額が決まる。制度別は、拠出額が決っている。実践では、月別の貯蓄・投資額を金融商品に割り当てる。企業加入制度では、資産管理・運用会社が指定され、金融商品も指定されている。個人加入制度では、任意に契約できるが、資産管理・運用会社を替えることは、コストがかかる。
 したがって、これらの制度枠利用は、月別、資産管理・運用会社が決まっていることが前提である。その上で、投資者は、その会社の提供する商品を選択することになる。資産選択理論を利用すれば、自分の期待収益率とその分散の傾向(期待効用関数)を自覚し、提供商品リストから、自分の傾向に適合する割合が決まる。毎月、第11回目の実践の式を使い、市場で購入する。ただし、有効フロンティア計算のためのデータ取得は、月1回、月次データをデータ表に記録するだけでも、根気がいる。今回の本文のおわりに、例として、選択した6つ投資信託の期間(2019/1/272024/6/27)の基準価格データを掲載している。検索サイトにおいて、各投資信託を検索し、投資信託の基本データと、基準価格の時系列のチャートをみる。EXCELにその営業日基準価格データを記録する。EXCELの上部のデータ欄に、データ分析を付けること必要である。

データ分析分析ツールの有効化
 EXCELのファイルから、オプションのアドインをクリック、通常は、無効なアプリケーションの中に、分析ツールが無効になっていますので、分析ツールの前の四角にチェック・マークを入れて、有効にしてください。分析ツールを有効にするまで、解説書を調べ、何度も忘れました。今回も、昨年は、出来たのに、を入れることは忘れていた。
 データ分析分析ツール基本統計量から、基準価格月次平均収益率および基本統計量を計算し、6つの投資信託の標準偏差σと平均収益率μを分析することは、次回示す。

 勤労者であれば、毎月の制度利用の天引き額が決まっており、さらに、ボーナス月の自主的投資額25万円が、基本の投資額である。不定期の収支差額は、各月の予備的資金として、流動性の高い預金等に半年をめどに、月々の収支を調整する。資産形成に回すのは、日常生活を犠牲にすることが多いので、やめた方がいい。

ドルコスト平均法:ドルコスト平均法は、毎月、決まった商品を定額資金で購入する投資方法である。

 ドルコスト平均法は、「時間分散法」といわれる。投資期間が6カ月あれば、その期間、1回から数回、市場動向を読んで、その都度、余裕資金で、投資信託を購入する場合と、月割り均等に6回、定額購入し、時間を分散する場合では、6カ月後の運用成績は、時間分散、定額購入した場合と比較するならば、時間平均化できるという方法である。
 制度利用の天引きならば、その額を毎月27日に、運用会社の口座に自動振替し、一つの商品に定額投資する。ボーナス月の25万円は、各商品の値動きが低調な、中旬15日に投資する。公務員の給料日、年金者の年金支給日は15日、民間会社では、20日締め、25日支給、小規模業者では、月末が多い。日本では、給与支給日に、現金需要が大きくなる。

 2種類以上の商品を、(標準偏差σ、平均収益率μ)の平均・分散法で選択しているのであれば、各商品に割り振った資金で、定額購入する。たとえば、2種類の投資信託、日興-DCインデックスバランス(株式60)SBI-EXE-iグローバルREITファンド(20241SBI-EXE-i全世界REITファンドと改称)を資産選択理論で最小分散の最適割合を決める。最適割合を二分の一とし、毎月2万円が制度利用の拠出金であれば、それぞれの投信を毎月1万円定額購入する。

 10年以上の少額投資の基本戦略は、平均分散法で、複数の商品を選び出し、ドルコスト平均法で、毎月、時間を分散して、決めた商品を定額購入していくことである。商品の選択は、変更は可能であるが、頻繁の変更は、ドルコスト平均法ではなくなる。投資期間6カ月の間は、投資信託商品の基本価格が激変しない限り、毎月、決めた商品を定額購入する。

(1)海原さんの場合
 12回目に戻ると、海原氏の年齢により、スタートする収支差額と期末貸借対照表は、テキストにある。運用は考慮していない。
 新入社員は、貯蓄配分表を作成する。企業加入制度は、および個人加入制度は、例として、SBI証券とインターネット銀行を契約したとする。インターネット証券・銀行の場合、スマホ取引が可能であり、売買の指示が即時的である。取引手数料も安い。インターネット証券・銀行の場合、登録すれば、保有資産の評価額を随時見ることができる。
 新入社員の場合、企業の拠出額は、月1万円とする。SBI証券のサイトにおいて、iDeCoの商品リストを見る。投資信託受託証券は、すでに、分散投資になっているので、個人でさらに資産選択をする必要はない。商品は、主に、日本債券、日本株式、外国債券、外国株式に分類される。後は、それらのミックスである、バランス型になる。
現在、海原氏は、現在、27歳だとする。結婚を30歳に控えている。
海原氏の戦略結果(2020年版資産形成論)
運用計画
 計画は夏冬ボーナスそれぞれ25万円を積立て、財形は、250万円ある。iDecoは、月1万円で、これらは、天引き貯蓄だから、運用計画が残る。財形および取り崩しはできない。預金は、予備的動機にもとづく。
 海原氏が27歳の場合、20197月から、20203月まで、財形に、日興-DCインデックスバランス(株式60)を当てる。iDecoは、SBI-EXE-i全世界REITファンドにする。預金は、16万円あるので、NISAで運用すると、総合食品スーパーなどで、株主優待制度と配当が12%を超える株式を購入できる。その期間中、商品割引の特典がつく最小の株数以上を購入する。今回、チャンスは、コロナ暴落で、16万円で買える。
投資信託の選択
 SBI証券のホームページの[iDeco 確定拠出年金]に、軽くポインターを当てると商品リストが出るので、クリックすると、投資信託のデータを調べられる。お気に入りに登録する。証券会社のサイトは、宣伝が多いので、どこに、データがあるのかわかりにくいので、いつでも、確認できるようにしておく。海原氏、山川氏および高原氏の選択する投資信託は、以下の投資信託しとし、債券、インデックスバランス(株式204060)、グ全世界REITおよびJ-REITである。

SBIEXEi先進国債券ファンド
日興-DCインデックスバランス(株式20)
日興-DCインデックスバランス(株式40)
日興-DCインデックスバランス(株式60)
SBI-EXE-iグローバルREITファンド(20241SBI-EXE-i全世界REITファンドと改称)
ニッセイ-DCニッセイJ-REITインデックスファンドA

 今回は、6種類の投資信託の毎月27日の基準価格表を載せている。
20235月までのデータで、Excelを使い、関数fx欄に、$B$:$B95$の列をとり、データの項をクリック、データ分析をクリック、基本統計量にチックを入れる。各列を平均値、標準偏差の計算結果を得た。それを、縦軸平均収益率、横軸標準偏差で表示すると、6本の特性があらわれた。外債と株式20と株式40の中間に来た。株式204060は等間隔に直線に並んだ。リート2本は、標準偏差がそれら4本より、明らかに2倍以上高く、しかも、標準偏差は、平均収益率は株式40に近く、日本リートはグローバルリート(全世界リート)より、収益率が高い。資産選択理論の最小分散の観点から、前4本のうち2本で、有効フロンティアを計算するのが、最適のようだ。

SBI外債

日興20

日興40

日興60

SBIGREIT

日生JREIT

標準誤差

0.001907

0.00135

0.002531

0.00343

0.007844

0.006958

収益率

0.002776

0.001776

0.003971

0.006013

0.003384

0.004311

 口数の計算法
10,000(円)投資額:() 基準価格(円)=x(口数)() 10,000(口数)

            x口数={10,000(円)投資額÷基準価格}×10,000(口数)  (1)

実際のデータを使い、10,000円の投資額で、SBI-EXE-iグローバルREITファンドの基準価格13,536では何口買えるのか、(1)式に代入して計算すると

SBI  2017/10/27    7,38710,000÷13,536×10,000

7,387口買える。半年、計算すると、次のようになり、期末合計は45,515口になる。

2017/10/27  11/27   12/27     1/29     2/27     3/27   口数合計
SBI  13,536   13,665  13,816    13,498    12,544   12,202   
口数  7,387     7,317     7,237     7,408      7,971      8,195    45,515

期末評価額は
3月総評価額=口数合計÷10,000×基準価格
        45,515÷10,000×3月末基準価格(12,202円)
        4.5515×12,202円=55,537(評価損4,463)
となる。このファンドは、基準価格が下落していったので、評価額は損失がでているが、反比例して、口数が増加する。
2019年、この教室の始まる前、SBI証券のサイトにおいて、選んだのが、次の2本である。選択理由は、信託報酬率が1%以下、投資総額が多い、長期間の実績がある。

日興-DCインデックスバランス(株式60)
SBI-EXE-iグローバルREITファンド(20241SBI-EXE-i全世界REITファンドと改称)

 コロナの影響が出たのは、2020/3/27からであり、特に、SBI-EXE-iグローバルREITファンドは、下落が大きい。この場合、売却できないから、ドルコスト平均法では、そのまま、買うか、SBIEXEi先進国債券ファンドに、相場が反転するまで、切り替える。しかし、リートの特徴は、株式より、急激に落ちるが、賃料は2年間固定されているので、下限に到達すると、反転は、株式より大きい特徴がある。実証でも、確かめられている。
 同様に、財形の日興-DCインデックスバランス(株式60)も。戦略の変更をしなくても、コロナは乗り切れている。
20247月以降の戦略
 2回、20万円を財形住宅貯金とする。海原氏は27歳なので、財形は、DCインデックスバランス(株式60)に、ボーナス月、7月および12月に、それぞれ、20万円投資する。iDeCoは、1万円である。半年ごと、ドルコスト平均法で、DCインデックスバランス(株式60)またはSBIEXEi先進国債券ファンド、SBI-EXE-iグローバルREITファンドのいずれかを選び、毎月1万円投資する。成長投資枠NISAの日本株式を月1万円購入する。日本経済は正常化途上にあるので、コロナ以前の株価水準に到達していない。成長性のある株式で、正常化すれば、上昇が期待できる銘柄を1社選ぶ。年間12万円およびボーナス月の投資額がある。従来のNISAは、5年期限があったが、成長投資枠NISA では、無期限になった。20%以上、値上がりすれば、売却し、利益を確定、同じ銘柄か、成長性ある銘柄に、ボーナス月は、全額投資する。

(2)山川家の場合
運用計画と非課税制度
 非課税制度
 2章の非課税制度を運用計画に適用すると次のようになる。
1子の教育費   つみたて投資枠NISA                    400万円)
2住宅資産形成      財形持家融資制度低利融資       (財形住宅貯蓄550万円)
3老後の安心  財形年金貯蓄元利合計550万円まで、非課税        550万円
     つみたて投資枠および成長投資枠NISA3600万円非課税  
                                    夫婦で(拠出額3600万円)
                                合計 財形     1100万円
                                     NISA     3600万円
教育資金計画
 山川家イベント表から、子216年間目標積立額700万円、毎年の積立額43.75万円である。教育資金は、つみたて投資枠NISAが、最も適している。
住宅取得計画
 33歳期首財形住宅貯蓄350万円、残り3年間頭金年間50万円を貯蓄し、36歳から、25年間借入額2,500万円、年間返済額143.6円元利均等払い(利息43.6円、元金100万円)とする。住宅ローンは、頭金が3年残っているので、その間、住宅の選択に入り、36才から、住宅ローンを開始し、25年間返済し、60才で返済を終える。
老後の安心
 収支差額が毎年発生するが、その総額は、非課税枠内に入る。まず、老後の安心のために、iDeCo、残りは、つみたて投資枠および成長投資枠NISAにする。企業加入制度iDeCoは、企業の拠出額を2万円とする。標準月収が増加すれば、拠出額は増加する。新入社員が月1万円としたよりは、山川氏は、商品選択は少なくとも2本可能である。
山川家の戦略
 投資信託の選択
 教育資金運用
 つみたて投資枠NISAおよび成長投資枠NISAは、日興-DCインデックスバランス(株式40)または(株式60)およびニッセイ-DCニッセイJ-REITインデックスファンドAをそれぞれ、3.6万円および1万円で毎月購入する。引出期に近づく場合、そのときの株式市場相場で、利益が減少するから、利益を確定し、変動の少ないSBI-EXEi先進国債券ファンドを購入する。
 老後の安心
 DCおよびiDeCoは、それぞれ、2万円、日興-DCインデックスバランス(株式40)または日興-DCインデックスバランス(株式60)を毎月購入する。退職期が近づくと、一時金にするか、個人年金化するか、選択する。

(3)高原家の場合
 高原氏の安心運用資金は、運用無しで、2,285万円である。上述のドルコスト平均法で、元本が減少しない投資信託を半分以上、10年間、75歳まで、変動の少ない、バランス型(株式20)またはSBI-EXEi先進国債券ファンドの投資信託で運用する。残りは、10年間、元本維持型の定期預金またはSBI-EXEi先進国債券ファンドの投資信託で、取り崩し資金にする。妻が100歳まで長生きしても、資産の取り崩しは15年間で32×15480であるから、資金は枯渇しない。
運用計画
 金融資産取り崩しで、年間76万円取り崩すので、その額を年金化する方が、運用のわずらわしさから、開放されるだろう。実物資産である自宅については、その資産価値は、日本の住宅では、通常、耐用年数30年で、0になる。山川邸は、減価償却引当金を積み立てていないためそうなる。退職後、20年間、さらに、住むわけであるから、リフォームが必要になる。実際、実行した例でいうと、リフォームの内容は、エアコン、台所とくにIH調理機、洗面所・浴室、エコキュウト、トイレ、介護用手すり、バリアフリー、外回りは、PV設置、蓄電池、外装、外周りの手摺(介護認定されると、レンタル介護用品、介護設備費に市からの補助金がある。温暖化対策で、二重ガラス窓、外装等の断熱工事、PV設置に補助金が出る場合がある。)などである。高齢者住宅は、特に、火災のリスクのため、オール電化、熱中症対策に空調、停電のための蓄電池装備が望ましい。
リフォームと市からの補助
 リフォームは、介護保険や市の補助金がつかえる。バリアフリーは、段差を滑らかにする補助材がある。廊下、家・外の階段は、老人の動線に配慮、手すりをつける。2階は、昇降機を付けることが、一番安全であるが、老人は、2階を使わせてはいけない。知り合いでも階段から落ちて、骨折した。老人の骨折は寝たきりになるもとである。浴室での転倒、のぼせ溺死対策で、手すりは必須であり、トイレも全面手すりで移動できるようにする方が安全である。便座の両側に手すり、立ち上がりに、つかまり手すりを付ける。便座の両側の手すりは、普通の人も、便秘気味であれば、手すりにつかまって、腰を浮かし、軽く、きばると、割とスムーズに大便が排出できる。大便の原料である食材は、野菜を多くすると、大便はなめらかにできるが、それをしないとカップ麺・スパゲッティ・うどん・ラーメンなどは粘り便になるようだ。水洗ウオシュレットでなければ、ふき取りがつらい。玄関は、踏台と手すりをつけるとよい。

 退職金は、期首貸借対照表に、計上していないが、以上の老人用リフォーム資金に充てることが望ましい。高原氏は、20年間、妻は100歳までなので、住宅設備の更新等の予備費として、退職金の残りは、生活費に回さないことが望ましい。
 高原邸は、退職金でリフォームを済ませているとする。
高原家の戦略
投資信託の選択
 投資資金の半分以上は、10年間、引出がないので、日興-DCインデックスバランスは株式2040で、収益を確保する。残りは、10年以内に、引き出すので、定期預金またはSBI-EXEi先進国債券ファンドを購入する。

 毎月27(翌営業日)に記録した基準価格データは、次の通りである。
基準価格データ
 2019128日~2024627日まで,基準価格データは次の通りである。2023627日の基準価格は取れなかったので、630日のデータである。
投資信託EXCEL表  期間2019/1/282024/6/27(各データ数66)

投信名

日付

SBI外債

日興20

日興40

日興60

SBIGREIT

日生JREIT

190128

11258

15501

18364

20949

13557

11153

190227

11446

15654

18758

21582

14170

11351

190327

11584

15767

18843

21683

14535

11839

190426

11629

15811

18956

21884

14576

11800

190527

11518

15684

19623

21291

14415

11905

190627

11593

15801

18763

21454

14092

11951

190729

11642

15874

18905

21677

14432

12399

190827

11623

15832

18595

21021

14082

12815

190927

11743

16025

19144

22004

14822

13556

191028

11816

16049

19307

22348

15195

13932

191127

11962

16168

19596

22850

15149

13908

191227

11903

16167

19699

23090

15129

13470

200127

11931

16188

19665

22980

15403

13653

200227

12167

16037

19193

22094

15034

13487

200327

11858

15627

18375

20763

10917

9782

200426

11927

15684

18485

20939

10918

10084

200527

11997

15884

18980

21796

11490

10377

200629

12146

15889

19112

21891

11470

10635

200727

12224

15992

19261

22269

11533

10760

200827

12232

16095

19531

22754

12011

11219

200928

12096

16113

19576

22833

11531

11292

201027

12099

16094

19519

22729

11657

10765

201127

12127

16400

20255

24041

12586

11052

201228

12169

16439

20344

24156

12500

11452

210127

12122

16545

20646

24653

12829

11885

210301

12156

16531

20754

24996

13260

12984

210329

12369

16871

21292

25865

14324

13135

210427

12337

16754

21147

25600

14794

13512

210527

12474

16798

21236

25746

15128

13734

210628

12569

16908

21501

26221

15800

14306

210727

12642

16946

21510

26185

15933

14279

210827

12572

16925

21479

26140

15885

14424

210927

12572

17106

21982

27089

15813

14061

211027

12820

17076

21895

27017

16811

13916

211129

12741

16980

21693

26558

16524

13567

211227

12796

17058

21873

26878

17017

13677

220127

12507

16722

21172

25685

16144

13082

220228

12385

16694

21251

25923

16325

12761

220328

12657

16827

21723

26835

17148

13520

220427

12791

16712

21373

26163

18264

13608

210527

12474

16798

21236

25746

15128

13734

210628

12569

16908

21501

26221

15800

14306

210727

12642

16946

21510

26185

15933

14279

210827

12572

16925

21479

26140

15885

14424

210927

12572

17106

21982

27089

15813

14061

211027

12820

17076

21895

27017

16811

13916

211129

12741

16980

21693

26558

16524

13567

211227

12796

17058

21873

26878

17017

13677

220127

12507

16722

21172

25685

16144

13082

220228

12385

16694

21251

25923

16325

12761

220328

12657

16827

21723

26835

17148

13520

220427

12791

16712

21373

26163

18264

13608

220527

12673

16725

21404

26216

16871

13541

220627

12929

16637

21361

26248

17049

13222

220727

13310

16866

21745

26827

17465

13696

220829

13164

16820

21739

26887

17640

13930

220927

12840

16520

21213

26064

15949

13460

221027

13087

16669

21571

26713

16053

13568

221128

13012

16782

21901

27347

16550

13686

221227

12462

16395

21207

26249

15410

13156

230127

12483

16484

21506

26845

16151

12953

230227

12574

16582

21662

27075

16140

13006

230327

12551

16684

21921

26807

14543

12412

230427

12820

16876

22096

27677

15305

13022

230527

13123

17179

22773

28866

15427

13180

230630

13619

17505

23476

30108

16704

13228

230727

13345

17458

23441

30058

17002

13500

230828

13527

17257

23280

30031

16630

13458

230927

13451

17276

23437

30401

16101

13450

231027

13383

16993

22929

29585

15594

13264

231127

13925

17386

23716

30933

17113

13263

231227

13925

17520

23819

30963

17904

12897

240129

14133

17660

24379

32170

17876

13128

240227

14194

17946

25026

33355

17984

12574

240327

14415

17086

25453

34228

18314

13291

240430

14707

17962

25326

34118

18491

13327

240527

14835

17892

25374

34379

18734

13940

240627

15331

17971

25601

34842

19301

12799

SBI外債

日興20

日興40

日興60

SBIGREIT

日生JREIT

今週(202471日~75)のイベントと市場への影響度
 先週のイベントは、25日夏季ダボス会議が大連で開かれました。27日欧州連合首脳会議が28日まで行われました。米大統領選候補の第1回テレビ討論会が行われました。バイデン大統領は、風邪で体調悪く、トランプ氏が勝ちました。28日イラン大統領選が始まりました。302候補の決選投票です
 
今週のイベントは、1日、6月の全国企業短期経済観測調査が発表されます。路線価が公表されます。3日新紙幣が発行されます。上海協力機構首脳会議がカザフスタンで、4日まで開かれます。4日英国総選挙です。
 先週の統計は、次の発表がありました。
                     予測値     実績値
621日 日5月全国コンビニエンスストア売上高      9476億円
624日 日5月全国百貨店売上高             4692億円
25日   日5月全国スーパー売上高            13578809万円
27日   米実質GDP          1.5%       1.4
      GDPデフレータ        3.0%       3.1
      個人消費           2.0%      1.5
      耐久財受注          0.1%      0.1
28日   日5月有効求人倍率       1.25倍     1.24
      5月完全失業率        2.6%      2.6
      5月鉱工業生産指数      0.2%      0.3
      6月東京都区部消費者物価指数          2.1
     米5月個人消費支出       0.3               0.2
      5月個人所得          0.4%      0.5
      5PCEコアデフレータ     2.6%      2.6
 今週の統計は、次の発表があります。
                     予測値
71日 日日銀短観大企業製造業先行     10
         大企業製造業業況判断   11
         大企業非製造業先行    28
         大企業非製造業業況判断  33.3
    中
5月貿易収支           -710億ドル

    米5月ISM製造業景況感指数       49.0
      5月ISM製造業景況感指数      52.0
7日   日5月家計調査            
    日5月景気動向指数一致        
             先行        
    米6月失業率            4.0
 統計は、国民総支出GDE構成要素、物価、利子率について、日本の発表結果を一覧で以下に表します。
日本          3月         4月          5
GDP(前期比)     0.5
消費コンビニ売上高  97009600万円    95394500万円  9476億円
  スーパー売上高  14156014万円 11463207万円 13578809万円
  百貨店売上高   5109億円       4441億円      4692億円
投資(工作機械受注統計) 13565000万円   1209200万円   1245億円
輸出         93767億円    89807億円
輸入         88797億円    94433億円
 貿易収支        4910億円      Δ4625億円         Δ6615億円
為替レート(/ドル)  147.46        153.01       155.58
物価指数(総合指数)  2.6%          2.5%       2.8%
利子率        0.1                           0.1        0.1
株価         39,688.9        39523.55     38229.11
(2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
原油価格       83           90.4        84.9
ドバイ、現物1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得(毎月勤労統計)  302,060円(1.0%) 速報296,884(2.1)
完全失業率       2.6%         2.6%      
景気動向一致指数   111.6         113.6       115.2
      先行指数    111.8         112.2       111.6
米国           3月            4月         5
GDP(前期比)     2.5
個人消費       0.8%        0.2
投資(耐久財受注)   0.8%        0.7       
輸出         25762000万ドル 24901500万ドル
輸入         32699200万ドル 32356700万ドル
 貿易収支      Δ694億ドル     Δ746億ドル
物価指数       3.5%         3.4%       3.3
利子率        5.5%         5.5%       5.5
株価(NY)     38722.69       37983.24      39512.84
2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
原油価格       78.01         85.41        78.26
NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得               0.5%         0.3
完全失業率     3.9%         3.9%        4.0
中国           3月             4月         5
GDP(前期比)     5.3
個人消費       3.1%        2.3
全国固定資産投資(1~3月期)1042億元(4.5%)
輸出(前年同期)    Δ7.5%       1.5
輸入         Δ1.97%      8.5
  貿易収支    Δ4159億元      5135億元  
物価指数      0.1%          0.3%        0.3
利子率(1年物LPR3.45%         3.45%        3.45
株価(上海)      3046.02       3619.47       3154.55
(2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
個人所得      
完全失業率     5.3%         5.2%         5.0 


14回目 202478

6.4 リバランス法
  ドルコスト平均法継続中、何をすべきか
  ・リバランス法

6.4リバランス法

ドルコスト平均法継続中、何をすべきか
 契約証券会社サイトにおいて、若年世代および壮年世代は、毎月の拠出額は、少額定額設定である。投資戦略は、ドルコスト平均法で購入し、iDeCoでは、60歳まで、引出はできない。ある商品の全額を売却、他の商品にスイッチする戦略は、売却に手数料がかかり、購入も手数料がかかるので、ドルコスト平均法に反する。
 個人貯蓄の制度利用の場合は、NISAか、またはつみたてNISAを契約する。投資信託の場合、株式の割合が高くても、平均分散化されているので、基準価格の変動は、激しくない。NISAは売却益の非課税が5年以内なので、目標上昇率が15%であれば、目標上昇率を達成すれば、売却し、利益を確定する。その後、再購入するか、別の商品を購入するのが、非課税制度利用の方法である。購入した商品は、それぞれ、証券会社のサイトに登録できる。実際に、毎月、ドルコスト平均法で購入していれば、登録リストに、投資信託の評価額が表示される。個別の投資信託の日々の変動も見ることができる。

 NISA制度は、2024年から、施行開始でしている。海原氏、山川家、高原家の資産規模では、新NISA制度の枠でカバーできる。確定拠出型企業年金iDeCoの商品選択肢が狭い、積立満期が定年であるのと比較すれば、NISA制度による運用商品の幅がひろく、運用期間が終身である。来年度の『資産形成論2025年』は、NISA制度のもとで、家族の資産形成を計画、運用、管理する方法を考える。

リバランス法
 著しく運用成績が変化すると、選択した資産構成比率に戻すために、成績のよい商品の一部を売却するか、他の商品に再配分し、資産構成比率を回復することをリバランスという。

 資産形成論の理論では、中長期投資を定額的に、継続していく家計を想定している。しかも、資産投資を専業とする投資愛好家ではなく、危険回避者で、最小分散となる商品の組み合わせに投資する。危険回避者である家計は、資産選択理論にしたがって、最小分散となる商品の組み合わせを決定し、各商品に最適資産選択率で、毎月か半年ごとの定額資金を割り当て、ドルコスト平均法にしたがい、半年から1年間、同じ商品を決定した額を購入する。
 
各商品の特性である、標準偏差と平均収益率は、経済活動共に、変動し、政府の経済政策および中央銀行の金融政策の変更で、時間を通じて一定ではない。
 投資信託商品では、もともと、多数の商品で構成されているので、標準偏差と平均収益率の変化は、個別商品である個別株式よりは、ゆるやかである。しかし、経済活動の変動、対応する政府の経済政策および中央銀行の金融政策の変更で、ドルコスト平均法の最小管理期間を半年とすれば、投資信託商品の(標準偏差,平均収益率)は、許容範囲を超えるときがある。

 購入する投資信託を売却、別の商品を購入すると双方の取引コストが高い。むしろ、想定した許容範囲を超えた(標準偏差,平均収益率)の商品は、購入を中断し、許容範囲内の商品を購入するスイッチの方が、取引コストは低い。

リバランスの時期
 リバランスをする時期は、運用期間が短期~5年、中期5年~10年、長期10年以上で、違う。見直し期間が、短期~5年であるほど、商品の入れ替えは、回数が多くなる。
 ドルコスト平均法のもとで、リバランスは、制度を利用している場合、口座から引出し、消費することは出来ないが、口座内で、売却した収益によって、他の商品を購入することができる。また、一方の資産の購入を中断し、他の資産を買うスイッチはできる。

2以上の資産で、高い資産価格から、低い資産価格にスイッチする。
・長期的には、目標5年前で、リスクが低い資産に、シフトする。
・計画期間終了5年前まで、口数の増加を目標にするから、低い価格の資産にスイッチする。 

 本教室では、投資家は、各商品の平均収益率だけでなく、リスクを考慮する。平均分散の有効フロンティアと確定型証券の収益率からの直線との交点で、リスク資産の合成資産が決まる。投資家がその直線の最適点を選択するというのが、教科書的な投資戦略である。その戦略にしたがえば、バランス型投資信託を選択することになる。そして、時系列的には、ドルコスト平均法で、定額購入を半年継続する。
 リバランスの状況が生じるかは、バランス型投資信託以外の投資信託を選択している場合になる。本講義では、2本あれば、変動が少ない方を買い続ける。半年たって、見直すと、それがリバランスに自動的になるのではないか。

 海原氏、山川氏、高原氏、の運用計画を見ると、それぞれの目的で、1本に絞っているので、選択肢が2本以上ないと、ドルコスト平均法でのリバランスは、あまり効果はない。

iDeCo]の[運用商品一覧]および[つみたてNISA]の[つみたてNISAの取扱商品]の範囲の中で、どのように運用管理すると、投資家の満足する成果が得られるのか。

 平均分散戦略とドルコスト平均法の関係は、平均分散戦略で商品のポートフォリオ(一覧表)を決め、それぞれの投資額を決め、毎月か、半年ごとに、ドルコスト平均法で、機械的に、定額購入していくことになる。
 
 
平均分散戦略で選択した商品ポートフォリオとリバランス法との関係は、商品の(標準偏差,平均収益率)は、許容範囲の設定にある。たとえば、商品の(標準偏差,平均収益率) 20%を、許容範囲と設定すれば、それを越えた商品は、リバランス法の対象商品になり、商品特性が変化したとみて、平均分散戦略に入れるか、再計算する。

 投資の実践は、経済活動の動的な変動の中で、運用計画を決めて、ビッグ変動要因、新型コロナウイルスの蔓延と終息3年、ウクライナ戦争世界インフレ2年半が、選択した資産の運用成績に大きく影響した、2019年~2024年であった。その結果、タンス預金、定期預金は、雀の涙の収益しかもたらさず、不況とインフレが続いた結果、預金以外のリスク資産は、ビッグ・イベントに資産価値の実質増益があり、日本円のように、国際通貨価値まで落下することはない。日本政府と日銀の経済・金融政策の失敗等、ビッグ・イベントになってしまった。日本経済・金融・国際貿易・金融の世界標準に復帰する政策手腕が望まれる。日本固有のバブルの発生と処理に、実質10年かかったから、この未熟な経済金融政策を担当する政府・日銀は、今後、10年、100円台にもどすことはできないかもしれない。資産形成では、海外資産投資を半分以上にする、世界分散投資の方が、運用成績が、日本資産分散より、すべての観点から、推奨される。また、新NISAを若年者投資家も、世界分散投資をしていることからも表れている。大谷選手が、大リーグを引退する10年後は、米資産は、倍増し、10年後の日本円に換算すると、4倍増になるとうことである。大リーグ野球年金を賦与され、日本リーグの選手は、芸能人と同じく、この業界の厚生年金はない。国民年金年80万余り、ぽっきりである。日本の野球選手が、大リーグに行くのは、日本で引退後、きれいな嫁さんをもらって、焼肉場外ホームラン店を営むような壮年時代をやりくりしなければならないかだという。

リバランス法の実際例
 20191月~20245月まで、第13回のデータ表から、投資信託の債券1、株式3、リート2t1日の月次収益率を(Pt-Pt1)/P t1 とし、計算すると、以下の表になる。その平均値と標準偏差を計算した。

EXCEL表計算

投資信託EXCEL表の作成
 EXCELデータ記入
 EXCELシートを開いて、投資信託EXCELを作成する。
 EXCELシートの1番行を左へ、AからJまでの7セル(空欄)に、日付、6個の投資信託名を記入する。日付の列Aは、日付名190128から2024627を、行番号2番から67番まで、66個を記入する。SBI外債のデータをB2番(B)のセルからB67(B67)のセルまで記入する。同様に、日興20C列から、日興40D列、日興60E列、SGIWREITF列、日生JREITJ列までデータを記入すると投資信託EXCELが作成できる。
 投信月次収益率(20191月~20246)の作成
 投資信託EXCEL表から、投信月次収益率を計算する。
 投資信託EXCEL表と同じEXCELシートの1番行を左へ、MからSまでの7セル(空欄)に、日付、6個の投資信託名を記入する。
 EXCEL関数計算
 t月次収益率を(PtPt1)/P t1 とし、計算する。
M2行のセルを入力できるように、ポインターを合わせ、アクティブにする。
EXCELシートの上辺に、関数欄[fx]があり、右の記入欄に[(B3B2)/B2]の定義式を記入する。意味は、[=(11446-11258÷11258]である。M2行のセルに結果が計算されて出る。同様に、M3行のセルをアクティブにして、関数欄[fx[(B3B2)/B2]を記入する。M3行のセルに結果が計算されて出る。
M2行およびM3行の2つのセルをドラッグして、アクティブにして、2つのセルの右下の隅にポインターを合わせて、下に、引きずると、結果が連続計算される。

EXCEL データ分析
 基本統計量で、平均値と標準偏差を計算する。
データ分析分析ツールの有効化
 EXCELのファイルから、オプションのアドインをクリック、通常は、無効なアプリケーションの中に、分析ツールが無効になっている。分析ツールの前の四角にチェック・マークを入れて、有効にする。EXCELファイルの上辺に、[データ]の項があり、クリックすると、右端に[データ分析]の項がアドインの結果つく。それをクリックすると、EXCELファイルの右下に、データ分析の「窓」が出る。基本統計量を選んで、OKをクリックすると、基本統計量の「窓」が出る。入力範囲に、セル番地を[N1:$N$78]のように入力する。先頭行をラベルとして使用にする。出力範囲に、セル番地を[N83]のように入力する。OKをクリックすると、出力セル番地に、基本統計量が表示される。投信月次収益率(20191月~20246)の下に、6本の投資信託の平均値と標準偏差の結果を示している。

投資信託EXCEL表  期間2019/1/282024/6/27(各データ数66)

投信名

日付

SBI外債

日興20

日興40

日興60

SBIGREIT

JREIT

190128

11258

15501

18364

20949

13557

11153

190227

11446

15654

18758

21582

14170

11351

190327

11584

15767

18843

21683

14535

11839

190426

11629

15811

18956

21884

14576

11800

190527

11518

15684

19623

21291

14415

11905

190627

11593

15801

18763

21454

14092

11951

190729

11642

15874

18905

21677

14432

12399

190827

11623

15832

18595

21021

14082

12815

190927

11743

16025

19144

22004

14822

13556

191028

11816

16049

19307

22348

15195

13932

191127

11962

16168

19596

22850

15149

13908

191227

11903

16167

19699

23090

15129

13470

200127

11931

16188

19665

22980

15403

13653

200227

12167

16037

19193

22094

15034

13487

200327

11858

15627

18375

20763

10917

9782

200426

11927

15684

18485

20939

10918

10084

200527

11997

15884

18980

21796

11490

10377

200629

12146

15889

19112

21891

11470

10635

200727

12224

15992

19261

22269

11533

10760

200827

12232

16095

19531

22754

12011

11219

200928

12096

16113

19576

22833

11531

11292

201027

12099

16094

19519

22729

11657

10765

201127

12127

16400

20255

24041

12586

11052

201228

12169

16439

20344

24156

12500

11452

210127

12122

16545

20646

24653

12829

11885

210301

12156

16531

20754

24996

13260

12984

210329

12369

16871

21292

25865

14324

13135

210427

12337

16754

21147

25600

14794

13512

210527

12474

16798

21236

25746

15128

13734

210628

12569

16908

21501

26221

15800

14306

210727

12642

16946

21510

26185

15933

14279

210827

12572

16925

21479

26140

15885

14424

210927

12572

17106

21982

27089

15813

14061

211027

12820

17076

21895

27017

16811

13916

211129

12741

16980

21693

26558

16524

13567

211227

12796

17058

21873

26878

17017

13677

220127

12507

16722

21172

25685

16144

13082

220228

12385

16694

21251

25923

16325

12761

220328

12657

16827

21723

26835

17148

13520

220427

12791

16712

21373

26163

18264

13608

210527

12474

16798

21236

25746

15128

13734

210628

12569

16908

21501

26221

15800

14306

210727

12642

16946

21510

26185

15933

14279

210827

12572

16925

21479

26140

15885

14424

210927

12572

17106

21982

27089

15813

14061

211027

12820

17076

21895

27017

16811

13916

211129

12741

16980

21693

26558

16524

13567

211227

12796

17058

21873

26878

17017

13677

220127

12507

16722

21172

25685

16144

13082

220228

12385

16694

21251

25923

16325

12761

220328

12657

16827

21723

26835

17148

13520

220427

12791

16712

21373

26163

18264

13608

220527

12673

16725

21404

26216

16871

13541

220627

12929

16637

21361

26248

17049

13222

220727

13310

16866

21745

26827

17465

13696

220829

13164

16820

21739

26887

17640

13930

220927

12840

16520

21213

26064

15949

13460

221027

13087

16669

21571

26713

16053

13568

221128

13012

16782

21901

27347

16550

13686

221227

12462

16395

21207

26249

15410

13156

230127

12483

16484

21506

26845

16151

12953

230227

12574

16582

21662

27075

16140

13006

230327

12551

16684

21921

26807

14543

12412

230427

12820

16876

22096

27677

15305

13022

230527

13123

17179

22773

28866

15427

13180

230630

13619

17505

23476

30108

16704

13228

230727

13345

17458

23441

30058

17002

13500

230828

13527

17257

23280

30031

16630

13458

230927

13451

17276

23437

30401

16101

13450

231027

13383

16993

22929

29585

15594

13264

231127

13925

17386

23716

30933

17113

13263

231227

13925

17520

23819

30963

17904

12897

240129

14133

17660

24379

32170

17876

13128

240227

14194

17946

25026

33355

17984

12574

240327

14415

17086

25453

34228

18314

13291

240430

14707

17962

25326

34118

18491

13327

240527

14835

17892

25374

34379

18734

13940

240627

15331

17971

25601

34842

19301

12799

SBI外債

日興20

日興40

日興60

SBIGREIT

日生JREIT

          投信月次収益率(20191月~20246)

日付

SBI外債

日興20

日興40

日興60

SBIGREIT

JREIT

 

190128

0.016699

0.009774

0.021455

0.030216

0.045216

0.017753

 

190227

0.012057

0.007167

0.004531

0.00468

0.025759

0.042992

 

190327

0.003885

0.002783

0.005997

0.00927

0.002821

-0.00329

 

190426

-0.00955

-0.0081

0.035187

-0.0271

-0.01105

0.008898

 

190527

0.006512

0.007405

-0.04383

0.007656

-0.02241

0.003864

 

190627

0.004227

0.004599

0.007568

0.010394

0.024127

0.037486

 

190729

-0.00163

-0.00265

-0.0164

-0.03026

-0.02425

0.033551

 

190827

0.010324

0.012044

0.029524

0.046763

0.052549

0.057823

 

190927

0.006216

0.001495

0.008514

0.015634

0.025165

0.027737

 

191028

0.012356

0.00736

0.014969

0.022463

-0.00303

-0.00172

 

191127

-0.00493

-6.2E-05

0.005256

0.010503

-0.00132

-0.03149

 

191227

0.002352

0.001297

-0.00173

-0.00476

0.018111

0.013586

 

200127

0.01978

-0.00942

-0.024

-0.03856

-0.02396

-0.01216

 

200227

-0.0254

-0.02624

-0.04262

-0.06024

-0.27385

-0.27471

 

200327

0.005819

0.003634

0.005986

0.008477

9.16E-05

0.030873

 

200426

0.005869

0.012591

0.026778

0.040928

0.052391

0.029056

 

200527

0.01242

0.000315

0.006955

0.004359

-0.00174

0.024863

 

200629

0.006422

0.006441

0.007796

0.017267

0.005493

0.011754

 

200727

0.000654

0.0064

0.014018

0.021779

0.041446

0.042658

 

200827

-0.01112

0.001117

0.002304

0.003472

-0.03996

0.006507

 

200928

0.000248

-0.00118

-0.00291

-0.00455

0.010927

-0.04667

 

201027

0.002314

0.018659

0.037707

0.057724

0.079695

0.02666

 

201127

0.003463

0.002372

0.004394

0.004783

-0.00683

0.036193

 

201228

-0.00386

0.006407

0.014845

0.020575

0.02632

0.03781

 

210127

0.002805

-0.00085

0.005231

0.013913

0.033596

0.092469

 

210301

0.017522

0.020153

0.025923

0.034766

0.080241

0.01163

 

210329

-0.00259

-0.00698

-0.00681

-0.01025

0.032812

0.028702

 

210427

0.011105

0.002619

0.004209

0.005703

0.022577

0.01643

 

210527

0.007616

0.006506

0.012479

0.018449

0.044421

0.041648

 

210527

0.007616

0.006506

0.012479

0.018449

0.044421

0.041648

 

210628

0.005808

0.002242

0.000419

-0.00137

0.008418

-0.00189

 

210727

-0.00554

-0.00124

-0.00144

-0.00172

-0.00301

0.010155

 

210827

0

0.010581

0.023418

0.036305

-0.00453

-0.02517

 

210927

0.019726

-0.00176

-0.00396

-0.00266

0.063113

-0.01031

 

211027

-0.00616

-0.00565

-0.00923

-0.01699

-0.01707

-0.02508

 

211129

0.004317

0.004573

0.008298

0.012049

0.029835

0.008108

 

211227

-0.02259

-0.02009

-0.03205

-0.04439

-0.0513

-0.0435

 

220127

-0.00975

-0.00168

0.003731

0.009266

0.011212

-0.02454

 

220228

0.021962

0.007904

0.022211

0.035181

0.050413

0.059478

 

220328

0.010587

-0.00688

-0.01611

-0.02504

0.06508

0.006509

 

220427

-0.00923

0.000777

0.00145

0.002026

-0.07627

-0.00492

 

220527

0.0202

-0.00529

-0.00201

0.001221

0.010551

-0.02356

 

220627

0.029469

0.013578

0.017977

0.022059

0.0244

0.035849

 

220727

-0.01097

-0.00273

-0.00028

0.002237

0.01002

0.017085

 

220829

-0.02461

-0.01816

-0.0242

-0.03061

-0.09586

-0.03374

 

220927

0.019237

0.008939

0.016876

0.0249

0.006521

0.008024

 

221027

-0.00573

0.006733

0.015298

0.023734

0.03096

0.008697

 

221128

-0.04227

-0.0236

-0.03169

-0.04015

-0.06888

-0.03873

 

221227

0.001685

0.005399

0.014099

0.022706

0.048086

-0.01543

 

230127

0.00729

0.00591

0.007254

0.008568

-0.00068

0.004092

 

230227

-0.00183

0.006114

0.011956

-0.0099

-0.09895

-0.04567

 

230327

0.021433

0.011377

0.007983

0.032454

0.052396

0.049146

 

230427

0.023635

0.017638

0.030639

0.04296

0.007971

0.012133

 

230527

0.037796

0.018977

0.03087

0.043026

0.082777

0.003642

 

230630

-0.02012

-0.00268

-0.00149

-0.00166

0.01784

0.020562

 

230727

0.013638

-0.01151

-0.00687

-0.0009

-0.02188

-0.00311

 

230828

-0.00562

0.001101

0.006744

0.012321

-0.03181

-0.00059

 

230927

-0.00506

-0.01638

-0.02168

-0.02684

-0.03149

-0.01383

 

231027

0.040499

0.023127

0.034323

0.045564

0.097409

-7.5E-05

 

231127

0

0.007707

0.004343

0.00097

0.046222

-0.0276

 

231227

0.014937

0.007991

0.023511

0.038982

-0.00156

0.017911

 

240129

0.004316

0.016195

0.026539

0.036836

0.006042

-0.0422

 

240227

0.01557

-0.04792

0.017062

0.026173

0.01835

0.057022

 

240327

0.020257

0.05127

-0.00499

-0.00321

0.009665

0.002709

 

240430

0.008703

-0.0039

0.001895

0.00765

0.013142

0.045997

 

240527

0.033434

0.004415

0.008946

0.013468

0.030266

-0.08185

 

240627

 

SBI外債

日興20

日興40

日興60

SBIGREIT

日生JREIT

SBI外債

日興20

日興40

日興60

SBIGREIT

JREIT

 

平均

0.004128

0.001999

0.004475

0.006914

0.006203

0.002869

 

標準偏差

0.014877

0.012551

0.017448

0.024052

0.054488

0.044292

 

 散布図は,2021年度:2019128日~2021328日、2022年度:2019128日~2022328日、2023年度:2019128日~2023527日、2024年度:2019128日~2024627日であり、図は縦軸が平均収益率、横軸が標準偏差である。

散布図は、次のリンクに示している。

zu.toushin2.pdf へのリンク


 2021年後半から、FRBが金融緩和を停止、資産購入を計画的に削減し、金利も上昇させる、金融政策の重大な変更に着手した。2番目の散布図をみると、その政策変更効果が、6種類の投資信託に現れている。まず、外債と日興20(債券の割合が大きい)が、標準偏差を上げた。Gリート、Jリートは標準偏差が下がり、収益率も下がった。しかし、JリートとGリートと比較すると、Jリートが下落した。日興40および日興60も、収益率を下げている。

『資産形成論2022年』では、次のように、リバランスをすべきである。外債と日興20は標準偏差の上昇が大きいので、購入を停止する。JリートとGリートは、Jリートの下落傾向は、底が見えないので、購入を停止する。日興40および日興60は、米国の金融政策の変更期間にもかかわらず、変化が大きくないので、そのまま購入を続ける。
 外債および債券割合の多い投資信託、グローバルリートは、米国および世界金利の上昇期にあったため、金融政策の変更に、価格が再計算されたのである。しかし、日本リートは、日本の金融政策に変更は、現在もなく、Jリートの収益率が減少するのは、実需の減少、日本固有の地価の下落、建設需要の弱化、テナントの空き室率の高止まりが原因であり、長期金利は低く抑えられている。日本銀行は建設金利を低金利のままにしていながら、金融緩和の効果もないことを示している。リニア新幹線工事は、静岡県知事の建設妨害で、工事は進まず、大阪万博の各国パビリオン建設も着手していない。
『資産形成論2023年』では、リートについては、ニッセイJREITに収益性の底打ちが見えず、依然、標準偏差が、外債より、3.6倍あるので、ドルコスト平均法の定額購入商品リストから、外し、建設、テナント、住宅、マンション等の建設需要が上向くまで、購入を止めるべきである。その間、テナント料が分配されるので、トータル収益率は維持される。
『資産形成論2024年』では、SBI全世界REITは、マイナスの平均収益率になった。標準偏差も日興60と比較して、6倍ある。バランスの日興20よりは、SBI外債の方が、成績が良い。株式20程度ならば、外債のみの方が、バランスより、リスク価格:平均収益率/標準偏差がSBI外債0.27747、日興(株式200.15927で、高いことからも、成績が良い。

今週(202478日~712)のイベントと市場への影響
 
先週のイベントは、1日、6月の全国企業短期経済観測調査が発表されました。路線価が公表されました。4日上海協力機構首脳会議がカザフスタンで開かれました。プーチン大統領が参加、ベラルーシの加盟が正式承認されました。5日イラン大統領選挙の決選投票が行われ、改革派のペゼシュキアン氏が当選しました。
 今週のイベントは、7日東京都知事選投開票が行われ、小池氏が当選しました。フランス下院選の決選投票がありました。投票は日本時間8日午前3時に締め切られました。9ワシントンで、11日まで、NATO首脳会議が開かれます。岸田首相が出席します。10日岸田首相がドイツを訪問します。
 先週の統計は、次の発表がありました。
                     予測値    実績値
71日 日日銀短観大企業製造業先行     10      14
          大企業製造業業況判断   11      13
          大企業非製造業先行    28      27
          大企業非製造業業況判断  33.3     33
    中財新製造業PMI          51.4     51.8
    米ISM製造業景況感指数       49.0     48.5
 6日 米貿易収支            -710億ドル -751億ドル
    米ISM製造業景況感指数      52.5     48.8
 7日 日5月家計調査             0.3%    -1.8
   日
5月景気動向指数一致              116.5
            先行              111.1
   米6月失業率             4.0%     4.1
 
今週の統計は、次の発表があります。
                      予測値
78日 日5月国際収支経常収支      22650億円
            貿易収支     -1975億円
       5月毎日勤労統計         2.1
    日6月景気ウォッチャー調査     46.3
 9日 日5月工作機械受注統計     
10 6CPI             0.4
  11日 日5月機械受注統計(内閣府)    7.2
     6CPI              3.1
 12日 中6月貿易統計          
    日5月鉱工業生産指数       2.8

 統計は、国民総支出GDE構成要素、物価、利子率について、日本の発表結果を一覧で以下に表します。
日本    3                                   4月        5
GDP(前期比)     0.5
消費コンビニ売上高  97009600万円    95394500万円  9476億円
  スーパー売上高  14156014万円 11463207万円 13578809万円
  百貨店売上高   5109億円       4441億円      4692億円
投資(工作機械受注統計) 13565000万円   1209200万円   1245億円
輸出         93767億円    89807億円
輸入         88797億円    94433億円
 貿易収支        4910億円      Δ4625億円         Δ6615億円
為替レート(/ドル)  147.46        153.01       155.58
物価指数(総合指数)  2.6%          2.5%       2.8%
利子率        0.1                            0.1        0.1
株価         39,688.9        39523.55     38229.11
(2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
原油価格       83           90.4        84.9
ドバイ、現物1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得(毎月勤労統計)  302,060円(1.0%) 速報296,884(2.1)
完全失業率       2.6%         2.6%        2.6%
景気動向一致指数   111.6         113.6       115.2
      先行指数    111.8         112.2       111.6
米国           3月            4月         5
GDP(前期比)     2.5
個人消費       0.8%        0.2%        0.2
投資(耐久財受注)   0.8%        0.7       
輸出         25762000万ドル 24901500万ドル26166100万ドル
輸入         32699200万ドル 32356700万ドル33673200万ドル
 貿易収支      Δ694億ドル     Δ746億ドル   Δ7507100万ドル
物価指数       3.5%         3.4%       3.3
利子率        5.5%         5.5%       5.5
株価(NY)     38722.69       37983.24      39512.84
2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
原油価格       78.01         85.41        78.26
NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得                0.5%         0.3                  0.5
完全失業率     3.9%         3.9%        4.1
中国           3月             4月         5
GDP(前期比)     5.3
個人消費       3.1%        2.3
全国固定資産投資(1~3月期)1042億元(4.5%)
輸出(前年同期)    Δ7.5%       1.5
輸入         Δ1.97%      8.5
 貿易収支    Δ4159億元      5135億元  
物価指数      0.1%          0.3%        0.3
利子率(1年物LPR3.45%         3.45%        3.45
株価(上海)      3046.02       3619.47       3154.55
(2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
個人所得      
完全失業率     5.3%         5.2%         5.0


15回目 2024715

6.4.2 リバランス法の応用(14回の続き)
1)海原氏の戦略結果と次期の戦略
2)山川氏の戦略結果と次期の戦略
3)高原氏の戦略結果と次期の戦略
6.5 次の半年の変動要因予想
・半年の変動予想方法
・本教室のまとめ

6.4.2 リバランス法の応用
 資産形成論2023年版および今年度の資産形成論において、6投資信託の平均収益率・標準偏差を比較すると、下の表になる。これらをもとに、3世帯の20247月から20253月の戦略を考える。

平均収益率・標準偏差(2019年1月28日~2023527)

SBI外債

日興20

日興40

日興60

SBIGREIT

日生JREIT

平均

0.002776

0.001776

0.003971

0.006013

0.003384

0.004311

標準誤差

0.001907

0.00135

0.002531

0.00343

0.007844

0.006958

平均収益率・標準偏差(2019128日~2024627)

SBI外債

日興20

日興40

日興60

SBIGREIT

JREIT

平均

0.004128

0.001999

0.004475

0.006914

-0.00718

0.002869

標準偏差

 

0.014877

0.012551

0.017448

0.024052

0.126892

0.044292

 

1)海原氏の戦略結果と次期の戦略
20207月~20213月の戦略結果
 海原氏の戦略は、次の通りだった。
・ボーナス月、7月および12月、財形貯蓄として、日興-DCインデックスバランス(株式60)の購入戦略を変更しない。
iDeCoは、1万円。ドルコスト平均法では、そのまま、買うか、SBIEXEi先進国債券ファンドに、相場が反転するまで、切り替える。
・月1万円NISAを選択する。
戦略の結果 コロナ禍であったが、13回の基準価格表、14回の収益率表から分かるように、202010月から、金融市場は回復し出したので、ドルコスト平均法は、効果があった。

20217月~20223月の戦略
 経済正常化に入るので、米国では、ゼロ金利から、金利を上げる金融政策が早いかもしれない。株式市場は、下落し、債券市場は債券利回りが上昇するかもしれないが、コロナ禍のような外生的ショックではないから、FRBの政策変更であり、金融市場にショックを与えるのが目的ではないので、調整的政策の実施になる。リバランスするほどでもないだろう。ただし、NISAの株式購入は、調整局面で、下げ相場反転で買う方がよいかもしれない。
・ボーナス月、7月および12月、財形貯蓄として、日興-DCインデックスバランス(株式60)の購入戦略を変更しない。
iDeCoは、1万円、SBI-EXE-iグローバルREITファンドか、ニッセイを買う。
・月1万円NISAを選択する。個別株式を買うか、好配当投信信託、先進国成長投資信託を選び買う。
戦略の結果 米国のインフレがはじまり、雇用も改善する。FRBは、金融緩和を停止し、インフレ懸念から、金利引き上をする。米株価は落下し、債券価格は下落した。1月から、ロシア軍のウクライナ国境集結から、ウクライナ侵攻の気配があり、224日侵攻した。エネルギー価格が上昇し、ウクライナの食糧輸出が停止し、食糧価格が上昇した。
 日興-DCインデックスバランス(株式60)の購入戦略を変更しないで、よかった。株式市場は、米国の利上げで、日本株も売られた。日銀の政策変更はなかった。日本でも、エネルギー、食糧のインフレーションが始まる。米国との金利差で、円安傾向が出てきた。

20227月~20233月の戦略
 世界インフレーションは、今年中はおさまりそうもない。最大の要因であるウクライナ戦争は、停戦しないだろう。EUの冬季の天然ガスは、ロシアからの供給削減か停止で、需要が逼迫する。石炭火力、原子力発電で、電力は確保、原油の冬季備蓄は、この夏を通じて、予算余力がある国では、備蓄タンクは満タンになる。
 米国は、エネルギー・食糧の自給国であるから、ウクライナ戦争由来のインフレーションに狼狽することはないのだが、バイデン政権の戦局に応じ小出し対応するので、米国の狼狽インフレーションが5%被さっている。民主党としては、2021年、労働市場の回復で賃上げを重視していたせいもある。しかし、そのため、FRBが許容できる範囲2%を越えていた伏線が、米国経済にはあった。
 2022年、FRB4回の金利上げにより、米国エネルギー・食糧インフレーションは沈静化、同時に、経済回復に伴う雇用逼迫に由来する賃金上昇も、景気の減速で、止まり、狼狽インフレーション5%は取り除かれ、年末にかけ、本流インフレーションは5%以下になるだろう。米国のシェール生産量を増産できない理由があるのか。米国の小麦・トウモロコシ生産が著しい減産が予想されているのか。それらが、米国の相場師のはしゃぎで、値上がり益を期待しているのなら、それを抑えるのは、米国政府の責任である。
 ボーナス月、7月および12月、財形貯蓄として、日興-DCインデックスバランス(株式60)の購入戦略を変更しない。経済変動が予想されるため、株式相場は低下するが、ドルコスト平均法では、その分、安く買え、口数が増える。債券とグローバルリートの収益率が上昇している。財形以外では、危険回避では債券、収益期待では、グローバルリートを購入する。個別株は、円安傾向に見通しがないため、日銀の金融和緩和の停止が出るまで、購入を控える。
戦略の結果 日興-DCインデックスバランス(株式60)の購入戦略を変更しないでよかった。
財形以外では、危険回避では債券、収益期待では、グローバルリートでよかった。
個別株は、20233月まで、日本株は売られすぎで、さえなかった。購入しなくてよかった。

20237月~20243月の戦略
 20234月以降、欧米、中国の景気後退ないし停滞が始まっている。インフレが収まっていないので、FRB5%以上の高金利を後半でも維持する見込みである。ECBは、インフレのため、5%台に入るだろう。日本は、コロナ対策が終了し、経済・社会活動が正常化してきている。第3次産業が復活し、非正規従業員が不足している。大手、中小零細の給与、賃金は上昇する。日銀の言う2%賃金・物価水準は、目標を越える。その間、金融緩和を続行するので、この本格的インフレーションは、来春まで続くだろう。
 株式市場は、海外投資家が投資し、株価が年末にかけて、上昇するだろう。円安は、FRBの金利打ち止めが秋、始まれば、円高に転じる。
・ボーナス月、7月および12月、財形貯蓄として、日興-DCインデックスバランス(株式60)の購入する。
iDeCoは、1万円、SBI-EXE-iグローバルREITファンドを買う。
・月1万円NISAを選択する。個別株式を買うか、好配当投信信託、先進国成長投資信託を選び買う。NISA制度が2024年からスタートするので、この資産形成論も、債券・株式のグローバル投資に理論的、実践的に焦点を合わすことを考えている。
戦略の結果 日興-DCインデックスバランス(株式60)の購入は、よかった。
iDeCoは、SBI-EXE-iグローバルREITファンドは変動が大きく、リバランスすべきである。

20247月~20253月の戦略
・ボーナス月、7月および12月、財形貯蓄として、日興-DCインデックスバランス(株式60)の購入する。
iDeCoは、1万円、日興-DCインデックスバランス(株式60)を購入する。
・個別株は、成長投資枠に、年間240万円投資上限があるから、成長分野で、好配当、企業投資額が大きい企業を選び、ボーナス月以降に、市場のトレンドを見つつ、購入する。

2)山川氏の戦略結果と次期の戦略
20207月~20213の戦略結果
 山川氏の教育資金437,500円は、7月と12月のボーナスをあてる。収支差額合計626,500円は、老後の安心360,000円と予備費226,500円にあてる。
・企業年金のiDeCoは、月2万円で、投資信託で運用する。日興-DCインデックスバランスは株式40を買う。
・教育資金437,500円は、7月と12月のボーナスをあてる。ジュニアNISAで、NISAの投資信託から選択し、運用する。SBIEXEi先進国債券ファンドを買う。
・老後の安心は、月3万円を、つみたてNISAとして、ニッセイ-DCニッセイJ-REITインデックスファンドAを購入し、予備費は預金にする。
戦略結果 iDeCoは、日興-DCインデックスバランス(株式40)問題はない。教育資金は、日興-DCインデックスバランス(株式20)より、SBIEXEi先進国債券ファンドの平均収益率がよかった。老後の安心は、J-REITインデックスファンドAでよかった。

20217月~20223月の戦略
 経済正常化に入るので、米国では、ゼロ金利から、金利を上げる金融政策が早いかもしれないが、FRBの政策変更であり、金融市場にショックを与えるのが政策目的ではないので、調整的政策の実施になる。リスクが高い投資信託をリバランスするほどでもないだろう。ただし、NISAによる日本株式相場は、日本人投資家に余力が少なく、外人投資家に影響を受けやすい。12FRBが政策調整局面に入れば、一時的に、米市場の連れ下げ相場になるので、反転で買う方がよいかもしれない。
 投資信託選択は、ドルコスト平均法で、変更しない。
戦略結果 iDeCoは、日興-DCインデックスバランス(株式40)問題はない。教育資金は、日興-DCインデックスバランス(株式20)より、SBIEXEi先進国債券ファンドの平均収益率がよかった。老後の安心は、J-REITインデックスファンドAは、東京オリンピック後、基準価格が低下している。SBI-EXE-iグローバルREITファンドの方がよかった。

20227月~20233月の戦略
 iDeCoは、日興-DCインデックスバランス(株式40)問題はない。教育資金は、日興-DCインデックスバランス(株式20)より、SBIEXEi先進国債券ファンドの平均収益率がよかった。老後の安心は、SBI-EXE-iグローバルREITファンドにする。
戦略結果 iDeCoは、日興-DCインデックスバランス(株式40)問題はない。教育資金は、SBIEXEi先進国債券ファンドでよかった。老後の安心は、SBI-EXE-iグローバルREITファンドで問題ない。

20237月~20243月の戦略
 20224IMF世界経済見通し(World Economic Outlook)は、世界経済2.8%、米国1.8%、ユーロ圏0.8%、日本1.3%、中国5.2%、ASEAN6カ国5.9%である。2024年世界経済の予測は、世界経済3.0%、米国1.4%、ユーロ圏1.4%、日本1.0%、中国4.5%である。20243月まで、欧米、日本中国は、景気が減速する。2023年年後半、FRBおよびECBは、インフレ対策の利上げから、景気減速対策に、利上げ見送りか、下げに転じそうだ。
 日本経済は、本格インフレーションが後半も続き、来年春闘は3%ベースアップになる。少なくとも、ゼロ金利政策は解除、昔懐かし、大蔵省の管理下にあった日銀の「低金利くぎ付け政策にもどる可能性はある。日銀が金融政策の変更をするかは、賃金・物価インフレーションが2%を越えていると、政策委員会が認識するかにかかっている。
 iDeCoは、日興-DCインデックスバランス(株式40)教育資金は、SBIEXEi先進国債券ファンド、老後の安心は、SBI-EXE-iグローバルREITファンドにする。
 NISAは、資金余力があるので、個別株式、好配当株式投信信託、先進国成長株式投資信託を選ぶ。個別株式は、現NISA制度では、5年間以内に、売却し、その間の配当、売却益が非課税であった。新NISA制度では、期限がなくなるので、好配当で底支え、成長期待の企業を購入する。株式投資信託の中で、日本株式の好配当は、バランス(株式60)より成績がよいものがある。
戦略結果 iDeCoは、日興-DCインデックスバランス(株式40)でよかった。教育資金は、SBIEXEi先進国債券ファンドでよかった。老後の安心は、SBI-EXE-iグローバルREITファンドは、リバランスべきである。

20247月~20253月の戦略
 iDeCoは、日興-DCインデックスバランス(株式60)教育資金は、SBIEXEi先進国債券ファンド。老後の安心は、日興-DCインデックスバランス(株式60)

3)高原氏の戦略結果と次期の戦略
 高原氏は、68歳とする。高原氏夫妻は85歳でなくなるとする。テキストp67の収支差額表から、高原氏の預金からの取り崩しは76万円である。高橋氏が亡くなると3年間、取り崩しは、年32万円である。高原氏が85歳の期末に現預金が716万円ある。高原氏の妻は、遺族年金と自身の老齢基礎年金が収入であり、不足分が毎年32万円の取り崩しになる。
 元本が減少しない投資信託を半分以上、17年間、SBI-EXEi先進国債券ファンドの投資信託で運用する。取り崩しが必要な前年、売却し、定期預金で保有する。残りは遺産になるが、バランス型(株式20で運用する。死亡予定年より、2年早く、売却し、預金する方が、入院する場合もあるので、注意が必要である。高齢者の入院した場合、死亡まで4年は覚悟しないといけない。
 高原氏は、69歳から85歳まで17年間、毎年、76万円取り崩しだから、現預金1292万円を引き出すことになる。1292万円は、SBI-EXEi先進国債券ファンドで運用し、76万円は前年、その分売却し、預金する。遺産716万円は、15年間、日興-DCインデックスバランスは株式20を買い、2年前から、売却するタイミングを計り、SBI-EXEi先進国債券ファンドの投資信託にスイッチする

20207月~20213の戦略結果
 
コロナ禍、SBI-EXEi先進国債券ファンドは、ヘコみが少なかった。日興-DCインデックスバランス(株式20)は、SBI-EXEi先進国債券ファンドと差別できないから、株式40にした方がよいだろう。

20217月~20223月の戦略
 高原氏85歳以降の資金716万円は、日興-DCインデックスバランス(株式40)にスイッチする。引出分1292万円は、SBI-EXEi先進国債券ファンドで運用する。
戦略結果 米国の金融政策が変更された。ウクライナ戦争が開始され、エネルギー・食糧価格が上昇、世界インフレーションになった。高原氏の日-DCインデックスバランス(株式40SBI-EXEi先進国債券ファンドで、運用することで問題はなかった。

20227月~20233月の戦略
 -DCインデックスバランス(株式40SBI-EXEi先進国債券ファンドで、運用する。
戦略結果 高原氏の日-DCインデックスバランス(株式40SBI-EXEi先進国債券ファンドで、運用することで問題はなかった。

20237月~20243月の戦略
 -DCインデックスバランス(株式40SBI-EXEi先進国債券ファンドで、運用する。
 NISA制度が始まり、余裕資金があれば、配当実績とその企業の成長性を考慮して、株式を買うことも考えてもよい。世界経済の波動と日本経済の波動は必ずしも同調しないから、国内外の投資家は、その企業ないし産業の成長性の成長性に同意見とは限らない。    新NISA制度は、短期売買の専門投資家向けではにので、中長期的に、株価の変動は許容できる。預金からの取り崩しは年76万円である。年25万程度の配当・売却益を目指すなら、投資破たんすることはない。
戦略結果 -DCインデックスバランス(株式40SBI-EXEi先進国債券ファンドでよかった。

20247月~20253月の戦略
 SBI-EXEi先進国債券ファンドと-DCインデックスバランス(株式40)に案分する。

6.5 次の半年の変動要因予想
・半年の変動予想方法
・本教室のまとめ

本ノート2024520日 第7回目2024年「世界経済・政治の見通し」の要点

 IMFOECDADBの経済見通し、IEAOPECの石油需要予測
 EU・英国、米国、インドおよびASEAN、中国、日本

IMFOECDADBの経済見通しとIEAOPECの石油需要予測
 
IMFの世界経済見通し、OECDの加盟国経済見通しおよびADBの新興アジアの経済見通しが、経済成長率とインフレ率の2024年および2025年の予測値が公表されている。
 ウクライナ戦争で、世界インフレがはじまり、中央銀行は、自国のインフレを押させるため、政策決定会議ごとに、政策金利を上げてきた。今年は、インフレ率が、政策金利を下回り、消費需要のインフレ抑制が効いて、GDP伸び率が止まってきている。各見通しは、政策金利とインフレ率の交差から、消費需要のインフレ対応が終わり、遅れた賃金・所得の上昇で、消費需要が回復すると見ている。ユーロ圏・英国では、成長率が25年は、上昇を見込んでいる。しかし、他は、インフレが2%台に落ち着いても、成長率は下がると見ている。
 
石油需要予測は、IEAOPECともに、25年は、需要が減少する。中国とインドの経済成長率が減少し、石油需要が減る。

IMF世界経済2024年、2025年の見通し      OECD
2024/4/11発表 2023   2024   2025   2024/2/5発表2024   2025
  世界GDP  3.2       3.2       3.2          3.1    3.2
   米国   2.5       2.7       1.9                  2.6       2.2
   ユーロ圏  0.4    0.8    1.5                  0.7       1.5
   英国   0.1    0.5    1.5                  0.4       1.1
   日本   1.9   0.9    1.0                  0.5      1.1

 新興・途上国 4.3   4.2     4.2
   中国   5.2   4.6     4.1                 4.9      4.5
   インド  7.8   6.8     6.5                 6.6      6.6

世界インフレ率 6.8   5.9     4.5               

ADB(アジア開発銀行)の新興アジア経済見通し
2024/4/11発表     2023   2024   2025
新興アジア        5.0    4.9   4.9
   中国        5.2    4.8   4.5
   インド        7.6    4.8   4.5

新興アジアインフレ率 3.3      3.2    3

IEA石油需要予測   
2024/5/15発表   2024     2025
日量        120万バレル 110万バレル

OPEC石油需要予測
2024/5/14発表   225万バレル 185万バレル

EU・英国
 EU・英国は、ウクライナの軍民支援を継続するが、EUで、先端産業の育成に、海外企業を呼び込むことは進展した。ロシアに依存したエネルギー構造から脱却する代替エネルギー設備投資は、期待ほど進んでいない。ドイツは、洋上LNG液化工場船を建造している。EUは、基礎食料の自給率は100%を越えているので、ロシア産の食糧に依存はしない。むしろ、ロシアへの農産物・加工品の輸出が停止し、EU生産者の販路が失われた損失はある。
 昨年は、フィンランドおよびスウェーデンのNATO加盟があった。ウクライナは、EU加盟の候補国になった。今年は、3月から、5月まで、NATO9万規模の大演習が実施された。米国のウクライナ軍支援予算案が4月下旬まで可決せず、ウクライナ軍は、アウディイウカ陣地を占領され、前線は後退した。この事実に、EUの軍需産業は、米国からの武器供与は、信頼できず、NATOのヨーロッパ独自の武器備蓄の必要性が意識された。トランプ氏が大統領になれば、GDP2%を要請するはずである。EU独自で、兵器開発を開始することも、始まった。
 EUおよび英国は、インフレが収まらず、ECBは、4.5%の政策金利を維持、英中央銀行は5.25%である。インフレが続くと、消費者は、節約で対抗するので、消費需要は実質減少していく。日本と違って、賃金は流動的で、インフレに遅れて上昇。消費は手持ち現金で買うので、不必要な財は買わなくなる。景気はなかなか、上がらない。
 ウクライナ戦争疲れ、ガザ侵攻疲れで、消費は委縮しているのは、世界各国皆同じである。ヨーロッパが夏休みに入り、7月、パリ・オリンピックがあり、コロナが弱体化し、再び、世界から観光客が回帰してくる。サービス業を中心に、EU経済回復が加速されるだろう。日本では、春から、大谷事件で、開幕した米メジャーリーグは、大谷選手の活躍で、盛り上がっている。日本人も、ドジャーズが勝ち、大谷選手が活躍すると、元気が出るという人もいるようだ。パリ・オリンピックは、バカンス入りとともに、ヨーロッパの委縮した経済活動を活性化させる。
 英国は、EUを脱退し、NATOとの安全保障は、つながっている。ウクライナ戦争で、ロシアの資源に、依存はしないが、高インフレーションの影響もあって、経済成長が停止した。当時の保守党政権は、EU脱退当時の東欧移住者の増加、漁業の漁獲高の調整がつかず、EUの法制度に従うことを嫌っていた。故エリザベス女王も、暗黙の脱退了解があった。現保守党は、人気が落ちて、EUとの経済協定を加盟国並みにもどす方が、成長率は、回復するだろう。
 英国は74日総選挙があり、14年ぶりに、労働党が政権に就いた。インフレに不満が蓄積しており、EUとの経済協定を交渉する見込みである。
 フランスは、77日決選投票で、左派連合が1位、右派が2位、極右が3位となり、過半数は得られず、連合になる。マクロン大統領の議会対策は、困難になる。
 ロシア経済は、IMF4月予測では、20243.2%、20251.8%成長である。軍事予算の倍増と、軍事産業に増産させ、外国資本設備を摂取、類似製品を生産したため、成長率が上がっている。ロシア人の夏のバカンスは、パリ・オリンピックでも、ロシア連邦からの観光客はこない。ウクライナ戦争以前は、南欧諸国がロシア観光客の人気地であっただろうが、戦争が長引くにつれ、ロシア人は、東南アジアに行っている。その分、観光収入が減るが、これが、6年間、常態となり、ロシア経済と完全に分断される。

米国
 米国経済は、昨年に引き続き、先進国では、2.7%成長で、インフレ率は直近では3%で、安定している。政策金利5.25%は、インフレ率の2倍あり、利下げが、市場では予想されている。設備投資、住宅建設に影響する長期金利は、直近では、44.539%である。米国では、インフレと賃金率上昇が同時化するから、消費需要は、実質的に変化しない。11月大統領選があり、0.25%利下げが、611日~12日の公開市場委員会で決まる。大統領選の論点として、バイデン大統領は、対中戦略物資の取引禁止、半導体工場の国内誘致、トランプ氏は、中国企業のEV車メキシコからの輸入禁止、対中関税を引き上げるという。米中貿易に、直接、減少を狙っている政策は、トランプ氏である。629日の大統領候補のバイデン氏対トランプ氏の討論会があり、トランプ氏が勝った。バイデン氏が、過労で制裁がなく、討論会以降、民主党・有力支持者から、立候補を取り下げる発力が高まっている。トランプ氏は、713日の銃撃事件で、右耳貫通の負傷をしたが、気力は衰えていない。115日の大統領選まで、バイデン氏が他の候補に代わっても、拮抗、もつれるだろう。米国経済は、FRBの利下げが、1回あり、2%台の経済成長を持続する。

インドおよびASEAN
 インドは、ウクライナ戦争のエネルギー・食糧インフレーションに対し、エネルギー面では、ロシアから割引価格で、原油を輸入し、国内消費を上回る石油製品は、EUに輸出した。食料は、主食が米であり、ウクライナ、ロシアの小麦粉には依存しない。どういうわけか、米の輸出国だが、輸出禁止にした。エネルギー・食糧インフレーションは、遮断され、高度成長を2年間続けている。
 製造業の発展に、力を入れるようになったのが、最近のインド経済の特徴である。人口成長で、中国抜き、世界一の人口大国になる。インド南部で、ソフト産業が、1985年の頃から、世界的に有名だったが、最近は、人口増を農業部門で吸収できず、余剰人口は、製造業の付加価値の高い産業を育成、雇用し、経済成長することに力を入れ出したのであろう。
 東南アジア諸国は、コロナから、サービス業が回復し、自律成長軌道に入っている。ADBアジア開発銀行の予測では、2024年は成長率4.8%、25年は4.7%、インフレ率は、3.2%、3%である。
 域内の問題は、中国の南シナ海進出に対し、フィリッピン政府が、前政権の中国寄り立場から、対決型になり、漁船、中国海警船との衝突が増え、日本は、巡視船をフリッピン政府に借款している。今年も、追加、建造する。
 ミャンマー軍事政権は、2023年は、反軍勢力の政府軍攻撃が強まり、3方向から、首都ネピドーは、包囲されて、国軍兵士の降伏も多く、徴兵令を強化しているが、隣国に逃れている。中国の軍事支援が、国軍本営に届いているのかわからないが、空軍の空爆は続いている。反軍3勢力に、携帯ミサイルが届くようになれば、国軍機械化部隊による軍事的優位は薄れる。国軍は、兵弾つきて、ネピドーから、市民が避難するような事態にりそうだ。

中国
 中国は、不動産業界の主要企業が、債務超過に陥り、不動産投資は止まり、全国の都市住宅価格は、下落が続いている。台湾侵攻問題で、海外企業直接投資は減少傾向にあり、米国の半導体国内回帰政策で、中国に米先端品が輸出されず、中国先端商品に搭載できず、輸出が減少している。中国は、伝統的雑貨・衣類製造は、米国市場が制限されても、アジア、欧州、経済制裁を受けるロシア連邦には、依然、輸出力は強い。各種ドローン、G対応携帯やEV等の世界最先端、高付加価値製品は、輸出に摩擦がでてきた。
 来年は、製造大国25の完成年であるが、習主席には、その目標は達成できない。その輸出輸入経路である一帯一路も、相手国に、断られる事例も出ている。2025年、不動産市況の回復、不動産投資の底打ちはせず、国有銀行、地方銀行の不良債権処理は、手つかずのようで、金融破たんが発生するまで、その抜本的処理は行われないだろう。

日本
 日本は、岸田首相が、政治資金規正法で、自民党の有力者をはずし、9月までの、総裁選で、選出されないのは明らかで、政権誕生以来、インフレ、円安、安倍氏暗殺、岸田氏暗殺未遂事件があり、国民生活は、毎月3%の必需品値上げで、2023年春闘で賃上げはなく、非正規の最低賃金は十円玉程度の時給を決めた程度の所得では、すべての家計は、節約、倹約生活を1年以上続けていたことが、四半期GDPの消費需要の減少に表れている。岸田政権は、20246月から、1年間、月4万円の減税をするが、インフレが、2%台になったが、中小零細の賃金が3%を越えなかった。
 東京都の実質GDPは、東京オリンピック2021年、令和3年度で、1137千億円だったが、令和3年以降は、2年遅れで公表されるため、まだ発表されない。202112月から、ウクライナ戦争に入り、世界経済は高インフレ時代となった。東京都の実質GDPは、低下しているはずだ。日本で、もっとも、高インフレーションの生活実感を東京都民および周辺各県民が感じているはずである。都民は、けなげにも、インフレに適合生活を続け、賃金・給与は上がらず、歓楽街はコロナで、休業・廃業で、シャッター街になっているはずだ。岸田首相が、公舎で身内忘年会をしたのは、行くところがなかったせいもある。
 オリンピック反動不景気は、世界各国開催地でつきものなのだが、5%以上のインフレと、賃金率が上がらないため、実質賃金率のマイナスが続くはめになった。インフレ抑制のゼロ金利解除、利子率のある金融市場に戻さないため、世界金利差が5%を超え、150円台の超円安状態になった。輸入物価指数が上昇したままである。金利差は、日銀による申し訳程度の市場金利の復活で、縮小する気配があるが、依然,世界金利差は大きい。
 外国人観光客が入国し、他方で、日本人は、3年間コロナ封鎖で、海外旅行は出来なかったので、高齢者はとくに、見納め観光に、憧れの世界観光地に行きたかっただろう。コロナ解除2023年から、インフレ・円安がなければ、日本人は、どどぉ~と出かけるはずだが、超円安と訪問国の高インフレで、旅費・滞在費が高すぎるから、出国者はすくない。IMFは、20240.9%、20251.0%の成長率を予想している。

次の半年の変動要因を予想
 若年世代および壮年世代は、所属する業界に対する景気,政策,海外の景気,各国の政策等の変動は、毎日の仕事に反映されているはずである。変動要因が変化すると、仕事量が変化する。それは、夏、冬のボーナスに成果として、反映されるので、まったく無関心な勤労者はいない。ゆえに、各事業体に所属する勤労者は、半年ごと、その間の事業体の成果と、次期の予想は、おぼろげながらでも、想定できる。
 日本経済が活動した半年と、これからの半年の見通しをもとに、ドルコスト平均法で購入している商品をリバランス法にしたがい、変更、売却、新規購入を判断する。
 選択した商品に影響する、景気,政策,海外の景気,政策等の変動要因の重要度を考える。下の表に、商品にしたがって、国内外の強く働く変動要因が挙げられている。毎年、元旦の朝刊に、年間の予定表が掲載されており、日米欧の中央銀行の政策決定会合日程およびGDPの速報値発表日が掲載されている。
 資産形成論説明ノートおよび金融論説明ノートでは、日本経済新聞の日曜版「今週の市場」から、今週の予定を検討し、金融市場への影響を推論した。経済指標の発表の場合、マネックス証券の「投資情報・レポート一覧」から「経済指標カレンダー」をクリック、さらに、予想・結果をクリックすると時系列が表示される。予想より結果が下回ると失望売りで市場は反応する。

商品リスト          変動要因              海外
債券        日銀の政策会合 日銀短観   米国準備制度理事会 EU中央銀行  
        消費者物価 為替レート     消費者物価指数 失業率
株式        政府予算 政策の変更      政府予算 政策の変更
          四半期 GDP            四半期 GDP 
リート       長期金利 都市の地価発表    長期金利 都市の地価発表
バランス     株式 20 40 60 の構成要素に対して、上記の変動要因按分
インデックス  債券の構成要素、株式の構成要素に対して、上記の変動要因 
ETF         債券の構成要素、株式の構成要素に対して、上記の変動要因
 
 
変動要因の発表は、各証券会社の HP に、スケジュールが公表されている。重大発表は、情報が必ず漏れ伝わってくるので、市場の商品は、発表前に、反応し、価格が上昇するか、下落してくる。変動許容範囲上下 20%以内ならば、再び、平均回帰する見込みが強い。20%を超えると、短期で回帰するのは、無理がある。

MFEXモデルによる簡易予想

マンデル・フレミング開放マクロ経済モデル(MFEXモデル)の枠組み
『金融論2018年テキスト 説明ノート』第132019129日から、マンデル・フレミング・モデル(MFEXモデル)において、不完全雇用CASE Iのとき、ドーンブッシュ・フィッシャー『マクロ経済学上・下改訂第4版日本版』1989にしたがった線形化をした開放マクロ経済モデルを、以下のように作成した。投資関数、流動性選好関数は、債券価格表示の方法もあるが、一次関数で線形化している。2023年版資本形成論テキストにおいて、4市場均衡図4.17および4.18を載せている
 完全雇用CASE Ⅱは、『金融論2022年』pp. 187-192に計算している。金融政策を実施すれば、『金融論2022年』p.19210.17において、QQ2線のように、右へ移行すれば、為替レートは減価し、物価は上昇するから、金融政策は有効である。

各市場均衡式
 貿易収支NXNXExImmwYwe Pw(mY ) P資本収支CFCF=ΔBie ΔBwiwとおく。資本流入はΔBi、資本流出はe ΔBwiwである。国際収支BPBPNXCFPとする。4市場の均衡式は次のようになる。

財市場       Y C0 c(YT0) I0bi G0mwYwe Pw(mY ) P

貨幣市場      MP =kYhi

労働市場      w0P (1-α)YN (CASE I不完全雇用ケインズの場合)

自国通貨建為替市場 P (mwYw)+ΔBie Pw(mY ) e ΔBwiw

(1)i iwの場合、資本流入はΔBi0

(2) i iwの場合、資本流出はe ΔBwiw0とする。

各関数の定義
消費関数        C C0 c(YT0)
投資関数        I I0bi
貿易・サービス収支関数 NXmwYwe Pw(mY ) P
労働供給関数       NSw0 (CASE Iケインズの場合)
労働需要関数      NDP (1-α)YN  (CASE Iケインズの場合)
実質貨幣供給関数    MS MP
実質貨幣需要関数    LD kY⁻-hi
投機的貨幣需要関数   L2 =-h i
自国通貨建為替供給関数 S¥ P(mwYw)+ΔBi
自国通貨建為替需要関数 D¥ e Pw(mY )e ΔBwiw

0:貨幣賃金率 P:物価水準、i:国内利子率、iw:世界利子率、e:為替レート、Y:国民所得、Yw:世界国民所得

均衡の決定
 
財市場均衡式はYC0 c(YT0) I0bi G0mwYwe Pw(mY ) Pであり、IS曲線という。
 貨幣市場均衡式はMPkYhi であり、LM曲線という
 IS曲線に、LM曲線の利子率i1/h(MPkY )を代入すると、次の総需要曲線ADが求められる。

(1ce Pwm P)Y= C0 cT0I0G0mwYwb/h(MPkY )

 労働市場均衡式からP={w 0 (1-α)K0Yとなる。総供給曲線ASという。
ASから、Y A P A(1-α)K0w 0 ADに代入すると3市場が均衡する価格と為替レートの組み合わせであるQQ線が導かれる

(1ce PwmP) A P = C0 cT0I0G0mwYwb/h(MPk A P )
(1c) A Pe Pwm=Ub/h(MPk A P )、ここで、U= C0 cT0I0G0mwYwとする。

e Pwm= U (1ckb/h) A P(b/h)MP。これをQQ線という。     (1)

最後に、為替市場からi iwの場合、P(mwYw)ePw(mY )eΔBwiw
Y A Pを代入すると、P(mwYw)ePw(m A P)eΔBwiw

eP(mwYw){ Pw(m A P)+ΔBwiw }これをEEという。       (2)

QQ線を図示する。(1)より、

e ={ U (1ckb/h) A P(b/h)MP }/Pwm
 -{(1ckb/h) A Pwm PUPwm(b/h)MPwm P 

となり、直線e UPwm-{(1ckb/h) A Pwm Pと双曲線e (b/h)MPwm Pとの合成した図になる。
 EEを図示する。(2)より、
eP(mwYw){ Pw(m A P)+ΔBwiw }mwYwPwm A-/{ Pw(m A P)+ΔBwiw }
と変形できて、双曲線になる。
 EE線は、必ず、原点を通る。価格P0は、経済学では、除外される。i iwの場合、資本流出eΔBwiwがつづくと、流出量が減少し、やがて、0になる。為替レートは、購買力平価説になり、emwYwPwm Aとなる。

QQ-EE均衡図(資産形成論2023年テキスト、p108、図417
 
 4市場均衡は、QQ線とEE線の交点である。図では、点APe)である。資本流出が生じると、EE線は、必ず、原点を通りつつ、左へ回転する。その結果、均衡点では、価格が減少、為替レートは、減価するという、結果になる。
結果、1)国民所得は低下する、
   2)利子率は世界利子率になる
   3)物価は減少する、
   4)為替レートは減価する。資本流出が終了すると、為替レートは

emwYwPwm Aとなる。物価は一定である。
CASE Iは、ケインズ不完全雇用モデルであり、労働市場が改善されない限り、金利差で資本流出が生じるとき、デフレにおちいる。
 金融政策を実施すると、『金融論2022年』p.18710.14において、QQ線が右にシフトし、点Bで均衡する。
その結果、1)国民所得は増加する、
     2)利子率は世界利子率になる、
     3)物価は上昇する、
     4)為替レートは減価する。資本流出が終了すると、為替レートは
emwYwPwm Aとなる。物価は一定である。
マンデル・フレミング・モデルにおける金融政策の有効性は、支持される。財政政策の無効性は、図示は確認中である。

20247月~20253月の日本経済の見通し
 経済・社会活動は、復調する。総需要は増加する。先端技術関連の中国サプライチェーン分断化のため、サプライチェーン自国・同盟国回帰の流れは持続する。日本政府が取りまとめる、最先端技術投資は、進展する。2023年度から防衛費5カ年計画で、総額43兆円は、新型兵器に向けられる、国内外の政府企業共同開発が進む。気候変動対策の金融投融資は、政府が、小出しの環境規制を止めて、日本の排他的経済水域内で、海上風力・地熱等、最大限利用可能な再生エネルギー生産に向けられる。国内市場は環境規制で開発余地はなく、関連国内産業が全く振るわなく、その技術開発する企業が、ASEANの資源に、JICA予算で、設置していた。
 世界の再生エネルギー産業は、国内で最大限設置するから、装置の生産コストが逓減し、国際競争力が維持でき、研究開発費を再投資、企業成長が好循環し、その業界の絶対王者になれるのである。日本企業の最先端技術進歩が、日本市場に満遍なく行わたる普及がないので、世界競争についていけないのである。直流電力網、極限容量のファイバー網、量子伝達法、水素ガスパイプラインが排他的経済水域内に、張り巡らされていないインフラ完備計画が、政府にない。EV車、水素エンジン車、水素燃料電池車が、テスト車は、開発は世界同時だったが、政府の電気スタンド、水素スタンドの普及計画がないため、利用できないから、国内需要は増えない。国内市場で普及する中国は、生産コストが逓減し、先進国に輸出を伸ばしているという、企業成長の好循環が、絶対王者になりつつある。GAFAMに、各AI、スターリンクは、米国市場で育ち、国際市場に拡大する企業成長の好循環をしている。日本は、14千万の市場で、関連各社はいるのであるが、国内需要がさっぱりで、国内で、生産コストが高いまま、彼らに、市場を席巻されているのである。
 金融政策がようやく、ゼロ金利を解除し、銀行システムに、市場利子率がつきだした。政府日銀は、非製造業のコロナ廃業がおわり、中小零細のゾンビ企業を、無利子で支えていた。3年間、借金まみれのゾンビ企業は、経営者が3年老けてしまい、事業承継する後継者はいなく、これ以上、無利子無担保のゼロ金利政策は続けても、無駄だと判断した。
 コロナ解除で、観光客も増え、コロナのため旅行制限していた高齢夫婦も、見納め観光に旅立ち始めた。世界の観光地が、人手溢れかえっているのは、いつ死ぬかわからないので、見納めをしとかなくちゃと、いうことである。東京の夜の歓楽街に灯がともり、高齢経営者は去り、新規開店が増加しつつあ。

            日本            米国
財政政策
 公共事業       補正            
 新事業投融資     あり            あり
金融政策
 資金繰り融資     あり  
 
気候変動投資促進融資2030年まで
 利上げ        年末までに利上げ         年末までに利下げ 

本教室のまとめ
 資産形成論は、昨年度に引き続き、考え残した課題を整理した。15回の説明で、平均分散法により、商品選択をし、半年間、ドルコスト平均法にしたがい、主に2つの制度、iDeCoおよびNISA利用の投資する戦略を考えた。商品は、投資信託から選ぶので、もともと、多数商品をなんらかの平均分散で、投資割合を決めているから、その上で、平均分散にしたがって、投資信託の割合を決めるのは、二重計算である。半年の商品の成果を判断するため、選択した実際の投資信託の平均分散のデータを集計表に収集してみた。異なった性質をもつ投資信託の実績を比較することができる。

 
IMFおよびOECDでは、世界経済の各国見通しと次年の予測をGDO実質経済成長率として、数値で公表している。IMFおよびOECDの推計モデルは、2年先の推計値を公表していて、両者の推計値は近い。開放マクロ貨幣経済モデル(MFEX・モデル)と同様な、線形同時方程式を使っているためだろう。半年間の投資計画を作成する際には、2年先の推計値を参照して、投資信託および個別株式投資の購入計画を立てる。

  20249月から、『金融論2024年』を開講する。マンデル・フレミング・為替モデル(MFEX・モデル)において、理論的MFEX線形モデルに加えて、MFEX連続モデルCASE I およびCASEⅡの均衡値を計算する。昨年の『金融論2023年』において、完全雇用CASE Ⅱは、各制度部門(中銀、銀行、企業、家計、政府、海外)が最適計算をする設定をしている。CASE Ⅱを動学化すると、最適成長論の理論的モデルになる。そのため、2024年は、経済成長論を復習し、その理論的成果を反映した、制度部門別最適成長論を構成することにした。 
 
 筆者は、科研費で、大阪府の短期排出量計算のために、大阪府マクロ計量モデルVer.H14R(2005.117)、産開研論集第17号平成173月の方程式体系で、データを更新し、推計した。当時、大阪府マクロ計量モデル方程式体系については、無批判であり、今回、その方程式体系を検討すると、マンデル・フレミング・為替・モデル(MFEX・モデル)と理論的な整合性が保てない方程式がある。特に、CASEⅡは、最適化モデルあるため、ケインズ不完全雇用CASE Iとは、方程式が異なる。また、大阪府マクロ計量モデルでは、均衡解が求められない。ただし、4半期のGDECIvIGEXIMは計算できる。
 日本の4半期データ公表は、欧米中国と比較し、制度部門別にデータがきちんと取れない。その分、部門別推計式に頼ることになる。米国と中国の方が、月別公表データがそろっている。日本はデータ公表が1カ月遅れているものもある。
 例えば、消費関数の推計式では、C=β+α1IY+α2Sであるが、毎月の個人消費支出C、個人所得IY、貯蓄残高(現預金)Sは、米国では、毎月CIYは公表される。4半期GDP速報値は、1ヵ月半かかる。MFEX線形・モデルは、ほぼ、本体が決まったので、推計式とデータ確保、データの期間合わせを試行している。資産形成論2024年説明ノートでは、日本、米国、中国の毎月のデータを掲載することにした。
 
 制度部門別最適成長論を計量経済学学的に、推計する場合、連続モデルの推計法は、中期、長期推定を可能にするが、時系列分析になるから、計量経済学的には、方法に飛躍があり、ハードルは高い。実用化のための研究は続ける。今回の計算によるMFEX線形・短期モデルの理論分析は、価格予想に先物価格を利用し、為替市場に、先物為替市場を導入する課題はあるが、政策効果を図示している。 
 今後、4半期MFEX・線形モデルおよび最適化MFEX・線形モデルの計量経済学推定をしたい。今後、理論分析と推定分析の整合性を確認、半年後の各変数の推計値を計算できるようにすれば、日本経済の半年後の見通しも立てられ、投資判断に役立てることができる。

今週(2024715日~719)のイベントと市場への影響度
 先週のイベントは、7日東京都知事選投開票が行われ、小池氏が当選しました。フランス下院選の決選投票がありました。左派連合、中道、極右の順に、過半数をとった政党はありませんでした。9ワシントンで、11日まで、NATO首脳会議が開かれました。岸田首相が出席しました。10日岸田首相がドイツを訪問しました。
 今週のイベントは、14日ペンシルベニア州バトラーで、トランプ大統領が演説中、銃撃され、右耳を負傷しました。15日から18日まで、米共和党全国大会が開かれ、大統領候補、副大統領候補が選出されます。15日から18日まで、中国共産党中央委員会第3回全体会議が開かれます。
 先週の統計は、次の発表がありました。
                     予測値       実現値
78日 日5月国際収支経常収支      22650億円  28499億円
            貿易収支     -1975億円  -11089億円
        5月毎日勤労統計         2.1%       1.9
     6月景気ウォッチャー調査     46.3        47.0 
  9日 日5月工作機械受注統計                1245億円
  10 6CPI            0.4%       0.2
  11日 日5月機械受注統計(内閣府)    7.2%       10.8
       6CPI             3.1%       3.0
 
12日 中6月貿易統計                   -7037億元
     日5月鉱工業生産指数(前年比)   0.3%       1.1
 今週の統計は、次の発表があります。
                     予測値
715日 中46月期実質GDP      5.1
       6月小売売上高        3.5
           6月鉱工業生産指数      5.9
  16日 米6月小売売上高        -0.2
  17日 米6月鉱工業生産指数      0.4
   18日 日6月貿易収支        -2195億円
     欧ECB政策金利         4.25%   
     米景気先行指数         -0.3
  19日 日6月全国消費者物価指数     2.9% 
 統計は、国民総支出GDE構成要素、物価、利子率について、日本の発表結果を一覧で以下に表します。
日本    3                                   4月        5
GDP(前期比)     0.5
消費コンビニ売上高  97009600万円    95394500万円  9476億円
  スーパー売上高  14156014万円 11463207万円 13578809万円
  百貨店売上高   5109億円       4441億円      4692億円
投資(工作機械受注統計) 13565000万円   1209200万円   1245億円
輸出         93767億円    89807億円
輸入         88797億円    94433億円
 貿易収支        4910億円      Δ4625億円         Δ6615億円
為替レート(/ドル)  147.46        153.01       155.58
物価指数(総合指数)  2.6%          2.5%       2.8%
利子率        0.1                            0.1        0.1
株価         39,688.9        39523.55     38229.11
(2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
原油価格       83           90.4        84.9
ドバイ、現物1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得(毎月勤労統計)  302,060円(1.0%) 速報296,884(2.1)
完全失業率       2.6%         2.6%        2.6%
景気動向一致指数   111.6         113.6       115.2
      先行指数    111.8         112.2       111.6
米国           3月            4月         5
GDP(前期比)     2.5
個人消費       0.8%        0.2%        0.2
投資(耐久財受注)   0.8%        0.7       
輸出         25762000万ドル 24901500万ドル26166100万ドル
輸入         32699200万ドル 32356700万ドル33673200万ドル
 貿易収支      Δ694億ドル     Δ746億ドル   Δ7507100万ドル
物価指数       3.5%         3.4%       3.3
利子率        5.5%         5.5%       5.5
株価(NY)     38722.69       37983.24      39512.84
2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
原油価格       78.01         85.41        78.26
NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得                0.5%         0.3                  0.5
完全失業率     3.9%         3.9%        4.1
中国           3月             4月         5
GDP(前期比)     5.3
個人消費       3.1%        2.3
全国固定資産投資(1~3月期)1042億元(4.5%)
輸出(前年同期)    Δ7.5%       1.5
輸入         Δ1.97%      8.5
 貿易収支    Δ4159億元      5135億元  
物価指数      0.1%          0.3%        0.3
利子率(1年物LPR3.45%         3.45%        3.45
株価(上海)      3046.02       3619.47       3154.55
(2金曜日の前営業日) 3/8          4/12        5/10
個人所得      
完全失業率     5.3%         5.2%         5.0



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